いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第百三話 何を言うか!
高志視点。
「…ん」
気が付くとそこは白い部屋の中だった。
ここは…。
「…医務室。また、俺は気を失って…」
思えば闇の書事件の頃からお世話になっている。特に訓練中はよく利用させてもらっているベッドだ。
ほぼ指定席ならぬ指定寝床になったベッドで目が覚めた俺は体に残る疲労感で今までの事を思いだしていた。
確か、システムU−Dにピリオド・ブレイカ―を打ちこんで、その後…。
―…ス、…ニスー
そうか、俺はまたアサキムに負けたのか。それでも生きているのは…。
―リニスリニスリニスリニスリニス…―
…俺、は?
―リニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニスリニス…―
怖っ!?
何かが!何かが念仏のように連呼している声が聞こえるんですけど!?
リニスって、なに!?
声の発信元を探してみると病室の扉の向こうから足音と共にリニスを連呼する声も近づいてくる。
扉が開くと白を基調とした家庭教師然とした可愛いお姉さんが病室に入ってきた。
ぶっちゃけ超好みです!リインフォースとタメを張れるくらいに美人だった。
思いっきり膝枕してもらいたいです。頭をいい子いい子されながら眠れるというのなら俺はもう二度と目覚めなくてもいい!いや、やっぱり起きる!何回でもして欲しいから!
「ようやく目が覚めましたね…」
「………」
「…どうかしましたか?」
「…ああ、そうか」
「え?」
俺に優しく微笑みかけるお姉さん。
そんなお姉さんが俺に微笑みかける理由は一つ。
「俺、死んだのか」
目の前のお姉さんは俺を天国へ連れて行くために使わされた天使ですね。
パトラッシュはいないけれどお姉さん一人で十分すぎるほどです!それともアルフが俺のパトラッシュ?
「またかい!高志君!」
おかしい。家康。じゃなかった。はやての声が聞こえた。
と、はやてがお姉さんの隣から出てくると後ろからアルフとフェイトがお姉さんの腰の回りにまとわりついてリニスリニスと連呼していた。
「え、どういう状況か説明してほしいんだけど…?」
リニス視点。
私はフェイトとアルフの頭を撫でながら現『傷だらけの獅子』である、高志君に先程までの事情を説明した。
「あの後、あなたは意識を失って、半日眠りっぱなしだったんですよ」
「あの状況でよくアサキムに勝てましたね…」
私もそう思います。でも、あなたがシステムU―D。ユーリを助けなければもっと確実にアサキムを倒せたと思いますよ。
私がそう言うと顔を歪ませながらそれを否定した。
救えるのなら救う。
それが自分の命と引き換えでも…。
…やはり、この子は自分の命を軽んじていますね。貴方が死んだら悲しむ人が多く出てきますよ。
だけど、それは今。自分の腰にまとわりついているフェイトにも言えることですしね。
「…でも、そのお蔭で私達はここにいるんや。改めて、ありがとうな」
はやてさんが『傷だらけの獅子』に優しく微笑む。
と、それに反応したのか…。
「…家康」
「…そこ。はやて。と『私の名前』言うべきところじゃないんか」
「…すまん。まだ疲れているのか言い慣れている方で喋っちまう」
がくっと顔を下に向けてお互いににぃっと悪戯者同士の笑顔で喋る二人を見て、私は早めに本題に入ることにする。
彼は今、((疲れている|・・・・・))。
警戒心も薄れているだろう。聞き出すのなら今だ。
「貴方はあの時、((死んでもいい|・・・・・・))。いや、((死んでも構わない|・・・・・・・・))と思いましたね」
「((まあね|・・・))」
「「「…え?」」」
「…やはり。そうでしたか」
「え、え〜と…」
目の前で『傷だらけの獅子』は私の質問に狼狽えを見せ、フェイトやアルフ。はやてさんはその仕草に驚きを見せた。
「それってどういうことだい!」
「…あ〜、アルフみたいに皆を死んでも守るって意味で」
「それをあんな簡単に流せるほど軽いもんやないやろ!」
「それもそうだけど…」
「私達と一緒にいるって約束したよね!」
最後にフェイトが私の所から離れてベッドにかけられた布団の上から彼の体に触れる。その瞬間、苦悶の表情を浮かび上がらせながら低いうめき声を上げる。
「っ?!いっ…!つぅうううう…」
「…あっ」
その動作を見て、フェイトは慌てて手を布団の上からどけた。
マグナモードの後遺症。
ここまで酷くなるものなんですね。
彼の全身の殆どは包帯を巻きつけられている。
大きな怪我をしたわけでは無い。彼の体は今、全身が過敏に反応する神経だけの状態になっていた。
まるで全身で『痛み』を欲するかのように…。
今、彼にまかれている包帯は彼の皮膚代わりという事だ。
彼がまともに動けるようになるには後どれだけの時間がいるのか…。
「ご、ごめん!タカシ!」
「い、いや、だ、だいじょ、うぶ。だか、ら…」
涙目で答えても説得力はないですよ。
「で、でも…」
「尋常な痛がりかたやないで!」
「いつも、あの((ガンレオン|鎧))の中ではそんなにも痛がっていたのかい!?」
「大丈、夫。だから…」
コウッ。
と、彼の言葉に応えるかのように彼の体から緑色の光が溢れ出す。これは…。
「…伊達に『傷だらけの獅子』のスフィアリアクターじゃないってことだ」(一応、これで最低限の行動は出来る。…かな?)
「…本当に?本当に大丈夫なのかい?」
治癒の光を出し終えた彼の様子を見てアルフは未だに心配しながら彼の様子を覗う。
「…一応。でも、今日はもう勘弁してほしいかな。だから…」
「いやや」
「駄目だよ」
「全部話せ」
あらら、手厳しい。
でも、それだけ目の前の獅子は無茶をするという事でしょうね。
「大丈夫なんでしょう?だったら話してもらうわ」
プレシア。いつの間に…。
プレシアだけじゃない。
フェイトの友達のなのはさん。ユーノ君。この時空航行船アースラの艦長殿に執務官。ヴォルケンリッターの皆さんまで。
「何もかも包み隠さず」
「話してもらおうか」
「…『放浪者』。というものも話してもらえないか?同じスフィアリアクターなのだから」
それは私も気になりますね。
私も気がつけば『揺れる天秤』を持っていますからね…。
と、考えていると。
「あ、お兄ちゃん起きた?」
「…フェイトがまた増えた。プレシアの溢れる愛情は((愛の結晶|子ども))を増やすというのか」
何を言っているんですか?まだ、疲れているんですか。あれはレヴィですよ。
「待って、レヴィちゃん」
「うう〜、フェイトママが三人?なのはママが二人〜?」
「しっかりしてくださいヴィヴィオさん」
「それを言ったら、はやて指令が二人に…」
「あんな小烏と我を一緒にするな!」
「我々はオリジナルを凌駕します。少なくてもあれ以上です」
「あれってどういうことや、シュテルちゃん!」
「あれ以上…」
「トーマッ、しっかり!」
なんだか、にぎやかになってきましたね。
ここは本当に病室なんでしょうか?
トーマさん達は未来から来たと言っていますが…。よほど怖い目にあって来たんですね。はやてさんもほどほどにしてあげないと…。
レヴィが病室に入ってきたのを皮切りに他の皆も入ってきた。
「レヴィ。どこでそんな喋り方を?」
「うい?アリシアがずっとそう言っていたから?」
そう言いながらレヴィはベッドの向こう側を覗うように覗き込む。そこには…。
「………にゃう」
ベッドで寝かされている高志の布団の中から金色の髪を持ったフェイトの姉。
「…アリシア」
アリシアが布団の下に隠れていたかのように高志の包帯で包まれていない左手をしっかりとつかんで離さないで寝入っていた。
「治療の時も包帯を巻く時も、何故かアリシアが触っても貴方は痛がらなかったからアリシアだけはあなたの傍に置いていたのよ。まるで、この子だけは受け入れるみたいに…」
そう言いながらプレシアはアリシアの頭を撫でながら『傷だらけの獅子』の頬を撫でる。
私が知っているプレシアとはまるで別人のような…。いえ、これが本当の彼女だったんでしょう。
「…んう。お兄ちゃん」
プレシアに抱きしめられているアリシアは高志の手を離すまいとさらに力を込める。
それとは別に布団の端を掴んでいた。
「んん。タカ。聞いてもいるだろうがアサキムはアルカンシェルで吹き飛ばした。が、それでも不安な点が残っている。特に『放浪者』。そして、アサキムは君もそこに『落ちていく』という意味を。…包み隠さず喋ってもらおうか」
「…あ〜、それは俺もよくわからないんだけど」
歯切れ悪く高志はクロノの質問をかわそうとする。が、
「…嘘ね。タカ。私もあなたから『放浪者』の事は聞いていないわよ。それでも貴方はそれに心当たりがある」
「そんな事は…」
「あるよね。…なんとなくわかるよ。高志君、皆に何か隠しているでしょ」
…なのはさん?
高志視点。
「私も、ね。お父さんが大怪我した時があって一人ぼっちだった頃があるけど、今の高志君はその時の私に似ているから…。なんとなくわかるんだよ」
あ〜、やばい。
この空気はやばい。このままだと『放浪者』のことを話しちゃう。
『放浪者』。アサキムみたいに不死になったという訳ではないけど、俺はいつでも次元転移する恐れがある。
『気がつけば、そこは異世界だった』みたいな?
この世界では次元漂流者と言うらしいが俺はいつそうなってもおかしくはない。
それにスティグマ。
『傷だらけの獅子』のメーターは7388/10000。あの戦いで約四分の一を消費していた。これが0になるまでは俺も『放浪者』になることはないし、俺以外の皆にスティグマを刻むことはない。
スティグマを刻まれた者もまた『放浪者』になる。
皆を巻き込む訳にはいかない。
話せばお人好しの皆はどうにかしようと俺に関わってくるだろう。そうすれば皆にもスティグマを刻みかねない。
リインフォースの事はどうにかできると『傷だらけの獅子』も言っていた。今は眠っているのか返事はないけど…。
「…高志君。包み隠さず話し」
「…にゅう」
なのはが更に俺に問いかけようと近づいてきたその瞬間に…。
はらり。
と、音を立てて俺の布団が取られる。
アリシアが自分の身を丸めようとした仕草に捕まれていた布団が俺の上から取られる。
「「「「なっ?!」」」」
「「「「ひゃっ?!」」」」
途端にとられた布団。正確には布団があった場所に視点が移る。
そこには俺は認めたくないものがあった。
いや、なくてはならない物があったし、無くなられても嫌だ。だが…。
俺の全身は殆どが包帯でぐるぐる巻きだ。特に上半身は殆どミイラと言ってもいい状態だ。足もふくらはぎ。ふとももにも包帯がまかれていた。が、腰や股間の部分には湿布が張られていただけ。
「…?王様?これなに?これ、僕達にはついてないよね?」
つんつん。
「そんな物をつんつんしちゃ駄目です!」
その所為でか、俺は全裸に包帯といった状態だった。
特に股間部分は男にとって大事なものがある。大きな怪我も無かったので、薬などのしみついた包帯はまかれていなかった。
あまりの衝撃展開に数秒。魂がどっかに言っていた俺はレヴィにつんつんされた感触を…。
うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!??!!?
描写したくないぃいいいいいっ!!
慌てて布団で隠すが時すでに遅し!
「「「「「…あ、そのぉ」」」」」
女性陣からは顔を赤められながら顔をそむけられ、男性陣からはまるでボロボロの怪我人(まあ、実際そうだけれど)を扱うかのような目で哀れみの目で見られた。
見たんだ!皆、見たんだ!!
「なんで?」
「駄目ったら駄目です!」
「じゃあ、何もかも包み隠さず話してもらおうか」
レヴィに向かって怒鳴るが、彼女の方は逆に質問をしてくる。というか、こんな状態では答えられる物も答えきれない。
「まあ…。ナニは隠してませんでしたよね」
ナニを言うか!この猫耳さん!?
「包まれていたけれど…」
プレシア?!
「え、何が?」
もうナニも聞こうとしないでフェイト!
「…水餃子とつみれを。おかわりぃ〜」
どうしてピンポイントで、((皮|・))がある料理と無い料理を夢の中で求めるんだアリシア!
「………『放浪者』について話を」
話題を変えようという狙いと自分の職務をこなそうとするクロノだったが…。
「こんな状況で話せるかぁああああああ!!」
俺の心はボロボロだよ!
この後フローリアン姉妹も「ナニごと!?」と駆けつけた所為でか…。
我等の『傷だらけの獅子』はベッドの上で巨大な布団の団子になっていた。
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第百三話 何を言うか! | ||
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皆さんの声に答えて!という訳ではありませんが…。次回は温泉編になります。そこでうちの『傷だらけの獅子』を癒したいと思います。(たかB) 流石にぞんざいすぎる気がするんだァ・・・もうちょっと報われてくれまじで(GDGD3) タカシ・・・わかる。判るぞその辛さ・・・同士よ!(見られた事に対して。)(孝(たか)) マグナモードとP・Bで四分の一だからリインさんにP・Bしたら半年あるかないかか・・・しかしこの落ちであるwww(おちぇら) ・・・高志の扱いがぞんざい過ぎて泣けてくるな。あれだけ頑張ったんだからもう少し報われても良いだろうに。(俊) 相変わらず戦いが終わると真面目になれない、それが俺等の現傷だらけの獅子! 戦闘で身体が傷だらけになって終わると精神が傷だらけになる…なんちゅうサイクルや…。(神薙) |
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