魔法少女リリカルなのは −九番目の熾天使−
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 そしてあれから四日が経った。

 

「今日で何ページまで蒐集できた?」

 

「煉のおかげで508ページまで溜まったぞ」

 

 俺とシグナムは居間で闇の書のページ数を確認した。それに伴って変化も現れた。

 

「そうか。順調に事は進んでいるな。……で、こいつはどうにかならんのか?」

 

「……妙に気に入られているな」

 

 そう、俺の横を闇の書が忙しなく浮遊しているのだ。まるで意志があるかのように。

 

 400ページを超えた辺りから変化は起きた。今まではただの本だったのだが、急に自分で浮遊し、俺の後を付いていったり、はやての後を付いていったりしている。

 

 最初こそ驚いたが、今ではこの本に愛嬌すら感じているのが本音だ。

 

「ところで前々から思っていたのだが、ヴォルケンリッター、守護騎士というのはお前達四人だけなのか? まだこの本の中に閉じ込められたりとかは……?」

 

「いや、それは無い。守護騎士というのは私達を含めて四人だけだ。だが、闇の書には管制人格というプログラムがある」

 

「……管制人格?」

 

 管制っていうからには恐らくは闇の書を管理する何かなのだろう。

 

「ああ。前に話したと思うが、私達は純粋な生命ではない。守護騎士システムというもので出来たプログラムなようなものだ」

 

 ふむ、それは初めて会った時に聞いたから問題無い。

 

「管制人格というのは守護騎士システム及び闇の書の全てを管理するプログラムだ。故に管制人格と呼ばれる。勿論、私達同様に自我がある」

 

 なるほどな。つまり、この本も生きているということになるのか?

 

「なるほど。故に自立行動している訳か……」

 

「ああ。ただ、今はまだ起動していないので明確な意志はない。意識レベルは生まれたばかりの雛と思えば良い」

 

 たしかに、基本的には浮いて動き回るか俺とはやての後を付いて回るかだけだしな。

 

「それで、こいつはお前達のように人の姿には成れないのか?」

 

 俺が纏わり付いている闇の書の背表紙を優しく撫でると、嬉しそうに身震いした。

 

「主の承認があると起動するようになっている」

 

「そっか……。まぁ、このまま本でいるよりかは人になった方が楽しめるし、はやてに頼んでみるか」

 

「うむ。私もそう思う」

 

 俺達はそう決めるとシャマルを連れてすぐにはやての部屋に向かう。

 

 

「なんやよう分からんけど、要は家族が増えるって事やろ? なら問題無いで!」

 

 はやてに事情を説明すると快く承諾してくれた。そして、シャマルに起動の呪文を教えて貰い、唱えた。すると、闇の書が眩い光を放ち、魔法陣を展開する。

 

 そして、光が部屋全体を包み込む。そして光が収まると目の前に美しい銀髪に深紅の瞳の女性が跪いていた。服装は最初に会ったシグナム達のようなものだ。

 

「……お呼びにより参上致しました」

 

 透き通るような凜とした声を発し尚も跪き続ける管制人格。

 

「そんな跪かんでええよ。家ではそんな仰らしいことは禁止や」

 

「……承知しました」

 

「それと、貴女の名前は何て言うん?」

 

「……私に名前はありません。強いて言えば管制人格とでもお呼び下さい」

 

 名前が無いのか? 今までの主からは名前を貰わなかった事なのか? シグナム達はあるのに……何故?

 

「えっ、そうなん? う〜ん……困ったなぁ……。あっ! それならウチが付けたろか?」

 

「私に名前なんて……そんな恐れ多いこと……」

 

「そんな気にせんでええよ。で、名前付けてもええの?」

 

「……はい」

 

 許可が下りるとはやては嬉しそうにしてその名前を言った。 

 

「……うん……リィンフォース、今日から貴女はリィンフォースや!」

 

 リィンフォース……何て意味だ?

 

「祝福の風って意味や! どうや、中々センスええやろ?」

 

 祝福の風……中々良い響きな上に彼女にぴったりじゃないか。

 

「ああ、確かに良いセンスはしているな。シグナムはどう思う?」

 

「私も煉と同じ意見です、主はやて」

 

「私もよ、はやてちゃん」

 

「くすくすっ……せやろ?」

 

 だが、肝心なリィンフォースはあまり浮かない顔をしていた。だが、はやてが視線を戻すとすぐに無表情になる。 

 

「……身に余る光栄と名前ですが、謹んで承ります、我が主」

 

「もう! せやから堅苦しいのは禁止やって」

 

「はい……」

 

 こうして俺達に新しい家族が増えた。

 

 だが、気になることがある。それは彼女の浮かない表情だ。どうも俺しか気づいてないようだが、リィンフォース……リィンは顕現した時からずっと暗かった。ただ、皆の前ではいつも通りだったが、一人になると途端に暗くなる。

 

 名前が無い事といい表情といい……彼女は何か隠しているのではないだろうか? それも俺達……いや、はやてにとって悪い事を。

 

「……ふぅ、考えても仕方ないか? だが……」

 

 俺は家の屋根で寝転がりながらそう漏らした。

 

 未だに俺は決断しきれないでいた。家族を疑うなど、してはならない行為だと俺は思う。

 

 だが、本来であれば疑わねばならないだろう。以前の俺なら真っ先に疑い、問いただしただろう。

 

「……どうしたものかね」

 

 そして俺が溜息を吐いて降りようかと思った時、後ろから声を掛けられた。

 

「ここにいたのか?」

 

「……リィン?」

 

「シグナムが急にいなくなったと言って心配していたぞ?」

 

 まったくシグナムは……。姉バカにも程がある。俺はガキじゃ……って、今はガキか。

 

「姉バカめ……」

 

「そう言うな。彼女があそこまで他人を気に掛けるなど今までに無かったのだ。甘受してやれ」

 

「……まあ、それなら仕方ない」

 

 俺は再び寝転がる。リィンは俺の隣に座った。

 

「…………私に訊きたい事があるのだろう?」

 

「……ああ」 

 

 彼女も自覚があったのか、俺にそう聞いてきた。

 

「リィン……お前、何か隠してないか?」

 

 俺は首だけ動かし、リィンの目を見て訊いた。

 

「そう……だな。お前には……言った方がいいのかもしれん」

 

 そう言い、彼女は俺に向き合った。俺もそれに合わせて体を起こし、話を聞いた。

 

 だが、その内容は残酷な内容だった。

 

「バカな……なら、今俺達がやっていることは無駄なのか!?」

 

「……ああ」

 

 リィンフォースが語ったのは『闇の書』は正式名では無く、『夜天の書』というのが本当の名前だと言う事。そして、今まで自分達がしてきたこと。そして、歴代の『夜天の書』の主がどうなったか……。

 

「なら……はやてはどうすれば助かる? このままじゃどの道、麻痺が全身に広がって死ぬ事になる!」

 

 『夜天の書』が完成すれば防衛プログラムというものが暴走し、破壊行動をしてしまう。止める術は無く、主の魔力が尽きるまで破壊し続ける。そうなればはやては死んでしまう。だが、蒐集を止めてもはやては死ぬ。

 

「…………どうにも出来ないのだ」

 

「…………」

 

 ……いや、諦められない。ここで諦めてはやてを見捨てる訳にはいかない。俺はまだ恩を返せていないんだ!

 

「……なあ、リィン? その核というのを破壊したら……はやては助かるんじゃないか?」

 

 俺が見出した唯一の解決策。それが防衛プログラムの破壊だ。訊くところによると、『夜天の書』には核と言うものがある。それを破壊すればはやては助かるのではないか?

 

「無理だ。核は防衛プログラムの中に守られている。それに、防衛プログラムは強力な結界を張る。そこら辺の砲撃魔法程度では傷一つ付きはしない。それに……」

 

 リィンは俯いて最悪な事を告げた。

 

「核を破壊すればシグナム達、ヴォルケンリッターも消える事になる。恐らく、主はそれを望まないだろう……。それに、お前は魔法を全くと言って良いほど使えない。その兵器では主も死んでしまう」

 

 俺は衝撃を受けた。どうやっても全員が助かる方法なんて無いことに……。だけど、それでも諦められない。

 

「俺は……まだ諦めない。色々考えてみる。だが……もし他に方法が見つからなかった場合は……」

 

 本当に……どうしても方法が見つからなかったら……俺がこの手ではやてを……。

 

「ああ、私は構わない。出来れば私もこの永遠の苦しみから解放されたい。だが、シグナム達はどうするのだ?」

 

 ……本当は言いたくないが、仕方が無い。

 

「俺から話しをする。その時はリィンも同席して欲しい。だが、はやてには……」

 

「無論、話すつもりは無い。知る必要は……無いのだ」

 

 知ったらアイツは壊れてしまう。なら、せめて死ぬ瞬間まで知らない方が良い。

 

 そして俺達は真実をシグナム達に告げた。

 

 シグナム達は過去を覚えておらず、衝撃を受けたようだった。

 

 そして、はやてを守れない事と共に居られない事に涙した。

 

 俺は最後まで諦めずに方法を探す事と、それでもダメな時の事を話し、彼等は承諾してくれた。

 

 出来ればはやてもシグナム達も助けたい。

 

 だから、最後まで諦めずに方法を探す。

 

 

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 ――――五日後

 

 以前話した事で皆は多少落ち込んでいたが、今では吹っ切れたように日々を過ごしている。

 

「リィン、シャマル、頼んだぞ」

 

「ああ……お前達も気をつけてな」

 

「あまり無理しないでね?」

 

 その日の昼過ぎに俺達はリィンとシャマルをはやての護衛に残して蒐集へ向かった。目的地は以前行った無人世界。

 

「それじゃ各自、十分に気をつけろよ?」

 

「おう! 任せろってんだ!」

 

 そして今現在、俺は別行動を取っている。目的は遊撃。管理局員が出てきた時のために俺は待機している。

 

 ただ、俺の目の前には巨大な百足のようなサンドワームの死体が転がっているがな。

 

「相変わらず大きさだけが取り柄か、こいつは?」

 

【いえ、それほど弱い訳では無いかと。単に私達の力が異常なだけです】

 

 確かにこの力は異常とも言える。そもそも威力がおかしいのだ。『Chaser』を数発、サンドワームの口の中に放り込んだだけでコイツ死んだしな。

 

 それとまだチェインガンとVLSの威力は確認してない。流石に『Chaser』より威力が高い訳では無いと思うが……。それに弾薬は十分にあるが無限ではないから無駄遣いはあまり出来ない。

 

 ま、あのジェイル・スカリエッティという科学者に頼んで量産してもらおう。ただ、あいつも変態科学者の臭いがするから少し不安ではあるが。

 

【空間異常を確認。何者かが転移してきた模様。数、5。転移先はシグナム付近に1、ヴィータ付近に3、ザフィーラに1。以上です】

 

 そして、俺が考え事をしているとルシフェルから報告を受けた。

 

 ……来たか。状況を鑑みるにヴィータを優先で援護に行く必要があるだろう。シグナムはヴォルケンリッターの中で一番強いので後回しだ。よってここはヴィータの援護に行こう。

 

【戦闘モードへ移行します】

 

 さて、それじゃあヴィータを助けに行くとしますかね。

 

 俺は時速1000kmでヴィータの援護に向かった。

 

 

 

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「文化レベルゼロ……人間は住んでない砂漠の世界だね」

 

 こんにちわ、高町なのはです。私は今、アースラの中でフェイトちゃんとエイミィさん、それに王騎くんと一緒にモニターを見てます。

 

 そこに映っているのは守護騎士のシグナムさんとザフィーラさんが映ってます。

 

 でも、あの赤髪の小さい子はいないみたい……。でも、一番の心配は……。

 

「ルシフェルはいないみたいだ……」

 

 そう、ルシフェルさんだ。私や神崎君が戦っても勝てない相手。でも、前の戦いで王騎君は互角に戦ってたの。凄いなぁ。

 

「なのはは此処で待機した方が良いと思う。あのヴィータって子が気になるんだろ?」

 

「う、うん」

 

 そうそう、王騎君って前に比べるととっても良い人になったんだよ?

 

 私の話をちゃんと聞いてくれるし、クラスの男子とも仲良くしてる。最近、神崎君と喧嘩もしなくなったよ。……って、王騎君が無視してるだけなんだけどね?

 

 何があったんだろう? 確か、王騎君が変わったのは数ヶ月前ぐらいだったけど……。

 

「俺もなのはと一緒に行くけど、俺はルシフェルが出てきたら相手をする」

 

「王騎、大丈夫なの?」

 

 フェイトちゃんが子犬のアルフさんを抱えて王騎君に訊いたの。

 

「……正直、勝てる気がしない。以前の戦いで退いてくれたのは運が良かったからと思う」

 

「そんなことないって! 王騎君はルシフェルと互角に戦ってたんだし……」

 

 エイミィさんもそう言ってるけど、王騎君は浮かない顔をしてた。

 

 でも、前の戦いじゃ互角に戦ってたから、エイミィさんの言う通り大丈夫だと思うけどなぁ?

 

「……だといいけどな。ああ、そう言えば神崎は来ないのか?」

 

「え? ああ、彼ね。まだ無理だよ。前の戦いで全治十日ぐらいの怪我を負ってるから」

 

 あー……あれは痛そうだったなぁ……。私だったら泣いちゃうと思う。

 

「そうか」

 

 でも、王騎君はどことなく安心した顔をしてると思うのは気のせいかな?

 

「それじゃ、フェイト……気をつけてな」

 

「うん。ありがとう、王騎」

 

 そしてフェイトちゃんはシグナムさんと戦いに転送ポートへ行っちゃった。

 

 しばらくすると、ヴィータちゃんが現れたので私と王騎君はそっちへ向かったの。

 

 

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【目標ポイントまであと23秒】

 

「了解」

 

 高速機動でしばらく進むと、ヴィータの所まで間近に迫った。やがて、ヴィータ達が見えた。

 

 だが俺はおかしい事に気づく。敵が二人しかいないのだ。

 

【味方及び敵二名の下方に敵と思わしき反応があります】

 

 俺は少し考え、答えに至った。

 

 ……あの仮面男か。

 

 現段階であの仮面男は無視する。出てこない以上、まだ介入する気はないようだ。なら、考えるだけ無駄だ。もし仕掛けて来るようであれば迎撃すればいい。

 

【マスター、敵が長距離射撃を行う模様】

 

「なに?」

 

 俺が視線を戻すと、高町が魔法陣を展開して射撃体勢に移っている。だが、ヴィータとの距離は1kmも離れている。

 

 ……おいおいおい、まさか本気で撃つ気か!? どんだけ離れていると思ってるんだよ!

 

 高町の側では王騎が見物している。そして高町が集束型魔力砲を撃った。

 

「う、うそっ!?」

 

 ヴィータは驚きのあまり動けなかったようだ。

 

 俺はスロットルを絞り、時速1300kmで飛行してヴィータの前に躍り出る。そしてフィールドを展開し防ぐ。

 

【援護に来ました】

 

「そ、そんなもん必要ねぇよ! あたしの力でどうにかできたし!」

 

【驚きのあまり動けずに撃墜されかけたのにですか?】

 

「ゔっ……」

 

 まったく……素直に言えばいいのによ。さて、仮面男と思わしき奴も動く気配はなさそうだし、さっさと撤退しますかね。

 

【ヴィータ、退きますよ】

 

「お、おう」

 

「ま、待て!」

 

 俺達が退こうとすると王騎が魔力剣を飛ばしてきたので俺はそれを切り払う。

 

 どうやら逃がすつもりはないらしい。

 

【……ヴィータ、先に行ってなさい。私が彼等の相手をします】

 

「……わかった」

 

 ヴィータは魔法陣を展開して転移しようとする。それを止めようと王騎が魔力剣を撃ってくるがそんな事を俺はさせない。

 

「くっ! やっぱりダメか……」

 

 本人もこれで足止め出来るとは思っていなかったらしい。

 

「る、ルシフェルさん! どうしてあなたは闇の書と一緒にいるの!? 理由を話して!」

 

 そして高町が訊いてくる。

 

 話し合いで解決しようとするのは良い事だ。だがな、高町? 世の中には話し合いで解決出来ない事や人もいるんだよ?

 

【話し合いの余地はありません。邪魔をするなら倒します】

 

 そして俺は話し合いをするつもりなど無い。

 

「待ってくれルシフェル! 頼む、俺と少しだけ話しをしてくれ。少しでいいんだ!」

 

 王騎はなにやら必死な様子で呼びかけている。

 

 ふむ……アイツは転生者だ。ならこれから先の事を知っていてもおかしくはない。もしかすると……万が一にもはやてやヴォルケンリッター達を助けられる方法があるかもしれない。

 

【……いいでしょう。話は聞きます。ただし、貴方一人だけとです。他の介入者は認めません。、もし、妙な真似をすれば……】

 

 俺はそう言って『Chaser』を4発展開し、射出する。その行き先はバラバラで、途中に何かぶつかったかのように爆散する。

 

 そう、狙ったのは管理局のサーチャーだ。例え隠蔽工作しても俺の前では無意味だ。

 

【こうなります】

 

「や、約束する! 絶対に妙な真似をしない!」

 

「王騎君、私もっ!」

 

「ダメだ、なのはは此処に残っていろ」

 

「で、でもっ!」

 

「ルシフェルは俺とだけと言った。約束を破る訳にはいかない。だから残っていろ」

 

「……うん、わかった」

 

 向こうも話が決まったらしい。

 

 そして俺と王騎はその場から少し離れた場所で対話をする。

 

「ルシフェル……お前、もしかして八神はやてを知ってるんじゃないか?」

 

 王騎はいきなり切り出した。

 

 やっぱりコイツは知ってるんだな?

 

【はい。私は今、彼女と行動を共にしてます。もちろん、八神はやてはこの蒐集を知りません】

 

「やっぱりか……。訊いてくれルシフェル。闇の書を完成させてもはやてが死ぬ」

 

【はい、知っています】

 

 ルシフェルの答えに王騎は驚きを隠せないでいた。

 

「なっ!? 知っていて尚、蒐集をしているのか!?」

 

【例え蒐集しなかった場合、彼女の麻痺の進行が速くなり、今頃死んでいます。それなら、蒐集して延命するほうが良いと判断しただけです】

 

 それに、一応はやてが助かる方法はあるんだ。

 

「……お前、本当に機械か?」

 

「っ!?」

 

 だが、唐突に王騎は疑った。流石に矛盾することが多いのに気づいたか?

 

「お前のやっていることは論理的じゃ無い。明らかに感情が入ってる」

 

 マズイな……。今正体を知られたら後々面倒な事になる。

 

「やっぱりお前…………自分の主がいるんじゃないか? そしてそいつは転生者で今ははやての側に居るんじゃないのか?」

 

 ……は? ……ああ、なんか変な方向へ勘違いしているみたいだ。まったく……少し冷や汗が出たじゃないか!

 

 ルシフェル、そういう事で頼む。

 

【……貴方の言う通りです、天城王騎。私にはマスターがいます。私の行動は全てマスターの指示によるものです】

 

「……おかしいと思ったよ。それじゃあ、そのマスターとやらに言っておいてくれ。今から俺が教える、はやてとシグナム達が助かる方法を」

 

 っ!? ある……のか? はやてとシグナム達が助かる方法があるのか!?

 

【それは本当ですか?】

 

「ああ……今からそれを説明する」

 

 王騎はその方法を教えてくれた。その事を簡単にまとめると……

 

 1,このまま蒐集して『闇の書』を完成させる。ただし、一度シグナム達を蒐集させる必要がある。 

 

 2,はやてを闇の書を融合させて、はやてが中から管理者権限を使用し、守護騎士システムを送還、修復して呼び出す。

 

 3,はやてが闇の書から抜け出す。

 

 4,暴走した防衛プログラムを倒し、闇の書の核を破壊する。

 

 ざっとこんなものだろう。ただ、これにはとても危険が伴う。それを乗り越えるには、はやての精神が強くないとダメだ。そうでないとはやてがそのまま閉じ込められてしまう可能性が高くなる。

 

 そして、管理局の妨害。いや、管理局と言っても一部の者が妨害するようだ。ただ、闇の書を完成させるまでは向こうと目的が一緒なので、完成すれば王騎がクロノに情報を流して逮捕させる。 

 

 しかし、これらを万端にやったしても成功率は30%前後だそうだ。分の悪い賭けだが、試してみる価値はある。

 

【……分かりました。確かに主へ伝えましょう】

 

「助かる。俺もできる限りは協力する」

 

 王騎には感謝しないとな。借りが一つ出来た。

 

【それでは、私はシグナムの所に行きます】

 

「俺も転移で後を追いかける。フェイトを仮面男から助けないといけない」

 

【そうですか。なら、私は一足先に行きます】

 

「ああ」

 

 俺はそう言うと最高速度でシグナムの居る場所へ向かう。

 

 

 

 数分後、俺はシグナムの居る場所へ着いた。シグナムはフェイトと交戦中のようだ。

 

【空間異常を感知】

 

 そして、近くに何かが転移して来たのをルシフェルは感知した。

 

 姿は見えないが、何処かに身を隠しているのだろう。

 

【熱源反応有り。二時の方向、距離300】

 

 ルシフェルの報告を聞いてそちらに視線を移す。すると、僅かだが影の様なものが見えた。

 

 王騎が助けると言ったんだ。俺は手をアイツに手を出さないでおこう。

 

【シグナム】  

 

「……ルシフェル、ヴィータは?」

 

「ルシフェル!?」

 

 俺が声を掛けると、フェイトが驚いた。

 

【転移で逃げました。私達も撤退を開始しましょう】

 

「ああ、本当ならば決着を着けたいが……そうも言ってられん」

 

 シグナムは名残惜しそうにしていたが、優先順位を間違えるような事はしない。

 

「フェイト!」

 

「王騎!?」

 

 そこへ王騎が到着した。

 

 さて、それでは退きますかね。……っと、ついでにあの野郎に置き土産でもするか。

 

【『Chaser』、展開】

 

「くっ!」

 

 俺はホーミングミサイルを10発を展開する。フェイトは身構えているが、王騎はそうでも無かった。多分、俺のやることに気づいているのだろう。

 

【射出】

 

 10発のミサイルは腕を振り上げると同時に高く飛翔する。そして、ある程度の高度まで達するとそのままある場所へ向かって急降下する。

 

「っ! …………え?」

 

 フェイトが迎撃しようと魔法の準備をするが、軌道が明らかに自分に向かってない事に疑問を抱いた。

 

 そして、ミサイルはそのままフェイトと王騎の30m後方の砂丘に降り注ぎ爆発を起こす。

 

「何を……?」

 

【シグナム、退きますよ】

 

「あ、ああ!」

 

 フェイトが爆発が起きている方を呆然と見ている間にシグナムが次元転移の魔法陣を展開した。

 

 その魔力に気づいたのか、フェイトが慌ててこちらを見るが、俺達は既に逃走の準備が整っていた。

 

「ま、待て!」

 

 咄嗟に魔法を放つフェイトだが、その魔法が届く前に俺達は転移する。

 

「……逃げられた」

 

 

 

 

 

-5ページ-

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

 

 私ことリーゼアリアは現在、砂漠の岩陰で休んでいた。

 

 そして今は体中砂だらけだわ。何故かって? あの子供が私に向けて10発前後のミサイルをぶちかましたからよ!!

 

 それにしても……危なかったわ。咄嗟に防御魔法を唱えていなかったら確実に死んでいた威力よ? まったく、あんな質量兵器を平気で使うなんて気でも狂ってるんじゃないかしら?

 

 おかげで私の魔法では完全に防ぐことが出来ず、服の所々が焼け焦げていた。幸い、目だった外傷は少なく、軽微だ。

 

 もう……折角クリーニングに出したばかりなのに……。

 

 でも、何で私が隠れているってバレたのだろう? それほどまでに強力なセンサーでも備えてるのかしら?

 

「兎に角、お父様に報告しなきゃね……」

 

 確か、あの子供の名前は煉と言ってたけど……あの子は危険だわ。

 

 戦闘力が桁外れに違う。

 

 ……だからと言ってこの計画は止められない。もうすぐにアレは完成する。

 

 そう、全てはお父様の為。私達はお父様の為ならいくらでも汚名を被ってみせるわ!

 

 

 

 

説明
第十九話『もう一人の家族、一粒の希望』
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コメント
「はやてを闇の書を融合させて」じゃなくて、「はやてを闇の書と融合させて」じゃないですか?(カイ)
そもそもBETAがリアルに来たら恐怖どころじゃありませんからねww 兵士級と戦車級とかえぐいww(クライシス)
Folsさん、初コメありがとうございます! 割と愛嬌があって良いのではないでしょうか?w(クライシス)
私は黒ファン4人に囲まれた瞬間に無理だと思いましたねwww(Unknown)
私も「あっ、これ無理ゲー」と思いつつ震えてる手を動かした記憶があります(キリヤ)
BETAの物量だけは恐怖以外の何物でもないですね……(Unknown)
自分は河童や天狗よりも、宇宙からやってきたBETAの大群のほうが怖いですよ・・・残弾0になったときの恐怖とかマミった・・・もとより、まりもった的な意味でも(デルタ)
okakaさん、ネクストですら天狗や河童にやられる時がありますからね…(Unknown)
ファンタシースターにマドゥーグという似た装備がありましてね。(miri)
フラさん:我々は河童や天狗と日々戦ってますしねw(okaka)
この程度はホラーとは言わん!!(Unknown)
知っててもホラーじゃね?と思った人は挙手しなさい(Lapis lazuli)
これは続きが楽しみでございます。自分の後ろに本が浮いてついてくる。知ってればシュール。知らなければホラーといったところでしょうか?(Fols)
あんなもの浮かべて喜ぶか、変態共がっ!!…と言いたいところだが中身がアインスだと思うと憑けとしか言えんな!www  更新速度がレギュ1.20である件について。      P.S きっと浮遊してる闇の書はアンサラーみたいな音出して飛んでると思うんだ!!(Unknown)
書こうと思ったら更新されてたww(キリヤ)
コメント書いてる間に更新されてたよ(笑)(Lapis lazuli)
危ない危ないww ありがとうございます!更新はまた近い内にまとめてすると思います。(クライシス)
18話が2つある!って書こうとしたらもう直ってた(チッw)王騎は改心してこれから先ヒロイン達とはいい友人でいけるでしょうね。現実に気づけない痛主がどれだけいるやらw クライマックスもちかいですねい更新楽しみっす(氷屋)
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