真・恋姫†無双×三国伝 暗黒玉璽再臨 プロローグ裏
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真・恋姫†無双×三国伝 暗黒玉璽再臨

        三国伝のプロローグ「伏竜の独白」

 

 

「白龍転身──」

 

 龍凰より与えられたこの力。

 それは、私が龍凰より与えられし使命でもあった。

 闇の血をその身に宿しながらも、正しき意思でその力を操る"天の刃"と呼ばれる四つの力。それは、闇の力でありながら、私の存在する世界を覆う闇の瘴気を払う為の切り札でもある。

 

「俺達を降ろせ! 力を合わせて先に奴を!」

「ダメです!」

 

 西方の馬超、南方の孟獲、東方の的蘆、北方の呂布。"天の刃"は最終決戦の地である五丈原に集っているが、闇を祓う為に必要な者は、"天の刃"と呼ばれる彼らだけではない。

 

 古代より伝わる英雄、龍帝の魂を次ぐ者・劉備。雀瞬の魂を目覚めさせた機武帝・曹操。虎暁の魂に目覚めし孫権。彼ら三人は、私の住む世界に伝わる神話に登場する、"三候"と呼ばれる三人の神の魂を次ぐ者達。

 

 "天の刃"と、"神話の三候を次ぐ者達"。彼らが揃わなければ、蚩尤の発する闇を祓う事は叶わない。

 しかしその劉備さん達は今、蚩尤の発する闇に捕らわれようとしていた。

 このままでは、私の住む世界…… 三璃紗は古文書の通りに、闇に覆われてしまう。それだけは、なんとしても避けなければならなかった。

 

「天の刃が揃わなければ蚩尤の闇を祓う事はできない。劉備さん達には、あなた方の力が必要なんです!」

「アーッヒャッヒャッヒャァ!」

 

 劉備さん達の元に行かせまいとする者の攻撃を退けながら、私は話を続ける。

 

「あ、あなた方に、天の刃としての使命があるように……」

「ヒャーハハハハハハァ!」

「あなた方を最後の戦いの場へと送り届ける事が……」

 

 私の使命。

 高く飛翔し、劉備さん達の捕らわれている天空の洛陽宮殿へと向かう。

 

「に、逃がさないと言ってるだろオォォォォオォ!」

「!」

 

 後もう少しという所で、背後から長い鉤爪が迫る。

 それは、私が送り届ける"天の刃"に対して迫ったのか、私に対して迫ったのかは定かではない。

 

「ぐっ、があああぁぁぁぁッ!」

 

 長い鉤爪は私の脇腹を抉り、転身していた白龍の姿を解いてしまう。

 私の背中に乗る"天の刃"は私の名前を叫ぶ。

 先程まで、白龍となって見渡していた光景を思い出せば、天空の洛陽宮殿はもはや目と花の先だった。

 私の名前を叫び続ける"天の刃"の言葉を聞かず、私は残る力を振り絞り、鉤爪をしっかりと抑える。

 

「行きなさい!」

「けど……」

「早く!」

「……くっ!」

 

 "天の刃"は私の背中を蹴り、天空の洛陽宮殿へと跳ぶ。

 

「シャアアァァァァァッ!」

「!」

 

 もう一つの長い鉤爪を、私に向けて放つ。

 先程の攻撃で負傷していた私に、それを避ける術は無い。

 その攻撃をまともに喰らってしまった私に対し、先程の脇腹以上の痛みは容赦なく襲い掛かる。

 私の背中。私の肩。私の右足を、順番に抉っていく。背中に対する攻撃によって私の羽も抉られ、飛ぶ余力を無くしてしまう。

 

「……」

 

 もはや、こんな重症ではこの先、生きる事すら叶わないだろうと悟った。

 しかし、私は死ぬ前に龍凰より与えられし使命を果たしたのだ。"天の刃"を、蚩尤の闇巣食う天空の洛陽宮殿へと送り届ける事が出来たのだから。

 

「──行ってください」

 

 呟く。

 

「三璃紗の…… 明日を守る為に……」

 

 この先、彼らならば闇を祓ってくれるだろう。彼らならば、三璃紗の明日を守る事が出来るだろう。

 私は落下しながら、"天の刃"が天空の洛陽宮殿へと到達したことを確認すると、意識を手放した──

 

 

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「──今までお世話になりました! 水鏡先生、伏龍先生!」

「……」

 

 今、私の目の前には二人の少女がいた。

 彼女達二人は、先日まで私達の住んでいるこの私塾にて兵法を学んでいた。

 最初に二人に出会った時は、失礼ながらその気弱な性格から、軍師となる事が出来るのか…… と思ってしまった事もある。

 しかし、彼女達は私達の教えを確実に吸収していった。その早さたるや私達の想像をはるかに超え、本来ならば数年かかる筈の内容を、わずか二年足らずで習得してしまっていた。

 そうして全てを習得して数ヶ月が経った頃…… 巷では一つの噂が流れていた。

 

 

 

──東方の天より飛来する一筋の流星。その流星は天の御使いを乗せ、乱世を沈静す。

 

 

 

 大陸一の占い師である管輅はそのような予言を行い、それから数日の後に、この乱世を収める為に"天の御使い"はこの世界に降り立った。

 風の噂で、とある英雄達と共に行動をしているとは伺ってはいたが…… その英雄の名に私は驚いてしまったのは言うまでもない。最も…… 後になって思えば、私達の生徒である少女達の名が、私とその友人の名と同じであった事から、かつての私の仲間と同じ名を持つ者がいてもおかしくはなかったのかもしれない。

 

 ……まぁ、それはともかく。

 数年前より兆しのあった大陸の危機的状況を憂いていた少女達は、民を守る為に自身の学んだ事を活かしたいと考えていた。

 しかし自分達だけでは非力…… 誰かに協力を仰がなければどうしようもないそんな状況の矢先に、"天の御使い"が義勇兵を募っているという噂が立っていた。

 "天の御使い"と、行動を共にする英雄達は危機的状況にある大陸を救いたいという一心で立ち上がったという話もあり、志を同じとする彼女達に協力したい…… と、私達に切り出したのが数日前。

 二人の力があればどんな君主に仕えても、功を立てる事が出来るだろうという私の推薦もあり、私塾の主催者であり、彼女達の師でもある水鏡先生はこれを承諾した。

 

 

「お二人の力があれば、君主がどんな人物であろうとも活躍する事が出来るでしょう」

「は、はいっ!」

 

 少女の片方は静かに頷く。

 私の隣に位置する水鏡先生は、しばらくの間思案をした後に、少女達に告げた。

 

「伏龍先生の言う通りです。 ……伏竜、そして鳳雛」

「……ふくりょう?」

「……ほうすう?」

 

 水鏡先生の言葉に二人は首を傾げていた。

 

「水鏡先生、それは……」

「今の貴女達は名の知られていないただの一軍師に過ぎません。 ……しかし、貴女達はいずれ、この大陸に名を残す軍師となる事が出来ましょう。 ……伏竜、鳳雛として」

「鳳雛…… なんか、カッコイイです……」

「しかし、伏竜は先生の……」

「……"伏竜"とは名前であり、一つの称号でもあるのです」

「称号、ですか?」

「"伏竜"とは地に伏す竜。"鳳雛"とは鳳凰の雛の意味。この二つは、未だに天を翔ける事は叶わない…… つまり、お二人が天を翔け、名を馳せるのはまだまだ先のお話であるという事です」

「そ、そうなんですか……」

 

 私の言葉に少女達は落ち込むが、私は更に言葉を続ける。

 

「しかし、落ち込む事はありません。地に伏す竜はいずれは天を翔け。鳳凰の雛は成長し、地に伏す竜と同じく鳳凰として天を翔ける存在となる。水鏡先生は貴女達お二人に期待しているという事です」

「そ、そうなんでしゅか!? ……あうっ」

「私達は遠くからお二人の活躍を見守る事とします。私達の教えを忘れる事の無いように。 ……いいですね?」

「はい!」

「……よろしい。さぁ、お行きなさい」

「……あぁ、最後に私からもう一つ。何があっても、私の名前は出さないようお願いします。先日にも言ったとは思いますが、もう一度忠告させていただきますよ」

「わかりました!」

「本当に、今までありがとうございました!」

 

 

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 二人の少女は、私達の元を去っていった。水鏡先生は彼女たちに対して手を振り、私も続けて手を振る。

 そうして彼女達の姿が見えなくなった頃、水鏡先生は寂しげに息を吐いた。

 

「……寂しいですか?」

「ええ。あの子達は大事な教え子でしたから……」

「……お気持ち、痛み入ります」

 

 しばらくの間、水鏡先生は無言だった。

 私も何も言葉をかける事が出来ずにいたが、水鏡先生は更に話を続けた。

 

「それにしても、良かったのですか?」

「何がですか?」

「貴方の本当の名前です。何故、二人に告げなかったのですか?」

「……私にはかつて、兄と弟がいましたので、そちらの名前を名乗っても良かったでしょう。 ……しかし、それは彼女だって同じ筈」

「……」

「"伏竜"と言う名は、一種の苦肉の策とも言えます。加えて私は、"この世界"においては異端者でしかありません」

 

 手に持つ羽扇を羽ばたかせながら、話を続ける。

 

「同じ名を持つ者がいるのならば、異端者である私は"この世界"においては別の名を名乗る他ない。 ……加えて、私は一度死んだ身ですからね」

「……そうですか」

「……さて、私も一度旅に出ようかと思います」

「伏龍先生……」

 

 "この世界"に降り立って数年が経過していたが、未だに"この世界"の全てを知っている訳ではない。

 少女達の成長を見届けてから、"この世界"の事を詳しく知りたいと思っていたが、ようやくその時がやってきた。

 

「この世界を知る為に見聞を広める…… 兼ねてより決めていた事です。今までお世話になっておいて申し訳ないのですが……」

「いいえ、私も先生から学ぶ事は数多くありました。こちらこそ、ありがとうございました、伏龍先生。 ……いいえ、孔明先生──」

 

 ……そう、私は知らなければならない。何故、私は"この世界"に降り立ったのか。

 そして、"この世界"の暮らし、構造、大陸…… 私の常識が通用しない、"この世界"の事を。

 

 

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〜三国伝武将紹介〜

 

ttp://p.tl/i/10335807

 

・天翔竜 孔明

 目覚めし伏竜。演者はνガンダム。

 かつて、三璃紗を震撼させた天才軍師、諸葛亮孔明の真なる姿。

 友人との死別から兵法を使うことを恐れ、その力を封印していたが、三璃紗を覆う強大な闇に立ち向かう為に、その真の力を再び解き放つこととなる。

 武将形態だけではなく竜に変形する事が出来、その竜形態による突進に触れた者は一瞬で粉々になってしまう。

 

 三国伝における最終決戦の、五丈原の戦いにおいて、天空の洛陽宮殿に馬超ら「天の刃」を送り届ける為に自らの体を盾とし、郭嘉の攻撃を防いで死亡する。

 

 その真なる姿と、力を封印していた時の姿がかなり異なっているために別人かと思う人がいたとかいなかったとか。

 なお、あらゆる三国志作品の中で、1,2を争う高い武力を持つ孔明である。

 

 

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〜あとがき〜

 というわけで三国伝側のプロローグでした。

 このプロローグの主役は、三国伝の語り部を行っていた伏竜こと諸葛亮孔明。

 彼が兵法を教えていた人物は… 言うまでもなしです。

 

 このサイトの傾向を見るに、三国伝を知る方が少ないようなので、話に紹介していない三国伝側の武将がいた場合は、武将紹介という形をとりたいと考えています。

 絵を描く事が出来ればいいのですが、絵心が皆無なのでその武将の容姿が描かれているURLを掲載いたします。面倒かとは思いますが、ご了承下さい。

 

 ではでは、いつ始動するかはわからない1話でお会いいたしましょう。

説明
現代恋姫がスランプ故に。
なお、本小説は三国伝を知らない方でも楽しめる配慮を心がけております。
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コメント
恋姫の世界は、孔明が見たら驚く人間関係多いでしょうね…流石の彼でも「良い人な董卓」「裏切らない呂布」には驚くでしょうし。(ノワール)
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