運・恋姫†無双 第十一話
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曹操との会話が終わり打擲が済むと、外に追い出される。

 

城門を出ると陳宮が待ち構えていた。

戻ったぞ、と言った瞬間に、陳宮が懐に突っ込んできた。

衝撃が背中に響く。五彩棒の痛みとは、しばらくの付き合いになるかもしれない。

 

 

陳宮は心細かったのだろう。

真名を預けようとした人が、どこかへ行ってしまうのが。

洛陽までの道のりで、それは紗羅にも解っていた。

旅をしている間、陳宮は極力離れようとしない。

また捨てられてしまうのではないか、と思っている節がある。

信頼というより、依存心が強い。それが陳宮の性格だった。

 

 

夕飯を済ませると、紗羅は熾した火を見続けていた。

時折、小枝を折って火の中に放り込み、また何をするでもなく見続ける。

火を見ている視線に、憧憬のような色が見える、と陳宮は思っていた。

 

命を助けてもらった。

あそこで彼に助けてもらえなければ、自分も張々も死んでいたと思う。

だが、ここまでの旅の中で、それがただの気まぐれだと分かった。

それは別に構わないのだ。

助けてもらったのは事実なのだから。

だから、妖術師だと打ち明けられた時もさほど驚かなかった。

彼が彼であればいい、と思っているのだ。

 

まだ彼の事はあまり理解出来ていないが、ここ最近、理解したいという気持ちが表れている。

命の恩人なのだ。

その気持ちは当然だろう。

そういう訳で、彼の事が何か分かるかもしれない、と思い陳宮も火を見続けた。

 

しばらくそうしていると、来訪者に出会った。

 

 

「紗羅殿、誰かがこっちに向かってきますぞ」

 

 

陳宮が小声で言った時は、紗羅もすでに気付いていた。

その人物が馬の手綱を引いて近づいて来る。

 

 

「すまないが、私も火に当たらせてくれないか? 日没を過ぎて、都に入れなくなってしまってな」

 

 

その人物は女性。

不思議と、その声を聞くだけで落ち着くような気分がする。

 

旅の者同士が出会うと、情報を交換したり、商談したり、時には互いに身を守るため行動を共にしたりする。

洛陽に着くまで、紗羅たちも二度ほどそういう事があった。

流石に都の、それも兵が詰めている城門に近い所で横暴を働くような輩はいないが、それでも断る理由はなかった。

 

 

「どうぞ」

 

「ありがたい」

 

「旅の者か?」

 

「洛陽のある人物に用事があってな。名前を聞いてもいいか?」

 

「紗羅、字を竿平。運び屋だ」

 

 

紗羅は最近、自分を名乗るたびに、その名が本当の名ではないか、と思う気がしてきた。

胡蝶の夢。こっちの世界が本当の自分の世界だ、というような錯覚に襲われたこともある。

馴染んできた、というより、まさに夢を見ていた、という感じなのだ。

 

 

「陳宮です。字は公台と言います」

 

「私は夏侯淵。字は妙才だ」

 

 

紗羅は、驚きは顔に漏らさずに、夏侯淵の顔を見た。

 

 

――さらにこんな所で、あの夏侯淵と会うとは……

 

 

まだ無名だろうにも関わらず、やはり凡百の兵とは比べ物にならない位に彼女の気は大きい。

趙雲に匹敵するかもしれない。紗羅には、なんとなくそれが解った。

 

 

「運び屋か……見た所、護衛はいないようだが、腕に自信でもあるのか?」

 

 

今の時代の国は当てにならないため、裕福な商人などは、官軍に頼らず私兵を持っていたりする。

商人など物資を商うものは、ただの旅人より遥かに賊に狙われやすい。

例え私兵を持っていなくても、傭兵を雇ったりして道中の安全を確保したり、危険がない道を辿るものだ。

一人の行商人など襲ってくれと言っているようなものである。

 

 

「あんたの前で、ある、とは言えないかな」

 

 

そう苦笑まじりに答えると、夏侯淵は少しだけ目を開いた。

 

 

「ほう、私の腕がわかるのか」

 

 

夏侯淵は、武人である。

まだ真の武人と言えるほどの高見には居ないが、ある程度はその人の力量がわかる。

しかし彼女から見た紗羅は、強そうには見えない。

それが見抜いたような言葉を吐くものだから、彼女は少し、紗羅に興味を持つことになった。

 

 

「もしかして、どこぞの名のあるお方かな?」

 

「違うさ。ただ、あんたは強そうだ」

 

 

互いに笑みを返していると、そこに割り込むのは陳宮だった。

 

 

「そんな事はありませんぞ! 紗羅殿に並び立つ者はおりませぬ!」

 

「……公台?」

 

 

――いきなり何を言い出すか……

 

 

「ほう? それほどの腕前か?」

 

「この方を誰とお思いですか! 紗羅殿こそ、大陸にその人ありと謳われあいたぁ!?」

 

 

陳宮を引っ叩いた良い音が鳴った。

 

 

「やめろ公台」

 

「紗羅殿〜……」

 

 

もはや誇張どころではなく虚偽である発言だ。

夏侯淵は、口元を抑えて笑っていた。

 

 

「笑うなですー!」

 

「すまん妙才殿、取り合わんでくれ」

 

「ふっ、ふふ……そうか、運び屋殿は天下無双か」

 

 

いざ自分が天下無双と言われると、気味の悪い居心地が襲ってくる。

天下無双の名は、呂布のものだ、と紗羅は思った。

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「妙才殿、それは酒か?」

 

「ああ、これか。手土産にな。運び屋殿にも少しやろう。火のもてなしの礼だ」

 

「すまん。なんか催促したみたいだ」

 

「構わぬさ」

 

 

夏侯淵が杯に酒を満たして、紗羅と陳宮に回す。

それから自身の分も注いでから、舌で転がすように飲み始める。

 

 

「飲める方か?」

 

「まだ、あまり」

 

「ねねもです」

 

 

酒の味は、まだよく分からない。

それでも、いつか趙雲らと飲みたい。

その時のために、紗羅は少しずつ酒を飲むようになっている。

 

陳宮の方は、紗羅より酒に弱い。

飲めはするが、酔いの回りが速く、そうなると、舌ったらずに呂律が回らなくなる。

それでも、紗羅が飲む時は、いつも陳宮も一緒だった。

 

 

「美味かった。礼と言ってはなんだが、渡したいものがある」

 

 

紗羅がそう言うと、彼が馬車から長方形の箱を持ってきた。

夏侯淵の前に置き、その蓋を開けると、中には弓が入っている。

 

紗羅が何かを言う前に、夏侯淵は自然とその弓を取っていた。

弦は張られていない。

が、これが相当の物だとは感じた。

 

 

「これは……」

 

 

戸惑う。

自分の物だ、と叫びたい気持ちを必死に抑えた。

ここまで興奮するのは久々だった。

弦を取り、手慣れた動作で張っていく。

 

 

「これを、あなたに受け取ってほしい」

 

 

手を止めて、彼を見た。

欲しい、という欲求と、何故? という理性が犇(ひし)めいていた。

 

 

「いいのか?」

 

「是非」

 

 

気が逸っていたのだと思う。

手早く張り終えると、立ち上がり、一呼吸おいてから弦を引く。

闇を狙い、放つ。

弦が鳴る音だけした。

その姿を紗羅がじっと見ていた。

 

 

「武人の姿とは、良いものだ」

 

「お前が恋する乙女に見えるぞ」

 

「さあ、恋をしているのかもしれん」

 

「ふ……そうか」

 

 

もう一度引く。

 

 

「銘は?」

 

「ない」

 

「そうか……では『餓狼爪』と名付けよう」

 

 

弦が鳴る音が響いた。

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あとがきなるもの

 

ネット復旧したぞー! 二郎刀です。また書き方を変えてみますた。

 

 

この外史のコンセプトって最初は『現実世界の住人が恋姫の世界に行ったら?』だったんですよ。現実世界と恋姫世界の差? みたいなものを書きたかったんですけどねー。うん、きっと無理。

 

出来る限り原作キャラの崩壊とかさせたくないんですけどね。それも無理。頭の中で出来ている筋書きですでに崩壊しちゃってるんですよねー・・・説得力があるように理由付けはしたいですが。まだ思いついてないけど・・・・・・

 

 

さて本文の方ですが、今回は秋蘭との邂逅でした。私は邂逅(かいこう)を『かいごう』と読んでいましたよ。まあそれはどうでもいいとして、秋蘭の武器『餓狼爪』ですね。あの時の弓がそうでしたーっていう。運び屋が運んできましたよーっていうオチ。

 

武器名とかつけると、うはwww中二wwwwとか思われることがあると思いますが、いいじゃないか! 恋姫だもの! 必殺技とかもあるし! まあ恋姫ワールドは量より質の世界ですからね。一騎当千(物理)ですもの。千じゃ済みませんね。絶対あの人たち一人で万とかいけるよ。

 

では今回の話はどうでしたでしょうか? 少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。

説明
小さい頃、ゲームの世界に入れるのならどのゲームが良い? とか言いませんでしたか?

私ですか?

A:どう○つの森

理由:働かなくていい

私はそんな人間です。
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