超次元ゲイムネプテューヌ『女神と英雄のシンフォニー』チャプターU第7話『守りし者の証』
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「この先の旧鉱山跡で良いんだよな?」

 

「うん、エミルの集めてきた情報ならこの先であってるよ」

 

 エミルから預かった地図に目をやりながら声を掛けると、ネプテューヌも横から地図を覗き込み目的地となる場所を指差す。ちなみに、他のメンバーは居ない。依頼を受けている為、別行動となっている。と言うのも――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日のお仕事は従業員さんの救出らしいです。ラステイション中央区にお住まいのアヴニールさんからの投稿です!」

 

「投稿じゃなくて依頼な……」

 

 と、コンパの言葉にエミルからすぐさまツッコミが入る。

 

「列車に襲われて何とか生き延びた従業員さんが居るので助けて欲しい、だそうです!」

 

「えー、アヴニールの人助けるのー? 敵の味方してる人だよ? なんか釈然としなーい! 大体、従業員さんもアヴニールの人なら自分の工場で造った強い武器とか持ち歩いてないの!?」

 

 アヴニールを本格的になんとかすべき相手であると確定したその次の日にこの依頼だ。ネプテューヌから反対の言葉が起こるのはまぁ、当然の流れだろう

 

「ところがどっこい、そうも行かないですの。確かにそういう社員さんも居るかもですけどそういうのは大体課長や係長と言った重役ですの」

 

「だな。平社員なら精々、護身用にハンドガンの一丁でも持たされていれば良い方じゃないか?」

 

「残念ながらどっちもハズレ。アヴニールは社長の方針で人用の兵器は作ってないんだって。シアンが言ってた」

 

「やれやれ、サンシュの人間嫌いもそこまで来ると徹底的だな……。人間の社員はいらねぇ、ってか」

 

 ガストとケイトの予測にアイエフが正解を話すと、ベッドの上で太刀の手入れをしていたエミルが肩を竦める

 

「それに従業員さんは悪くないですぅ。そうやって助ける人をえり好みするのねぷねぷの悪いクセですよ!」

 

 確かに、アヴニールが悪行を行っているのは社長といった上層部の連中だろう。とは言え、どこか納得がいかない。そんな様子のネプテューヌにエミルが「ふむ……」と、顎に手をあてながら少し思案して――

 

「なら、その依頼は俺達の方で受けとくからネプテューヌには他のことお願いしても良いか?」

 

「他の事……?」

 

「ああ、ネプテューヌは教院の連中を探してきてくれ。うまくいけば、女神様ご本人に会えるかもしれない。そうでなくてもアヴニールを潰したとなればそれと繋がってる国政院もただじゃすまねぇ。そんな時に教院の連中も行方不明のままじゃマジで協会が潰れかねない。だからせめて所在と安否の方を確認してきてくれ、って訳だ」

 

「うん、それなら喜んで! けど、何処に居るの?」

 

「それを探してくれって言ってんだ。俺の方でも聞き込みをしてみたが、むしろ教院が追いやられてたって話自体初耳って奴ばっかでな……恐らく、アヴニールと国政院で情報操作されてるな、こりゃ」

 

「えーっ! それってもしかしてノーヒントでしらみつぶしに探せって事?」

 

「おっと、ヒントならあるぜ。どうやらここから少し離れた旧い鉱山に異端者が住んでいるらしい。異端者も協会の関係者。訪ねてみりゃ何かわかるんじゃねぇか?」

 

「なるほど……ところで、もしかして私一人?」

 

「そんな訳ないでしょ。そうね……ケイトとガストの二人が一緒なら丁度良いんじゃない?」

 

 と、アイエフが全員を見渡して組み分けを発表した所でガストが首を横に振った

 

「ちょっと待つですの、アイエフ。ガストはコンパと別行動という訳にはいかないですの、エニグマの事があるですの」

 

「ああ、そうよね。それじゃあ……」

 

「別にケイトとネプテューヌの二人でいいんじゃねぇか? 二人とも腕の方は問題ねぇんだし。ケイトに俺の携帯貸しとくから、なんかあったらそれで連絡って事でよ。使い方分るだろ?」

 

 そう言って、エミルは携帯をケイトに投げ渡し、ケイトはそれを開いて軽く弄り、すぐさま頷いて

 

「操作の方も地球で使ってたのとさして変わらないみたいだから、大丈夫だと思う」

 

「おう。一応言っとくがメールは見るなよ。プライベートだからな」

 

「分かってるよ」

 

 ケイトが携帯をポケットに仕舞うと、エミルの方も立ち上がると太刀を背に背負う

 

「うしっ、そんじゃ行動開始と行くかっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う経緯があり、ケイトとネプテューヌは二人で異端者居ると言う鉱山跡地を進んでいる。以前の事もありモンスターに警戒しつつ進んでいたが予想に反しモンスターの数は少なく散発的に襲われる程度だった。程なくして二人は、岩に腰を下ろしている老人を発見したのだった。以前、尋ねたギラギラした雰囲気とは対照的に、こちらはうな垂れており意気消沈している様にも見えた。

 

「誰かな、お前さんらは。こんな所までわざわざ、物見遊山でもあるまい。……ワシになんの様じゃ」

 

 やがてこちらの気配を感じたのか、ゆっくりと顔を上げ、二人の姿を視界に捉えると重く苦しく口を開く。

 

「辺境に追いやられたっていう教院のメンバーを探しているんだ。何か知らないか?」

 

「教院か。彼等は国政院に今の協会を奪われ、旧教会跡地コリーヌに身を寄せておると聞いたが……」

 

「なんと理想的な答え! もうなんか知りたいコト全部分かっちゃったカンジだよ!?」

 

「コリーヌ、か。ここからそんなに離れていないな」

 

 このまま真っ直ぐ訪ねても問題なさそうだな。そう判断すると地図を仕舞う。

 

「ところで、一応尋ねるがじいさんも街へ戻る気はないのか?」

 

「街へか?」

 

 と、ケイトの問いに聞き返すとそのまま溜め息を吐き、再びうな垂れ首を横に振る。

 

「街へ行っても、どうなるものでもあるまい。使いの者は現れんしワシは見限られたのじゃ」

 

「使いの者……もしかして、前に会った異端者が言ってたユニ、ユニ……ユニオン、だっけ?」

 

「ユニミテス、な。そもそも、ユニミテスの使いの者は何が目的であんたらを訪ねているんだ?」

 

 ユニミテスは人類を滅ぼす邪神とされている。もしほんとに実在するのなら、何故いきなり世界を滅ぼすのではなく使いの者を寄越すのか?アヴニールの問題とは殆ど関係ないが、どこか気になったケイトはその質問を目の前の老人にぶつけた。

 

「使いの者は、ワシ等に魔王ユニミテスの脅威から救われる方法を教えてくれたんじゃ……。じゃが、もうそれが行えんのじゃ」

 

 ますます持っておかしい。滅びをもたらす者の筈なのになんでわざわざそれを回避する方法を教える必要がある。自分が考えられる理由としてはその使いの者は実はユニミテスに敵対する存在である事、もう一つがユニミテスの存在自体が偽者である事の二つだ。

 

「……他に、何か聞きたい事はあるか……? 無いならワシの事はそっとしておいてくれ」

 

 そうは言うが、老人の雰囲気からはもう関わらないでくれと言うオーラがひしひしと出ており、訊くに訊けない状態だった為、二人は顔を合わせた後にケイトが「そうか……ありがとな」と、軽く礼を言ってから老人の元を去ったのだった

 

「これから、どうするの?」

 

「このまま、コリーヌに行って教院のメンバーの無事を確かめる。その後は、彼らから詳しい事情を聞いいて……の、前に、ネプテューヌ武器を構えろ」

 

「どうしたの? もしかして、モンスター?」

 

「いや、モンスターと言うより……」

 

 表情を険しくしたケイトの視線の先、そこには逆間接の二脚に腕の変わりに、ガトリングアームが装備された顔と胴が一体となっている数機のロボットが誰かと戦っている

 

「ここから先は通さない……みんなには指一本触れさせないんだからっ!」

 

 それは黒のツインテールをした少女、ノワール。彼女が剣に手を添えると、刀身が虹色に輝く光に包まれ

 

「トルネレイド……ソードっ!」

 

 その状態で剣を横になぎ払うとロボットの脚部が斬られ、地面に倒れる。そして胴体に剣を突き刺し、離れるとそいつはそのまま爆散。すると、残りの機体が彼女に銃口を向け、一斉射。だが、飛んでくる弾丸の嵐を避けつつ隙を見て跳躍。そのまま、二機目を縦に真っ二つにした

 

「すっご〜い……」

 

 最初は一方的に襲われていると思っていたがどう見ても少女の方が押している。その強さにネプテューヌが感嘆の声を上げる。その横でケイトは棒術具を構えて――

 

「感心するのは後にしとけ。兎に角、今は加勢するぞっ!」

 

 そういうや否や、ケイトは走り始めノワールに銃口を向けていた一体のロボットを棒術具で殴り飛ばす

 

「え……!?」

 

「大丈夫か? って、訊くまでも無さそうだな」

 

「あなた……」

 

 ノワールがケイトに対して、何かを言おうとしたその直後――

 

「エクスブレイドっ!」

 

 その時、ロボットの一体を青い剣が貫き、ロボットと爆発させる。

 

「ネプテューヌ、その技。変身しなくても使えたのか?」

 

「いや〜……もしかしたらーって、ふと思って試してみたら見事に出来ちゃいました! 的な感じで」

 

「っ!? ネプテューヌ!」

 

「えっ、どちら様? 私の事知ってるの?」

 

「何をとぼけた事言って――」

 

「二人とも、悪いが話は後にしてくれないかっ!」

 

 えへへ〜、と手をこちらに向けた状態でニコニコしているネプテューヌをノワール睨みつけ、口を開こうとすると同時にケイトが捻糸棍を直撃させて相手を怯ませながら、先に声を上げる

 

「っとと、そうだった。それじゃ、とっとと片付けちゃおっか!!」

 

「別に貴方の助けなんて必要な――」

 

 ケイトの言葉を肯定する様に飛んできた銃弾を避ける。確かにまともに話すことも出来ない状況だった為、ノワールは仕方なく二人と背中を預ける形で立ち、剣を構える

 

「ああ、もうっ! 分ったわよ、今回だけだからねっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、ラストっ!」

 

 空中で体を縦に回転させ、その勢いを乗せた金剛撃をロボットの胴体に振り下ろす。グシャリと胴体をひしゃげさせ、横に倒れると同時に爆散したところで周囲からロボットの集団は見当たらなくなり、辺りにはその残骸や薬莢が散らばっているだけだった。ケイトが構えを解き、ネプテューヌも武器を仕舞う。が、ノワールだけは剣を鞘に戻さず、ネプテューヌを睨みつける

 

「これで余計な邪魔は居なくなったわね。何でこんな所に居るのか分らないけど、丁度いいわ。決着をつけるわよ、ネプテューヌッ!」

 

「ストップ、ストップ!! えーと……会ったことある人?? ゴメン、忘れちゃった。どこの大陸の何々さん?」

 

「えっ……?」

 

 そして、その切っ先をネプテューヌに向けると、彼女は慌てた様に口を開き、その言葉を聞いたノワールも鋭かった目つきが、驚きで見開かれ剣の切っ先を下げた

 

「やっぱり聞き覚えない。でも、知り合いなんだよね? ごめん。物覚え、あんま良くないんだー。こんなんだから平気で記憶をなくしちゃったりするんだよね。いやーめんぼくない」

 

「ネプテューヌ、アナタ記憶がないの? 一体どうして……あ、そうか、そう言う事ね、そう言う事か……」

 

 しばらく彼女を見詰めていたノワールだったが、やがて納得した様にな声を出すと剣を鞘に収めた

 

「うん、忘れちゃってるの。ずいぶん前からね。分かるのは変身できる事と名前ぐらい」

 

「そう……」

 

「まぁ、でもあんたはネプテューヌの事知ってるんだろ? だったら――」

 

「ちょっと待って!」

 

 教えてくれないか。と言う言葉はネプテューヌによって遮られてしまった

 

「そんなことよりこの子、所々怪我してる」

 

「私の記憶の事より、この子の怪我の手当てが先だよ! とりあえずこのままコリーヌに行こうっ!!」

 

「えっ? ちょっ……いや、その。あぁ……」

 

 言うや否や、ネプテューヌはノワールの手を掴むとそのまま走り始める。その様子をしばし呆然と眺めていたケイトだったがやがて溜め息+苦笑を浮かべながら二人の後に続くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが旧教会跡地、コリーヌか……」

 

「ええ……ここは元々、ラスティションの都心部でもあったのよ。それを現在の場所に移してから協会の方も今の場所に移ったの。ほら、周りに古い建築物の後が残ってるでしょ?」

 

 ボロボロではあるが、都心部に建っているのと同じ造りの建物を見上げながらケイトが呟くとノワールがそれに応え、あたりを見渡す。確かに古い石材等があたりに落ちていたりしている。が、同時に明からに昔のものとは違う機械の残骸なども目に付き、ケイトは一瞬目を細めたがすぐに目的の建物に向き直る。

 

「とりあえず、中に入ってみるか」

 

 そう言うと、ケイトは何故か片手に棒術具を握りながらドアノブに手を掛け、そして一瞬の間の後に勢い良ドアを開け放つ。と、同時に何かが振り下ろされ、それを棒術具で受け止めた

 

「ったく、あんたらも懲りねぇな。何度来ようがみんなには……って、ケイト?」

 

「アゼル……? 流石にあんたが居るのは予想外だったな」

 

 周りの状況から中の人間が警戒体制なのは予想出来た。予測どおり、奥のほうにはライフルや拳銃を持った人々の姿。が、まさか自分の親友が居るのには驚いた。二人がそれぞれの得物を下げると同時にノワールがみんなの前に立つ。

 

「みんな……大丈夫?」

 

「ノワール!?」

 

 アゼルが驚愕の表情を浮かべると同時に彼の後ろに居た人々も「ノワール様だ……」「なんでここに?」等、一気にざわめき出す

 

「えっ、何? この子も協会の関係者だったの?」

 

「とりあえず、改めて自己紹介しようかしらね」

 

 ネプテューヌの疑問の声にノワールはクスリと笑みを浮かべて二人の方を振り返る

 

「はじめまして、私の名はノワール・ラスティ・ブラックハート。この大陸ラステイションを治める、女神よ」

 

 その自己紹介にケイトとネプテューヌは一瞬だけポカンとし、そして、同時に驚きの声を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、アゼルはあれからずっとここに居たのか?」

 

「まぁな」

 

 あれから、ノワールとネプテューヌは女神の間と呼ばれる女神様をお迎えする場所に通されており、ケイトは強化のエントランスでアゼルと話していた

 

「やっぱり、国政院やアヴニールが?」

 

「ああ、教院のみんなを始末しようと頻繁襲撃してくる。外に機械の残骸が転がってただろ?」

 

「やっぱあれがそうなのか……」

 

 明らかに建築物とは違う、機械の残骸にドアを開けた直後のアゼルの攻撃から、恐らくはそうだろうなと予想できていた

 

「とはいえ、まさかノワールを追いやるとはな。国政院の連中、本格的にアヴニールと結託して大陸を乗っ取るつもりだな……って、どうかしたか、ケイト? 俺の顔なんかじっと見つめて」

 

 自分の手の平に拳を打ちつけながらアゼルが苦々しげに吐き捨てる。が、やがてこちらを見つめているケイトの視線に気付き、視線を彼の方に向けた

 

「いや、大した事じゃないんだが……アゼル、あんたは今何をやっているんだ?」

 

「何を、ってのは?」

 

「とりあえず、アゼルが協会に勤めているのは判った」

 

 大陸の政や軍をもって治安維持を引き受ける組織だ。確かにみんなを守る、と言うアゼルの目的には沿っている。が――

 

「自分が仕えている女神を呼び捨て、普通ならば不敬に当たるんじゃないか?」

 

「ああ、その事か。まぁ、協会で働いている、って、言うのは間違っちゃいないが厳密には俺は教院でも国政院のメンバーってわけでもねぇんだ」

 

「じゃあ、一体――」

 

 ケイトが言葉を発せたのはここまでだった。爆音と共に、建物が大きく揺れて、バランスを崩しかける。

 

「これはっ!?」

 

「アゼルっ!!」

 

 その直後、協会の奥から二人も大急ぎでこちらにやってきた。そんな中、アゼルだけは表情を険しくしながらも落ち着いている

 

「早速、おいでなすったって訳だな……ケイト」

 

「どうした?」

 

 自身の得物であるトンファーを手に持ち、アゼルは協会の出入り口に向かい、ドアの取っ手に手を掛けながらケイトの方を振り向いた

 

「ついてきな。さっきの質問の答え、口で言うより実際に見てもらった方が早いだろ?」

 

「判った。どの道、あいつらも放置する事もできないしな」

 

「ノワールとネプテューヌは念の為、ここに残って教院のみんなを頼む」

 

「え〜っ!? そんなのヤダっ! 私も「ネプテューヌ」

 

 自分も戦う気満々と太刀を構えたネプテューヌの肩にノワールが手を置いた

 

「大丈夫、ここは彼に任せて。アゼル……お願いね」

 

「任せとけって! 俺は何時だって、みんなを守るナイトなんだぜ!」

 

 そう言って、ドアを開け放ち、アゼルは表へと飛び出しケイトもそれに続く。やがて、二人の目には何体かの機械兵器。ケイト達がさっき戦った奴と違い、こちらは人型のロボットだ。各々の手にはマシンガンやビームライフルが握られている。

 

「アヴニールはこんな兵器まで……」

 

「アヴニールお得意の自立軌道型ロボットって奴だな。とは言え、今日は割りと数が少ねぇな」

 

「これで、か?」

 

 確かにさっきの集団よりは数は少ない。が、どう見ても今目の前にいるロボットの方が性能は上だろう。やがて、相手のカメラアイが二人の姿を捕らえると、一斉に武器の銃口が向けられる。ケイトが武器を構えようとするが、アゼルが軽くケイトの肩を叩いて止めるとゆっくりとロボットに近づいていく

 

「ケイトはそこで見てな。これぐらいなら俺一人でも十分だ」

 

「ちょっと待てよ。幾ら戦えても、人間一人でどうにか相手じゃ――」

 

「人間なら……な」

 

「何を?」

 

 やがて、アゼルは立ち止まりそっと目を伏せる。すると、彼の周囲の空気が張り詰める。

 

「ケイト、見ていろ。これが人としての俺を捧げ、そしてアイツがくれた……」

 

 やがてゆっくりとその目を開けた。特に珍しくも無い黒のはずだったそれは薄い水色に変化している

 

「みんなを守る為の力だっ!」

 

 そしてアゼルは使う。人を捨て、故郷を捨て、それでも掴み取る事を選んだ、その力を――

 

「ブラックガード……トランスっ!!」

 

 ネプテューヌが変身する時と同じ、光の柱がアゼルを包む。そして、それに向かって、一斉にロボット達は武器の引き金を引く。一斉に飛んでくる銃弾やレーザーの嵐、だが、光が晴れると同時にそれは全て弾かれた。跳ね返された攻撃の一部がロボットに直撃し、2体ほど地面に沈み機能を停止させる。そして光が晴れると同時に現れたアゼルはトンファーを振りぬいた格好で止まっている。

 

「アゼル……お前、その姿は?」

 

 赤を基調としたシャツは裾が足元まで伸びた黒のミリタリーコートに代わり、コートの下からは白いポロシャツが姿を覗かせている。手に持っていたトンファーも無骨な鉄の塊ではなく、より機械的なデザインになり、こちらも黒がベースで縁の当たりは白くなり、グリップと本体が繋がっている部分に球体状の赤いクリスタルが輝く。そして、黒かった筈の髪は鮮やかな白へと変化している。

 

「俺は守護者……女神と共に大陸を、そしてそこに住むみんなを守る為に戦う存在……」

 

 地球ではどれだけ望んでも得る事ができなかった誰かを守る為に戦う事。その夢は今や自分にとっての存在理由そのものとなった。誇りに思う事はあれど、何を嘆く必要があるだろうか。

 

「ブラックガードナー! アゼル・ハイウィンドだ!!」

 

 決意、そして歓喜。その全てを込めて、アゼルは守りし者の証。黒翼双撃鞭『ラステイション』を構え、声高らかに名乗り上げた

説明
シアンからの依頼の途中、再会したエミルから語られた協会とアヴニールの真実。それはアヴニールは大陸の為に打倒すべき相手と確定付ける内容だった。正式にエミルを加えて、打倒アヴニールに向けて動き出す中、一つの出会いが起こる
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