真・金姫†無双 #26
[全7ページ]
-1ページ-

 

 

 

#26

 

 

春蘭と仕合を行い、曹操たんに殺されそうになってから、また時間が流れる。散々ボコられた後で出店の許可をもらったので、空き家を借りて店を出した。とはいえ、最初の予定の通り、空き家自体は使わない。家の前に焼き場のある屋台を作り、火を焚いて焼鳥を焼いているくらいだ。

 

「へいっ、モモ、ハツそれからネギ3本、お待ちぃ!」

 

そして、夜には立ち飲み屋を展開している。焼き場の半分に鉄板を置いて、さらにその半分には鍋を乗せてメニューも増やす。儲けとしてはこの方がよいのだが、昼間は皆ゆっくりと食事をとる訳ではないので、歩きながら口に出来る焼鳥か焼きおにぎりを売るくらいだ。

 

「来たぞ、一刀!」

「おう、春蘭に秋蘭ちゃん、いらっしゃい」

 

そして今は、夜である。つまりは立ち飲み屋を営業しており、仕事を終えた城の要人なんかも来たりする。ちなみに、春蘭との勝負と曹操たんによる((私刑|リンチ))のあと、秋蘭ちゃんにも真名を預けられた。嬉しいねぇ。

 

「いつものを頼む」

「私は肉だ!出せるだけ出せ!」

「他の客の分があるから程々にな。ほら、席は準備してあるから入りな」

 

2人から注文を受け、家の中へと通す。そんな事をすれば当然、

 

「おい、北郷さんよ。なんであの嬢ちゃんたちは中に入れるんだ?」

「そりゃあれだろ。北郷の兄ちゃんだって若いんだ。美人が来たらもてなすんだろうよ。俺たちみたいなムサイ男とは違ってな」

 

彼女らよりも前に来ていた客の男たちから、疑問の声が上がる。あぁ、こいつらは知らないんだな。

 

「いや、これはおっちゃん達の為でもあるんだぜ?」

「どういう事だ?」

「お前にはカミさんがいるじゃねーか。変な気を起こさないように、気を使ってくれてんだろ」

 

そう言って笑い合う男たち。いいから人の話を聞きやがれ、このクソ酔っ払い共。

 

「そう怒んなって。で、実際のところは?」

「あの2人な……夏候惇様と夏侯淵様だぜ?」

「……へっ?」

 

俺の口から出て来た名に、お客さんたちは呆ける。

 

「酔っ払って下手な事を口走りでもしてみろ」

 

俺は真面目な顔で、首に親指を当て

 

「――こうなるぞ」

 

それを真横に振る。

 

「「「「「 」」」」」

「それとも、おっちゃん達も店の中に入りたいか?」

「「「「「っ!」」」」」

 

問えば、凄い勢いで首を横に振り、

 

「……そ、そろそろ帰らねぇとかみさんに叱られちまう。じゃぁな、北郷さん。また来るぜ」

「お、おぉ、そうだな……うちもおふくろが怒りだしそうだ。ごちそうさん」

 

酔いも醒めてしまったのか、三々五々と帰って行く。

 

「3日に1回くらいしか来ないから、残り2日を狙って来ておくれー」

 

最後に負け犬の遠吠えよろしく声をかけるが、さて、また来てくれるのかね。

 

「春蘭たちの方が金払いがいいから別に気にしてないし!……チクショウ」

 

煙に目をやられ、俺はこっそりと涙を流すのだった。

 

 

 

-2ページ-

 

 

 

「――私たちは、あまり来ない方がいいか?」

「秋蘭ちゃん」

 

パタパタと手作りの扇で赤くなった炭を((扇|あお))いでいると、後ろから声を掛けられた。

 

「聞こえてたのか?」

「まぁな」

「気にしなくていいよ。あいつらは常連だし、聞いた通り、秋蘭ちゃん達が来ない日には来てくれるさ。それに昼間だってある」

「そうか、すまないな」

「だから気にしなくていいって」

 

軽く笑いながら、俺は酒を準備する。

 

「それより、こうなったら今夜は他に来ないだろ。こっちに出てきなよ。椅子も出していいから」

「……そうだな。風に当たりながら飲むのも悪くない」

 

俺の誘いに頷き、秋蘭ちゃんは中に戻って行った。春蘭を呼びに行ったんだろうな。

 

『今日は外で飲むのか!それもまたよしっ!』

 

そんな春蘭の声も聞こえてくる。そして。

 

ガタガタッ!……ドガァアアアッッ!!

 

「おぃ」

「姉者…」

「……あれっ?」

 

背後の扉が音を立てて破壊された。振り返れば、椅子と卓を抱えた春蘭。どうやら出入口のスペースを把握してなかったらしく、卓がぶつかったのだろう。

 

「春蘭、正座」

「いやいやいや、これはな、一刀」

「正座」

「地面にか?痛そうなのだが……」

「正座」

「……はぃ」

「正座」

「してるぞっ!?」

 

串をくるくるとひっくり返しながら、俺は春蘭に説教をかます。秋蘭は俺の出した酒を飲みながら、困ったような、それでいて楽しげな顔で見ていた。

 

 

 

-3ページ-

 

 

 

「――うー…まだ足を解いてはならぬのか?」

「ダメ」

 

春蘭が持ってきた卓に料理を出し、酒も追加で置く。秋蘭ちゃんは卓に添えられた椅子に、俺は焼き台の前に置かれた椅子に、春蘭は地面にそれぞれ座っている。

 

「お腹空いてるのに……」

「ハァ…ハァ……可愛いよ、姉者」

 

秋蘭ちゃんは早速酔っているようで、哀しげな瞳の姉の姿に恍惚としていた。

 

「一刀ぉ…」

 

春蘭が泣きそうな顔で見上げてくる。可愛いなぁ、もぅ。

 

「……仕方がないな」

「じゃぁ――」

「ほら、あーん」

「――私も席に……って、え?」

 

可哀相なので、俺は焼いた串を春蘭に向けて差し出す。

 

「あの、一刀……えっ?」

「要らないのか?じゃぁ、俺が食べようかな」

「い、いるっ!いるから!」

「じゃ、あーん」

「あ、あーん……」

 

俺のSっ気に、春蘭はエサを与えられる雛鳥のように口を開く。その顔は赤い。

 

「可愛いよ、姉者…ハァ……ハァハァ」

「あー……んむっ」

「美味いか?」

「んぐんぐ…おいしぃ……」

「そうか。じゃぁ、今度はこっちのモモ串をやろう。はい、あーん」

「あー…あむっ!」

「姉者ぁ…ハァハァ……」

 

秋蘭ちゃんは相変わらずエロイ表情。可愛いなぁ、もぅ。

 

「次は…」

「ん?」

「次は、ネギまがいい……」

「おぅ。ほら」

「あーん……はむっ!」

 

そんな事をしていれば。

 

 

 

-4ページ-

 

 

 

「――――私の春蘭に、餌付けなんてしないでくれるかしら?」

 

横合いから掛かる声。

 

「華琳様、お疲れ様です」

「か、華琳様っ!?」

「遅くなったわね」

 

曹操たんだった。

 

「それより、これはどういう状況なの?」

「はい。実は――――」

 

問われ、秋蘭ちゃんが説明をする。春蘭ちゃんは恥ずかしそうにモジモジしているが、俺のひと睨みに動けないでいた。

 

「はぁ…何をしているの、春蘭……」

「か、華琳さ、あむっ!?」

 

呆れ返る曹操たんに、春蘭はなんとか言い訳をしようとする。だが、俺は肉の刺さった串をその開いた口に突っ込む。

 

「あむ、んぐ…その、これはそういう訳ではなく、えっとですね、はむっ」

「ほーら、しっかり噛んで食べるんだぞー」

「一刀が、んむ…ムグムグ……今日は外で飲まないかと」

「あーん」

「あーん、あむっ」

 

そんな事を繰り返していれば。

 

「うちの娘を調教しないで」

「だって、可愛いだろ?」

「あーん」

「それは認めるけど……」

 

 

 

-5ページ-

 

 

 

椅子をもう1脚出し、曹操たんに席を献上。

 

「それより、1人で来たのか?」

「えぇ、それが?」

「いや、春蘭と秋蘭ちゃんなら、きっと護衛も兼ねて一緒に来そうだったのに」

「私の分の仕事が長引いてね。2人は待つって言ってたけど、命令したの。先に行きなさいって」

「おぉ、凄い御方だ」

 

日本の管理職の奴らにも見習わせたいね。

 

「でも、まさか曹操さんが来るとはな」

 

酒を出しながら、そんな事を口にする。

 

「あら、私が来てはいけないのかしら?」

「だって、曹操さんは美食家だって聞いてるし、こんな安居酒屋なんて来るわけもないと思ってたよ」

「あーん」

「春蘭がいつも楽しそうに話すの。興味を惹かれるのは当然でしょう?」

「でも、春蘭の舌だぞ?」

「あーん」

 

春蘭はいまだ正座中。相変わらず俺に餌付けされていた。

 

「いいのよ。不味かったら指摘するから」

「うっわ、凄い嬉しそう……」

 

相当なドSだな、このツインテール。

 

「それより、私の串はまだなの?」

「いま焼いてるよ」

「あーむっ」

「春蘭に食べさせてるじゃない」

「これはさっき焼いたやつ。冷めてるから、しばしお待ちを」

「出来立てを出そうという心意気は評価してあげる」

「プロですから」

「?」

 

そんな訳で、上手に焼けましたー。

 

「はい、お待ち」

「頂くわ」

 

緊張の一瞬だねぇ。ま、結果は目に見えてるけど。

 

「……5点ね」

「5点満点の?」

「どうしたらそんな((肯定的|ポジティブな))思考に至るのよ!?100点満点中の5点よ」

 

ほらねー。

 

「何が悪い?」

「まず、素材が駄目」

「だって安いし」

「味付けも塩だけで、つまらないわ」

「お酒のアテは、((単純なのが一番|シンプル・イズ・ベスト))」

「それに焼き過ぎ。硬い」

「春蘭ちゃんに食べさせてあげないと」

「いや、それはどうなのよ……」

 

色々と注文をつけてきますね、この娘は。

でもさぁ。

 

「何よ」

「春蘭と秋蘭ちゃんは美味しいって言ってくれてるよ?それに他のお客さん達も」

「春蘭はともかく、秋蘭は優しいのよ」

 

おい、青髪チャイナが目を逸らしてるぞ。

 

 

 

-6ページ-

 

 

 

曹操たんの((口|・))撃は続く。

 

「酒は及第点だけれど、料理はダメね。私の口には合わないわ」

「じゃぁ、聞くけどさ」

「なによ」

 

でも、俺だってMじゃないんだぜ?

 

「1人の兵と100人の兵、どちらかしか助けられないならどうするの?」

「なに、その質問?100人の方に決まってるじゃない。その方が、後に続かせられる」

「たった1人の賢者しか理解できない政策と、100人の民が理解し、満足できる政策。どっちを採用するの?」

「後者よ。民が結果として実感できない政策など、無意味以外の何ものでもないわ」

「たった1人の((美食家|グルメ))にしか理解できない料理と、泣く泣く手間を惜しんで多少味の質は落ちても、100人が満足してくれる料理、どっちに価値がある?」

「後者ね。……って、ちょっと待――」

「はい論破ー」

「待ちなさい!いまのは釣られただけよっ!」

「はい、春蘭。あーん」

「あー、んっ!美味いぞ、一刀。もっとくれ」

「聞きなさいよ!」

「さっき焼き上がったばかりのがあるからな。たくさん食べてくれ」

「おうっ」

「それは私の料理よっ!?」

「だっていらないんだろ?ほい、あー」

「そんな事言ってないじゃない!」

「あー、ぁむっ!」

「可愛いなぁ、春蘭」

「撫でるな!照れるではないかむっ!?」

「美味しい?」

「おいひぃ!」

「可愛いなぁ」

「可愛いよ、姉者……ハァハァハァ」

「聞きなさいよぉぉおおおおおおっ!!!」

 

夜なんだから、もっと静かにしなさい。

 

 

 

-7ページ-

 

 

 

あとがき

 

 

 

素直な春蘭ちゃんの可愛さは異常。

 

 

ギャグパートでいじられる華琳ちゃんの可愛さは異常。

 

 

という訳で、春蘭ちゃんと秋蘭ちゃんが大好きな一郎太です。

 

 

ホントはこの次のと一緒にあげるつもりだったんだけど、

 

 

次のが思ったよりも長くなったのと、話数稼ぎで単独の話に。

 

 

つまりは#27も魏partで。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 

 

 

説明
前回のあらすじ。

説明をお断りします(゚ω゚)

という訳で、今回は休憩回。

どぞ。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
10688 7713 110
コメント
一朗太殿の作品では華琳が論破されるのはいつもの事。(シャイニングブルー)
何処の忠犬ですかwwwしかもモンハンwwwwてか華琳が論破されたwwwwwwwwwwwwwwwwwwww(スターダスト)
ギャグパートでの華琳ちゃんの可愛さは異常www(アルヤ)
>>summon様 やっぱ華琳ちゃんはいじられる方が可愛いと思うんだよ(一郎太)
>>きたさん様 秋蘭ちゃんも負けてないんだぜ?(一郎太)
>>envrem様 どう考えても僕の所為ですね、ハイ(一郎太)
>>蟹鍋様 某ちゃんねるでよく見る光景ですね(一郎太)
>>一丸様 論破のくだりは、一刀が料理を始めたあたりから思いついてたんだぜ(一郎太)
>>morikyou様 猫姫の#50あたりでめっさいじられてますで(一郎太)
>>オシリスたん えwww『づ』wwwけwwwww(一郎太)
>>D8様 可愛いんだぜ(一郎太)
>>アサシン様 よーし、じゃぁお前は将軍の馬にしてやろう(一郎太)
>>AliceMagic様 可愛く描いてるんだぜ(一郎太)
>>ロンリー浪人様 ギャグだからこそ、そんな事もできるんだぜ。シリアスパート?なにそれ、んなもん書いた事ねーよ(一郎太)
>>神木ヒカリ様 俺はされたいな。口移しで(一郎太)
>>アイネ様 釣られただけなんだぜ!でもそれを無視できる一刀くんは凄いと思うんだ(一郎太)
>>叡渡様 ま、俺の腕があってこそだがな(←調子づいてる(一郎太)
>>かぐ様 俺だってしてぇYO!(一郎太)
>>前原悠様 ふひひ、昔から春蘭ちゃんを可愛く描くのは自信があるんだぜ?(一郎太)
>>将軍様 たまにはそういう人間らしいところも見せるべきだと思うんだ(一郎太)
>>ゆぎわ様 そりゃ、自分より上だと認めさせられちまったからなw(一郎太)
>>きまお様 ふひひ、その件については、既に猫姫で述べられてるんだぜ?(一郎太)
>>MNF様 こっちにもいるぜ!(一郎太)
>>不知火様 華琳様と冥琳様はいじられてこそ価値が発揮されると思うんだ(一郎太)
>>牛乳魔人様 秋蘭たんも欲しいなあ(一郎太)
>>ロンギヌス様 おまわりさん、こっちに変態がいます!(一郎太)
>>赤ペン様 次回からちょっと騒がしくなるよ!(一郎太)
>>ルルーシュ様 萌えるように書いてるからなんだぜ?(一郎太)
>>ハセヲ様 ふひひ、可愛く描いてるんだぜ?(一郎太)
>>ハリマエ様 ギャグパートは如何にキャラを崩壊させるかだと思うんだ(一郎太)
釣られて論破されちゃった華琳様、とってもかわいいですね!(summon)
ここはやっぱ春蘭が一番!(きたさん)
バカワイイ春蘭は最強ってことですね分かりますwww それにしても華琳様が原作のころからいじられキャラだったって思うようになってしまったのは誰のせいなのやら・・・(チラ)(happy envrem)
はい論破ーww(八幡の蟹鍋)
はあ〜、三人とも可愛いなあ〜〜〜。そして、前のコメントの返答どおり、一刀だめだししてされてる。でも、論破して仕返ししてるww・・・そういえば、魏での話は長めだなあ〜と思ったけど、一郎太さんの趣味だったのかww・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。(一丸)
確かにいじられ華淋ちゃんは可愛いなあw(morikyou)
えwwずwwけwwwww(オシリス)
餌付けされる春蘭可愛いですww(D8)
夏候惇将軍・・・・・・・萌えます!!!(アサシン)
素直な春蘭はかわいいなぁww(Alice.Magic)
春蘭の中で既に「一刀の焼鳥>華琳への悪口」という不等式が成り立っている…だと……? ギャグパートならではの状況ですな。(ロンリー浪人)
大衆向けにするには、味も必要だけどそれ以上に安さがないとこないからねぇ。 華琳にあ〜んをしてみたいな。(神木ヒカリ)
軽々と華琳様が論破されたwww 春蘭は可愛いなぁ♪( ´▽`)(アイネ)
春蘭の餌付け完了www 弄られ華琳も可愛いな〜♪(本郷 刃)
調教したい(ほいほい)
俺の中の春蘭株めっちゃ上昇中なんですけどww!!なんか春蘭が餌を待つ雛鳥にしか見えんww(前原 悠)
華琳さまがおばかわいいww 春蘭ちゃんさいこー(将軍)
オイオイ春蘭よ、目の前で華琳さまの意見が否定されてるぞw 餌付けされてどうするww(ゆぎわ)
かりんたんはドsだからこそ逆にえむっ気があると思うんだ!逆もまた真なりって言うし!PS2版無印の差し替えイベントでのメイドかりんたんは萌え萌えだったよ!・・・まあししゅんたんのが萌え萌えだったがな!(きまお)
淵「ハァ…ハァ……可愛いよ、姉者」 ( ゚Д゚)こ こ に も い た か(M.N.F.)
素直な春蘭さまも、若干放置されぎみの華琳さまもイイっ!(神余 雛)
一家に一人、春蘭たん(牛乳魔人)
華琳さまも可愛いなぁ・・・・ハァハァ(ロンギヌス)
今日も華琳は平常運転。本日是平穏也。(デーモン赤ペン)
やばい、春蘭萌える(ルルーシュ)
春蘭可愛い(*´д`*)アハァ(ハセヲ)
珍しく食に対して論破された華淋たん(黄昏☆ハリマエ)
タグ
真・恋姫†無双 一刀 金姫 可愛いなぁ、もぅ。 

一郎太さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com