【習作】マギステルディケイド(仮面ライダーディケイド×魔法先生ネギま!)プロローグ「旅の途中で」 |
その世界は今、終わりを迎えようとしていた。
とある荒野、その辺り一面には様々なデザインのアーマーやボディを纏った者達が倒れており、その傍には半壊した電車や機械仕掛けの龍、バイクや銃や剣の残骸、そして何十体もの巨大な人型ロボットが全壊した状態で散乱していた。
そして上空には、いくつもの地球に似た星々がこの地上に落下しようと接近していた。いくつもの大陸と海が上空から迫り、この星の重力と落下してくる星の重力が引かれあって地面が徐々に盛り上がって行く光景は、とてつもない圧迫感と共にこの世界の崩壊を予感させた。
ふと、屍と残骸がひしめき合うこの地に、一人の戦士が立っていた。
彼の足元には赤いボディスーツを纏った戦士が、銃とサーベルを握ったままうつ伏せの状態で絶命している。戦士はそんな彼をただただじっと見下ろしていた。
その時、戦士は屍の山から自分に向けて殺気が放たれている事に気付いた。
暴虐の獣のような姿をしたその殺気の元は、屍の山を蹴散らすとそのまま戦士の元に猛突進していく。
対して戦士は右手にエネルギーを収束させていく。そのまま迎え撃つつもりのようだ。
「来い、―――」
戦士がその獣の事をなんと呼んだのか、それは彼と獣の闘気がぶつかり合う衝撃音で聞き取る事は出来なかった。
そして世界は光に包まれた。
「士君? 士君?」
「ん……?」
青年……門矢士は気が付くと光写真館の中にいた。周りには自分の体をさすってくる女性、光夏海が顔をのぞき込んでいる。士が座るテーブルの向かい側には、この写真館の住人、小野寺ユウスケがコーヒーをすすっている。その後ろでは写真館の主人、光栄次郎が三時のおやつのプリンを作っていた。
「やっべ、寝ていたか」
そう言って士は大きな欠伸をしながら体をうんと伸ばす。
「しっかりしてくれよ、次の世界でもどんなことがあるか解らないんだからな」
「解ってるよ」
そう言って士は写真館の中央に設置されている撮影用の背景ロールを見る、背景ロールには節足動物のような鋼鉄の浮遊鑑が、ビル街の上空を飛翔している様子が描かれていた。
「前の世界のやるべき事は終わったと思ったのに、背景ロールは全然変わらないんですね」
「次の世界はどんなライダーがいるんだろうな?」
「もしかしたら前みたいにライダーのいない世界かもねえ」
夏海達が和気藹々と話し込んでいる中、士は自分のズボンのポケットに何かが入っていることに気付き、それを取り出した。
士の手には真っ白な無地のカードが握られていた。
(なんだこのカード……?)
その時、背景ロールがガラガラと音を立てて新しい絵が垂れ下がってきた。
「お、噂をすれば」
「これは……」
新しく現れた背景ロールには、ボロボロのローブを纏い手には杖のようなものを握った男女の銅像が描かれていた。
「何でしょうかこれ? 魔法使い?」
夏海の率直な感想を後目に、士は立ち上がって玄関に向かった。その後ろを夏海とユウスケが付いていく。
「ま、何だっていい、どんな世界であろうと……」
士は扉に手を掛け、勢いよく開け放つ。
「俺はやるべき事をやるだけだ」
写真館の中に、すべてを包み込むような陽光が差し込んできた。
プロローグ「旅の途中で」
薄暗い路地裏、月の光に照らされたその場所を、異形の姿をした者が息も絶え絶えに走り抜けていた。
異形の者といっても、薄暗い為はっきりとどんな姿をしているのかわからない、しかしぼんやりと見える大きな頭に蛇の尾のような尻尾、オレンジ色の鱗模様の肌、足からはカチャカチャと大きな爪がコンクリートを削る音から、その者が普通の人間じゃない、もしくは人間ではない事が伺える。
その後方からは黒いヘルメットに厚い防弾スーツのようなものを身に着けた兵士5名、異形の者を追っているようだった。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ……!」
異形の者は彼等から必死に逃げていた。しかしどこか負傷しているのか、思うように早く走れない。
その時……後方から追ってきていた兵士の一人が、手に持っていた麻酔銃のようなものを構え、銃口を異形の者に向けながら躊躇いなく引き金を引いた。
ズドン! と大きな音と共に、異形の者はビクッと動きを止めると天を仰ぎながら前のめりに倒れた。
そしてその体は徐々に、幾銭もの銀色のメダルになって崩れていった。
ふと、銀色のメダルの中に一本のオレンジ色の蛇の尾のような物が這い出てきた。その尾はそのままニュルニュルと道端の排水溝の中に潜り込んでいった。
そしてそれと入れ替わるように五人の武装した兵士たちが、メダルとなって崩れた異形の者に駆け寄って来た。
「……対象の機能停止を確認、回収班をここに呼んでくれ、位置は麻帆良学園の……」
兵士のうちの一人が無線でどこかと連絡を取っている、この場にオレンジ色の尾が無い事に気付かないまま……。
☆ ☆ ☆
排水溝に落ちたオレンジ色の尾はそのまま水の流れに沿ってどんどんと流れて行った。そして数分後……排水溝から這い出てくる。
(さて、こんな体になっちゃったけど……これからどうしようか)
オレンジ色の尾はまるで意志があるかのように、ニュルニュルと地面を這いつくばった。
(あいつらからコアを取り戻すにしてもこの状態じゃ……何か憑代になる物があればいいんだけど)
オレンジ色の尾はとある公園にやってくる、その中央にある噴水付近に設置されているベンチに、一人の少女が座っているのを見つける。
「……」
少女は先程まで泣いていたのか、目の下を真っ赤に腫らしていた。そして虚ろな目をしながらベンチに凭れ掛かっていた。傍から見ると死人のような雰囲気を醸し出している。
(? なんだろうこの子、死にかけている訳じゃないけど、魂の輝きが弱まっている、でもこれなら……)
オレンジ色の尾は少女の背後に周る。ベンチは鉄製の骨組みに木の板の背凭れと椅子で出来ており、後ろから見るとちょうど座っている人間の腰が見えるようになっていた。
(君の体……借りるよ)
オレンジ色の尾はそのまま、ベンチの隙間から見える少女の腰……尾てい骨部分に飛びついた。
☆ ☆ ☆
数分後、公園に黒く流れるように伸びる髪をポニーテールにまとめた長身の少女が駆けてくる。誰かを探しているのか、必死に駆け回っていたようで息を切らしていた。
「亜子―! こんな所にいたの!? 心配したんだよ……!」
ポニーテールの少女はベンチに座る少女を見つけると、すぐに駆け寄って彼女に話し掛ける。
「サッカー部の人に聞いたよ、告白駄目だったんだね……それで飛び出したっていうからまき絵や祐奈と一緒に探していたんだ。亜子……?」
ポニーテールの少女……大河内アキラは、自身が探していた少女……友人の和泉亜子が無反応な事に気付き、心配そうに彼女の顔を覗き込む。
「ん……? ああごめん、何?」
すると亜子はアキラがいることに気付いたのか、慌てて顔を上げる。その表情は先程の生気のないものとは打って変わって、まるで今の状況が把握できていない様子でただただ優しげな微笑を含ませながら頭を横に傾げていた。
「何って……まあいいや、早く寮に帰ろう、皆心配しているよ」
アキラははあっと溜息をついた後、亜子の手を取って立たせ、そのまま手を引いて自身が住んでいる女子寮に向かって歩き出した。
アキラはその時気付いていなかった、亜子の制服のスカートの下から、オレンジ色の尻尾がニョロニョロと動いているのを……。
プロローグはこれで終了です。
説明 | ||
※この作品は仮面ライダーディケイドと魔法先生ネギま(マンガ原作中心+アニメなどの設定、キャラのミックス)のクロスオーバー作品となっております。 ※ディケイド側の時系列はRXの世界を回った後、ネギま側は2〜3巻あたりの話になります。 久しぶりの小説なのでリハビリのつもりで書いています。 |
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