魔法少女リリカルなのは 四天王始めました |
俺が聖祥に通い始めて数日がたった。
この結果から分かる通り、俺は編入テストに合格した。授業は真面目に受けているので先生方の評判も悪くはない。だが、一つだけ困ったことがある……それは着替えだ。
クラスに編入した時も伝えたはずなのだが、クラスだけでなく学年全体が俺のことを男でもなく女でもない、第三の性別[レイン]と認識した。
バカテスの秀吉のように専用の更衣室も用意された。初めは容姿の関係で苛められるのではないかと危惧していたが、それも杞憂に終わって安心した矢先にこれだ。
昼は教室でクラスメートと一緒に食べている。
放課後はよくサッカーや野球、ドッチボールなどの球技に誘われるので少しばかり参加してから帰宅しているので、クラス内では孤立することなく馴染めているのではないかと思う。
そして、そろそろ無印編が始まるそうだ。リゼットが言うには数日以内にフェレット人間ユーノが海鳴市の何処かに来るそうだ。
俺達の方針としては基本的に静観で、降りかかる火の粉は個人の判断で対処していいそうだ。だか、俺は覚醒体になるのは禁止されている。理由としては大きくて目立つのと他の転生者に存在がバレるからだ。
すずかの護衛であるが、それは学校にいる間は止めている。流石に学校には他にも転生者がいるので大丈夫だろうとのことから、そのためヴァルドに誘拐犯の探索を任せている。
犯人は見つけ次第俺が始末することになっている。理由としては、他の三人に比べ俺が最も速く片付けられるからだ。それに魔法を使ってしまうと探知される可能性が出てくるからである。
それに、俺達が表に出るのはリゼットの予定だと、早くてもジュエルシードが次元震を起こしてからもしくわ時空管理局が地球に来てからだそうで、それ以外はどうしようもないときにジョエルシードの暴走に巻き込まれたら隠れるか逃げる、封印して放置が基本方針。俺の場合は逃げる一択なのだが。
それにチャンスがあれば……転生者も殺るらしい。こっちは次いでのような感じなので、表舞台に出てから本格的に活動を開始する、その時まで滅多なこと以外で転生者と殺り合う機会はない無いだろう。
現段階で聖祥にいる転生者は数十人。主に三学年に固まっているらしく、他の学年には一人か二人しかいないそうだ。
そして、現在は休み時間。俺は図書室で小説を読んでいる。内容は王道もののファンタジー。やはり、どの物語を見ても化物は滅ぼされる定めのようだ。
「レイン君、久しぶり」
声をかけられ、後ろを向くと、片手に本を持ったすずかがいた。俺は本を閉じると返事をする。
「久しぶり、すずか」
「隣、いいかな?」
「どうぞ」
「ありがとう。レイン君だは何を読んでたの?」
すずかは礼を言うと、椅子に座り俺の読んでいた本について聞いてきた。
「王道もののファンタジー小説だよ。主人公が化物や魔王を倒して世界を救う、ありふれた物語だよ」
化物という言葉が俺の口から出た時にすずかは本の少しだが震えた。
「……っ、そうなんだ。やっぱり、レイン君も物語の主人公に憧れるの?」
「まさか……俺は物語の主人公の用に世界は救えないよ。どちらかと言えば俺は主人公の敵」
「変わってるね、レイン君は」
そう言いながら笑うすずかに俺も笑って答える。
「そうだな……変わってるな」
そのまま二人してクスクスと笑う。
「すずかは何で物語で化物が幸せを迎えられないか考えたことある」
「……あるよ」
「そうか、俺も考えたことあるよ。どの物語を読んでも化物は幸せに成れない……それは何故かってね
」
「化物は人間と相容れない。だから、しかないんだよ」
そう言う、すずかの言葉はまるで自分自身に言い聞かせている様に感じる。でも、本物の化物が目の前にいるんだけどね。
「そう……しかたない。いつの世も化物は討たれるが定め。神様であったり、人間であったりと化物は必ず討たれる。そうしないと、話が成り立たないから」
「……そうだね」
「でも、それは話の中だけで……現実では化物は生きているそう思う」
「何でそう思うの?」
「一番の化物は人間だと思うからだよ」
キーンコーンカーンコーン。
予鐘か……そろそろ教室に戻らないと。
「すずか、予鐘が鳴ったから教室に戻った方がいいよ」
「うん、それじゃ……レイン君も」
図書室から出て、すずかと別れて教室に向かう。
そして、何事もなく今日は終わった。
家に戻るとリゼットにすずかが休み時間が終わってから、珍しくぼおっとしており、友達に心配をかけていたと言われた。
「そう……それで、リゼットはどうしたいと?」
「友達としては元気になって欲しいんだけど……レインは夜の一族って知ってる」
「吸血鬼の一族でしょ、それがどうかしたの?」
「すずかはそれを気にしてるのよ」
なるぼど、吸血鬼と言う化物の血が自分に流れているから化物という言葉に敏感に反応すると。
「なら、俺のことをバラせばいいじゃん。此処に本物の化物がいるって」
「なっ!」
驚く、リゼット。そんなリゼットに俺は笑みを浮かべながらげる。
「遅かれ早かれ、俺が化物であることは転生者達に知られるのだ。なら、他に知られても問題は無いだろう」
「でも、それは……」
リゼットは戸惑うが俺は話を続ける。
「いいんだよ、気にしなくて……俺はリゼットの部下であり、ヴァルド、レオン、シアのリーダーであるのだから。それに知られたからと言ってどうにかなるわけではない」
「そう……分かったわ。でも、レイン一つだけ忘れているわよ……あなたは部下である前に私のパートナーよ」
そして、リゼットが月村邸に電話をして、忍さん監督のもとすずかに俺の覚醒体を見せることになった。
「これから何が始まるの?」
不安そうな表情を浮かべながらすずかは姉に問いかける。
「私も詳しくは知らないのだけどリゼットちゃんが言ってたわ『今までで一番凄いモノを見せてあげる』って」
「一番凄いモノって?」
考え込むすずかにリゼットが近づき、声をかける。
「じゃあ、始めるわね……封時結界展開」
リゼットを中心に薄緑色の結界が屋敷を包みこみ、外との繋がりを一時的に封じた。
「……何これ!?」
驚くすずかを後目にリゼットはレインに合図を出す。
「了解」
レインは返事と共に妖力を解放する。解放された妖力は暴風を引き起こし、すずか達の視界を奪う。
そして、暴風が収まるとそこには、ケンタウロスを彷彿させるような、人型の上半身を持つ四足の巨大な何かがいた。
肌の色は黒く、顔も目はあるが口はない。手は人の手と型は変わらないが足は馬のようになっている。
「もう、良いわよ。戻って」
リゼットがそう言うと覚醒体になっていたレインが人型に戻る。
「さて、本物の化物に会った感想はある」
人型に戻った俺が問いかける。
「……何か……夢を見ていた気分だわ」
額を片手で押さえながら信じられないと言った表情の忍さん。
すずかに至っては呆然自失となっている。
「おーい、すずか?」
目の前で手を左右に振って見せても、反応が無かったので猫だましをする。
「なっ!!あれ、レイン君?」
「そうだけど」
「さっきのアレもレイン君?」
確かめるように言うすずか。それに対して俺は笑いながら言った。
「そうだよ……俺だよ。すずかの目の前にいるおれが本物の化物さ」
そして、今日はそのまま解散した。
その日の夜。
夢を見た……黒い怪物と戦う、一人の少年の夢を。
翌朝、リゼットから告げられた。
「無印編開始よ!」
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無印編開始 | ||
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