十二支・幻想奇譚 ボカロ界からの脱出! 第4話 双頭金龍とリンレンクエスト
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(ボカロ界ロビー)

 

 仲間も随分揃った物である。

 

 海斗、ミク、ルカ、メイコ、めぐみの5人は、次の辰年の扉の前に立っていた。

 

ミク:結構進んだミクね。ミクのを入れて、次で5つ目ミク

ルカ:次は、辰年の宝玉の守護者ですね

メイコ:辰年、つまり、“龍“。「ドラゴン」か〜。”カンフー対決“とかそんなのか?

めぐみ:うーん、もう虎の扉で格闘技をやったそうだから、それはないと思うピョン

メイコ:とりあえず、扉に入れば、わかるはず。時間がもったいないから、とっとと入ろう!

海斗:そうですね

 

 こうして一行は、4:00の位置にある“龍の扉”を開けて中に入った。

 

 ガチャピ

 

海斗:? なんか電子音みたいな音で開く扉だな?・・・ってか、この音、どこかで・・・・

 

めぐみ:双子の守護者! 挑戦に来たピョン!

海斗:あ・・毎回、そのセリフ、取られてる・・・

 

 そこは、床が将棋盤のような、升目になっている所で、所々にカクカクな感じの木や岩のオブジェが置かれていた。

 

海斗:これはまるで・・・

 

女の子の声:はーーーはっはっはっ!!! 遂にここまで来たか、現世よりの挑戦者ども! 我は宝玉の双子の守護者の一人、リン!

男の子の声:はーーーはっはっはっ!!! 我は、同じく、レン!

二人の声:二人で、双頭金龍(ダブルゴールデンドラゴン)!

めぐみ:龍の王様、“金龍”と来たピョンか・・・

メイコ:前口上はいい! とっとと対戦形式を言え!

 

海斗:電子音の扉・・・・升目・・・・カクカクの木々や岩・・・もしかして・・・

 

 部屋の奥から、黄色の髪の毛をした、リンという名の女の子と、レンという名の男の子が歩いてきた。

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リン:現世よりの挑戦者、なかなか良いカンしているな! ここの対戦形式は、TVゲームのRPG(ロールプレイングゲーム)戦闘だ!

レン:その名も“リンレンクエスト”! 但し、タイプは“シミュレーションRPG”だがな!

メイコ:ゲ、ゲーム!?

海斗:やっぱり、あのタイプのゲームのアレンジだったか・・・

ミク:ミク〜、ミクはあんまりゲームをやったことがないミク

ルカ:私はさっぱりです

メイコ:格闘ゲームならやったことあるんだけどな

めぐみ:皆さん、大丈夫ピョン。私はマスターレベルピョン!

海斗:俺も結構、現世ではやったほうだよ

 

リン:ルールは将棋とよく似ているが、もっとシンプルだ。最初はお前達はそこの決められた自陣の升目に立ち、私たちは反対側の私たちの陣地に、“金龍右首”が私、“金龍左首”がレン、“金龍コア”がここの宝玉として配置する

レン:お前達は立った時点で“ジョブ”、つまり職業とステータスをセットされ、それに従って攻撃なり回復なり補助なりするがいい。行動も本人が決めなければ行けない規則はない。誰かを参謀などに決めて行動してもかまわん。お前達も我々も宝玉も、HPが0になれば、ゲームからログアウトしてしまい、升目の外に追い出される。我々の3体を全部ログアウトできれば、お前達の勝ちだ

 

リン:まずは指定されている升目に立ってください

 

 海斗側の5人は、名前が書かれた升目にとりあえず立ってみた。すると輝き光りの渦が地面から巻き起こり、全身が光りに包まれた後、コスチュームや持ち物が変化したのだった。

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 ミクのジョブは天使だった。姿も白いワンピースを着て、頭の上にわっかがあり翼が付いていて、杖を持っていた。HP50、攻撃0、防御20、魔力30、素早さ20、運40。発動スキルは、HP回復、バッドステータス回復。つまり戦闘は出来ないが、回復、治療の専門家である。

 

 ルカのジョブは女戦士だった。黒とピンクの軽い鎧や兜を着けていて、剣を持っていた。HP100、攻撃50、防御40、魔力0、素早さ5、運20。発動スキルは、たたかう、(広範囲の多段ヒットである)ダブルラリアット斬り。つまり魔法は使えないが、戦闘の専門家である。

 

 メイコのジョブは武闘家だった。赤い胴着を着用し、ナックルと武闘靴を着けていた。全体的に軽装でもあった。HP90、攻撃40、防御20、魔力10、素早さ50、運50。発動スキルは、格闘、金剛拳(飛び道具)。つまり素早い格闘術と、格闘用魔法技を使える、武闘の専門家である。

 

 めぐみのジョブは軍師だった。中国の三国志時代の軍師衣装を着用し、水晶球を持っていた。HP60、攻撃0、防御30、魔力80、素早さ10、運60。発動スキルは、戦略(全員をスタート地点に戻す)、強化(仲間全員の全ステータス一時2倍)。つまり戦闘も回復も出来ないが、特殊なスキルと仲間の強化ができる、戦略の専門家である。

 

 そして、海斗なのだが・・・

 

海斗:お! なんか体が軽いぞ! 踊り子か?

 

 海斗の姿は、お気に入りの青いマフラー1つだけの“裸マフラー”だった。ジョブはどうやら“踊り子”で間違いなかったらしいのだが・・・。

 

 ミクは大きなツインテールで目を隠した。

 

ミク:ミク・・・海斗さん、いろんな意味で、す、凄いミクね。とても正視できないミク

 

 ルカも手で目を覆った。

 

ルカ:海斗さん、変態です・・・・

 

 メイコは鼻息荒く、ガン見していた。

 

メイコ:おお! こういうのを待っていたのよ・・・・いやいや、これなら相手が見られないから、攻撃も当たらないわね

 

 めぐみは呆れていた。

 

めぐみ:うーむ・・・確かに戦略的には優れているかもしれないピョンが・・・。リンレン! これでは私たちも行動できないピョン!特例措置で“見られる”ジョブに変えてくれないピョンか?

 

 海斗はもじもじしながらうずくまっていた。

 

海斗:お願いします・・・

 

リン:うーん、しょうがないわね・・・。じゃあ、これ。ほい!

 

 パァァァァ

 

 海斗の回りに再び光りの渦が現れて、光に包まれた後、先ほどとは違う姿に変わったのだった。

 

 海斗の姿は、簡素な服を着て、三角帽子を被り、小枝を持った、シンプルな姿の洋風旅人だった。タロットカードの絵柄なら、“The Fool”(愚者)だ。

 

レン:全く、せっかくアグレッシブなジョブにしたのに・・・。えー、君の新しいジョブは、“旅人”だ。HP20、攻撃1、防御1、魔力1、素早さ256、運256。発動スキルは、逃げる、成長、だ。逃げるは文字通り、自分だけスタート地点に戻ることで、成長は・・・? なんだこのスキル? ジョブの再割り振りをしただけなのに、我々でも知らないスキルが出現したぞ? リン、知ってる?

リン:い、いや、知らないよ、こんなの。まぁいいじゃない。逃げるスキルでいつでも逃げられるし。生存確率が凄く高そうだし

海斗:お、俺って・・・

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レン:では我々も配置について、作戦会議をすることにする。そちらも作戦は十分に錬って置いたほうがいいぞ

 

ミク:ミク〜、ほとんどわからないミクけど、とりあえず、ミクが回復治療で、ルカさんとメイコさんが攻撃ですね

ルカ:任せて下さい! パーティの壁になって、強力な攻撃をします!

メイコ:私は素早く動いてヒットアンドアウェイで攻撃するわ! うー、武闘家で良かった!

ミク:で、めぐみさんが参謀と補助で、海斗さんは・・・・・

海斗:フォローはいいよ・・・。とりあえず俺は何にもできないけど、すぐ逃げられるから、ちょこまか動いて撹乱するよ

めぐみ:・・・・いや、戦闘できないわけじゃないみたいピョンよ

海斗:え? だって、俺、戦闘スキルも回復スキルも持ってないし・・・

めぐみ:これは“シミュレーションRPG”ピョン。こちらの作戦は海斗をガンガン活用する事にするピョン

ミク:ミク?

 

めぐみ:エリアは意外に狭いから、私以外の4人は、

 

<海 斗>

<メイコ> <ルカ>

<ミ ク>

 

の、トの字陣形で行くピョン。

 

海斗:あの、なんでHPの低い俺が一番前なんだ?

めぐみ:海斗のステータスを見ると、素早さと運が256だピョン。龍の直接攻撃はまず当たらないピョン。あと、メイコさんは、飛び道具“金剛拳”専門ピョン。海斗の背中越しに撃って攻撃ピョン

海斗:でも、ボスの龍とかだと、“ブレス”(息)があると思うんだよね。ゲームだと“前一直線上ダメージ”ってヤツ

めぐみ:それも運256だから当たらないピョン。でも後ろのメイコとミクが当たっちゃうから、ミクさんはすぐにメイコさんと自分を回復してください。ルカさんに攻撃が来たらルカさんも回復ピョン

ルカ:私は?

めぐみ:目の前に来たら攻撃ピョン、でもそれ以外なら、広範囲攻撃スキル“ダブルラリアット斬り”専門ピョン。この陣形でそれを連発するピョン。それと当然ピョンが、危なくなったら私の“戦略”で戻して、ミクさんに完全回復してもらってから、また同じ陣形で挑むピョン。私はここから“強化”で補助していて、あるであろう“ブレス”が届かない軸に合わせて、回避しているピョン

海斗:よ、よし! これでルーチン戦略は決まったな

めぐみ:それじゃ、絶対勝つピョン!

全員:おー!

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(龍の部屋)

 

リン:こっちも作戦会議終了です

レン:では、ゲームスタートと行きましょうか。あ、一応公平を期すために、虎の間から、ヒーゲさんを呼んでおきました

 

 あの髭のレフェリーがいつの間にか升目の中央に立っていた。

 

ヒーゲ:皆さんこんにちは! 今回は攻撃ヒット判定をアナウンスさせて頂きます。それでは、リンレンクエストぉぉぉぉ、レディィィゴォォ!!!!

 

 チャラッチャー!!!!

 

海斗:いつもと音が違うんだな

 

 こうして、シミュレーション戦闘が始まったのだった!

 

 テクテクピコ・テクテクピコ・・・・・・

 

 一行はトの字陣形を守って、反対側で待っているリンレンの“双頭金龍”と出来るだけ軸を合わせないように、固まって移動していった。まだ攻撃範囲に入っていないのか、海斗達もそうだったが、リンレンの龍と宝玉コアも、一切攻撃してこなかった。それがかえって不気味でもあったのだが・・・。

 

 そして、3ターンが過ぎ、お互いの間隔が升目2つ分になった“4ターン目”に突入した時、場が動いた。ターンは海斗達の方だった。

 

めぐみ:まずは参謀指定した私から。“強化”!

 

 めぐみは持っていた水晶球を掲げ、光の輪を5つ出現させると、1つは自分の胴体をくぐらせ、他は海斗達に向かって放ち、同じく彼らの胴体をくぐらせて、海斗のパーティ全員の全ステータスを2倍に強化した! メイコの素早さが100に達し、海斗の素早さと運に至っては、256×2=512にも達していた!

 

海斗:次は素早さが高い俺か・・・っても戦闘できないし、逃げる必要ないから、とりあえず“成長”!

 

・・・

 

 全く無反応だった。

 

海斗:あ、あれ? これはいわゆる“オート使用スキル”なのかな。でも出来ることないから、(相手の攻撃を)“回避”!

 

 ピロン

 

 回避を選んだと同時に、どこかで電子音が1回鳴った。

 

海斗:?

 

めぐみ:素早さ512を更に上げる“回避”ピョン。これで海斗だけは最低でも生き残るピョン

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メイコ:次は私みたいね。えっとめぐみからの指示通りなら、飛び道具“金剛拳”!!!

 

 バシュ!!!!

 

リン:ぐぅううう!!!

ヒーゲ:おおっと! 武闘家の金剛拳がリンに直撃! まず右の龍の首を攻めていった! ダメージ50! リンの残りHP450!

メイコ:え・・・ヒーゲ、ちょっとまって! 今何て言った!?

ヒーゲ:だから、残りHP450って。

メイコ:私たち各自最高でも100なのよ!? リンレンコアが同じHPだったとしたら、相手1500もHPがあるじゃないの!

ヒーゲ:まぁボスですから

めぐみ:これで3つのうち、どれかに“回復”能力があったら、かなり苦戦するピョンね・・・

メイコ:というか勝てないと思うけど・・・。私の飛び道具ダメージ、直撃で50だし・・・

 

ルカ:天使は最後になっているみたいだから、次は私ね。うりゃ! “ダブルラリアット斬り”!!

 

 ブンブンブンブン!!!!

 

 この技は半径85cm周囲を斬りつけるため、双首としてリンレンが配置されていたので、二人に直撃した!

 

リン:ぐぬぬぬ

レン:いたたた

コア:・・・・

 

ヒーゲ:これも直撃! ボス全員に80のダメージ! リン残りHP370、レン残りHP420、コア残りHP420!

めぐみ:コアもレンもHPがやはり500だったピョンね

 

ミク:最後はミクね。誰もダメージを受けてないから、私も“回避”するミク

ヒーゲ:これで海斗パーティのターン終了です。次はリンレンパーティのターンです!

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レン:さーて、本気で行こうかな。とりあえず“強化”だ!

 

めぐみ:なに!

 

 レンの体を覆っている“ドラゴンの首のシルエット”(リンレンとコアは全員ドラゴンの対応箇所のシルエットを纏っている)が大きく吼えると、めぐみが行ったのと同じく、リンレンパーティ全員に光の輪に包まれ、リンレン達の全ステータスが2倍になった!

 

 ビューーーーン!

 

レン:あんたらとは違って、1ターンしか効果がないけど、そのダメージ効果は絶大だ!

リン:じゃあ、次は私ね。あんた達の予想通り、前1キャラ1回だけの“頭突き”なんかじゃ攻撃しないのよね。ドラゴンって言ったら、“ブレス”でしょ。しかも倍掛け効果のいったーーいヤツ

 

めぐみ:まずいピョン!

リン:左右1列、前1列の前3列ブレス攻撃! “ファイヤーブレス”!!!!

 

 リンのドラゴンの首が大きく仰け反ると、前に口を振り下ろして、大きく口を開けると、火炎ブレスをはき出した!

 

 ゴォォォオォォォォォォォオ!!!!

 

海斗:うわ!!!

ルカ:ぐぬ!

メイコ:あちち!!

ミク:熱いミク!

 

ヒーゲ:えーーーっと、海斗は回避、ルカはダメージ30、メイコとミクはダメージ40です。残りHPは、海斗20、ルカ70、メイコ50、ミク10!

 

 ピロン

 

 またもや海斗の近くで電子音が鳴った

 

めぐみ:ぬぅぅ・・・この陣形はダメピョン・・・。海斗はともかくミクの回避能力が通じないピョン! それにミクを先に潰しに来る作戦だったピョンか・・・

レン:ふふふ、自称マスターレベルのめぐみさん? これくらい、RPGの常識だよ? 回復役を先に断つなんてね

めぐみ:し、しかし、お前達だって、回復役はあるはずだピョン! 残りと言うことは、“コア”がその役割のはずピョン!

レン:でも遅かったようだね。その陣形を崩して、コアをどう攻める?

 

コア:ツギハ ワタシ。カイフク

 

 ビューーン

 

ヒーゲ:リンレンチーム回復しました。リン残りHP400、レン残りHP450、コア残りHP450! 次は海斗パーティのターンです!

 

めぐみ:ピョン・・・。この陣形がダメだとして“四散“すれば全員同時ダメージはないにしても”回復に偏り“が出て、ログアウトメンバーが必ず出るピョン・・・。ミクは絶対に外されるわけには行かないピョン・・。向こうの残りHPと回復能力から考えても、回復だと思っていたリンを先に攻撃したのはまずかったピョン・・・。どうするピョン・・・

メイコ:めぐみ! ミクちゃんが瀕死よ!!!! とにかくそっちに転送して!

めぐみ:あ・・・ごめんピョン! “戦略”ピョン!

 

 ビューーーーン!!!

 

 めぐみ以外の海斗パーティは全員いったんスタート位置に戻ることにした。

 

 ピロン

 

 このときも転送される前の海斗の近くで電子音が鳴った。

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(めぐみ周辺)

 

 ミクが瀕死だったこともあり、行動順番が代わり、ミクがめぐみの次になっていた。

 

ミク:いたた・・・回復!

 

 パァァァァ

 

ヒーゲ:海斗パーティメンバー全員回復です! 残りHPは、めぐみ60、海斗20、ルカ100、メイコ90、ミク50!

 

めぐみ:みんな聞いて欲しいピョン。あっちが強化・攻撃・回復で、攻撃を1回しかしてこなかったから、まだ良かったピョン。こっちも相手のHPとスキルがわかったけど、こっちのスキルやHP事情も向こうにばれてしまったピョン

メイコ:すいません、うちのヒーゲが・・・

めぐみ:仕方ないピョン。レフェリーキャラはどんなゲームにも付き物ピョン

ミク:回復役のコアは回復だけとしても、レンは攻撃もできそうミクね。そしたら・・・

めぐみ:そうピョン。海斗以外、全員ログアウトだったピョン。運が良かったとも言えるピョン

メイコ:どうする? トの字陣形じゃあ、ブレスでボロボロ。それに相手もブレス以外使ってくる気配もないし・・・

ルカ:私の攻撃が一番強力だったですが、相手のHPの高さと回復力から考えて、ちょっと今の戦力では・・・

海斗:俺が攻撃出来ていたら・・・。素早さと運があるから、ダメージを喰らわないで攻撃できると思うんだけど・・・

めぐみ:無い物ねだりはやめて、現状に戻るピョン。とにかくミクを集中攻撃されることはわかった今、作戦を練り直さないとダメピョンね

海斗:そう言いたいんだけど、実は俺の残り時間をここでかなり使っちゃったんだよね・・・

めぐみ:時間もあんまりないピョンか・・・

ミク:正直、困ったミクね・・・

 

 そのとき、いつもの電子音の後に、いつもと違う派手なファンファーレが、海斗の近くで鳴り響いた!

 

 ピロン・・・・テレッテッテッテー!

 

海斗:な、なんだ! これ! どっかで聞いたことある曲だけど!

めぐみ:これは・・・“レベルアップ”の曲ピョン!

 

 そのとき、海斗の三角帽子に目と口が現れた!

 

海斗:わ、わ、わ! 俺の帽子に顔が!

三角帽子:落ち着け! 私はお前の“強さ”のナビゲーターだ! ミクは世界の案内役、これからも宜しくな

海斗:こ、こちらこそ・・・

三角帽子:さて、私は、お前がこの世界から現世に帰るまで、ここから先、お前にずっとつき合う事になるんだが、

海斗:ちょ! ちょっと待ってくれ! ここでのみんなは虎の部屋のこのゲームだからこの姿になっているんじゃないのか!?

三角帽子:いや。ここから先の扉では、多少異なるときもあるが、この形式で進むことになる

めぐみ:まさか、こんなどんでん返しがあるとはね、驚いたピョンよ

ルカ:で、三角帽子さん、さっきのファンファーレですけど・・・

三角帽子:ああ、忘れてた。海斗の“成長”のスキルは、仲間全員に効果のあるスキルだ。そしてさっきのファンファーレはレベルアップの連絡曲だ

 

海斗:レベルアップ?

三角帽子:そう、海斗が行動したり、攻撃を回避したり受けたりした時に、“ピロン“、と音がして、パーティ総合の経験値が貯まっていたのだ。相手は強敵だったから、1回の取得経験値も大きかったのだ。そして見事に、この度レベルアップになったというわけだ

めぐみ:では、もしかして、私たちは“強く”なるピョンか?

三角帽子:いかにも。海斗の“成長”スキルは、“全員の成長”の意味。この度、皆さんはレベルアップして、“ジョブチェンジ”、する事になったのだ

 

 パァァァ

 

 海斗達全員が、光の輪に包まれ、そして、衣装と持ち物が変わっていった。そして、海斗達の升目の前に、説明書きが表示された。

 

 ミクのジョブは「大天使」に変わった。姿は一変してワルキューレのような女性型の軽い鎧を着ており、頭の上に輝くわっかがあり大きな翼が付いていて、剣を持っていた。HP300、攻撃120、防御80、魔力100、素早さ50、運100。発動スキルは、剣の舞(エリア全体攻撃)、大回復(どの位置にいても全員のHPを大回復)、完全治癒(どの位置にいても全員の状態を完全回復)、ダブルスキル(オート)。今度は攻撃できて、更に2回行動できるようになった。

 

 ルカのジョブは「ナイト」に変わった。黒とピンクの騎兵が着る厚めの鎧や兜に身を包み、ロングスピアーを持っていた。HP800、攻撃250、防御150、魔力20、素早さ50、運80。発動スキルは、大旋風(エリア全体攻撃)、メディテーション(自分のみステータス2倍で数ターン持続)、オーラ(攻撃エリア3倍で数ターン持続)。今度は自分の攻撃の強化も出来て、更に攻撃が強力になった。

 

 メイコのジョブは「拳聖」に変わった。灼熱色の胴着を着用し、両手は常に青白い“オーラ”に包まれていた。全体的に軽装であるのは代わらないのだが、ステータスがとんでもなかった。HP600、攻撃300、防御100、魔力100、素早さ150、運150。発動スキルは、オーラアタック(前方1体に複数回パンチ)、天裂拳(広い周囲への全体飛び道具)、ダブルスキル(オート)、瞑想(自分のみHP大回復+ステータス1ターン2倍)。つまり更に素早い強力な格闘術と、広範囲全体飛び道具、そして自己回復と強化も出来るようになったのだ。

 

 めぐみのジョブは「天聖師」に変わった。神々しいまでに輝く軍師衣装を着用し、合金製の“金属の扇”を持っていた。HP400、攻撃120、防御120、魔力200、素早さ50、運200。発動スキルは、戦略(前と同じ)、天命旋(前方全範囲を扇でなぎ倒す)、大強化(仲間全員の全ステータス数ターン4倍)、回復(どの位置にいても全員のHPを回復)、ダブルスキル。ついにめぐみも強力な攻撃が出来るようになり、回復も強化もできるようになった。更に2回行動できるようになった。

 

 そして、“成長”スキルを維持したまま、ジョブチェンジしたのが、海斗だった。

 

海斗:おお・・・金色のヘッドバンド、青いマフラー、白い服、マジックスタッフ・・・これは・・・

青い宝石:そう、今のお前のジョブは、“賢者”だ

 

 海斗のジョブは「賢者」に変わった。小さい顔が薄く浮かぶ青い宝石が埋め込まれている金色のヘッドバンド、トレードマークの青いマフラー、青い帯で結ばれた白い軽装の服、魔法使いが持つだろう大木の枝から削って作ったようなマジックスタッフ。しかし、その姿には大きな特徴があった。全身を青いオーラが包んでおり、攻撃を軽減か、受けないような姿だったのだ。HP400、攻撃100、防御300、魔力300、素早さ256、運256。発動スキルは、殲滅(広い範囲に無属性魔法攻撃。相手の強化効果無視)、ボルカノ(広い範囲に火炎属性魔法攻撃)、ダイヤモンドダスト(広い範囲に氷結属性魔法攻撃)、かまいたち((広い範囲に疾風属性魔法攻撃)、天雷(広い範囲に電撃属性魔法攻撃)、せっかん(広い範囲に杖で物理属性攻撃)、強化(1ターンのみ自分のステータス2倍)、成長(オート。海斗の行動毎にパーティ全員に経験値付与)

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メイコ:か、海斗・・・あんた、もの凄いジョブに変わったわね・・・

めぐみ:なるほどピョン。“とある職業も特定レベルまで上げればなれる職業”ってわけだったピョンね

海斗:お、俺、行ける! 行けるよ!

めぐみ:そうピョンね。これだけ強ければ、全員バラバラに攻撃していっても、ラクショーピョンね

 

リン:そ・・・・そんな・・・・ジョブは確かこっちのシステムが決めるはずのものなのに・・・

レン:まずいよ、リン。これじゃあ・・・・

 

めぐみ:全員・・・・

海斗パーティ:総攻撃!!!!!!

リンレン:うわああああああああ!!!!!!

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 リンとレンとコアは、あっという間に倒されて、ログアウトされてしまった。

 

 升目の光は消えて、普通の部屋に戻り、海斗達も自分達の転職後の小さなキャラ駒を持った状態で、前の姿に戻っていた。ログアウトされ、正座しているリンとレンは、輝く“龍の宝玉”を海斗に手渡した。

 

リン:ジョブチェンジが無ければ勝てたのに・・・

レン:海斗さん達! 僕たちは強かったはず! あなた達が“強すぎる”状態に変わったから負けたんです! その強さ、その行く末、是非見てみたい。是非とも、僕たちもお供させて下さい! 私たちのジョブは“ドラゴンナイト”。ステータスは次の“巳年の扉”、つまり蛇のダンジョンで説明します

リン:いやとは言わせませんよ!

 

海斗:勿論、仲間は多い方がいいからね。宜しく頼むよ

レン:有り難うございます!

 

 こうして、海斗達は、これからの対戦システムを知り、強くなった状態で、次の「5:00の巳(蛇)の宝玉の守護者」が待つ、“巳年の扉”に向かうことにした。

 

(続く)

 

CAST

 

工藤海斗:KAITO

0:00の子の宝玉の守護者&案内天使・ミク:初音ミク

1:00の丑(牛)の宝玉の守護者・ルカ:巡音ルカ

2:00の寅(虎)の宝玉の守護者・メイコ:MEIKO

3:00のうさぎ(兎)の宝玉の守護者・めぐみ:GUMI

4:00の辰(龍)の宝玉の双子の守護者・リン(ドラゴン):鏡音リン

4:00の辰(龍)の宝玉の双子の守護者・レン(ドラゴン):鏡音レン

 

ジャッジのヒーゲ:とある髭のリングアナウンサー

 

その他:エキストラの皆さん

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第11作目の” 十二支・幻想奇譚 ボカロ界からの脱出!“シリーズの第4話です。
○私の小説シリーズでは、“KAITOにーさん”が初の“主役”を勝ち取った作品です。
○内容は、まぁ、にーさんの代表曲のように、卑怯というか、何というか…。久々に脱出物です。
○なにやら不思議な空間に飛ばされたKAITOにーさん、どうなるのでしょうか?

☆そろそろ海斗が、ここのメンツに与える影響が出始めてますね
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Vocaloid KAITO 初音ミク 巡音ルカ MEIKO GUMI 鏡音リン 鏡音レン 

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