少年達の挽歌 蜂起編 第二話 |
第二話 会談
韓国のある村で小野寺は十七式小銃を構え、目の前の光景を見ていた。
目の前では広場には多くの村の人々が集められ、皆不安げな表情をしていた。
一段高いところには前田曹長がこれから起きることに笑みをこぼしている。
「・・・やめろ。」
曹長の足元には三脚にM2重機関銃が載せられ、ベルトに入れた12.7mm弾が光っていた。
兵士は黙々と作業を続け、ベルトを入れて装填されると前田曹長は命令した。
「撃て。」
「やめろ!」
小野寺の声は聞こえず、引き金が引かれた。
高速で放たれた12.7mm弾が女子供問わず体に撃ち込まれ、引き裂かれ贓物が舞う。
村人達の悲鳴は山々を木霊をする。
「撃ち方やめ。」
前田曹長が満面の笑みを見せる。
目の前には無残に引き裂かれた村人たちの死体と贓物や血で埋っていた。
「ウワァァァァ!」
一気に体を起こすと、そこはアパートの一室だった。
体中が汗を流して、寝巻きは汗を吸って冷たくなっていた。
「また夢か・・・。」
時計を見ると土曜日の午前七時を指していた。
今日は宮本少尉と共にIS学園にいる五十嵐裕也空軍少佐に会いに行く予定だった。
シャワーを浴びながら最近頻繁に見る夢のことについて考えていた。
だがなにも分からなかった、あの時止められなかったのか。
準備を終えると部屋を出た。
JR浜松町駅で宮本少尉を待っていると目の前を通り過ぎた男子高校生が見えた。
日本は十年前から教育制度改革の影響で男子の高校進学率は減り続けている。
その要因は公立高校の女子校化に伴い、男子が進学できる高校は一部の県立高校と私立高校のみとなった。
男子を募集する県立高校は各都道府県に一校となり倍率は自然と高くなり、私立はお金持ちの子のみしか行けなくなった。
「生まれたときから勝負がついている社会だ。」
小野寺は嘆く。
すると丁度宮本少尉と合流すると一路、IS学園に向った。
IS学園内に入るためには事前に身元調査が行われ、許可が下りる。
幸い宮本少尉がいることもあり、審査はすぐに通った。
IS学園前駅を降りると坂を登り、ここを警備しているIS学園警備中隊の詰所で許可証を見せた。
すぐに中に内蔵されているICチップを読まれ、確認されると通された。
「宮本清吾少尉と小野寺魁人ですね、五十嵐少佐から話しは聞いております。案内するように命じられています。」
「はい。」
警備隊員の案内で歩いていくと一軒のカフェに案内された。
話だと学生が放課後などにケーキなどを食べることの出来る店だと聞いた。
店内はまだ生徒の数は少なく、奥の席に白に襟が黒い制服を着た五十嵐少佐がいた。
近づくとこちらに気付いて立ち上がる。
「久しぶりだな小野寺。」
「久しぶりです、二〇九高地以来ですね。」
ふと腰の辺りを見ると少し膨らんでいるのが分かり、拳銃を携帯していることに気付いた。
席に座り、宮本少尉が紹介を終えると同時に聞いた。
「少佐、なぜ拳銃を?」
「ああ、俺はここでも軍人だ。この学園の生徒保護の為に所持しているのさ。」
そう言って見せたのは九mm拳銃ことグロック17であった。
腰にあるホルスターに拳銃を仕舞うと今度は五十嵐少佐が聞いた。
「すまないが時間がないんだ。それでどんな話なんだ?」
宮本少尉と小野寺は現在帰還兵が置かれている実情をこと細かく説明をして、最後に『帰還兵の会』について説明した。
「それで五十嵐少佐には活動の先頭に立ってもらいたいのです。お願いします。」
宮本少尉が頭を下げると小野寺も頭を下げる。
すると五十嵐少佐は質問した。
「その政治活動というのはデモの類か?」
「はい。」
すると少佐は深い溜息をついて言った。
「政府がたかが数百人のデモに同情すると思っているのか?」
「はい。」
「甘い!政府がなぜ情報操作したのか知らないのか?それは戦争の事実を知らせてはならないからだ。それに政府は我々臨時兵のことをどうも思っていないだろう・・・・前の世界の日本ではないしな。」
最後の言葉は聞こえなかった。
五十嵐は続ける。
「俺達軍人は文句を言わずに国と国民の為に死ぬのが常識だ。そうだろう少尉?」
少尉は頷くが、小野寺は言った。
「確かに軍人になったからにはその覚悟はありました。しかし帰還兵のことも然りながら我々男性の立場がおかしいと思いませんか!」
「ああ、わかっている。では聞くがなぜこのようになっか知っているか?」
「・・・・。」
沈黙すると少佐は答えた。
「十年前の“白騎士事件”でISの有効性を知られ、使えない男性は社会から必要なくなった。」
この言葉には沈黙するしかなくなった。
「その男性が社会に参加するには命掛けるしかないんだ、それでやっと社会に入れる。だから俺たちは“戦うことでしか意思を伝えられない”社会にいるから戦うんだ。」
「だからと言って少佐は何もしないと?」
少しの沈黙の後、こう答えた。
「俺は国の為に死ぬことを決めた人間だ。抵抗するなどもってのほかだ。」
すると店内に迷彩服を着た兵士が一人が入り、五十嵐少佐の前まで行った。
「小隊長、時間です。」
「わかった、ここまでだ。すまない。」
「いえ、時間を取って頂きありがとうございます。」
宮本少尉と挨拶すると少佐は去り際に二人に行った。
「一応言っておこう、『帰還兵の会』は公安にマークされている。気をつけろ。」
数十分の会談は終わり正門を出ると、一台の車が待っていた。
それは会員が回してくれた普通車で、それに乗り込むと小野寺は言った。
「所詮地上で戦ったことのない空軍の戯言ですよ!」
すると宮本少尉は一枚の封筒を渡した。
中には少佐の経歴が詳細に書かれた紙が入っていた。
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氏名:五十嵐裕也 誕生日:九月二十七日 血液型:A型 年齢:一五歳 身長:一七五センチ
階級:少佐
所属部隊:国防空軍第一航空団並びにIS学園警備大隊
経歴
二〇二二年 三月小学校卒業
四月日本国防空軍入隊 防府北基地にて初級操縦過程に参加 兵長に任命
十月浜松基地の基本操縦過程に参加
十二月伍長に昇進
二〇二三年 五月軍曹に昇進
十月ウイングマーク取得 戦闘機操縦基礎課程に参加
十二月曹長に昇進
二〇二四年 一月飛行士官候補生過程試験に合格 准尉に昇進
三月飛行士官候補生過程を終了 少尉に昇進
四月厚木基地の戦闘機操縦過程(F−5B『飛龍』)に参加
六月第一航空団に配属
七月日韓戦争開戦
『東京空中戦』『小笠原沖海戦に』参加 空母を撃沈する
一階級特進中尉に昇進
九月『釜山上陸作戦』で航空支援に参加
十月大韓帝国のISと戦闘これを撃墜
二〇九高地で第五師団第二連隊に同行、陸戦を経験
十一月一階級特進大尉に昇進
『吉林攻略作戦』に参加
十二月日韓戦争終結
二〇二五年 一月岐阜基地のIS教導隊において研修
二月戦捷記章授与
一階級特進少佐に昇進
三月朝霞駐屯地にて特別短期集中レンジャー訓練に参加
レンジャー資格授与 特技として狙撃を認められる
専用機『烈風改』パイロットに任命
中等教育課程終了
四月IS学園に入学 『男子生徒護衛任務』に就く
IS学園警備中隊強襲小隊に配属
『IS〔烈風〕強奪・テロ未遂事件』に対応
五月『クラス対抗戦乱入事件』に対応
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「これは?」
「それは五十嵐少佐の軍歴だ、彼は入隊してからずっと過酷な任務についていた。しかし入学してからはもっと過酷な任務に就かされている。政府は彼をどうも戦死させたいらしい。」
「どうしてですか?」
なぜ国民的英雄を殺したいのか、疑問に思った。
日本にとっては大きなマイナスになり得るのに。
「帰還兵の犯罪が増加しているのは知っているよな?」
「はい。」
「彼が犯罪を起こす前に死んでもらった方がいいからだ。本人も承知だ。」
彼は驚いた、少佐が自分の置かれている状況を知っていることに。
「しかし、なおさら活動に参加するのでは?」
「いや、俺は今日話を聞いて分かったよ。あいつは俺達と頭の構造が違う。どう見ても純粋な軍人だ。それでだ。」
ひと呼吸入れて切り出した。
「少佐は“戦うことでしか意思を伝えられない”と言った。俺はその言葉を聞いて決心がついた。武力で我々の主張を国に・・・いや世界に知らせよう!」
少尉はそう叫ぶと小野寺に聞く。
「お前も参加しないか?」
こう答える。
「元々参加していますよ、少尉。なら公安の目を何とかしなければ。」
「ああ、今考えたさ。後は人員と装備だ。」
こうして蜂起作戦が作られ始めた。
説明 | ||
日韓戦争から四ヶ月、小野寺達“臨時兵”は自分達の置かれた状態に不満を持っていた。 冷遇する政府、周囲からの冷たい目、毎日のように見る戦場の夢が彼らを待っていた。 だがある士官の発案で世界に自分達の存在を知らしめ、対等な立場を得る方法が発案された。彼らは人生の後輩達に同じ経験させない為にもこの作戦に参加して、蜂起した。 |
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コメント | ||
いよいよ2.26事件の様になってきましたね。日本はこれからどうなる((((゚Д゚))))(横山上等兵) | ||
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