真恋姫無双幻夢伝 小ネタ1『その頃 涼州の場合』
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   真恋姫無双 幻夢伝 小ネタ 1 『その頃 涼州の場合』

 

 

 涼州は今日も平和だ。黄巾族の活動は主に東方で行われていたこともあるし、馬騰・韓遂の支配がしっかり行き届いていることも理由の一つだ。ここ数年の天候も荒れることなく、草は良く育ち、馬肥える。

 牧畜と同様、商業も調子が良い。シルクロードを通って来る商人は数知れず、長安まで続く道のりには馬が荷車を引く姿が多く見られる。荷物はいつも山盛りだ。

 彼女の特徴的な水筒も西方から来たものだ。水を飲む度に動く白いのど。ぷはっと水筒の口から離れた赤い唇。そして口元にしたたり落ちる水を拭くと、翠は馬上で一息ついた。

 

「ふう、今日も異常なしっと」

 

 たった一騎で緑一色の草原に立つ。乾いた風が吹き込む光景には、この前まで出没していた賊の姿は無い。この前の大捕り物でやっつけた奴らで全てだったのだろう。

 

「おねえさまー!」

「おっ。蒲公英か」

 

 そこにもう一騎、従妹の蒲公英がやってきた。体が小さい分、馬も小さい。それゆえ翠に比べて余計小さく見える。

 

「お姉様、こんな所にいたー」

「なんだ、探していたのか。なにかあったのか?」

 

 翠の言葉にぷくぅと頬を膨らませる蒲公英。

 

「お姉様、言ったでしょ!今日、会議があるって」

「ああっ!忘れてた!」

 

 もうすぐ翠の父親、つまり馬騰の夫の十周忌があるのだ。とは言っても悲しくなることではない。馬騰と親交がある遊牧民が皆集まる盛大なイベントと、いつの間にか変化していた。その下準備に忙しい今日この頃である。会議もそのためである。

 翠は笑いながら謝り、蒲公英は苦言で応じる。そんな二人は会議が行われる川のほとりへと急いでいた。走る馬の上で平気で会話するのはさすがと言うべきか。

 

「今回も大規模になりそうだな」

「そう思うんだったら会議忘れないでよ。もう色々宴会に出す品物も届いているよ。昨日は洋ナシが届いたよ」

「へえ〜。でもあたし実は嫌いなんだよなあ。母様だって嫌いだろ。“洋ナシは用無し”だよ、ほんと」

 

(…あれ?空気が冷たい。雲も出てきてないのになあ)

 

 ふと蒲公英を見る翠。なにか様子が変な…。

 

(……た、蒲公英の目が死んでる?!なんで?!しかも心なしか遠ざかっているような…)

 

 翠はよくよく自分の発言を思い返してみた。そして、気付いた。

 

「…蒲公英、違う。これは違うんだ!いや、違わないけど…。でもそういう意味じゃないんだ!」

「だいじょうぶですよ〜。わかってますよ〜」

「ぜったい分かってない!聞けって!」

「いいですよ〜、お姉様」

 

 「違うって!」「だいじょうぶですよ〜」と繰り返す二人は、遠く、遠くへと駆けて行った。

 翠は気付かなかったが彼女らの馬の目も、死んでいた。

 

説明
シリアスに飽きたー!という作者の息抜き。
…なんで小ネタなのにこんなに文章固いのだろうか。誰か文章を柔らかくする方法を教えてください(懇願)
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