魔法少女リリカルなのは 四天王始めました
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車で移動すること十数分。

 

大きな屋敷の前で車が停車した。この屋敷が月村邸のようだ。本当に大きい……人が数十人ほど纏めて住めそうだ。

 

車から降りて屋敷の門の前に立つ。

 

ピンポーン!

 

ヴァルドが門の側に備え付けてあるチャイムを鳴らした。

 

「はい、どちら様でしょうか?」

 

「本日、呼ばれたヴェルテールですが」

 

少しの沈黙後、ガシャン、と音を立てて門が開いた。

 

「…………では、お入りください。御車の方は此方でお預かりしますので、キーを差しっぱなしにしておいてください」

 

ブツ、とそこで回線が切れる。そして、門の内側から一人のメイドが現れた。

 

「では、皆様方は私について来てください」

 

そう言うと、踵を返し屋敷に向かって行くメイドの後に続いて門の内側に入り、ついていく。

 

 

 

 

「いらっしゃい、リゼットちゃん」

 

屋敷の扉の前にいた、紫色の髪の少女が微笑みながらリゼットに近づく。

 

「お邪魔します、すずか。それで、忍さんは?」

 

「お姉ちゃんなら部屋で待ってるって……それと、そこにいる可愛い子は?」

 

グサッ!…………リゼットと話しているすずかの言葉で俺の心に言葉のナイフを刺さるのを感じると同時にチラチラと俺の子とを見る視線も感じる。

 

「レインのことね……レインは親戚よ。今度、編入試験を受けることになってるから」

 

「そうなんだ…………私は月村すずか、と言います。すずかって呼んで、よろしくね」

 

リゼットの言葉に返事をしたすずかはそのまま、俺に片手を差し出し自己紹介をした。

 

「よろしく、すずか。俺はレイン、レイン・ヴェルテール。レインと呼んでくれ」

 

俺も自己紹介して、すずかの差し出した手を握り、握手する。

 

「お互いに自己紹介も終わったようだし私は行くわね」

 

そう言うとリゼットは屋敷に入って行った。

 

人の家なの勝手に入って良いのか?リゼット……下手したら住居不法侵入で補導されるぞ。

 

そんなことを思っていたらすずかの一言が俺の心を言葉のナイフで切り裂いた。

 

「レインちゃん、自分のことを俺って言うの合わないよ」

 

レイン…ちゃん……だと……。

 

「えっと……レインちゃん?どうしたの」

また、ちゃん付け……。

 

「すずか……俺……男なんだけど」

 

「嘘!……こんなに可愛い顔してるのに!?」

 

信じられない!といった様子のすずかの反応。俺も自分じゃなければ信じられないけどさ……分かっててもくるものがあるんだよ。また、ダンボールのお世話になろうかな……何か落ち着くし。

 

「ごめん、ごめん、だからそんな遠い目をしないでレインちゃん……あ……」

 

「……すずか、無理しなくていいよ」

 

もう、開き直るしかないかな……そんな、哀愁漂う気持ちで空を見上げる。

 

今日は……星がよく見えそうだ。

 

 

 

 

それから、俺が元に戻ったのは、すずかの姉とリゼットが屋敷から出てきてからだ。すずかには迷惑を掛けたようで申し訳がない。

 

リゼットとすずかの姉である忍の話し合いは終わったらしく、その内容に関しては家に戻ったら全員に纏めて話すそうだ。

 

「えっと、あなたは……」

 

「レインです」

 

「レインちゃんは知ってるの?」

 

また、ちゃん付けですか……もう、レインちゃんでいいですよ…………。

 

(魔法のことだから知ってるって答えて)

 

脳に直接響くようにリゼットの声が聞こえた……これが、念話か。俺も念話で返事をする。

 

(分かった)

 

「知ってますよ」

 

「そう……後、私のことは忍でいいから」

 

「分かりました」

 

「お姉ちゃん?なんの話をしてるの?」

 

俺と忍さんの話が気になったのかすずかに問われた。

 

「彼女が危険か危険じゃいかの確認よ」

 

すずかを心配させないよう笑いながら冗談っぽく言う忍さん。やっぱり、俺は女の子として見られてるのか…………。

 

開き直ってもさ……心が痛いや。

 

「もう……お姉ちゃんってば……。それにレイン君だよお姉ちゃん」

 

「嘘!……こんなに可愛いのに!?」

 

姉妹揃って同じ反応ですね……分かってるけどさ、分かってても……ショックはあるんだよ……。

 

「大丈夫よ……そのうち、気にならなくなるから。いえ、寧ろ……その容姿以外は私が認めないから」

 

リゼット……君って奴は……少しお互いに話し合っておく必要があるみたいだな……よし、ならば……。

 

「すいません、ちょっと失礼します」

 

俺はそう言ってリゼットを屋敷の裏手に引き摺っていく。

 

「ちょ、レイン?何を」

 

「少し……お話しようか」

 

 

しばらくお待ちください。

 

 

 

数分後、頬を赤く染めて目をトロンとさせたリゼットをおんぶして俺は清々しい気分で屋敷の裏手から戻ってくる。

 

「……大丈夫!リゼットちゃん」

 

「だ、だいじょうぶよ……」

 

明らかに大丈夫に見えないリゼットの様子に忍さんが表情を引き吊らせながら話しかけてきた。

 

「えっと……何をしたの?」

 

俺は目のハイライトを消し、黒い笑みを浮かべながら言う。

 

「知りたいですか?」

 

「……いいえ、止めとくわ」

 

まあ、知ったとしても俺以外は出来ないだろうし…ね。

 

その後はリゼットが回復してから紅茶をご馳走になった。

 

 

 

月村邸から家に帰ってくると既に時刻は夕飯時となっており、話の前に夕食を済ますこととなった。

 

 

夕食のあと全員にリゼットから忍さんはと何を話したのかを聞いた。

 

「まず最初に私達が魔法を使えることを忍は知っている」

 

まあ、俺は使えないと言っていいほどなのだが。

 

「で?それが、どうしたのだ」

 

「すずかの護衛を頼まれたのよ」

 

それはまた……。

 

「何で僕らが護衛なんてしなくちゃいけないのさ、本職の他人を雇えば良いじゃないか?」

 

レオンの言う通りだ。何故俺達なんだ?

 

「相手が転生者の可能性が高いからよ」

 

「それなら仕方ないが……」

 

「それに、レインは知らないはずだから言っておくわね、すずかは半年前に一度誘拐されたのよ転生者の手で……。その犯人は私が何とかしたんだけど逃げられて、その時に忍に魔法を知られちゃったのだけど」

 

「その時の犯人がまだ狙っているかもしれないからすずかの護衛を」

 

「そう言うことよ。だからヴァルド、監視は頼んだわよ」

 

 

「任せときな」

 

ヴァルドの返事をもって話は終わった。

 

「おおっと、忘れるところだったぜ危ねぇ、危ねぇ、レイン!明日が編入テスト受ける日だからな。時間は10時からだから覚えておけよ」

 

「分かった」

 

明日の10時からか、随分と早いことだ……2、3日掛かると思っていたのだが……。

 

少し……勉強しとくか。俺は部屋に戻ると適当に参考書を読んでいく。

 

それにしても……転生者は全部殺らなければいけないのだろうか?外道なら遠慮なく殺れるのだが……まあ、リゼットに任せるか。

 

俺は新しい生を悔いなく過ごすように努めますかね……もしかしたら返り討ちに合うかもしれないから少しでも楽しく過ごせるようにさ。

 

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