真恋姫無双 〜蜂蜜姫の未来〜 第17話
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この作品は恋姫無双の二次小説で袁術ルートです。

オリ主やオリキャラ、原作キャラの性格改変やオリジナルの展開などもあります。

 

そういうのが許せない、特定のキャラが好きな方はスルーしてください。

※一刀アンチ作品ではありません。

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第17話

 

 文醜が放った一言により、強制イベントへと引きずり込まれた大地達。

 

 街へと繰り出した一行は袁紹に付き合いつつ、それなりに楽しんでいた。まぁ、買い物自体はたいしたことはなかったのだが、ウィンドウショッピングに付き合わされる割合が多く、この中で唯一の男性である大地としてはなかなかに退屈ではあったのだが。

 

仲よさげに歩くそれぞれの主の後ろを歩いていた呂範と顔良。二人が街にきて交わした会話は世間話し程度のものだった。

「呂範さん。お聞きしたいことがあるんですけど、いいですか?」

「何でしょうか?」

「失礼かもしれませんけど、呂範さんは何で袁術様に仕えることになったんですか?呂範さんなら他でも十分通用すると思うんです。あ、答えたくなければ無理に答えていただかなくてもいいんですけど……」

 袁紹、袁術のあとについて歩いていた呂範に控えめな声量で訪ねてきたのは、隣を歩いていた顔良。

 実は彼女、七乃や八重から呂範という人物像を何とか掴みたがっていたが、どうやら望むような物は得られなかったらしい。二人のガードは予想以上に堅かった。となれば、本人から直接聞き出すしかないだろう。なぜそんな事を聞きたがるのか、という詮索はしないでおく。

 

「……経緯というほど大層なものはありませんね。七乃と八重が私を見つけてくれなければ美羽様と会うこともなかったでしょうし」

「はぁ……?」

「まぁ、大した理由はありません。強いて言うなら、美羽様のために働きたいと思ったんです」

「……」

「顔良殿?」

 呂範の隣を歩く顔良の表情は曇っていた。今の彼の言葉に何か感じるところがあったのか、彼女の眼には疑いの色が見える。何とも言えない違和感が彼女にそんな顔をさせた。といっても彼女も確証があるわけではないため、どう言えばいいのか分からないでいるのだろうが。

 

 ふと顔を上げた顔良は前を歩く二人の様子を注意深く観察する。そして、

「呂範さん、麗羽様は変われると思いますか?」

 幼き主君が変わるきっかけを与えた男に自分の主君の今後を尋ねる。

「ありきたりな言葉で申し訳ありませんが、本人にその気があるなら不可能なことではないかと」

「そう、ですか……」

 主の事を真剣に考える女性と青年の会話はここで途切れた。

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大地視点

 

 そうこうするうち、あらかた買いたい物や気になる物は見終えたのか、袁紹殿はそろそろ城へと戻ることを提案する。

「そうですね。私も麗羽様と一緒に帰りますけど、お二人はどうします?」

「妾はもう少しブラブラしてから帰るのじゃ」

「では私は美羽様にお付き合いいたします」

 袁紹殿と顔良殿はそのまま俺たちと別れ、城へと帰って行く。ちなみに、買った物はあらかじめ城に送ってもらうよう手配しておいた。

 陽も傾き始め、街を行き交う人々からは楽しげな話し声が聞こえてくる。街の一端とはいえあまり動かないでいるのも変に思われるだろう。

 

「どこか行きたいとこでもあるのか?」

「…………」

 隣に立つ美羽は先ほどから落ち着かない様子で俺を見ている。おそらく行きたい場所でもあるんだろうが、どう言ったらいいのかわからないのか少しそわそわしている。

 まあ、彼女が行きたい場所なんてそう多くもないし、この感じから考えるにおそらくあの場所だろうと当たりをつける。そして、俺は美羽の小さな手を取りその場所へと連れていくことにした。

 

 歩く二人の間に言葉は無い。

 

 辿り着いたのは、小さな空き地。かつて思い知らされた自分の無知は今の自分にどう映るのか。

「ここでいいんだろ?」

「な、んで……?」

「なんとなく、な。見たいんじゃないかなぁ、と思ったんだ」

「……うむ」

 それきり二人は無言でその場で佇む。どれくらいの時が経っただろうか。いや、実際はそれほど時は流れていないのかもしれない。

 

「のう、兄上。さっきはがんりょーと何を話しておったのじゃ?」

どこか不安そうな面持ちで問う美羽。

「なんだ、聞いてたのか?」

「うむ。麗羽姉さまに聞こうとしたら、「私たちが立ち入っていいお話ではないと思うんですの」と言われての」

「へぇ……」

 そういった気配りが袁紹にできるとは思ってもみなかった大地は舌を巻く。あの自己顕示欲の塊みたいな女に、雰囲気の機微を感じ取るような事ができると知り彼女の評価を改めることにする。

「俺は何でここにいるのかと聞かれて、お前のために働きたいからだと答えた。まぁ、それで納得してもらえたとは思ってないけどな」

 しかし美羽の表情は先ほどとさほど変わらない。美羽の見つめる先にはゆっくりと沈んでいく夕日が一日の終わりを告げようとしていた。

 

 しばしの沈黙のあと、ふと大地の足元に長い影が被る。

 

 その影に気がついた大地が振り向けば、あの時美羽とともに遊んだ子の一人が立っていた。

「兄ちゃん?」

 突如聞こえた声に振り向いた美羽は嬉しいような悲しいような何とも言えない表情を浮かべる。

 

「よお、((明|みん))。どうしたんだ、もう日も暮れるぞ」

「うん、母ちゃんに買い物頼まれたんだ。で、家に帰ろうと思ったら空き地に誰かいるんだもん。気になっちゃって」

「そうか」

「?姉ちゃん、どうしたの?変な顔して」

「っ!?へっ、変な顔などしてないのじゃ!」

 ふ〜ん、と男の子は美羽の顔と俺の顔を交互に見て一言。

 

「そうだ!兄ちゃん達、また遊んでくれる?」

「あぁ。今日はもう遅いから無理だけど、時間作ってまた来るよ」

「じゃ、約束」

 そう言って俺に差し出されたのは小さな小指。その手の形は俺のよく知っているものだった。

 なんで指切りを知ってるんだ?俺は教えたことなんかないはずだが……。

 

「なぁ、それどこで教えてもらったんだ?」

「え?姉ちゃんが約束するときはこうするんだって」

 その言葉に俺は思わず美羽を見る。あわてて顔を俯かせ目をそらすが、少し頬が赤いような気がする。美羽にこれを教えたことなんてあったかな?必死に記憶を辿るがやはりそんな記憶はない。もしかしたらこの時代から指切りはあったのだろうか?いや、美羽が教えたということから考えて一般に普及しているとは思えない。しかし……。

 

 俺の疑問が解消されることは無くモヤモヤとした気分ではあったが、いつまでも目の前の男の子を無視するわけにもいかず、指切りをすることにした。

「ゆーびきりげーんまんうそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった」

 二人がつなぐ小指がリズムよく揺れた。不意に離れた指の温かさは少し名残惜しくも感じる。

 約束だよ、と言って照れくさそうに走り去っていく少年を俺はただ見送るしかできなかった。

 

 しばらくぼっ〜としていると、ためらいがちにこちらを見つめながらかかる小さな声。

「兄上、妾は……」

 しかし後に続くはずの言葉は音を発することは無かった。

 

視点アウト

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美羽視点

 

 何かがおかしかった。いつもの日常でありながらそうではない空気が流れていたような気がした。それが何かと聞かれて、簡単に答えられるような分かりやすいものではなかったと思う。

 

 気づけば兄上に問おうとしていた。そしてふと気付く。自分がなんと恐ろしい言葉を口にしようとしていたのかを。紡ぐべき言葉が音を発することは無く、一瞬の静寂が辺りを包む。どうすればいいかわからずに俯いてしまう。

 そんな妾に兄上は静かに手を差し出す。ぎこちない動作で手を握り返すとゆっくり城へと歩き出した。

 

 しかし……、

 

 言葉にせねば伝わらぬこともあると、その後強く後悔することになる。

 

 なぜかだか知らぬが、その日の兄上の背は心なしか小さく見えた気がした

 

視点アウト

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七乃視点

 

(なーんか、おかしいんです。何がって聞かれちゃうと説明できませんけど。美羽さまも大地さんも無理して笑ってるような感じなんですよね〜)

 街から戻ってきた二人を観察している七乃はその様子にどこか違和感を覚えた。よく見ていなければ分からないような些細な物ではあったのだろうが、二人(特に美羽)を知り尽くしていると豪語する彼女はその違和感に気付く。

 

 まぁ、それを直接本人に指摘するような彼女ではないのだが。

 

 そして皆で夕食を取りながら談笑していると、麗羽たちの今後の予定が話に上がった。明後日には城を出るという。今日の文醜の様子から顔良が判断したらしい。

 

 しかし、七乃にとってはそんなことはどうでもいい。まぁ、袁紹たちが南陽を出るという情報は有益なものに変わりは無い。ここが好機と考えた彼女は、友に計画の開始を告げようとしていた。

 

 隣で食後のお茶を飲む姿はどこか未亡人のようにも見えるななどと、どうでもいい感想を抱く七乃。彼女が湯呑を置くのとほぼ同時に口を開く。

「八重ちゃん、私そろそろ動いてみようかなぁ〜と思ってるんですけど」

「まだ早いような気もしますけど?」

「いえ、大地さんの部隊の目処もつき始めてますし、ちょっとやってみたいこともあるので……」

 そう言うと八重は少し考えるように顎に手を添える。確かに袁紹たちが帰るこの時期を逃すわけにもいかないのだろう。そうじゃなくても計画がずれ込んでいるのは間違いなのだ。これ以上の遅延を認めるわけにはいかない。

 

 そんな事を考えている八重に七乃は全く関係ない思考を抱く。

 この同僚はもう少し自分の魅力を知るべきだ。艶のある黒髪は後ろで束ねて三つ編みにしている。ほどけばいいのにと常日頃言っているのだが、彼女が素直に聞き入れたことはない。まぁ、彼女らしいと言えばらしいのだけど。

 

 まぁ、結局七乃の提案は受け入れられ、静かに夜は更けていった。

 

「でも、な〜んか気になるんですよね〜」

 寝台に横になり、今日の二人の様子に違和感を覚えながらもその正体にたどりつくことはできない七乃。

 胸にモヤモヤと残る違和感にどうにも居心地の悪さを感じながらも彼女は眠りについた。

 

視点アウト

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あとがき

 

ずいぶん間が空いてしまいました。申し訳ないです。

 

今回は内容に関しては特にありません。彼女たちの小さい変化を感じ取っていただければと思います。

近い内にキャラ設定のまとめ的なものを投下しようと思います。

 

でわでわ失礼します。

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