幸せな日々 |
教室の後ろの席、本を読む私。
私の視線の先には明るく元気な彼が友人と話している。
ああ、いつ見ても恰好いい。なんて考えてぼやっと彼を見る。
「ねーねー、さっき先生がさー」
愛しの彼に、女が話しかけてきた。
どうやら先程の授業の教師について愚痴を言っているようだ。
何てことだ、盛り上がっている。
私がいるのに何故、彼は他の女と話すのだろうか。
何故、彼は私以外の女と楽しそうにするのだろうか。
何故、彼は私以外の女を見るのだろうか。
何故、なぜ、ナゼ?
ドウシタラ、カレハ、ワタシダケヲミテクレルノ?
仕方ないもんね、だって嫉妬させた彼が悪いんだもん。
私は放課後、下駄箱に手紙を入れて、彼を暗い公園に呼び出した。
待たせた?と、制服姿で聞く彼。電灯一つだけで薄暗い。
けれど、それでも恰好いい。
こんな彼の彼女だなんて、私は本当に幸せだ。
「あ、もしかして告白とか?」
なんて、私に尋ねた彼が可笑しかった。
告白なんて、もうずいぶん前に彼が私にしたのに。
まあ、彼が頼まなくても「好き」なんて、いつでも言ってあげるけどね。
「違うの」
「あそ、良かったー。俺、お前みたいな暗い奴苦手なんだよね。つか、何の用?」
またまた彼の得意な冗談。面白いが少し悪い冗談だ。
不思議そうに私を見る彼は、とても可愛い。今直ぐ抱きしめてあげたいくらいだ。
でも、今は駄目。
「あのね、あなた、いつも他の女と仲良くしてるでしょ?」
「他って、お前以外ってこと?」
また、当たり前なこと聞いて、冗談も言いすぎだろう。
でも彼だから、許してあげる。大好きな彼だものね。
「そう。あんな不細工どもなんか、見ないでよ。私だけを見て?」
「は?何言ってんの?つか、お前より不細工じゃねぇよ」
「もう、いつもの冗談はやめてよ。私とあなたはこんなに愛しあってるのに」
「だから、お前キモいよ」
おっと、少し口論になりそうだった。
微妙なすれ違いで別れちゃうカップルも多いんだから。
まあ彼と私の仲は、こんな喧嘩だけじゃ切れないけどね。
そろそろ、本題に入らなきゃ。
「私以外の女を見ない、見れないようにしてあげる。嬉しいでしょ?」
「何言ってんだよ、警察呼ぶぞ!!」
私が近づくと彼は声を荒げた。
もう、本当にいっつも強がりなんだから。
足が震えちゃってる・・・。可愛い!!
「もう、その目で他の女は見させない。嬉しい?そうでしょ?」
「ちょ・・・やめ、ろよ・・・・・・・。まじで警察呼ぶぞ?」
「素直になって良いんだよ?」
じりじりと近づく私を見て、彼は後ろに下がる。
ああ、もう!!本当に可愛いんだから。体が震えてる!!
暗闇が怖いのかしら?
「ほら、可愛いあなたの目、他の女を見れないところに置いてあげる」
「や、やめろ!!・・・・・い、痛ッ・・・痛い、痛、い・・・・ギャァァアァァァァアァァァアァァァ!!!!」
嗚呼、悲鳴までもが愛らしい。
私にまで飛んできた血が、愛しい。
ぐちゃり、という彼の音までもが可愛らしい。
彼のことを好きすぎて、もうどうにかなっちゃいそう!!
「あなたもだよね?」
私は鍵のかかった自室の机に向かい、にこりと微笑む。
机の上には綺麗なビンに入った彼の目。
もう、本当に、何で今まで気がつかなかったんだろうか。
これで、良いんだ。
これで彼は私以外の女を見なくて済むし、いつでも私を見ていられる。
『今朝、○×公園に目玉を抜き取られた少年の遺体を発見しました。今、警察が――・・・』
「あら、物騒ね、私も気をつけなきゃ」
私はそう言って、”彼”に優しく笑いかけた。
「え、俺が守ってやるって?嬉しいな」
私は満面の笑みを浮かべながら彼を抱きしめた。
私は彼だけを見ていて、彼は私だけを見てくれていて。
これ以上嬉しいことはないだろう。
「幸せすぎて、怖いくらい!!」
アア、ナンテ幸セナ日々ナノダロウ
end.
説明 | ||
狂気に囚われた少女。 そんな少女に愛された少年。 世界一の幸せな人に、少女はなった。 そのための、犠牲など、少女は知らない。 |
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コメント | ||
焔華 來冥さま>愛は不思議。その通りです。彼女にとっての幸せは他人と少しずれてしまったみたいです。このような作品を素敵だと言っていただけ、嬉しいです^^(xx凛) 華詩さま>そうですね。愛はいつでも紙一重ですから・・・。グロ系というより、シリアス系を目指したので、寂しいと感じていただけ何よりです。(xx凛) 愛って不思議ですね。そして、幸せの価値観も人それぞれ。素敵な作品でした。(焔華 來冥) 紙一重の愛なんでしょうね。ちょっと寂しい気がします。(華詩) |
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