天使と悪魔の代理戦争 第六話 |
翌日、習い事のあるアリサちゃんとすずかちゃん、アルバイト――と言っていいのか分からないけど――がある白くんと別れて、いつもの様に普通に付いて来ようとする帝威くんと真神くんを振り切っての下校中、近くでジュエルシードが発動した。
「弥雲くん、行こう!」
「うん、なのはちゃん!」
[二人とも、僕が行くまで待って!]
[待てない! 人や生き物が巻き込まれるかも知れないんだから!]
念話で話しかけてきたユーノになのはちゃんがそう言って返し、僕たちはジュエルシードが発動した所へと走っていく。
ジュエルシードの発生地点へと駆けつけると、そこではいくつもの雷撃が降っていた。
(もしかして、他にも魔導師が?)
「レイジングハート、これから努力して経験積んでくよ。だから教えて、どうすればいいか」
『全力にて承ります』
レイジングハートは力強く答える。
『Stand by ready』
「レイジングハート!」
「エルディナ!」
「「セットアップ!」」
僕たちはバリアジャケットに身を包み、それぞれの愛機を手にして空へと舞い上がる。
すると、虎のようなネコ科の生物と黒いマントを着た金髪の僕たちと同い年位の女の子が戦っていた。
「ディナ、あの虎みたいなのも異相体なの?」
『はい。どうやら生物を取り込んでいる様です。この前よりも手ごわいかもしれません、ご注意を』
「分かった。なのはちゃん、まずは僕が――」
そこまで言った時、なのはちゃんは二又の槍のような形のカノンモードに変えたレイジングハートを突き出し、全身から桜色の魔力を出して突撃していった。
「ちょっとなのはちゃーん!」
(確かにそれだと制御は簡単かもしれないけどさ、危ないよ!?)
僕は彼女より大分遅れる飛行速度でその後を心配しながら追うと、なのはちゃんの突撃は無事に猫型の異相体に激突した。
「ジュエルシード、封印!」
『Sealing』
なのはちゃんはそのままジュエルシードを封印しようとしたけど、猫型異相体は下半身をズルリと脱ぐように逃げた。骨が見えてて気持ち悪い。
上空に逃げた猫型異相体だったが、そこには黒い女の子が待ち構えていた。
『((Scythe|サイズ)) ((Form|フォーム))』
彼女の持つ黒い杖が変形し、金色の魔力刃が発生する。
「ジュエルシード、封印!」
その言葉と共に放たれた一閃は猫型異相体を切り裂き、爆発の後にジュエルシードが残り、取り込まれていた猫は地面に落下した。
「待って!」
ジュエルシードを取ろうとした少女になのはちゃんが声をかけて引き止める。
黒い少女はなのはちゃんに斧のような杖を向け、紫電を放つ金色の魔力弾を数個展開する。それを見たなのはちゃんは桜色の羽を足に展開して同じ高さまで飛び上がる。僕もその後ろに移動する。
「あなたもジュエルシードを探してるの……?」
『Fire』
おずおずと質問したなのはちゃんへの返答は、言葉ではなく魔力弾による攻撃だった。
なのはちゃんはそれを飛び上がって避け、僕は自分に向かってきたそれをバリアで防ぐ。
その時、黒い女の子はなのはちゃんの後ろに回り込んでいた。
(速い! 本気の恭也さん並みのスピードだ!)
その速さに驚嘆していると、黒い女の子はその杖を斧から鎌へ変えて振りかざしていた。
『((Scythe|サイズ)) ((slash|スラッシュ))』
金色の刃が振るわれ、間一髪((躱|かわ))したなのはちゃんのバリアジャケットの裾を刈り取る。
「やぁぁぁ!」
僕はその後ろから斬りかかる。それは鎌で受け止められ、金属音が響き火花が飛び散る。
「君、いきなり攻撃するなんて危ないんじゃないの!?」
「……私とジュエルシードに関わらないで」
会話をする気の無い、拒絶の意が込められた言葉が返ってくる。
『((Arc|アーク)) ((Saber|セイバー))』
距離を取られ、鎌が振るわれるとその三日月の刃が回転しながらこちらを襲ってきた。
『((Saber|セイバー)) ((explode|エクスプロード))』
変則的な機動で迫るそれをバリアで防ぐと、バリアに接触した瞬間に爆発が起こった。
「うぁ!」
バリアを破られ吹き飛ばされた僕に、更に追い討ちの魔力弾が直撃した。
「弥雲くん!」
僕を心配したなのはちゃんが急降下して受け止めてくれたが、その間に黒い女の子はジュエルシードを持って行ってしまった。
「ごめん、なのはちゃん……」
僕のせいでジュエルシードを取られてしまった事に謝る。
「それよりも大丈夫、怪我してない?」
「うん、大丈夫――痛っ」
突如奔った痛みに顔を((顰|しか))め、痛みを感じた左腕に手を当てる。先ほど魔力弾が直撃したせいかそれとも落下したせいか、そこから血が出ていた。
「早く手当てしないと!」
なのはちゃんが慌て始めた時、ユーノくんが現れた。
「なのは、弥雲、大丈夫!?」
「あ、ユーノくん。弥雲くんが怪我しちゃったの! 早く手当てしないと……」
「僕に任せて、回復系の魔法を使えるから」
ユーノくんは緑色の魔法陣を展開させると、僕の左腕を同色の光が包む。
腕の怪我を治療されながら、僕はある一つのことを思い出した。
『――ごめんね』
(あれは一体、どういう事だったんだろう?)
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