真恋姫†夢想 弓史に一生 第七章 第三話 |
〜聖side〜
「ふわぁ〜〜〜………。」
昨日遅くまで桃香と話し合いをしていた所為で寝不足だ……。
日課の朝練の時間はとっくに過ぎ、陣内には朝御飯の良い香りが漂っている。
きっと直ぐにでも麗紗が呼びに来るだろう。
「さてと…着替えておくかね…………んっ??」
寝台から降りようと体を起こしたところで、不自然に左側の布団が膨らんでいることに気付く。
勿論、昨夜寝る前には無かったものだ。
「まったく………また橙里が俺の布団に潜り込んだか??」
実はあの日(閨を共にした日)以来、橙里は度々夜に俺の布団に潜り込んで寝るようになっていた。
橙里曰く、とても落ち着いて寝れるから睡眠不足の時には丁度良いらしい……。
女の子に添い寝されるのは正直嬉しいことである。それに、それが美人であれば尚のこと良いだろう。
しかし、その度に朝起こしに来た人が見つけてはあーだこーだと文句を言われるので、最近は橙里も自重していた………のだが……。
「ほら……橙里、起きろ。朝だぞ。」
声をかけると同時にかかっている布団を剥ぎ取る。
するとそこには、
「く〜〜…………すぅ〜〜………にへへ……あんちゃん…。」
…………寝言を呟きながら頬をにやけさせる音流が居た…。
「何……だと……。」
当然橙里だと思っていた俺は、あまりの驚きに言葉が出ない。
それに、音流といえば俺の軍の中でも1,2を争うほどの真面目な将である。
確かに俺に甘えてくることは多いが、仕事態度は勤勉で優秀、部下からの信頼も厚く、うちの軍には無くてはならない将となっている。
そんな音流が……こういうことをしてくるとは………到底考え付かない…。
「そうか……これはきっと夢だ……そうじゃなきゃこんなこと……。」
そう思って、再び夢の中へ旅立とうとしたところで………。
「お兄ちゃん、おはようござ…………います…………。(カラーン)」
麗紗が天幕の中を覗き込み、驚愕の表情を浮かべたまま入り口の傍でおたまを落とした……。
「……や……やぁ……おはよう、麗紗………。」
若干顔は引きつってるかもしれないが、笑顔で麗紗に挨拶を返す。何もやましい事は無いですよという意思を込めて……。
しかし、勘違いするには十分な材料が揃っているもので………。
「………お……お兄ちゃん……と……音流さんが……一緒に寝てる………。」
肩を震わせ、驚きで大きく見開いた目は焦点を定めていない。どうやら、それ程大きな衝撃だったらしい。
「いや、違うんだよ……麗紗。とにかく一旦落ち着いて俺の話を――――。」
「…………麗紗………何し………。」
なんというタイミングで入ってくるんだ蛍の奴は……。
布団で寝る二人、それを目撃した麗紗。
今のこの光景を後ろから見た蛍は果たして何を思うか……。
「…………修羅場……?」
ですよね……。そう見えますものね……。
「ね……ねね……音流さんが……お兄ちゃんに……夜這い……。」
「だから、麗紗誤解だって……多分。」
「多分って何ですか!!?? まさか、昨日の情事で記憶が曖昧になるまで音流さんの身体を貪り尽くしたのですか!!? 嫌がる音流さんを押さえつけ、その獣じみた性欲が治まるまで何度も何度も………あうぁぅ………お兄ちゃんは変態さんです!!!! 色欲魔です!!!! 獣と同類です!!!!」
「……鬼畜……変態……。」
勝手な妄想を始めたかと思えば………何故か俺が鬼畜の所業を音流にしたことになってるし……。
まったく……麗紗の妄想壁にも困ったものだ……。
しかし、困ったな……このままだと麗紗が納得いくような説明がつかない……。
まぁ、俺自身この今の状況が完全には飲み込めてないんだから、納得する説明をするとか無理な話なんだが……。
しかもさっきまで普通に観戦してた蛍も、何故か怒り顔で麗紗の味方をし始めるし……。
どうすりゃ良いんだよ!!??
「う〜〜ん……。せからしか〜……。うちの睡眠ば邪魔せんで欲しいっちゃ……。」
どうするべきか悩んでいると、流石にうるさかったのか気持ち良さそうに寝ていた音流が目を擦りながら起きた。
「ふみゅ〜〜……あ〜〜……あんちゃん、おはよ〜……。」
「おはよ、音流。早速で悪いんだけど、この状況を説明してくれないかな?」
「この状況………??」
そこまで口にした後、音流は後ろに麗紗と蛍がいることに気付き、続けて自分が俺の布団で寝ていたことに気付く。
音流は直ぐに俺の布団から出ると、麗紗と蛍に向かって全力で手を左右に振りながら弁解する。
「う……うちは何もしてなかと!! 本当やけんな!!」
「では……何故布団のなかで……。」
「………寝ていた……?」
麗紗と蛍の二人はさながら犯人を追い詰める刑事のように音流を尋問する。
どうしてだろう……二人の背後に鬼が見える気が………。
「そ……それは………。」
「「それは?」」
「………実は…。」
そこからしばらく音流の話が続き、どうしてこのようなことになったのか納得がいった。
要約するなら、音流は一緒に朝鍛錬をしようと俺を起こしに来たが、俺が気持ち良さそうに寝ている姿を見て自分もついつい眠たくなり、俺の布団にお邪魔したのだとか……。
いや〜……ミイラ取りがミイラになったというか……。とにかく、俺の無実は証明できたよね♪ 良かった良かった……。
どうやら、麗紗や蛍も納得言った顔してるし、これでようやく朝御飯にありつける……。
ほっと一息ついて寝台から出て、着替えを準備しようとした所で……。
「ばってん………あんちゃんが布団捲って『おいで』なんて言うけん……こぎゃんこつに……。( ///)」
………音流から着火済みの爆弾が投下された…。
「………俺そんなこと言った覚えないんですけど…。」
「はっきりとそう言ったばい!!」
「言ってない!!」
「言った!!」
「言ってない!!」
「言った!!」
「う〜ん……。埒が明かない…。もし言ったとするなら……寝言でだな…。」
寝言じゃあしょうがないよな…。よし、この場は寝言だったで納めて飯にしよう!! うん!!それが良い!! それが一番最善のs――――。
「………麗紗さん、蛍さん……お二人の冷たい視線がさっきからドスドスと刺さって痛いんですけど……。」
「やっぱり……変態さんです!!」
「………ケダモノ…。」
え〜……寝言ですものしょうがないじゃないですか………。
「罰として………次は私が………。(ごにょごにょ)」
「ん? 何か言った?」
「いえっ!? 何でもないです!!」
「………ご主人様……今日…夜は私たちと寝ること……。」
「蛍ちゃん!!??」
「………因みに拒否権は……??」
「………強制……。」
「ですよね……。」
二人に約束を取り付けられ、俺としては嬉しいような後が怖いような……。
何はともあれ、二人の機嫌も直ったことだし、ようやく朝御飯が――――。
「ふたりなんて……あんちゃんは変態じゃ〜!!!!」
「しつこい!!! もうその話は済んだんだよ!!!!!!」
長い話し合いの末、何とか丸く収まったこの場。
えっ!?どうしたのかって?
音流とは買い物に付き合うことで何とか和解したよ……。
序に蛍と麗紗とも買い物に行くことになったけど……。
それにしても、何で女の子って言うのはあんなに買い物が好きなんだろうか??
不思議なものだな〜……。
時間を多いにとられたことで、すっかり遅くなってしまった朝食を食べ、本日の話し合いをすると皆に伝えて、劉備軍の陣営に向かう。
陣の見張りをしていた兵に来訪の旨を伝えて、今現在軍議が行われているという天幕へと連れて行かれる。
「軍議中お邪魔するよ。」
「あっ!! 聖さん!!」
天幕に入ると桃香を中心に、四人の女の子が机を囲んでいた。
中には見たことの無い少女が二人居るところから、彼女たちが残りの将なのだろう。
とりあえず、司会進行をしているだろう朱里に話し合いに参加する許可を求める。
「軍議中だろう? 悪いな勝手に入ってきちまって……。」
「いえ、大体の事は終わってますし、聖さんたちの所と連携しなければならないところもありますので、丁度良かったと言えます。」
「そうかい…。それじゃ、今からその話をしようか……とその前に、そっちの二人に自己紹介するのが先かな?」
にこりと微笑みながら渦中の二人を見ると、短髪赤髪の少女はにへっと顔を綻ばせ、青髪ツインテールで帽子を被った少女は朱里の後ろに身を隠した。
「あらら……嫌われちゃったかな??」
「雛里ちゃん、聖さんは悪い人じゃないから大丈夫だよ。」
桃香にそう言われるが、少女はおどおどしながらその身を前に出そうとはしない。
………人見知りするのかな…。
「まぁ、良いか。俺は徳種聖。広陵の太守をしてるんだ。」
俺がそう言うと、先程の少女は驚くほど食いついてきた。
「こっ……広陵の太守さんなんですか……!! じゃ……あの……その……えと……聞きたいことがあるんでしゅが……………。」
「落ち着いてゆっくり喋ってくれれば良いからね。それで、何かな?」
「はい……。あの町の税は幾らにしてあって、その回収率はいかほどで、それに伴う民たちからの不満はあるのか、または反乱などが起きていないのか、反乱が起きた時の対処はどうしてるのか、そもそもどのようにしてあそこまで大きな町にしたのか、急激な拡大に市民への影響はないのか、他にも―――――。」
……おっ……おう…。
饒舌になったかと思えば、えらい量の質問をぶつけてくれるものだ……。
答えてはあげたいけど、今は話を進めないといけないしな〜……。
「………あははっ。ごめんね、とりあえず今は話を進めたいから、名前を教えてもらってもいい?」
まだあれこれと呟いていた少女だったが、ハッ!!とすると同時に勢い良く頭を下げる。
「……あわわ…!!! しゅみましぇんでした!! 姓は?、名は統、字は士元。真名は雛里でしゅ!!」
勢い良く喋ったものだから、複数回舌を噛んでしまっている。
痛そうだな〜……。
「雛里ちゃんだね……。俺のことは呼びたいように呼んでね。」
「ひゃい……。」
「それと、この戦いが終わったらさっきの質問には答えられる範囲で答えてあげるね。」
それを聞くと、雛里は先程まで痛みに顔を歪ませていたが、一瞬で表情を変え目を輝かせて俺を見てくる。
「はい!! 是非に。 ……あっ……でも……。」
そう言うと、暗い表情のまま後ろに居た朱里をちらっと振り返る。
俺はそれを見て直ぐに理解する。
やっぱり、出来る男はこうでなくては……。
「勿論、朱里と一緒においで。俺も二人の意見を聞いてみたいから。」
俺が言うと、雛里の顔にはぱっと笑顔が浮かび朱里の許へと行って何事か話している。それを聞いた朱里も笑顔で雛里と話しているので何とも微笑ましい。
「さて、雛里は分かった。……で? こっちのお嬢ちゃんは?」
話しやすいように身を屈めて目線を合わせる。
が、その行為と先程の言い方が少女の癇に障ったらしい。
「う〜〜……。鈴々を子ども扱いするななのだ。」
赤髪の少女は腕組みをしながらほほを膨らませて怒る。
いやっ………まるっきり子供にしか見えないんですが…。
「分かった分かった。じゃあ、何て呼べば良いのか先に教えてよ。」
「鈴々は張飛、字は翼徳、真名は鈴々なのだ。」
その名前を聞いて驚く俺。
燕人張飛と言えば、酒癖が悪く、部下に対する暴力など豪快な性格をしているイメージだが……。
成程、子供という事でそれらを現しているのか………納得がいった…。
この子が張飛だというなら、仲悪くするのは将来的に良くないよな……。
「鈴々。悪かったな、子ども扱いして……。」
「分かればいいのだ。ねぇねぇ、鈴々は何て呼べば良いのだ?」
「何でも良いよ。好きなように呼んで。」
「う〜ん……。じゃあ、聖兄ちゃんって呼んで良い?」
鈴々が聖兄ちゃんって言った瞬間に急に背筋に寒気が………あははっ……ナゼダロウナ……。
「………なんで??」
「何でって言われても……その方が呼びやすそうだったからなのだ。」
呼びやすいように呼んで良いといった手前、その提案を断ることは出来ないよな……。
「分かった。それが呼びやすいならそうしてくれ。」
「やた〜〜!!!!! へへへっ。」
鈴々は頭の後ろで手を組むと眩しいほどの笑顔を向けて笑ってくれた。
その笑顔を見てると俺の顔も自然と微笑み、周りの皆も笑っていた。
これが、後に三強の一角を統べる劉備軍か………。
成程………人々が彼女たちを求める理由が分かったような………そんな気がするよ……。
第七章 第三話 『積極的????』 END
後書きです。
第七章 第三話の投稿が終了しました。
前書きで書いたとおり、今回からタイトルを最後にもって来ていますがどうでしょうか?
よかったら皆さん、コメントを戴けると幸いです。
また、今話の中での音流の博多弁に関する補足を……。
せからしか〜 → うるさいな〜
ってことらしいです。でも、あんまり若い人は使わないのかな??詳しい方がいたら教えてください!!
次話の投稿ですが、日曜日にあげることができそうに無いので、金曜日にあげたいと思います。
それでは、お楽しみに〜!!
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 いつもよりも投稿が遅れてしまいましたが、まだ日曜日と言うことでセーフとしてください(笑) それから、今話よりタイトルを一番最後にもって来る様にしています。 と言うのも、私の所為ではあるんですがタイトルでかなりネタバレな展開が予想できるなと、今までの作品を見て思いまして……。 それなら、タイトルを一番最後にもって来てしまおうと……そういう発想の次第でございます。 ご了承くださいませ…。 |
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コメント | ||
>将軍さん コメントありがとうございます。 熊本なんですか!? ならば、安心しました。ありがとうございます!! これからも可笑しな所があればコメント戴けると幸いです。(kikkoman) 思いますよ。 すいませんなんか二回に分けて(将軍) 聖の修羅場回避能力がUP あと俺は熊本住みなんですけど、うるさいのことをせからしいというからせからしかはうるさいなで多分あってると(将軍) |
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