天使と悪魔の代理戦争 第十話 |
話し合いの結果、僕たちは時空管理局の方々に協力することになった。あの二人もなんだかんだんで協力することになっていたのは不満だった。
しかし、流石は管理局というべきだろうか、管理局に協力することになってからはジュエルシードが集まる早さが増して、一週間で三つも集まった。だけどそれはあちらも同じなようで、向こうも推定三つ回収しているようだ。
ただ、仮面の人は動きを見せず、残り八つのジュエルシードは彼か、もしくはフェイトちゃんが持っているのか、それともまだ見つかっていないのかは分からないが一向に見つからなかった。
そして、ジュエルシードを探しており、僕たちが休憩している時に、アースラにアラートが鳴り響いた。内容は海上に魔力反応があるという内容だった。どうやら海にあるであろうジュエルシードを強制発動させるために、フェイトちゃんが魔力流を打ち込もうとしているのだ。
僕たちがブリッジに駆けつけると、空中に表示されているモニターにはフェイトちゃんとアルフさんが海水を取り込んだジュエルシードの異相体七つと戦っている所だった。
「あの、私たちすぐに現場に……!」
「その必要はない」
焦るなのはちゃんに、クロノくんは冷静に声をかける。
「放っておけば、あの子は自滅する。そうでなければ、力を失った所で叩く。――捕獲の準備を!」
クロノくんの言葉に答えるオペレーターの人の声を聞きながら、僕は不満を覚えていた。確かにフェイトちゃんを捕まえるならそれが最良の手段なのだろう。だけど、僕はそれに頷く事はできなかった。
「残酷に見えるかも知れないけど、これが最善」
だけど、それでも僕は、一人で戦うあの子を放って置くことはできそうになかった。――一人じゃなくて使い魔さんいるけどね。
「でも……」
それは隣にいるなのはちゃんも同じだったようだ。逆隣に立つユーノくんと念話でやり取りすると、後ろの転移ゲートが開き、そこになのはちゃんが駆け込む。
「君は!」
それに気づいて振り返ったクロノくんとリンディさんとなのはちゃんの間にユーノくんが立ち、その前にあの二人がデバイスを向けて立った。
「ごめんなさい! 高町なのは、指示を無視して勝手な行動を取ります!」
堂々と言うところが凄いと思うよなのはちゃん。
「あの子の結界内へ……転送!」
ユーノくんがそう言うと転移ゲートが光り、なのはちゃんは結界の中に転送された。何故か座標は雲の上だったけど。そしてユーノくんも後を追うように転移していった。
(あれ、僕たち置き去り?)
「バカな! 何をやってるんだ君たちは!」
『ごめんなさい、命令無視は後でちゃんと謝ります。でも、ほっとけないの!」
画面の向こうのなのはちゃんたちを叱るクロノくんになのはちゃんはそう言い返した。
『今はジュエルシードを止めないと。放っておいて融合したら手の付けられない状態になるかもしれない』
ユーノくんはそう言って光る鎖――チェーンバインドで逆巻く水の竜巻を縛る。正直それを言えば普通に行かせてくれたんじゃないかなとは思う。
「ねえ、クロノくん。こうなったら僕たちも行ってもいいよね」
「……好きにしてくれ」
どうもお疲れの様子のクロノくんに背を向けて、転移ゲートに入ると、あの二人も言い争いしながら一緒に入って来た。
しまった、使い方が分からない。
「クロノくん、これってどうやって動かすのー!」
「アレックス」
「結界内に転送します」
オペレーターの一人に指示を出すクロノくんの背中がやけに煤けて見えた。
僕たちが転送されると、二人はすぐにバリアジャケットを着て、蛇のような海流へと向かっていく。帝威くんはある程度まで近寄って狙撃、真神くんはさらに近寄って剣先から砲撃魔法を放っている。
(さて、勇んできたのはいいけど……僕できることないね)
バインドは苦手だし、砲撃はあんまり効果ないみたいだし。なのはちゃんに向かう海流をバリアかシールドで防ぐぐらいしかする事がなかった。
結局、ユーノくんとアルフさんが動きを封じている間になのはちゃんとフェイトちゃんが協力してジュエルシードを封印した。七つ一度に封印できるとはアースラの人たちは驚いていた。
海中から浮かんできたジュエルシードを挟んで、なのはちゃんとフェイトちゃんが向かい合う。
「フェイトちゃんに言いたいこと……やっと纏まったんだ。私はフェイトちゃんと――友達になりたいんだ」
その言葉にフェイトちゃんとアルフさんはやや虚を突かれたような顔をしたが、僕やユーノくんにとっては特に驚くことでもない、普通のことだと思えた。
しかし、その時近くに紫色の((雷|いかずち))が落ちた。
「母さん……!」
フェイトちゃんがそう言うと同時に更に降り注いだ紫色の雷はフェイトちゃんに直撃した。
「フェイトちゃん!」
近くにいたなのはちゃんが手を伸ばすが、紫色の雷に弾かれる。
その隙にアルフさんはジュエルシードを取ろうとしたが、途中でいつの間にか転移していたクロノくんに妨害された。アルフさんはそのクロノくんを押しのけてジュエルシードを確保しようとしたが、いつの間にかクロノくんが七つのジュエルシードの内四つを手に入れていた。
(手が早いねクロノくん)
それに腹を立てたアルフさんが海面に魔力弾を叩き込み、発生した波が収まる頃には残り三つのジュエルシードとフェイトちゃんは居なくなっていた。
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海面活性剤(ジュエルシード) | ||
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