IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode128 考えの浅はかさ
一夏が担架に乗せられて緊急搬送されるのを千冬は見送っていた。
「・・・・」
千冬は後ろを振り向いて今までに無いほどに厳しい目つきで隼人を睨みつける。
「どういう事だ、隼人」
「・・・・」
千冬は少し殺気の入った声を出していた。
「なぜあの時お前はやめなかったんだ。私が止めたと言うのに・・・」
「・・・・」
「あのまま誰も止めなかったら・・・一夏は死ぬ所だったんだぞ!!」
「・・・・」
今までに無いぐらい千冬は隼人に怒鳴りつける。千冬にとっては一夏はたった一人の弟、そして大切な宝でもある。
「千冬。隼人ばかりを責めたって――――」
「兄さんは黙ってて!!」
「っ!」
千冬の大声に輝春は身を竦める。
「例えお前の故意じゃなくても、他にも方法はあったはずだ!」
「・・・・」
「なのに、なぜお前はあんな事をしたんだ!!」
「・・・・」
「お前は一夏を殺す気で助けようとしたのか!!」
そのまま隼人の着ている制服の胸倉を掴む。
「お、織斑先生!?」
今まで見た事が無い千冬に山田先生は驚く。
「俺が・・・浅はかでした」
「・・・・」
「他に・・・何も言う事はありません」
「あぁそうだろうな。お前に言い訳する権利など無い」
「・・・・」
「お前の事だから気が済むまで殴れって言うのだろ」
「それを望むのであれば・・・」
「あぁ。今この場でお前を殴りたいぐらいだ、いくらでもな。これほど憎しみを抱いたのは私と一夏、兄さんを捨てたあの二人以来だ」
「・・・・」
隼人は覚悟を決める。
「・・・だが、そんな事をしても何の意味は無い」
千冬は隼人の胸倉を離す。
「一夏はそれを望まない」
「・・・・」
「二度とあんな事をするな。次は無いぞ」
「・・・分かりました」
「・・・だが――――」
ゴンッ!!
と、千冬は渾身の力で隼人の頭に拳骨をぶつける。
隼人は言葉を発する事無く頭を押さえて悶絶する。
その光景に山田先生と輝春は目を丸くしていた。
「これで恨みっこ無しだ。いいな」
「は、はい・・・」
隼人は少しふらついてその場を後にする。
「・・・・」
「千冬・・・」
「・・・あいつの頭を叩いたのは・・・これで初めてだな」
「さすがに驚いたぞ。お前があそこまで感情を表したのは」
「まぁ、憎しみを抱いたのは事実だ。私だって人だ。大切な弟が殺され掛けたのなら、さすがに私でも怒ってしまう」
「・・・・」
「しかし、本当に殴ろうかと思っていたよ」
「マジか」
「そうなったらあいつは本気になってしまう。本気になったあいつは誰にも止められん」
「・・・・」
「・・・・?」
すると山田先生の持つタブレット端末の呼び出し音がして、すぐに画面を開く。
「これは・・・?」
そこにはあるものがデータ送信されていた。
「どうした、山田先生?」
「・・・極秘暗号通信?」
「なに?」
「どこからだ?」
と、千冬は端末を覗き込む。
「これは・・・ドイツ軍の暗号通信か?」
「知っているのか?」
「ドイツ軍の方に教官として居ても関係者に当たる。緊急時に暗号が解けるように私にも暗号の解き方は聞いている」
千冬は暗号通信を解読し、暗号が解除された。
「何だと!?」
「マジか?」
それを見て千冬と輝春は驚いた。
差出人がドイツ軍シュヴァレツェ・ハーゼの副隊長クラリッサ・ハルフォーフ大尉からであった。
「・・・・」
隼人は表情を暗くして歩いていた。
(不覚だ。いつものようにデストロイモードを発動させてしまった。以前よりもかなり強くなっていると思わずに・・・)
外見は以前と殆ど同じのバンシィ・ノルンだが、その性能はかなり向上している。無論それによる反動も比べ物にならない。
(そのせいで俺は・・・一夏を殺そうとした)
自覚が無い状態だと、かなりタチが悪い。知らず知らずに友を殺すなど持っての他だ。
「さすがに後悔してるよね」
と、ユニコーンが近くにあった木の陰から出てきた。
さすがに最初の格好では目立つので、今は白と青のスーツを着ていた。
「あぁ。確認もせずにやった結果がこれだ」
隼人は立ち止まってユニコーンの方を見る。
「君の力は想像以上に上がっているからね。今まで通りにやるとまずいよ」
「・・・・」
「それに、今だってもうなっているし」
「・・・・!」
隼人は頭を振って気を取り直して瞳の色を戻した。
「こうも大変な事になるとはな・・・軽く見過ぎていたのかもしれないな」
「かもね。でも、正直に自分の事を他の人に話したら楽になるんじゃない?」
「・・・千冬さんにはバレていると思うがな」
「でも、友達には分かっているの?」
「・・・・・・いいや」
「だろうね」
「・・・・」
「でも、お前は知っていたのか?」
「なにを?」
ユニコーンは怪訝そうな表情で聞き返す。
「一夏のISから出てきたツヴァイの事を」
「・・・そうだね」
「何で言わなかった」
「それは彼女も私と同じイレギュラー要素として用意されていたんだよ」
「またか。向こうもどれだけ用意していたんだ?」
「念には念を入れているようだよ」
「それほど連中の排除がしたいのか・・・」
隼人はため息を付いた。
「まぁ、ツヴァイから話を聞いてみるよ」
「それが一番だね」
「そういや、前回の戦闘じゃバンシィと一緒に出てなかったな」
「うん。隼人君に内緒で調べ事をしていたからね」
「調べ事?」
「まだ始めたばかりだから何も分かって無いけど」
「・・・・」
「今はまだ言えないけど、うまく行けば役に立つ情報が得られるよ」
「そうか。まぁ少しは期待しておくよ」
「程ほどにね」
「あぁ」
そうして隼人はその場を後にした。
『隼人』
そうして隼人は自室に戻ると、そこにリインフォースと、人間形態になったツヴァイがいた。
容姿こそリインフォースに似ているが、瞳の色は青と碧眼であり、前髪に髪留めをしていた。外見は少し幼い感じがあり、体つきも子供っぽく、背丈も自分の腹と胸の間ぐらいと低い。
(予想はしていたが、元となった人物と同じか)
リインフォースとツヴァイを見比べながら思う。
『それでは改めて・・・リインフォースUと言います、隼人さん』
「あ、あぁ。しかし、リインフォースに妹が居たのか?」
隼人は部屋の壁にもたれかかった。
『えぇ。しかし記録も残ってない今では言うのも何ですが、本来ならユニゾンISは私しか存在しない』
「・・・・」
『ですが、密かにもう一体作られていたんです。私より安定した能力を持つユニゾンISが』
「それがツヴァイなのか」
『はい。しかしツヴァイの行方は不明となっていましたが・・・まさか織斑のISのコアに入っていたとは』
「・・・どういう経緯で入ったんだ?」
『色々と複雑なんです。リインとお姉ちゃんを作った人が量子変換してデータ化したリインを色々なルートで伝わせて、最終的に一夏さんのISのコアの中に入ったんです』
「リインフォースとツヴァイを作った人物?」
『転生は必ずどこかから生まれる事になります。その人物によって私とツヴァイはこの世界に生まれた、と言う風になっています』
「なるほど。それなりの設定はあるんだな」
『えぇ。この世界では一応バンシィとユニコーンはその人物が作り出したと言う事になっています』
「そうなのか(実際バンシィは直接神から貰ったんだけど、こっちじゃそういう設定だったのか)」
一応不自然じゃないように設定された事に内心で納得した。
(でも実際はこの世界の技術には無い技術だからどの道不自然のまま、か)
『そこで私がバンシィのコアの中にデータ化して眠っていました』
「だが、それならなぜツヴァイはユニコーンの中に居なかったんだ」
『そこまではよく分からないんです。リインとお姉ちゃんは一定の条件が満たされた時に眠りから覚めるようになっているので、それ以前の事は分からないので』
「なるほど。で、あの時リインフォースが出てきたのか。だがリインフォースはその時は完全な実体化までにた至ってないのにツヴァイはなぜすぐに実体化が出来たんだ?」
『リインだけは最初からそうなるように設定されていたみたいです』
「(この違いに何の意図が?)そういえば、ツヴァイもユニゾンが可能なのか?」
『もちろんです。けどお姉ちゃんと違ってリインは『オールタイプ』なんです』
「オールタイプ?」
『私は特定の人物としかユニゾンしない『ワンオフタイプ』です』
『つまりリインは誰とでもユニゾンが出来るんですよ。ユニゾン時の相性とかもあるんですが』
「なるほどな。それにも差があるのか?」
『えぇ。私のようなワンオフタイプは能力は高いのですが、融合事故と言うデメリットがあるんです』
「逆にオールタイプはそれが無いのか」
『そうですね。完全に無いとは言い切れませんが、ワンオフタイプよりは低いんですよ』
「姉妹揃って複雑に出来ているんだな」
『そうですね』
『はいです!』
「そういや、ツヴァイは白式のコアの中に居たのなら、一夏が捕まっていた時に何か分からないのか?」
『さっきも言った通り、リインはあの時に覚醒したので、それ以前の事は分からないんです』
「そうか。何か分かると思っていたんだが、結局バインドの事は分からず仕舞いか」
隼人はため息を付く。
「・・・そういえば、颯を見て無いな」
隼人は周囲を見る。
『颯でしたら、少し前に山田先生に呼ばれて行きました』
「山田先生に?」
『何でも急ぎの用事かと』
「そうか。それならいいか」
そうして隼人は部屋を出ようとする。
『どちらへ?』
「・・・一夏の様子を見てくる」
『・・・分かりました』
隼人はそのまま部屋を出た。
『隼人さん・・・やっぱり落ち込んでいますね』
少ししてツヴァイは口を開いた。
『あぁ。仲間を自分の手に掛けようとしたから、相当なショックがあるはず』
『・・・・』
『だが、お前が止めに入ったお陰で最悪な事態は避けられた。少なくとも、な』
『お姉ちゃん・・・』
『今は見守るしかない』
『はいです』
「・・・・」
隼人は病室で眠っている一夏を見る。
外見は何もなさそうに見えるが、恐らく内部へのダメージはかなり大きいはずだ。
(すまない、一夏。俺が軽率だったばかりに・・・こんな事に・・・)
「神風君」
と、山田先生は病室に入ってきた。
「山田先生・・・」
隼人は山田先生の方を向く。
「その・・・先ほどは驚きました。あんなに怒っている織斑先生を見たのは初めてでしたから」
「・・・怒られて当然ですね。一夏をこんな状態にしたのは俺なんですから」
「・・・・」
「容態の方はどうなんですか?」
「命に別状はありません。ですが内蔵へのダメージが少しあって、肋骨に少しヒビが入っていました」
「・・・・」
「ですがそれ以外身体に異常な箇所はありませんでした」
「そうですか」
「しかし、長らく意識が無い状態が続いている状態です。多少の記憶障害を起こすでしょうね」
「・・・・」
「白式の方は篠ノ乃博士によって修復作業がされています」
「そうですか」
しばらく一夏を見てから隼人は病室を出た。
そうして第二格納庫へと入り、束の所に来る。
「束さん」
「ようやく来たね、はっくん」
束は後ろを向いて隼人を見る。
「・・・白式の状態は?」
「・・・正直言って酷いってレベルじゃないね」
束は目の前にある独立展開して天井のクレーンに吊らされている白式を見る。
装甲には沢山の亀裂が入ってボロボロになり、両手首と右足首は無くなり、不知火も損失し、ウイングスラスターも半分が切り裂かれていた。装甲も抉れた箇所が多く内部の機器や回路が露出していた。
「内部機器の殆どは破壊され、武装も大半損失、その上コアにも少し異常が見られてる。正直言って修理するより改装したほうが早いかもね」
「出来る限りの事をやってみてください」
「うん。それに、さっき破損した回路を見ていたら、こんな物が出てきたよ」
と、アームを操作して、そのアームが挟んでいる物を隼人に見せる。
「これは・・・?」
隼人は挟んでいるものを手にする。
円形で平ら、中央に赤い膨らみがあるもので、亀裂が走って破損していたが、明らかにISのものではない。
「私の憶測だけど、それがいっくん達を操ってる元凶だろうね」
「これが?」
「少し調べたら受信機の構造に似ていたからね」
「なるほど・・・これを受信機として、ISを操っていたのか」
「たぶん操縦者は意識が無い状態で乗せられていると思うよ」
「迂闊に攻撃をさせない為の要素として、か。やってくれるな」
「でも、場所も場所だからね。これが埋め込まれていた場所っていうのが」
「どこにあったんですか?」
「ISのコアとパイロットの近く」
「・・・・」
「下手に攻撃すればコアを破壊しかねない。それに加えてパイロットへの被害が大きい」
「・・・・」
「今回は偶然これだけが破損したけれど、パイロットに甚大な被害があってもおかしくは無い」
「・・・・」
「これを調べれば何か一つでも分かるかもしれないね」
「頼みます」
「でも、はっくんには手伝ってもらうよ」
「手伝う?」
「ちーちゃんのISの調整をね」
「・・・もう完成しているんですか?」
「うん。そこにあるよ」
と、束が指した方には布が被せられたISがあった。
「さすが仕事が早いですね」
「当然!この私を誰だと思っているのかな?」
「天才(天災)科学者(変人)こと篠ノ乃束・・・」
「何か文字がちがくない?」
「キノセイデスヨ」
「何で棒読み?」
「さぁ?」
「・・・まぁいいや。とりあえずやってくれるかな?」
「分かりました」
そうして隼人はISの前に来ると束よりモニターとタッチパネルを出してもらって調整に入る。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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