イレギュラーな魔術師
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「くそッ、なんなんだよアイツはッ!?」

 攻撃魔法を素手ではじき飛ばして応戦するなどというデタラメな光景を目にして、僅かに残っていた理性を総動員して『逃げる』という選択肢を選ばなかったらどうなっていたか……

 男は恐怖で混乱し、無我夢中で路地裏を走回っていた。

 

「もう大丈夫か?」

やがて、男は自分に言い聞かせるように言いながら走るのをやめて、振り返って浩明が追いかけて来ていない事に安堵の声を漏らした。

「何なんだアイツは? アイスニードルを叩き落とすなんて化け物かよ…… 」

「君、化け物とは失礼だね、化け物とは」

「!」

浩明の声に驚き、はっとして声の聞こえた方を振り向くが、そこには誰もいなく、顔を恐怖にひきつらせながら周りを見渡して声の主を探した。

「上だよ、上」

その声に導かれるように上を見ると、その声の主を見て更に言葉を失った。

「うっ、浮いてる!?」

男が見たもの、それは、思わず吸い込まれてしまうような満月をバックに浮かぶ黒い服を身に纏う青年の姿だった。

「さぁ、鬼ごっこも飽きた事だし、締めといきますか」

その青年が自分に向かい近づくのを確認する事なく、男の意識は途切れたのだった。

 

 

戻ったぜ」

「遅いぞ! 酒のつまみを買いに行くのにどれだけかかってるんだ」

ベランダから中に入って挨拶すると、返ってきたのは叔父である英二(えいじ)のお叱りの言葉だった。

「悪い、帰り道に金庫破りに鉢合わせしたんで相手してきた」

「そうか、ならいい。悪かったな」

 英二の兄さんのお説教を流して弁解しながら、買い物袋を机の上に置き、部屋に戻った。

「それで、その強盗犯は?」

「ちゃんと警察に通報しといた。今頃、地面にディープキスしてる間抜けな姿を警官に見つけられてるはずだぜ」

 着替えながら強盗犯の末路をリビングにいる英二兄さんに説明すると、「そうか……」と答えた。

「まぁ、自業自得ってやつだよ」 着替え終えてからリビングに戻ると、椅子に腰掛けて、英二兄さんが淹れてくれたお茶を飲み、コンビニ袋のなかから大福を取り出して封を切って口に運んだ。

「うん、大福はやっぱりこしあんに限るなぁ」

 我ながらおっさんくさいと思うが、ひと仕事の後の甘いものは浩明にとって、ささやかな楽しみなのでやめられない。

 大福を食べ終えると続けて袋の中からスナック菓子を取り出して開けようとすると、缶ビールを片手に向かい側に座り、口を開いた。

「ヒロ、引っ越しをするぞ」

「は?」

 突然、言われた爆弾発言。それは、後に始まる波乱に満ちた学生生活の始まりのきっかけだった。英二から言われたこの言葉に思わず立ち上がり、上半身を前に出して聞き返した。

「ヒロ、落ち着け」

まくし立てかねない私を英二は、座るように促した。

「今やってる仕事が後少しで片付くからな。あそこを離れてもう5年、そろそろ戻ろうと思うんだ」

「ちょっと兄さん(おじさんと呼ぶと怒るので)、何を!!」

「あいつらを見返したくないか?」

私が何を言いたいのかを見透かして返す英二の言葉に、思わず黙り込んだ。

「今のお前なら大丈夫だ。かつて無能者扱いした奴等とは比べものにならない程の魔力と実力と、それに伴った心を手に入れている。自信を持て」

英二の言葉を聞きながら、浩明は昔、自分を無能扱いをした家族・・・いや家族だったと言ったほうがいいだろう。その連中に受けた扱いを思い出していた。

かつて浩明は、魔術師として日本の頂点天統家の次男として生まれ、その名に恥じないようにと、一流の魔術師になるように努力を重ねてきた。しかし、そんな努力も、全てにおいて天才といわれた兄と、そして才女とうたわれた妹とは比べものにならない程の才能の差を生み出し、私を天統家の失敗作という烙印を押し、表向きは養子という形で本家から放り出された。

「お前を引き取ってから五年、今のヒロなら今まで失敗作と言った奴等を見返してやれるはずだ。お前をはじき出した天統家に見せつけてやれ」

イタズラを企てた子供のような笑みに、私は転校の話を受け入れ、故郷へと帰る事を決めた。

こうして私は、かつて住んでいた町へと帰る事へとなったのである。

説明
エリート魔術師の一家の落ちこぼれの次男坊で、家族に捨てられて親戚に引き取られ、魔術師として大成し、故郷のエリート魔術師を養成する高校の『落第した落ちこぼれが集まる』といわれる普通科に編入した、星野浩明による巻き込まれ系魔法バトル物です
自身初のオリジナル一次創作ものですので温かい目で見ていただけると嬉しいです。
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コメント
面白いので続きが気になります(優之介)
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魔術師 魔法使い 落ちこぼれ 作者は特撮好き バトル 

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