少年達の挽歌 蜂起編 第四話
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第四話  回天作戦 発動

 

時間が経つにつれて武山駐屯地の近くにある倉庫には多くの臨時兵が集まって来た。

宮本少尉は倉庫の一角に置いた長机に小隊長を座らせて、現状を伝えた。

 

「突然のことで申し訳なかった。ニュースになるまで国防省内部にも流れなかった。」

 

小隊長達は特に気にせず、少尉は話を続けた。

 

「フランス軍特殊部隊の襲撃を受けたIS学園警備大隊は精鋭である強襲中隊の戦力の一部が壊滅。現在学園を警備している警備中隊と少しの強襲中隊のみが唯一の戦力となっている。周辺地域は警察と警備中隊による厳重な検問が敷かれ、許可が下りないと島内には入れない。」

 

「では、強襲するのですか?」

 

一人の小隊長が質問する。

すると少尉は壁に貼られた首都圏一帯の地図を指差す。

 

「午後七時に第一歩兵科連隊の二個中隊が学園警備の増援として来る。この部隊を首都高速五号線池袋線に入る入口で待ち伏せ、二個小隊で襲撃して足止めする。」

 

「二個中隊の部隊をたった二個小隊で!」

 

小隊長達の中から声が挙がったが、少尉は冷静に返した。

 

「中隊と言っても新兵が主体の部隊だ。我々のように戦場を這いずり回った兵士より腕が落ちる。第一、足止めすればいいだけだ。」

 

「それで足止めしたとしても、検問はどうするのですか?」

 

小野寺は自分が立てた作戦は奇襲を前提として成り立っていることを知っていて、強襲となった場合失敗する危険があると思った。

 

「大丈夫だ、我々は“第一師団第一歩兵科連隊第一中隊”として、学園島に入る。」

 

小野寺を含めそこにいた小隊長達は少尉の言ったことの意味が分からなかった。

 

「俺が国防省内の同志に頼んで偽の命令書と入島許可証を作ってもらったのさ。」

 

少尉がそう言ったので意味がすぐに分かった。

 

「よし!総員時間だ、我々の意思を全世界に示す時だ!」

 

すると一斉にその場にいた隊員達は立ち上がり、少尉に敬礼すると一斉に武山駐屯地に向った。

少尉と共に小野寺も駐屯地に向い歩くと、少尉は携帯を取り出してメールを打った。

 

『ニイタカヤマノボレ』

 

メールを送るとバックから封筒を取り出した。

封筒には『臨時兵の会行動記録』と書かれていたのを呼んでいたバイク便の運転手に渡した。

 

「角山出版社本社までよろしく。」

 

「わかりました。」

 

運転手は受け取ると荷台に入れ、バイクを走らせた。

小野寺は封筒のことについて少尉に聞いた。

 

「あれは?」

 

「もし、作戦が失敗した時に友人に俺達の記録を公開する様に頼んであるんだ。」

 

そうして武山駐屯地の門を通った。

 

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山手町にある一軒の大きな邸宅があった。

その家の書斎で直井慎三元総理大臣は白騎士事件についての回顧録を執筆していた。

すると直井は途中まで原稿を書いていたペンの動きが止め、耳を澄ませた。

廊下から何か物音が聞こえ、立ち上がり廊下に出ようとドアノブに手を掛けた。

その時、ドアが蹴り飛ばされ直井の体はドアと共に吹き飛ばされ、廊下から五人の迷彩服を着た男達が入って来た。

 

「何者だ、貴様ら!」

 

直井が怒鳴るとリーダー格の男が言った。

 

「お前のせいでゴミのような人生を送らされた人間だ。来てもらう。」

 

二人の男に立たされ、外に向って歩かされる。

廊下には血を流した二人の屈強な機動隊の隊員が倒れていた。

玄関を出るとリーダー格の男が携帯無線機を取り出して、誰かに言った。

 

「こちら第四小隊、スキーマーを確保。」

 

そして道に止められたワンボックスカーに乗せられ、走り出した。

 

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「了解。」

 

少尉は携帯無線機を仕舞う。

目の前では兵士達が内通者と共に武器・弾薬を七三式大型トラックに積み終え、トラックに乗り込んだ。

 

「全装備並びに全兵士乗り込み完了しました。」

 

内通者である曹長が少尉に伝えると、少尉は彼と共に八二式通信指揮車に乗り込んだ。

車列は武山駐屯地を出ると衣笠ICを通り浮島ICにあるパーキングエリアで他の駐屯地から来た部隊と首相拉致部隊と合流した。

パーキングエリアには大量の軍用車で埋め尽くされ、物々しい雰囲気が周りの民間人に与えた。

しかしこのような事態になること予測して、偽の隊旗と『IS学園警備派遣』という横断幕を車両に張る。

全部隊が集まると宮本少尉が乗る八二式通信指揮車に二人の隊員が直井元首相を連れ来た。

 

「私は“回天作戦”を指揮している日本国防陸軍宮本清吾少尉です。」

 

「回天作戦?これはクーデターなのかね?」

 

「クーデターというよりこれは革命です。あなたが十年前に作った社会への。」

 

直井は周りを見ると、そこがIS学園の入口である浮島ICだと気付いた。

 

「もしかしてIS学園に攻め込むつもりか?」

 

「察しがいいですね元首相。我々をここまで追い込んだ元凶です、IS学園は。そこを占拠し、世界に我が国の本当の現状を知らせるんです。」

 

それを聞いた直井は鼻で笑い、言った。

 

「昔IS学園創立に立ち会ったが、あそこは世界最強の防御がされてある。簡単には占拠されん。」

 

「大丈夫です、それを破壊する方法はありますから。」

 

すると少尉はノートパソコンを持った情報科の隊員を呼んで、画面を見せた。

そこには学園の周囲にある自動迎撃警備システムの状態が映し出されていた。

 

「学園の警備システムは我々の手中にあります。」

 

それを見せられ、事の重大さがわかり顔から血の気が引いていた。

 

「よし準備は整った、出発するぞ!」

 

宮本少尉と直井元首相を乗せた八二式通信指揮車を先頭に長い車列がIS学園を繋ぐ海底トンネルに入って行った。

 

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国道二五四号線を十五式装輪装甲車を先頭に第一歩兵科連隊の二個中隊を乗せた車列が走っていた。

交差点に差し掛かったとき、横から大型トラックが装輪装甲車に突っ込んだ。

横転した装輪装甲車と大型トラックが交差点を塞ぐと共に、路地から84mm無反動砲を担いだ隊員が最後尾の七三式大型トラックに榴弾を撃ち込んで吹き飛ばすと共に各所から銃撃が加えられる。

部隊は混乱に陥る中、成瀬中隊長は装輪装甲車から這い出して、近くにいた通信兵を呼ぶ。

だがこっちに走ってきた通信兵はトラックの陰から出た瞬間に頭を撃ち抜かれ、地面に倒れた。

意を決して中隊長は一気に走り出して通信兵の死体に滑り込んで、受話器を掴んだ。

 

「こちら第一歩兵科連隊第一中隊!現在・・・。」

 

すると一発の銃弾が受話器と無線機を繋ぐ線を断ち切った。

それを見た成瀬大尉は絶望に一気に襲われ、マンジョンから狙撃され息絶えた。

 

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その時、宮本少尉とその車列は海底トンネルの出口にある検問に着いていた。

少尉は降りると近くに来た警備大隊の隊員に許可証と命令書を提出して言った。

 

「第一師団第一歩兵科連隊第一中隊の成瀬大尉です。警備増援に来ました。」

 

「ご苦労様です。」

 

警備兵は肩にある階級章を見ると大尉を表す星が三つが並んでいるのが見えた。

ふと車列の多さと旧式の装備に疑問を持って警備兵は成瀬大尉扮する宮本少尉に問いただした。

 

「確か第一歩兵科連隊は装備の更新を終えたのでは?」

 

すると少尉はこう言った。

 

「いえ、まだ完全には更新できてないんですよ。日韓戦争で西部方面が優先になって首都圏の部隊はまだですよ。」

 

「そうですか、確認が取れました。どうぞ。」

 

「警備頑張ってくれ。」

 

少尉は体を翻して、通信指揮車に戻ると一気に溜息をついた。

車列が完全に検問を通過したのを確認すると通信機のハンドマイクを取り、全部隊に向かって言った。

 

「作戦開始!我々の意思を見せつけるんだ!」

 

宮本少尉と八二式通信指揮車は迫撃砲部隊を乗せた二台の七三式大型トラックは近くの公園に陣取った。

すぐに81mm迫撃砲を組み立て、IS学園への砲撃準備を進める。

その間に他の隊はIS学園島駐屯地とIS学園前警察署を襲撃した。

警察署の前に七三式大型トラックが並ぶと、前に出た九六式装輪装甲車の銃座にいる兵士が回転して建物に九六式40mm自動擲弾銃を向け一階部分に撃ち込む。

一階にいた警察官達は中に飛び込んで爆発した擲弾に体を引き裂かれ、血の海と化した。

五十発ひとマガジン分撃ち込むと一気に二個小隊が突入する。

襲撃に気付いたSAT隊員は急いで武器庫から銃火器をを取り出して応戦する。

だが対テロ部隊と戦争経験者では差があり過ぎて次々とSAT隊員は撃たれて行き殲滅された。

一方、IS学園島駐屯地に襲撃した部隊は九六式装輪装甲車で一気に正門を突破する。

すぐに後続のトラックから隊員が吐き出され近くの建物から潰していく。

84mm無反動砲を担いだ隊員は近くの無線のアンテナなど外部と連絡を取る施設などを吹き飛ばす。

だがすぐに駐屯地内にいた警備中隊と強襲中隊が反撃する。

駐屯地各所で銃撃戦が展開されるが、双方共にすべての面で拮抗して膠着状態になっていた。

だが臨時兵達の方が数が多く、また上空にいる無人機で行動が読まれていたため時間が経つにつれ追い詰められた。

八二式通信指揮車で戦況を聞いていた宮本少尉は直井元首相の前で笑みをこぼした。

 

「隊長!砲撃準備整いました!」

 

開けられたランプに迫撃砲部隊を任された軍曹が報告した。

すると少尉は立て掛けてあった日本刀を取り、同乗していた士官に直井を見張るように命じた。

そして外に出ると小野寺以下二十名の隊員が待機していた。

 

「よし、これからIS学園に向かう。」

 

隊列を組んでIS学園に向かうと、顔に一粒の水が降って来た。

小野寺が顔を上げるとポタポタと雨粒が降って来た。

 

「一雨降るな。」

 

少尉は雨粒に気付いて言った。

空はどんよりとした黒い雲で覆われていた。

IS学園正門に着くころには雨が降り始め、視界を悪くした。

正門には土嚢が積まれた警備詰所と一台の十五式装輪装甲車が待機していた。

森に隠れた我々が見えるのは、緊張に包まれた警備兵の表情だった。

腕時計を見ると砲撃予定時刻になっていた。

すると迫撃砲の砲撃音が聞こえると、目の前にあった警備詰所を吹き飛ばした。

十五式装輪装甲車にも砲弾が命中して炎上し、近くにいた警備兵は吹き飛ばされ体がボロボロになっていた。

 

「小野寺、あとはよろしくな。」

 

「了解、ご武運を。」

 

小野寺は二十人の隊員を率いて森の闇に消える。

それを見送る頃には砲撃は止み、少尉は日本刀を鞘から抜く。

そして命令を発した。

 

「突撃!」

 

 

説明
日韓戦争から四ヶ月、小野寺達“臨時兵”は自分達の置かれた状態に不満を持っていた。
冷遇する政府、周囲からの冷たい目、毎日のように見る戦場の夢が彼らを待っていた。
だがある士官の発案で世界に自分達の存在を知らしめ、対等な立場を得る方法が発案された。彼らは人生の後輩達に同じ経験させない為にもこの作戦に参加して、蜂起した。


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コメント
自分が考えるにはIS学園が占拠されたというニュースを世界中に報道されれば、世界中が注目すると思います。それによって彼らの主張と日本の本当の姿を知ってもらい、現状を知った世界各国の国々が日本に対して外圧を加えて日本を変えてもらおうと期待しているのです。いくらこの世界の日本でも孤立したらひとたまりもありませんから。(BarrettM82)
さーて、一体どうなるんだろう。IS学園狙ってもなんもならない様な気がするのは自分だけでしょうか・・・?(F-15eagles)
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戦争 インフィニット・ストラトス ミリタリー 陸軍中心 

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