ソードアート・オンライン フェイク・オブ・バレット 第九話 決戦
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デュオ視点

足元を生暖かい風が過ぎていく。

GGO最強のプレイヤーを決めるBoBは、もうすでに開始からかなりの時間が経っていて、太陽は沈みかけ、辺りは少しずつ薄暗くなり始めている

俺は洞窟から外に出てスキャンを待つ。

奇襲に備えるため、洞窟の入り口にはシノンが待機している

 

デュオ「時間か・・・」

 

定時と共に端末を見る。

素早くドットを確認すると、1km弱の地点でドットが消えた。

端末に表示されてから0.1秒の出来事だったが、俺はそれを見逃さなかった。

誰かを【消した】のか、自分が迷彩を使ったのかは分からないが、間違いなくそこにステルベンがいることだけは分かった。

次に俺は、今端末に表示されているプレイヤーを確認する。

一番近いのは、北2km弱の地点にいるプレイヤー、名前は闇風。

前大会準優勝の実力者で、シノンによると敏捷重視のミドルレンジ型らしい。

すると、廃墟で密接していた2つのドットが消えた。

これで、このフィールドで生きているのは、洞窟に隠れているシノンと光歪曲迷彩でスキャンを回避しているステルベン、そして俺と闇風の4人だけになった。

俺が見ている間に、闇風はかなりの速度でこちらに移動を始めた。

だが、問題はそこではない。

確認すると、キリトの名前がない。

それはつまり、洞窟か何かでスキャンをやり過ごしたか、ゲームオーバーになったか、あるいは・・・死銃に【消された】ということになる。

前の2つであれば良いが、【消された】のだと考えると、俺はキリトを消したステルベンと、時間稼ぎのためにキリトをステルベンと戦わせた自分が許せなくなった。

 

デュオ〈無事でいてくれよ・・・〉

 

ログアウトしてキリトの無事を確認したくなる衝動を抑えて念じると、頭上を監視衛星が飛び去り、光の点が全て消えたのを確認する。

俺はその場を離れると、洞窟で待つシノンの元へ戻った。

 

シノン「どうだった?」

 

デュオ「残っているのは俺とシノン、それにステルスで隠れてる死銃を含めて4人。死んだ点をいちいち数えている暇はなかったから俺たちと同じように洞穴に隠れている可能性は否定できない。闇風はかなりの速さでこちらに接近してるから、早めに迎撃したほうがいい。」

 

シノン「なら、私はこの洞穴の上から闇風を狙撃する。」

 

デュオ「了解。なら俺はステルベンを殺る。」

 

闇風はシノンに任せて俺はステルベンに集中するとしよう

 

デュオ「じゃあ、シノン。俺の背中は任せた。」

 

シノン「わかった。」

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シノンと別れて洞窟を出ると、俺はステルベンが消えた地点に向かって疾走する。

その時、一発の銃声が辺りに響き渡る。

おそらく、闇風をシノンが狙撃した音だろうが俺は振り返ることなく走り続ける。

すると、行く先で、オレンジ色の光が瞬いた。

発射炎だ。

俺はすぐさま左手に持ったコルト・パイソンハンターを構えて、引き金を引く。

手首に軽い衝撃が伝わり、発射炎とともに弾丸が飛び出す。

それは飛来した弾丸と激突し、硬質の音を立てる。

俺は腰から光剣を抜き取ると、速度を落とさずステルベンに迫る。

さらに1発、もう1発と弾丸が飛来するが、初弾を迎撃した時点で、もう予測線が見えている俺は、2発目を光剣で、3発目をリボルバーで撃ち落す。

ステルベンまでの距離が数百mまで迫り、その姿を肉眼で捉えた時、後方から弾道予測線が現れ、それを見たステルベンがぴくりと動く。

素早くL115を動かし、銃口を自分に刺さっている弾道予測線に合わせる。

直後、轟音が響き、同時にステルベンのライフルも小さな火炎をほとばしらせる。

L115の放った弾は、後方に飛び去り、それと入れ替わるようにして飛来した弾丸がL115のレシーバーに命中した。

ステルベンの腕の中で小型の火球が輝き、L115の中心部がポリゴンのかけらとなって吹き飛んだ。

残されたストックやスコープ、バレルなどのパーツが砂の上に落下する。

遠距離攻撃用のスナイパーライフルを失ったステルベンは、足掻くつもりはないらしく、L115のバレルをぶら下げたまま、サボテンの陰から這い出して、ゆらりと立ち上がった。

そして、両手でバレルを水平に掲げると、まるで剣を鞘から引き抜くような動作で、銃身の下から細い棒を抜き出した。

その先端は鋭く尖り、針のようになっている。

 

デュオ〈エストック!?〉

 

それに気づいた瞬間、死銃の正体が誰なのかを悟った。

俺は、動きを止めず光剣を振り被り、ステルベン目掛けて振り下ろす。

ステルベンはそれを回避すると、バネ仕掛けの人形のような動きで、右手のエストックを突き出してきた。

俺は振り切った光剣を振り上げ、エストックを迎撃しようとする。

弾丸すら切り裂く光剣に、あんな棒が切れないわけがない。

そう思っていたが、光剣はエストックに激突するとバチバチと火花を散らす。

 

デュオ〈何・・・!?〉

 

驚いたことにエストックは、接触部を焦がしているだけで、俺の光剣を受け止めている。

 

ステルベン「ほう?受け止めたか。だが、おかしいな。光学武器は物体を貫通するはずなんだがな。」

 

デュオ「生憎、俺の光剣はカスタマイズしてあるんでな。」

 

ステルベンの言葉に、俺は半ば反射的に答えてから、光剣に力を込めて、ステルベンのエストックを押し返す。

押し返されたステルベンは、後方に跳ぶと、軋むような呼吸音を漏らす。

 

デュオ「珍しいな。エストックを使う奴はそうそういない。まあ、そのお蔭でお前の正体が分かったよ。」

 

ステルベン「思い出したか、((紅蓮の劫火|レッド・プロミネンス))デュオ。」

 

デュオ「ああ、久しぶりだなラフィン・コフィン幹部、赤眼のザザ!」

 

俺はこの時、SAOでの対((笑う棺桶|ラフィン・コフィン))戦を思い出していた。

リーダーであるPoHの右腕にしてエストック使い、赤眼のザザ。

スピードだけならば、あの閃光と謳われたアスナさえも凌駕してみせた。

討伐戦で戦うことはなかったが、フィールドで遭遇するたびに、幾度となく戦闘を繰り広げた相手だ。

 

デュオ「あの時は仕留め損ねたが、今度はそうはいかない。てめえは俺が倒す。」

 

ステルベン「ククッ。殺すといわないところを見ると、まだ冷静さを保っているらしいな。」

 

デュオ「お望みなら、本気でやってやるぜ。」

 

俺はわざと奴の挑発に乗った。

思考がクリアになり、視界が赤くなっていくのが分かる。

そして、自分の目的、つまりステルベンの撃破以外のことが考えられなくなった。

 

デュオ「「行くぞ、ザザ!!」」

 

ステルベン「来い、デュオ!!今度こそ貴様を葬ってやる!!」

 

俺たちはそう言って、戦闘を開始した。

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俺とザザは、互いにかなり近くまで接近し、超至近距離での打ち合いを続ける。

俺は光剣を振ってエストックを迎撃しながら、左手のリボルバーを撃ち込む。

対するザザは、攻撃を行いながら、銃弾と光剣の両方を防御している。

いかにエストックがスピード重視の武器とはいっても、その剣捌きはさすがである。

エストックは、突きという点での攻撃が得意である。

それは逆に、防御が弱いということでもある。

剣速は最速だろうが、それに反比例するかのように剣自体の強度は低い。

それ故に、エストック使いと戦うときは守勢に入らず常に攻勢に出続ける必要がある。

しかし、どういうわけかは奴の持つエストックは、光剣で切っても、銃弾を受けても折れる気配はない。

 

ステルベン「やはり狂気に満ちたお前は強いな。」

 

打ち合いの最中、唐突にザザが言った。

俺は無言のまま、攻撃を続ける。

 

ステルベン「ククッ。だが、お前は俺には勝てない。俺はお前を打ち破り、お前の仲間を殺すだけだ。無様に負けて倒れ、地に這いつくばって見ているがいい。お前の大切なものが儚く散る様を。」

 

俺は怒りを抑えると、ザザに言い返す。

 

デュオ「どうかな・・・地を這うのはてめえだ。俺はもう2度と、てめえらみたいな奴らに、俺の仲間を、大切な人を奪わせない!」

 

ステルベン「くだらないな。人と人の繋がりなんて脆いものだ。結局、人は自分可愛さに罪を犯す。お前も俺もそうだ。忘れたとは言わせないぞ?あの日、あの洞窟で三人もの人を殺したことを。他にも数え切れないほどのプレイヤーをその手で葬ったことを。」

 

デュオ「忘れてなんかねえよ。確かに俺は、躊躇なく人を殺した。それは変わらない。だが、俺はそのことを後悔していない。俺は奴らを斬り殺し、罪を背負うことで、奴らによる犠牲者をなくした。」

 

ステルベン「それは、ただの詭弁だ。」

 

ザザはそう吐き捨てた。

 

デュオ「そうかもな。」

 

俺は笑う。

詭弁であることも理解しているし、何より俺のしたことは、奴らの未来を奪っただけだと知っているから。

 

デュオ「だが、詭弁だろうが、俺は後悔しない。俺は仲間を守るためなら、喜んで罪を背負う。」

 

俺がそう言うと、ザザは嘲笑気味に笑った。

 

ステルベン「ただの自己満足だな。それは俺たちのしていることの何も変わらない。」

 

デュオ「ああそうだ。ただの自己満足だ。」

 

ステルベン「ククッ・・・いいだろう。俺はお前を倒した後、あの女を殺し、お前のやっていることは何の価値もないことを教えてやる。」

 

もはや、語ることは無いといった感じで、ザザは話を打ち切る。

 

デュオ「生きている価値もない俺の行いに、価値がないのは当たり前だ。それに価値がないのはてめえのやってることも同じだ。」

 

俺は再び戦闘モードに入り、全力での打ち合いを再開する。

足場が砂場ということも重なり、時折ダメージが入るがそれはザザも同じだ。

奴のエストックが俺の体を擦る。

残りHPはすでに30%を切っている。

俺は光剣を大振りして、ザザを下がらせると言った。

 

デュオ「てめえは弱い。キリトよりもそして俺よりも、はるかに弱い。」

 

ステルベン「・・・なにが言いたい」

 

デュオ「個の力では・・・よほどの実力差がなければ、群の力には勝てない。」

 

ステルベン「ククッ・・・可笑しなことを言う。お前の言うとおりなら、個の力で上回る俺の勝ちだ。」

 

デュオ「独りで戦ってるのはてめえだけだ。俺はもう、独りじゃない!!」

 

ステルベン「なに・・・?」

 

眉をひそめたザザの体に一条の赤いラインが突き刺さる。

ザザは瞬時に後ろに跳ぶ。

しかし、それは大きなミスだ。

いかにシノンが腕のいいスナイパーだとしても、俺に当たる可能性が高く、ステルベンにかわされる可能性が高いこの状況で撃つわけがないのは冷静に考えればすぐに分かる。

だが、ザザがそれに気づいたのは回避行動をとってからだったようだ。

このチャンスを逃す手はない。

 

デュオ「くらえ!!」

 

隙だらけになったザザに、光剣を叩きつけるように一閃。

だが、ザザも諦めてはいない。

光歪曲迷彩を発動し、姿を隠そうとする。

いくら光剣でも、クリティカルポイントに攻撃を当てなければ、HPを削りきることは出来ないだろう。

 

ステルベン「ククッ・・・結局俺の勝ちだ」

 

エストックを取り出していたザザは、勝ち誇ったような声色で振りかぶり、そのエストックを構える。

だが、俺は普通の状態に戻ると、逆に不敵な笑いを浮かべる。

 

デュオ「俺に意識を向けすぎだ。」

 

その瞬間、俺の前方、ザザの後方から疾走してきた二刀流の光剣使いが、ザザの体を切り裂いた。

分断されたアバターの上半身が宙を舞う。

 

キリト「死銃、お前の計画もこれで終わりだ。」

 

俺とキリトは光剣を構えると、落下してきたザザの上半身を切り裂いた。

 

ステルベン「俺を・・・倒しても・・・あの方が・・・」

 

斬り裂かれ、消滅寸前のザザが切れ切れに言葉を発した。

 

デュオ「残念だがそれは無い。これでチェックメイトだ。ラフィン・コフィン。」

 

地面に落ち、Deadタグを浮かべ始めたザザに向かって、俺は吐き捨てた。

説明
デュオVSステルベンです。
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コメント
kaitoさんへ 川を泳いで渡ってから、全力疾走してきました。(やぎすけ)
キリトはどこから出てきた!?(kaito)
本郷 刃さんへ ザザはいろいろな意味で、彼らに因縁がありますから。(やぎすけ)
GGOにおいてはデュオ、キリト、シノンのトリオによってザザを打ち倒しましたね。さて、リアルの方はどう動くのか・・・。(本郷 刃)
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