武装神姫「tw×in」 第二十六話 |
「ご覚悟!」
落下の力を含めた速度で迫る空影は、小剣:霊刀・千鳥雲切を手に握っていた。コナユキも小剣を持ち対抗する。
互いの刃が交わった、そこから空影は連続攻撃を開始。
ただ切り込むのではなく、跳躍からの上、しゃがんでからの下など、剣捌きでコナユキに防戦を強いる。
さすがはライドバトル以前からの神姫、攻撃方法が多彩だ。
「たぁぁぁ!」
守ってばかりだったコナユキが攻めに転じる。アタックチェインで大剣に持ち変えて空影へと振るった。
しかし、
「太刀筋が見え見えです。避けるは愚か……」
空影は小剣の刃を大剣に滑らせて受け流し、
「反撃も可能です」
コナユキの横を抜け際に脇を切りつけた。
「は、早いのです!?」
「伊達に場数は踏んでいません」
振り向いたコナユキに空影は小剣の先を突きつけて続ける。
「現在、移動及び攻撃はわたしが行い、レールアクション等新たな技術にマスターの力をお借りしている状態。つまり、現段階では最初以降わたしのみの、過去に得た経験の力です。貴女には無いこの力に、どう対しますか!」
体制を低くして突撃を開始し。コナユキも小剣を手に構えて対抗する。
高速で飛び込んだ空影の小剣の刃がコナユキに触れる……
瞬間、コナユキは横に跳んだ。
「一撃を回避したところで、後を追うのは動作も…」
「たぁぁぁ!」
空影がコナユキの避けた方向を向いた時には、コナユキは壁を蹴って空影へと近づいていた。
「!?」
持ち変えた大剣を振るうが寸でのところで避けられてしまった。
『惜しかったねコナユキ、でもナイスアクションだよ』
「ありがとうございますなのです」
「なるほど……地の利はそちらにあるのですね」
チューブフィールドの特徴は、他に比べて横に狭いこと。それを上手く使い空影の裏をついたんだ。
バトルロンドの経験があっても、新しく出来たばかりのチューブフィールドの地理はさすがに無いだろう。
「もう一回行くのです!」
コナユキは小剣を手に空影の斜め前、小剣は進行方向上の空影に当たるように構えて突撃。もし空影が小剣を横に避けても、そこから壁を蹴って再度の突撃に備えた動きだ。
「甘いですね。同じ攻撃を二度行うとは」
小剣の刃が迫る中、空影は冷静に語ると、垂直に跳躍して空中へと避けた。
「剣の類いならば、空中では当たりませんよ」
よし、予想通り。
『ライフルだ!』
コナユキに指示を出し、アタックチェインでライフルに持ち変えて放つ、
「っ!?」
不意を突かれた空影に当たり、地面へと着地させた。
「やはり……アタックチェインも慣れない行動です」
『このまま押しきるんだ!』
「はいなのです!」
空影の飛鳥型は、日本の戦闘機をモチーフに造られた神姫。秀でる能力はその速度で、行動及び回避では敵わない。
けど変わりに、防御力と体力は低く、そこを突くしかない。
攻撃しつつ、時折壁キックを加えたフェイントを放って空影と対峙する。
お互いの攻撃は当たっているが、空影の命中率の方が明らかに高い。
けれど一撃の威力ならコナユキの方が上だ。何故なら、
「くっ……流石に、厳しくなってきましたね」
空影が先に疲れを見せたからだ。
『コナユキ、大丈夫?』
「まだまだ行けるのです!」
コナユキは大剣を構えて元気をアピールする。
けど、ダメージはある筈だ。空影の体力も恐らく少ないし、ここは大技で決めるか。
『よし、行くよコナユキ!』
「たぁぁぁ!」
大剣を振りかぶりながら空影へと突撃する。
「……まさかここまで削られるとは思っていませんでした。しかし」
空影は小剣の刃を滑らせ、先ほど同様、コナユキの脇を抜け……なかった。
「わたしも、負ける訳にはいきません」
懐に入ったところで止まり、小剣から持ち変えた機関銃:flak17 1.5mmが、零距離でコナユキに放たれた。
「っ……!」
『コナユキ!』
声も出さずにコナユキは後ろへと吹き飛ばされ、仰向けに地面へ倒れた。
「う……」
一発の威力は低くても、それが全弾当たったとなると大ダメージだ。すでに体力は少なかったのに。
「ここまで使わなかったのは正解でした。バトルとは相手に手の内を明かさないことも策の一つ、長年の経験の賜物です」
機関銃を終い、保険の為か小剣を持った空影がコナユキへと近づいていく。
「申し訳ありませんが、止めを刺させて頂きます」
逆手に握った小剣を、倒れるコナユキに向けて振り上げ……
「………………ま」
コナユキの手が動いた。
「ま……まだなのです!」
がばりと起き上がり、
「わたしだって、負けないのです!」
手に小剣を持ち、
「たぁぁぁぁぁぁ!」
迫る小剣を怖れずに空影へと振るった。
そして―――
キィン!
「……」
「……」
コナユキは空影の後ろに立ったまま。
空影はコナユキの後ろに膝をついたままで。硬直する二人。
起き上がりながら振り切ったコナユキとしゃがみながら降り下ろした空影。
どちらの攻撃も、どちらにも当たった。
手応えがあったし、衝撃があったから分かる。
けど、どちらも動かないのは何故だ?
『コナ……ユキ?』
オレが呼び掛けると、
「マス、ター……わたし、やったの……です……」
応えるのと同時、コナユキが前のめりに倒れる。
のと同時、
「お見事……でした……」
空影が小剣を落として倒れた。
こ、この状態は……
アナウンスの声が、ここ数日で何度も聞いたとても珍しい状態を告げた。
DRAW
大会ルールにより、引き分けの場合は両者敗退。
つまり、
「Pluto杯。優勝は……緋陽暁子さんとその神姫カサノハです」
「いぇーい!」
優勝者は、真南に勝った彼女ということになった。
更にオレと木部が引き分け敗退となった為、順番で真南が二位。オレ達2人は同着三位という結果に。
「はぅぅ……ごめんなさいなのですマスター……」
「大丈夫だよコナユキ。あの空影と引き分けなんて凄いことなんだから、自信を持って、次に生かそう」
「はいなのです……」
まだ少し落ち込んでるな。早く三人に合わせて慰めないと。
「それでは優勝者の緋陽さんに、この大会の主催者より賞品の授与です」
え? 主催者って……
「やーやー、おめでとう緋陽さん」
やっぱり、ミルートが優勝賞金の額が書かれた板を持って現れた。
「あれ? ひょっとして、みるちゃんがこの大会の主催者なの!?」
やっと気付いた真南が驚きを口にすると「本当に気付いてなかったんですね……」とミズナがため息をついていた。
「なんだ宗哉、言ってなかったんだ?」
「名前で気付くと思ってね」
「そう、ワタシもすぐ気付いた」
隣の木部はうんうんと頷くが、
「え?、わたしさっぱり気づかなかったよー」
やはり真南は気付いてなかったらしく、ミズナは肩の上でやれやれと肩をすくめていた。
「まぁいいや。とにかく、優勝おめでとう」
ミルートの手から賞品から緋陽さんへと渡される。
「ありがとうございまーす!」
渡された板を両手で上へ掲げると、今までも鳴っていた拍手が一層強まり優勝者を祝福した。
「それでは、これを持ちましてPluto杯を終了とさせていただきます。皆様お疲れ様でした」
司会の言葉を合図に、Pluto杯は終了。観客の人達は各々行動に移った。
「緋陽さん。少し時間よろしいですか?」
「ん? 別に大丈夫だけど、どうかしたの?」
「少し、お話しが……」
言っていた通り、新たな協力者になってもらおうとしたミルートは、オレ達の方を一度見ると緋陽さんを連れて行ってしまった。
「みるちゃんどうしたんだろう?」
「ひょっとしたら、また戦う機会が来るかもしれないよ」
「え? どういう意味?」
「いずれ分かるよ」
真南と会話していると、東太と天野がオレ達のところへとやって来た。
すでに人は疎らで、固まってるのはここくらいだ。
「ほい宗哉、荷物」
「ありがとう東太」
オレは自分の鞄を受け取り、運ぶの際入っていた三人がいる中を見た。
「惜しかったですねマスター、後一息でしたよ」
「ありがとうスレイニ。三人共、コナユキをよろしく」
「分かりました、任せて下さい」
落ち込むコナユキを中に入れる。後は三人に任せよう。
「けど真南も惜しかったよな」
「そうね、相手の罠に填まらなかったら勝ってたかもしれないわ」
「でもさ?、アレは騙されるって?」
「そっちはどんな感じだったの?」
「こちらにも、聞かせてほしい」
バトルしていたので知らない、実質の決勝戦を見ていた東太と、実際に戦ったこともある天野が説明してくれた。
「相手の神姫は固有レールアクションも放てる正式武装一式だったんだけどな、そこに罠があったんだよ」
「罠?」
「てっきり使って来るかもって身構えてたんだけど、相手の神姫、実は使えない状態だったのよ」
使えない状態?
「そーなんだよー! だまされた?!」
真南もこう言ってるけど、武装一式が揃ってるのに使えないって、どういう意味なんだ?
「でも逆に言えば、それで勝ったんだから凄いとしか言えないよな」
「そうね、実力が無いとあんな真似できないでしょうし」
「だまされた?!」
「マスターさっきからそれしか言ってないですよ」
あの緋陽という人、いったいどんな戦法を使ったんだろうか?
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古株の戦×大会終了= | ||
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