〜貴方の笑顔のために〜 Episode 23 ゆれる魏 |
一刀が呉で知らせを聞く一日前の魏、
すでに蜀から一日前に知らせを受け、皆が王座の間に集まっていた。
〜華琳視点〜
ありえないわ、そんなこと。
私は、いや、私たちは今、ありえない状況に面している。
昨日、魏にむかって、軍が侵攻中という知らせがあった。
三国同盟を組んだ後も、北方の軍と衝突したことは少なからずあるけれど。
今回は訳が違う。
彼らは総じて、白の十文字、一刀の旗を掲げている。
その報告に誰もが驚きの表情をしていた。
一年と半年だ、もうそれくらいがたつ。彼が消えてから。
それでも、私たちは彼の存在を一度足りとして忘れたことはない。
そして今回のことは、ずっと彼の帰りを待っていた魏にとっては何とも言えない報告だった。
「華琳様、かくにんしてまいります!」
「隊長なの・・ですか?私も行かせてください。」
そんな報告を受けた時真っ先にそう言ったのが春蘭と凪だった。
喜びと怒りがどちらもまざったような、そんな表情をしていた。
「春蘭!凪、まちなさい!」
「ですが!華琳様!」
「敵の数も不明、敵の正体も不明、そんなことで突撃の許可をだせるわけがないわ。
それとも、私が無駄に仲間を死地におくる愚かな王に見えるのかしら」
「ですがっ!」
「では聞くけど。
もし、もしもよ。敵が一刀だったら、春蘭と凪は彼に刀を向けることができるのかしら?」
「そんなこと、敵が一刀などありえるわけがありません!」
「そうです、華琳様。隊長が私たちに刀をむけるなど、絶対にありません」
「わかっているわ。けれど、万が一ってこともある。」
まずいわね。私は、敵は一刀じゃないとほぼ確信しているけれど、
兵たちに動揺を与えるのは十分だわ。それほど、天の御使いの名は強い。
ここにいる者たちでさえ、動揺しているもの。
天の御使いの名が兵全体に与えてしまう影響はおおきい。
「とにかく、みんなおちつきなさい。時間がたてばわかることよ」
そんな私の言葉にみなは頷いた。
「今は現状を解決するのが優先だわ。桂花、状況を。」
「はい、華琳様。 ただ今、五胡25万の軍勢が蜀に侵攻中。
数日もたたないうちに衝突するのは必至かと。
そして、天の御使い、北郷一刀を名乗るものがただ今魏に侵攻中。
敵数7万。」
「敵数が分かったのね」
「は、先ほど敵をとらえた斥候部隊の報告です。」
7万、か。規模は大きいけれどこれくらいであるならばなんとかなる、わね。
それより、問題はやはり蜀か。
正直言って、蜀の軍全体の数はうわまわるけれど、相手があの五胡だと、油断もできない。
そして、蜀だけに戦わせるわけにはいかない。
「そして、呉で反乱の兆しあり。 呉から救援要請が届いております。
国境近くでの守りを固めるようにと。
これに対し、蜀は関羽を荊州に派遣しました。」
呉、か。やはり反乱か。といってもなんでこの時期なのよ・・
いくらなんでも時期がうまくかぶりすぎている。
そして、なぜ関羽一人が?
「関羽を?なぜ?」
「おそらくは総軍の人員を五胡との対決に回すためかと。
関羽軍といっても、派遣されたのは数少なく、一万にも至りません。
おそらくは関羽が名乗り上げたのでしょう。
関羽ほどの武将が守りにいれば、後ろを心配することなく戦えるかと。」
なるほど。あの関羽なら、みんなからの信用もあつい。
「そう。」
「では、呉への私たちからの派遣は霞にお願いするわ」
「え、ちょいまちや、華琳」
「なに?なにか不満があるのかしら?」
「今、一刀がいるかもしれん情報が入ってるんや。うちもここに残りたい。」
「だめよ。なにも、いじわるで言っているのではないわ。
私も、蜀と同じ判断をしたまでよ。そこらの武将を何人かおくるより、霞、
あなたを送ったほうが、よほど安心ができるというものよ。」
「ほんまかいな、それ。
でも、まあ、愛紗がそうしているならうちもそうせざるおえんな。
ほな、いってくるわ。」
「それから、蜀への派遣だけど、蜀は25万の敵と当たるわ。救援は必至。
蜀には秋蘭を筆頭に稟、凪、真桜、沙和にいってもらうわ。
そして、ここに残るのは、私をはじめ、春蘭、桂花、風、流琉、季衣。
以上よ。」
「御意。」
こうして、それぞれ、自分のするべきことをするために、王座の間をでていった。
ふう、とりあえず、ね。
これから、なにがあるのかはわからない。けれど、あなたが帰る場所は
私は絶対に守って見せる。一刀。
それが、私が私にした約束だから。
「だいじょうぶですか〜?華琳様」
そんなことを考えていると風がそっと声をかけてきた。
はあ、この子はなんでこんな時ものんびりなのかしら。
でも、風は風なりに気を使ってくれていることを私は知っている。
「ええ、風。大丈夫よ。それより風。今回の件どうみる?」
「それは、種馬野郎のことをきいているのですか〜?
それとも、いくらなんでも時期がかぶりすぎていることへの
違和感ですか〜?」
はぁ、この子は・・でも、さすが、風ね。物事の本質を見抜いている。
私が聞きたいことをちゃんとしっている。
「どっちも、かしらね。」
「もしも、ですよ〜」
私の質問にそんなように、風がかぶりをふる。
そのためらいすらも私には、風らしさが感じられた。
「なに、続けなさい」
「はい。すべての物事が、一つを中心に動いている、としたらどうでしょうか?」
そして、やはり彼女はするどい。
私が考えていたことをこうも簡単に私にいってみてみせる。
「と、いうと?」
「五胡、天の御使い、呉の反乱、すべてが一つの勢力下にまとまっている、
としたらせつめいがつきますね〜」
そうだ。それなら、この異常事態に説明がつく。
三国同盟ののち、雪蓮は呉での反乱を警戒していた様子だった。
それは、そうだ。私も呉、蜀では同盟に対しての反乱が起こるであろうと思っていた。
しかし、呉では不気味なほどに反乱という反乱が一つも起こっていない。
それは、いいことなのかもしれないが、そんな簡単に果たして話は進むのだろう?
呉は、友としての結束というよりは、雪蓮を中心に豪族がまとまった
という感じがある。
そう、一から始めた私や、桃香と違って、雪蓮の場合はそこにもう力があったのだ。
その勢力は正直言って、呉での3分の1の勢力に値する。
それが、もし仮に寝返ったとしたら・・・
私はそこまで考えて、風との話をすすめる。
「つまり、天の御使いの名のもとにこの三国に反する勢力が立ち上がったと。」
「まあ、そんなところですね〜、それかもしたら、同盟という可能性もありますけど〜」
なるほど。そういうこともあるわね。
「それは、どういうことかしら?」
「五胡、北方の民族、そして呉の反乱分子が一つにまとまるのはむずかしいことです。
お互い、違ったところも多いですし。
それに比べて、同盟ということであれば、同じ敵をもつ者同士、
一時的に仲間になるという考えでまとまることができます〜」
「そう、よね」
確かに。でも、同盟ということになると厄介だ。なぜなら、ここでいう同盟は
仲間意識がない。
私たちのいわゆる反董卓連合の茶番劇と一緒なのだ。
大将といわれるものは存在するが、
大将がつぶれただけで何かが変わるというわけではない。
各勢力がそれぞれ違った思考を持っているのだから。
「そうなると、やっかいね。」
「そうですね〜」
「それで、風。天の御使いについてはどうかしら?」
私はなにげなく、一番気にかかる質問をそう問いかけた。
「お兄さんではない、と言いたいところですが、証拠がない以上、
確信を持って言えません。それでも、万が一お兄さんだったら
なにを考えているんでしょうかね〜」
「さあ、ね。」
そう、確かに一刀ではないといいたいところだけれど、証拠がない。
早い話が実際に戦ってみればいいということになるが、
まだそれはできない。
一刀だったら・・・
私はそんな言葉が頭にうかぶ。
彼は何のためにそこにいるのだろうか?
そして私は果たして、彼に刀を向けることができるのであろうか?
「華琳様、」
そこで、先ほどまで、眠たそうに話していた風の目がしっかりと開き、
私を捕らえる。
「もし、ですよ。お兄さんが本気で立ち向かってきたら、」
「なによ」
「華琳様はお兄さんを殺せますか?」
沈黙が流れる。
つらい質問だった。正直、答えるのにためらってしまったのだ。
でも、私は風にしっかり目をむけて答える。
「そうね。これは華琳として、答えてもいいのかしら?」
「かまいませんよ〜」
「風。私は、・・・・・・・・・・」
そう答えた時、風は一瞬驚きの表情を表したが、その後には笑っていた。
「そう、ですか。やっぱり、風は華琳様にお仕えすることが
できて、よかったのですよ〜」
「そう?」
私は言った答えに後悔はしていない。それは“私”の心からの答えだったから。
「はい」
「もう、みんなは準備ができているかしら?」
「そうですね〜。昨日のうちに蜀からの連絡は入ってましね〜。
もう先ほどの時点では準備は完了していたのかと。
すでに、蜀への派遣組はもう華琳様の声があればいく準備はできています。
霞ちゃんのほうももう準備完了かと。」
「そう、さすがね。では、私はそれぞれに出陣の声をかけてくるわ」
「はい〜」
そういって私は王座の間をあとにした。
私の声を待っていたのか、外には秋蘭、そして霞がたっていた。
「もう、二人とも準備はできているみたいね」
さすがだ、昨日の知らせを受け、私から命が下る前にはもうすでに
出陣の準備ができていたのであろう。
「はっ、華琳様の命があればいつでも出陣できます」
「あたりまえや、いくら呉や蜀との戦いがおわったって、そこまで
にぶっているわけないで」
「そうね、それでこそこの曹操の将たちだわ」
「秋蘭、今回の件、いろいろ引っかかることはあるようでしょうが、
とりあえず今は五胡のことに目を向けなさい。
勢力的には蜀と魏を合わせればはるかにこちらが上回るけれど、
準備をしておくことに悪いことはない。
そして、なんとしてでも、蜀と魏の被害を最低限におさえるのよ。」
「御意」
「では、いきなさい。五胡の者どもに、魏に曹操の片腕、夏候淵ありと、
知らしめてやりなさい」
「はっ!」
そう私がいうと、秋蘭は矢のごとく、私の前から姿を消した。
「いいこといいおるなあ、華琳」
「あら、そうかしら。」
「うちにはなにか、ないんか、こう、気合がぐっとわいてくる言葉は」
「呉の反乱、勢力はいまだわからない」
「そう、やな」
「私たちは、一刀の姿を見極めてくるわ。そのためには、あなたが必要よ。
後ろ、任せたわよ。霞。」
「は、そういわれると、この張遼。やる気しかわいてこーへん。
華琳、前は任せたるで」
「当り前よ」
そういうと霞も風のごとく目の前から姿を消した。
私は歩き出す。自分の道をゆくために。
さあ、始めましょう。
この曹孟徳の前に刀をあげたこと、身に染みるまで後悔させてあげるわ。
そして、一刀、もしくは一刀の名をけがすものよ。
待っていなさい。
そして、私は立てかけた絶を持つ。
曹孟徳、今、参る。
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一刀が呉で報告を聞く一日前の魏、ありえない情報に皆は驚きの表情を表していた。 | ||
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コメント | ||
ロドリゲス様、 コメントありがとうございます!! そういってもらえると、うれしいです。 (華)まあ、たのしみにしていなさい!(白雷) nao様、そうですね〜、 華琳は何て答えたのか、楽しみにしていてください。 (黒幕) もう、この地に曹の旗がたなびくことなどない。(白雷) 初コメです。面白すぎで一気に読んでしまいました。華琳の覚悟が気になる展開ですね。展開が楽しみすぎますww(ロドリゲス) 華琳は風の質問になんて答えたか気になる〜覇王としてなら殺せるっていうだろうし華琳としてなら殺せないだろうし〜そして黒幕は誰だ!(nao) 不知火 観珪 様、一刀君ははたしてどういう行動にでるのでしょうか (華) 一刀ならくるにきまってるじゃないの!それに不知火、恋姫たちってなんなの?一刀はわたしのものなんだから!(白雷) 本郷刃様、そうですね〜、やはり一刀が消えた時の衝撃のほうがおおきかかったでしょうから。 さて、だれなのでしょうか??(白雷) 一刀くん、早く……っ! 天の御使いを語る者が何者かはわかりませんが、これはある意味、恋姫たちに火をつける結果にしかならないでしょうなww(神余 雛) ついに騒乱へと突き進みますか・・・取り敢えず、魏は変わりなくてホッとしました、果たして敵の正体とは・・・?(本郷 刃) |
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