ソードアート・オンライン フェイク・オブ・バレット 第十話 決着 |
デュオ視点
ザザの消滅を確認した俺たちは、お互いに顔を見合わせる。
デュオ「終わったな・・・」
キリト「ああ、やっとな・・・」
そう言って光剣を腰に下げると、俺たちはシノンのいる岩山に向かって歩き出す。
歩き始めてすぐ、俺はキリトに言った。
デュオ「まったく、来るのが遅いぞ。何してたんだよ?」
キリト「んなっ!?こっちだって大変だったんだぜ。衛星スキャンでお前の位置を見つけてから、川を泳いで、その後は全力疾走してきたんだからな。」
デュオ「それにしたって遅すぎるだろ。まあ、間に合ったから良かったけど・・・」
キリト「お前なら、勝てない相手じゃないだろ?」
デュオ「大剣があればいけるだろうけど、今俺が持ってるのは、リーチも幅も重さもまったく違う光剣だ。慣れない武器であそこまでやり合えたのは、半分奇跡だ。」
キリト「なるほど・・・確かに、重さが違うだけの俺より扱うのは苦戦しそうだな。」
そんなやり取りをしながら歩いていくと、スコープの失われた愛銃、ヘカートを抱えたシノンが歩いてきた。
シノンは一瞬唇を開きかけたが、何も言わずに閉じる。
デュオ「闇風は?」
俺が聞くと、シノンは当然のことのように答える。
シノン「とっくに倒したわ。あと残ってるのは、私たち3人だけよ。」
デュオ「なら、そろそろ大会のほうも終わらせるするか。」
俺が動こうとすると、キリトがそれを止める。
キリト「その前に、2人に話しておかなくちゃいけないことがある。死銃の犯行方法のことなんだ。」
シノン「っ!?」
デュオ「・・・聞かせてもらえるか?」
俺が言うと、キリトは「俺の推測だけど」と付け加えてから、語り始めた。
まず、死銃はゲーム内でアバターを撃つ方と、現実でプレイヤーを殺す2人がいること。
現実側の実行犯は、1人とは限らないこと。
そして現実の実行犯の1人が、まだシノンの家にいるかもしれないということを説明した。
説明を聞いた直後、シノンは一度ログアウトしかけていたが、キリトと2人がかりでどうにか落ち着かせた。
キリト「とにかく、ゲーム内の死銃が倒された以上、この大会に於ける危険は、とりあえず去った。おそらく共犯者も姿を消しているはずだ。」
デュオ「だろうな。奴らの目的は死銃の存在を知らしめることであって、無意味に人を殺すことじゃない。」
キリトの意見に、俺も同意する。
キリト「でも、念のため、すぐに警察を呼んだほうがいい。」
シノン「・・・でも、110番して、何て説明するの?」
キリト「それもそうだな・・・俺の依頼主は一応公務員だから、奴に動いてもらう手もあるけど・・・まさか、ここで君の住所や名前は訊けないし・・・」
デュオ「マナー違反だしな。いくら殺されかけたからって、犯人が逃走した可能性のほうが高くなった今となっては・・・」
シノン「いいわ。教える。」
デュオ「・・・いいのか?」
シノン「キリトはともかく、デュオには過去のことも話しちゃったし、今更って感じするもの。」
デュオ「なるほど。それもそうか。」
俺がそう言うと、シノンはヘカートを肩に掛ける。
そして、俺の耳に唇を寄せて囁いた。
シノン「私の名前は・・・朝田詩乃。住所は東京都文京区湯島四丁目の・・・」
アパート名の部屋番号まで聞き終わると、俺はシノンに囁き返す。
デュオ「驚いたな。俺が今ダイブしてるのは、千代田区お茶の水だ。」
シノン「え・・・ええ!?目と鼻の先じゃない。」
デュオ「そうなるな。だったら、俺とキリトが直接行った方が早いな。」
シノン「え・・・、き・・・」
シノンは何か言いかけてから口を噤むと、軽く咳払いしてから言い直す。
シノン「う、ううん、大丈夫。近くに、信用できる友達が住んでるから・・・」
デュオ「わかった。じゃあ俺たちは依頼人に状況を説明して、10分でパトカーが行くようにしてもらうよ。」
シノン「ありがとう・・・」
そこまで言ったところで、咳払いが聞こえてきた
キリト「そろそろいいか?」
デュオ「ああ、悪い。いるの忘れてた。」
キリト「相棒に対して、それはないんじゃないか・・・」
デュオ「悪い、悪い。」
右手で頭を掻きながら言うと、キリトは呆れた顔をしてから言う。
キリト「それはそうと、どうやって優勝を決める?」
確かにそれは当然の疑問だろう。
それに答えたのは、俺ではなくシノンだった。
シノン「じゃあ、これで・・・」
そう言ってシノンが懐から取り出したは、プラズマグレネードだった。
デュオ「お、おい、ちょっと待て。それ、プラズマグレネードじゃないか?」
シノン「ええ、そうよ。」
俺の問いに、何でもないことのように答えるシノン。
デュオ「俺、それにはトラウマがあるんだが・・・まあいいか。」
そう言っている間に、プラズマグレネードから青白い閃光が溢れ出し、俺たち3人を包み込んだ。
試合時間、二時間四十分五秒
第三回バレット・オブ・バレッツ本大会バトルロイヤル、終了。
リザルト・・・【Kirito】、【Sinon】、【Duo】同時優勝。
大会が終了し、俺たちは待機空間へ飛ばされた
眼前に浮かぶリザルト表には本戦の最終ランキングが出ている
1位に俺とキリト、そしてシノン、4位にステルベン、5位に闇風と続く。
俺はそれらを見た後、ログアウトまでのカウントダウンを眺めながら、思考をクールダウンする。
やがて、カウントが0になると、俺の意識は現実世界へと帰還していった。
大地視点
目が覚めると、アミュスフィアを外して飛び起きる。
すると、隣で同じく起き上がった和人と目が合った。
和人の隣には、明日菜の姿もある。
大地「カズ・・・」
和人「わかってる。明日菜、すぐ警察に連絡を。」
明日菜「えっ・・・け、警察・・・!?警察って・・・どこに呼べばいいの?」
大地「朝田詩乃っていう女の子の家だ。場所は菊岡に調べてもらってくれ。俺は今から彼女の家に直接向かう。」
明日菜「え、ええ・・・!?」
和人「ごめん、明日菜。でも、急がないといけないんだ。」
和人は、明日菜に謝りながらも、すでに菊岡に連絡を入れているようだ。
俺は上着を着ると、全速力で病院の外に出た。
病院を出てすぐにタクシーを拾い、教わった住所へと急ぐ。
そして、詩乃の住むアパートが見えてきた。
かなり、ボロボロの小さなアパートだ。
俺は、壊れそうな音を立てる外階段を登り、詩乃のいる部屋を目指す。
階段を上り終わって走っていると、奇妙な音が聞こえてきた。
どうやら、人の声のようだが、それはあまりにも異質な響きを持っていた。
?「アサダサンアサダサンアサダサン」
大地「チッ!」
俺は舌打ちをすると、詩乃の部屋まで疾走し、ドアを乱暴に開いた。
そこにいたのは、倒れている少女と、その少女の上に圧し掛かっている少年だった。
俺は部屋に飛び込むと、少女に当たらないように注意しながら、少年の顔に蹴りを叩き込む。
俺の足は、見事少年の顔面に直撃し、その体を吹き飛ばす。
大地「大丈夫か、シノン?」
俺は振り向くと、唖然とした様子でこちらを見つめている少女に声をかける。
詩乃「デュ・・・」
詩乃は呆然と呟いてから、慌てて体を起こそうとするが、ふらついていて立ち上がれない。
大地「ほら。」
手を差し出すと、意外とすんなり掴できたので、腕を引っ張って詩乃を起こす。
詩乃「あ、ありがと・・・」
大地「その言葉はまだ早いぜ。」
俺が言った直後、後ろから完全に理性を失った、獣のような咆哮が響く。
それは、巨大スピーカがハウリングを起こしたような、鼓膜を劈く絶叫である。
?「僕の朝田さんに近づくなあああああッ!!」
少年は拳をつくると、一直線にこちらに突っ込んできた。
その瞬間、限界寸前だった感情が、俺の中で爆発した。
大地「「フ ザ ケ ル ナ !!」」
俺は迫ってきた右手を左手で掴み、それを引くと、相手のみぞに拳を叩き込む。
そして、少年が怯んだところで、掴んだままの右手を持ち上げると同時に、右肘を肩に叩きつける。
すると、嫌な音が聞こえて、少年の肩が外れた。
少年「ぎゃああああああ・・・!!」
少年は外れた右肩を押さえて蹲ると、悲鳴を上げて気絶した。
大地「「キ ゼ ツ シ タ カ」」
気を失った少年を見て、限界を突破しかけていた怒りが静まり始めた。
俺は頭のクールダウンが終わるのを待ってから、振り返った。
そこには、ぺたりと床にしゃがみ込んで、近くに落ちているおもちゃの光線銃のようなものを見つめている詩乃の姿があった。
大地「何とか間に合ったな。大丈夫だったか?」
声をかけると、詩乃はこちらを見て言う。
詩乃「うん。来てくれて、ありがとう。」
大地「どういたしまして。」
俺は、どうにか笑みを浮かべた。
数分後
サイレンと共にやってきた警察によって、詩乃を襲った少年、新川恭二は逮捕された。
罪状はとりあえず殺人未遂らしいが、余罪はこれから増えていくそうだ。
詩乃は、パトカーに同行してきた救急車にて病院へ搬送された。
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最後の一仕事 | ||
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3384 | 3252 | 4 |
コメント | ||
本郷 刃さんへ デュオ「ありがとうございます。本当にギリギリでしたよ。」キリト「デュオの無茶苦茶はいつものことなんで、いい加減慣れました(苦笑)」(やぎすけ) 大地ナイスb! よくぞ間に合った! そしてキリト、デュオのところに辿り着くまで大変だったな・・・(涙がホロリ)(本郷 刃) |
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