平和的話し合い
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「あのさ、お前って何のために平和を訴えてんの?」

 

金色に染めた髪の青年は目の前の黒髪に黒縁眼鏡を掛けた男に問い掛けた。

 

「人を殺すのはダメだって言うのはまだわかるんだけどさ。衝動的に殺したくなったっていう理由で殺された側の遺族の気持ちはどうしたらいいんだよ」

 

「それは…法が裁くだろう?」

 

男の言葉に青年は鼻で笑った。

法は確かに裁きを与えるが、結局の所今の世の中で守られているのは被害者側のものではなく加害者側のものである。

テレビなどの報道を見ててもそう感じる。

 

「法が裁くのはそいつの罪であってそいつのやった所業についてじゃないだろ。結局は裁く側だって人間だし情があると緩くなるだろ。同じ犯罪をしても、有名人か否かで違うじゃん」

 

「それは……」

 

「それにさ、俺は平和を得るためなら争いは必要だと思うんだよ」

 

「何故?」

 

「世の中の奴等が善人ばかりならともかく、そうじゃないから」

 

善人ばかりの世の中ならば争いは起きない。

確かにそうかもしれないが、人間は欲深いもので平等に金を与え地位を与えても何かしら不満を持つ。

それが、他人の顔の良し悪しだったり性格であったり頭の回転の速さだったりと。

争いをなくす方法はないかもしれないが、平和的な世の中を作るための方法ならばあると男は信じている。

だからこそ青年の言葉には同意しかねた。

 

「私は平和という世の中を作る上で、争いを行わずに出来る方法もあると信じているよ」

 

「綺麗事だよな」

 

「人は幸いにも口がある。話せるじゃないか。話し合いで解決出来る事はそうするべきだよ」

 

虫唾が走る。

青年は不快そうに眉を寄せ舌打ちを行った。

いくらそんな事を言っても、結局の所は穏やかな話し合いなど存在しない。

腹の探り合いをして行う者たちもいる。

のんびり茶を飲んで終わる話し合いなど、幼い子供たちの戯れで行えるかどうかというものである。

青年は小さく溜息を漏らした後に目の前の男に向かってこう告げた。

 

「俺はさ…。妹を殺されても相手の奴を許してやるほど心は広くないんだよ」

 

「心が狭いな、君は」

 

「生憎と俺の心はソコにある湖よりも狭いんだよ」

 

「私には理解できないね」

 

全くもって理解が出来ない。

そんな感情を表に出して男は不思議そうに首を傾げて見せた。

彼の様子を見て青年は薄く嗤いただ一言だけ語った。

 

「誰かを奪われた奴にしかわからない気持ちもあるんだよ、犯人さん」

説明
即興小説トレーニングにてのものです。お題は「平和と湖」でした。15分で書き上げるのはやはり難しいです…。
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