いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
最終話 大好きだったよ
三人称視点。
緑あふれる草原がどこまでも続き、青い空と白い雲が更にその草原の色を強調しているようだった。
頬を撫でる風も心地よく、陽射しも優しい。
足元にある草の上で寝っころがったらすぐにでも眠れそうな感じだった。
「うわぁ〜、凄い綺麗な草原〜♪」
「あれ湖!?海なんじゃないの!?」
すずかとアリサの二人は初めての地球以外の異世界。正確には管理世界の中で無人かつ危険のない世界の訪問に心を躍らせていた。
「ここに来るのも久しぶりですね〜」
「うん。またここに来れるなんて思わなかった…。リニスがいなくなって、ジュエルシードを探したり、闇の書に、王様たちが暴れたりで忙しかったから…」
「私はリニスと一緒に来れてとても嬉しいよ!」
「…お母さん。大丈夫?」
「…ええ。…大丈夫。…きっと大丈夫よ」
リニスとフェイト。アルフの会話を聞いて心をズキズキと痛めているプレシアを心配するアリシア。
ここはアルフがフェイトに拾われた世界。今では管理局の規制が入っているとはいえ、手つかずの自然。リニスは安全に過ごせるようにサーチャーは飛ばしている。
もっとも、ここにいる全員はここにいる野生の動物には負けないだろう。
「ここでなら、アリサちゃんやすずかちゃんのD・エクストラクターの訓練や魔導師組の訓練も出来そうやな」
「そうですね…。言っておくがリインフォース。お前は駄目だぞ」
「承知しているさ。将。私ではもうここにいる誰とも勝負にならないからな…」
「そう言う事じゃないんだが…」
シグナムははやての言葉を聞いてレヴァンティンを起動させて軽く振るいながらリインフォースに注意する。
リインフォースはもう殆ど戦う力を失ったにも関わらず模擬戦などにも無理に参加しようとするのだが、そこはヴォルケンリッターの将。
そんな彼女にはシャマルの補助や家事の方を手伝ってもらった方が効率的だと言いつける。ぐずるリインフォースだったが、はやてやヴィータといった守護騎士達。
何より恩人である((彼|・))にも戦闘を控えるように言われてしまっては引っ込むしかなかった。
「今日、来れなかったシャマルやザフィーラ。ヴィータの分までゆっくりしていかんとな」
「何言ってんのはやて!今日こそは私達が勝つわよ!エクストラクター組が勝つんだからね!」
「ツンデレ乙や」
「ぶっとばすわよ!」
「ふふん♪ザフィーラやシグナムという私の騎士達を一人でも抜けてから言うんやな」
「ぬくくく…。懐に、懐にさえ飛び込めれば勝てるのにぃいいいいっ」
「そうなる前にアウェイや。うちはアリサちゃんとは真逆のタイプやからな〜」
「だが、『傷だらけの獅子』のような突破力。テスタロッサのような機動力があればバニングス、お前でも勝機はあるぞ?飛行状態は主と同じぐらいだが、すずかとコンビを組めば足場の精製・そして補助もあればなお良しだ」
「あ、こらっ、リインフォース?!」
「すいません。…癖になっているもので、つい」
リインフォースは体が治ってからはアリサやすずか。そして、D・エクストラクター三号機『ラッキー・スター』の戦術や魔法の使い方をリニスやプレシアと一緒に教えている。
アリシアやすずか達の持つD・エクストラクターは小型化が実現化して、今はレイジングハートやバルディッシュのようにアクセサリー状に待機している。
アリサとアリシアは多少の違いがあるが白いシャツのような上着にミニスカート。アリサの方はその上からジャケットを羽織ったようなバリアジャケット。アリシアは肩が出た少しセクシー(?)なバリアジャケットだ。
すずかの方は腰まで伸びた髪をポニーテールにしてお嬢様然とした雰囲気の格好に魔法使いを思わせるマントを羽織ったバリアジャケットだ。
アリサの格好を見た高志はどう褒めたらいいか迷った結果…。
「ふとももが眩しいな」
と、いい、アリサの持つ『フレイムアイズ』の炎の鞭でビシバシ叩かれた。
その様子を見たフェイト・アルフ・プレシアは思わず目をそむけた。
対してアリシアはというと…。
「フェイトと同じスピード重視の二丁拳銃タイプなんだよ♪見た目はプリティー♪中身はダ○テ(めちゃくちゃ低い声で)」
「デビ○・メイ・ク○イ?!」
「決め台詞が『喜べ、こいつで仕留めてやる』」
「渋くて怖い!」
などと言うやりとりもあった。
すずかの場合はというと…。
「…?どうしたの高志君?」
「うーん。どうい言えばいいのかな?可愛い?」
「なんで疑問形なの?」
「いや、他の言い回しもあるかもしれないんだが……。ごめん、可愛いとしか言えない」
「…あ、ありがとう」
などというやりとりがあった。
「よーし、今度こそ勝つわよ!すずか!アリシア!今度こそなのは達をぎゃふんと言わせるんだから」
「ぎゃふん♪」
「アリシア!あんたが言うな!」
「ぎゃふん」
「高志、あんたのぎゃふんは聞き飽きた!」
「聞き飽きられるほどぎゃふんと言った覚えがないぞ?!」
アリシアと高志のボケに対してツッコミを入れるアリサは元気いっぱいだ。
そして、そのツッコミに対してのツッコミを入れる高志も絶好調だ。
「タカ、模擬戦をするのはいいけどガンレオンの中に入れているお弁当と飲み物を全部出してからにしなさい」
「はいよー」
ガンレオンを展開した高志。そして、展開されたガンレオンの両肩の部分に当たる装甲が開くと中にあった水筒を取り出し、ライアットジャレンチの中に収納していたお弁当箱を数個取出し、プレシアに預けたことを確認したなのは達は皆揃って空に向かう。
「それじゃあ、早速模擬戦しよっか」
「「「「「おー!」」」」」
「無視?!初めて見るよね皆!ガンレオンの中からお弁当やら水筒やら出てきたのにそこはスルーですか?!」
修理用といった時はみんな驚いていたのに!
何故か悔しい高志がそこにいた。
リニス視点。
模擬戦から戻ってきた皆をプレシアやリインフォースと一緒に迎い入れるとお弁当を食べる。
はやてさんやアリサさん達も自分で作って来たお弁当を広げてみんなで楽しんでいる。
「これ、はやてが作ったの!?」
「凄い…。お姉ちゃんも結構料理するけどそれ以上かも…」
「………」(私の家のお姉ちゃんは…。いや、やめておこう)
「ふふん、伊達に一人暮らしはしてないで。それに今は騎士の皆の分も作るからな、これからもレベルアップは間違いなしや!」
アリサさんやすずかさんから胸を張って称賛の声を聴くはやてさん。
なのはさんは…。何かあったのでしょうか?だんまりを貫いていますけど…。
聞いての通りあんなに小さな体と両足の麻痺というハンデがあるにもかかわらずここまでの料理が出来るなんて…。称賛に値しますね。
「この唐揚げなんか特に…」
「肉汁がじゅわーって出て、美味しい」
「…どうやって作ったのかしら?はやてさん聞いてもいいかしら?」
フェイトやアリシアももきゅもきゅと食べながらお弁当を食べていく。その隣でプレシアははやてさんに唐揚げの作り方を聞いている。
いつもなら姉妹の可愛らしい食事の動作に鼻血を流しているのに…。でも、それも仕方ないか。
何故ならこのピクニックが『傷だらけの獅子』と過ごす最後の日なのだから
高志視点。
「…おりょ?」
食後に軽くブラスタを展開してカラオケ機能(プレシアによる魔改造)を始動させる。皆で歌い終わった後、締めとして俺が『天使の声』を歌い終えると小学生組はいつの間にか眠っていた。
まあ、最後は出来るだけ優しい声でWOWO言っていたからな…。
「…もうそろそろ帰る時間だな。将。アリサとすずかを運ぶのを手伝ってくれないか?私が主を担ぐから」
「ん?ああ、そうだな」
「では私も…」
リインフォースははやてをお姫様抱っこしながらシグナムに話しかけた。
彼女とリニス。そして、プレシアとリンディさんにはもう伝えている。
スフィアリアクターの末路。『放浪者』の危険性を…。
そして、俺はもう戻れない所まで来ていることを…。
―アリサ、お前はもう少し素直になれ。きっとお前の周りにいる人間はそれを受け入れる―
―すずか。お前はもう少し自信を持て。俺はお前が一番伸びると思っているぞ―
シグナムがアリサとすずかを担ぐのを見ながら、彼女達に伝えたかった言葉を心の中で言いながら彼女達を転送装置のある所まで見送る。
シグナムが二人を抱えて転送されるのを見届けると俺の隣ではやてを抱えたリインフォースが話しかけてきた。
―はやて…。お前の気持ちは嬉しい。だけど…。ごめんな。そう思ってくれているお前だからこそ『スティグマ』。スフィアの戦いに巻き込まれる呪いは刻みたくない―
「…今まで、ありがとう。タカシ」
「…すまない。とか、謝罪の言葉だったら怒っていたぞ」
「私は…」
「幸せになってくれ。リインフォース。…俺の分まで。はやて達と一緒にな」
リインフォースとリニスには俺が一度死んだことのある人間。『転生者』だという事は伝えている。そうでもしないと、俺がこれから行うことを全力で引きとめるだろうから…。
リインフォースは目から枯れることが無いような涙を流しながら俺に頭を下げて転送装置の方へと向かって行く。
[あいつに施した『鍵』は正常通りだ。俺達が死なない限り、あいつのスフィアが成長することはないさ]
じゃあ、絶対死ねないな。
[ああ]
リインフォースの持つ『悲しみの乙女』には『傷だらけの獅子』で作り上げた呪いのようなものがある。それがある限りリインフォースが悲しんでも彼女のスフィアは成長しないだろう。
出来ることならリニスさんにも同じ『鍵』をかけたかったけど、それをすれば俺はその場で『放浪者』になっていただろう。
その代わりと言っては何だがブラスタのチャクラム。SPIGOTを彼女に譲渡した。
本当ならブラスタごと渡したかったのだが、それはこれから俺の役に立つからいらないと拒否された。
「…それじゃあ、これからプレシアやアリシアの事もお願いしますね」
「わかっていますよ。もうプレシアに無茶なんかさせません。せっかくあなたから頂いた命なんですから…」
―なのは。お前は無茶しすぎるなよ。ユーノやフェイトが心配するんだからな―
―フェイト。もっとプレシア。いや、もっと周りの人間にあまえて良いんだぞ。もっとあまえなさい―
―アルフ。たまにはフェイトにビシッと言いなさい!フェイトは少し頑固だがちゃんと話を聞くから―
リニスに魔法で運ばれていく三人を見ながらそう心の中で思った。
そして…。
「…タカ」
「プレシア…」
プレシアは寝ているアリシアを抱きしめながら俺の正面に立つ。
「どうしても行くの…?」
「…うん。行かなきゃいけない」
「私は、貴方に何も…」
「してもらったさ。…愛情?とは言いにくいけど、一緒に楽しかったよ。転生してよかったと思っている」
「…っ。それでも!貴方はこれから一人で!」
「…別に一人きりってわけじゃないさ。たまには手紙でも贈るからさ」
そんな顔はしないで欲しい。
『放浪者』は親しくなった人間に『スティグマ』を刻む存在だから…。逆を言えばそんなに親しくなければ人と触れ合っても『スティグマ』を刻むこともない。
だけど、今日のピクニックに参加したメンバーは皆、『スティグマ』を刻んでしまうほどに親しくなってしまった。
接触しなければいい。
だけど、触れ合いたいのに触れ合ってはいけないというジレンマに、俺はこれから悩まされる。
娘。アリシアを一度失ったことのあるプレシアはその辛さがよくわかるんだろう。
「…私はっ」
涙をこぼすプレシア。
それを見ていると決心が鈍りそうになる。
彼女達に『スティグマ』を刻み込むことになっても一緒にいたいと思ってしまう。だけど、これからあるだろうスフィアをめぐる戦いに彼女達を巻き込むことはしたくない。
だから…。
「それなら、さ。…プレシア。俺のお願いを聞いてくれないか」
プレシアとリンディさんにはとても迷惑をかけるだろうけど、俺の最後のお願いを聞いてもらう事にしよう。
アリシア視点。
「…ん」
私は暖かい何かに体を包まれている感触を感じながらも目を開けると、木にもたれかかりながらお尻を地面に置きながらも、私の体を後ろから包み込むように抱きしめてくれているお兄ちゃんがいた。
私は六年生で、お兄ちゃんは四年生だけど気にしない。お兄ちゃんはずっと私のお兄ちゃんだからだ。異議は認めない!
「お、起きたか?」
「ん〜、まだ眠いから眠るね」
「…そっか」
そう言うと私の頭を撫でる感触。
最初は雑で髪の毛を何本も抜かれちゃったけど、今じゃとても気持ちいい撫で心地。
「ん〜♪」
とても気持ちいい〜♪
そこでふと気が付く。フェイトやお母さんたちがいないことに…。
「…?お母さん達は?」
「ちょっと前に転送装置で転送して帰ったよ。俺達で最後だな」
ふーん。そうなんだ。
でも、なんで私達が最後?
「…約束したからな。『時間が許す限りお前の傍にいる』って」
「…ん〜」
言っている意味が分からないよ?でも、なんだかとても眠くなってきた。まだ、寝たりないのか私は目を閉じる。
心地よく安心できる人の体温を感じながら私は眠りにつく。
「………」
「…アリシア。眠ったのか?」
お兄ちゃんの声が少しずつ聞こえなくなっていく。だけど、私は確かに聞いたんだ。
―俺さ、お前の事が…。大好きだったよ。アリシア―
その日に見た夢はとても胸を締め付けられる夢だった。
嵐で暴風が吹きつけ、雷があちこちで落ちている世界に、一人ぼっちのライオンが雄叫びをあげ続けているとても悲しい夢。
その夢を見て、二日後。
私は、あのピクニックの後、すぐに無人の管理外世界で調査の任務にあたったお兄ちゃんが、原因不明の大爆発に巻き込まれて行方不明になったという報告を受けた。
いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した 完
お知らせ。
いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した。は、これで完結になりますが、これの続編リリカルなのはSFIAをすぐ(とはいってもネタが固まり次第になりますが)に投稿します。
ストライカーズまでの空白期を幾つか入れていくと思いますが、タイトルが変わります。
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コメント | ||
お疲れ様です。とりあえず一段落ですね。続編もがんばってください。(nozomu) 神薙 さんへ。文章改正しました。どうもです。(たかB) お疲れ様です。続編を楽しみにしています。(sero) 乙です。(453145) 一区切りですね。お疲れ様です。 たかB様これからもがんばってください!彼はこれからどこを放浪するのか・・・(おちぇら) タッカシイィイイイイイイイイイイッ!!!!!!(号泣)お前はッ!!お前って奴ぁああああああああッ!!!!!(強泣)(piguzam]) |
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