魔法少女リリカルなのは 四天王始めました |
「邪魔」
パイプ椅子を両手に一つずつ持って振り回して、ゾンビを凪ぎ払う。スライム等の物理が効かない相手はデバイス持ちに任せる。
「ギエェェェェェェッ!」
奇声を上げながら怪鳥が俺に飛び掛かってきた。それに対して俺はパイプ椅子を一つ投げつけて返り討ちにする。
これで残りのパイプ椅子は1つ。今、片手に持っているので最後だ。最も先程投げたパイプ椅子を回収出来れば2つに戻るのだが……。そうもいかないらしい。
「あ〜、めんどくさい」
ゾンビやスライムに回りを囲まれてしまった。
「レイン!大丈夫?私が援護するから早くそこから脱出して!! サンダーウィップ」
アリシアの持つリンカーコア内蔵型デバイスの先から雷の鞭が精製され、それがゾンビやスライム達を凪ぎ払った。
包囲に隙間が出来たのでそこから俺は抜け出してアリシアの元に駆け寄る。
「ふぅ……助かったよ。アリシア」
「えへへ……。良いってことよ!さあ、フェイト達がジュエルシードを封印し終わるまで頑張ろう!」
照れたようにアリシアは笑うと、元気よく声を上げてデバイスを構えて戦場に向かって駆け出した。
俺はパイプ椅子1つだけじゃ心許ないので、何かないかと探していたら、たまたま花壇にスコップが置いてあったのでそれを使わせてもらうことにした。
さて、俺も再び行きますか。片手にパイプ椅子を持ち、もう片方の手にスコップを持って戦場に向かって駆け出す。
あれからどれくらい時間が経ったのだろうか?無限に出てくる敵に徐々にではあるが押され始めてきた。俺はまだまだ余裕だがアリシアに関してはもう魔法が発動できなくなっている。
転生者達の方も疲労の色を濃くしていることから、もうすぐ限界を迎えるだろう。魔力はまだ十分に残っているのだが、如何せん精神的には殆どが一般人で、更にこの前の俺達の襲撃による恐怖も少なからず精神的疲労の要因になっているのだろう。
「さて、どうするか……。……ッ、ああ、もう、鬱陶しい!」
俺は飛び掛かってきたスライムをバックステップで回避すると、近くにいた犬型の魔物ーー大きさが二メートル程ーーの頭をスコップで抉り抜く。
「しゃがめ!」
声に従いすぐさましゃがむと俺の頭上を純白の輪っかが通り過ぎて行った。その輪っかは一定の距離をそのまま進むと弾けて爆散した。
きたねえ花火だ……。飛び散る肉片に内臓、そして……雨のように降る血。……ああ、吐いてる子もい
るよ。……てか、使った本人が吐くなよ……。
ハァ……。封印班……早く封印しろよ。こっちは色々な意味で限界を迎えそうなんだが。俺がそんなことを思っていると校舎から桃色の光線が飛び出した。それは校庭に着弾すると、凄まじい爆発を起こしてゾンビやスライム達を根こそぎ、きたねえ花火にした。
それを見て、吐き出す輩が増えて、大多数の輩がグロッキー状態だ。アリシアも顔色を悪くして口許を両手で押さえてる。
余計なことをぉぉぉぉっ!被害が甚大じゃないかぁぁぁぁぁぁ!
「にゃはは……皆大丈夫?」
どの口で言ってんだ……この魔王ぉぉぉぉ!
「お前のせいで被害が増えたじゃないかぁぁぁぁぁぁ!この、魔王!」
思わず、叫んだ俺は決して悪くない。だって、そうだろう誰が笑いながら吐いてる奴に話しかける。
「にゃ!?魔王は酷いの!?」
腕を振って抗議する魔王なのは。だが、この惨状を見てもそう言えるのか……。
「アリシア達を見てみろ!」
俺はアリシア達ーー吐きそうになっている面子と吐いている面子ーーを指差す。
すると、フェイトが飛び出した。凄い勢いでアリシアの所に近づく。
「ね、姉さん大丈夫!しっかりして」
「うっ……だ、大丈夫だから……心配しないで……うっぷ……」
心配するフェイトに気丈に大丈夫だと振る舞うアリシア。
それを、見ていたなのはに俺が、これでも否定するのか、と言った視線で見つめる。
すると、なのはは、サッ、と顔を横にそらす。そして、口笛を吹いて誤魔化そうとし始めた。
「やっぱり……魔王だな。やることがえげつない」
俺がそう言うと、ジュッ!と俺の顔面横をすれすれで桃色の閃光が走った。
「やはり……魔王か。遂には口封じに動いたか」
そう言っている間にも魔王が「オハナシするの」とい言いながら桃色の光線をバンバン放ってくる。俺は走ってそれを回避する。ある時はたまたま近くにいた転生者を殺陣にして、又ある時はゾンビやスライム達を盾にしてやり過ごす。
俺と魔王のある意味命懸けの追いかけっこが始まった。
なお、その追いかけっこは吐いてる奴が誰もいなくなるまで続いた。勿論、俺は逃げ切った。また、この件でなのはに魔王の2つ名が付いた。本人は否定したが回りからそれは認められずに、なのはは正真正銘の魔王の名を手に入れた。
ジュエルシードの暴走はなのはの流れ弾に当たり沈黙した。
なんとも冴えない終わり方をしたもんだなとつくずくそう思う。
因みに学校に残っていた一般人はプレシアによる記憶操作によって何事もなくいつもの生活をしていた。
「…………ふぅ……ご馳走さま。リゼット」
「……そう……っ……なら、良いわ」
家に戻ると俺は血を求める衝動に襲われ、リゼットの首筋に噛みつき血を啜った。 今はその衝動も鎮まったので俺が噛みついた場所の手当てをしているところだ。
「痛かったわ……凄く」
「だから、言ったじゃないか痛いって。それでも了承したのはリゼットなんだけど……」
「だけどねレイン。痛いものは痛いのよ、しょうがないじゃない」
むくれるリゼットに俺は「ハァ……」と溜め息を吐く。
「なによ……」
ジト目で俺を見るリゼット。
「とりあえず、手当ては終わったから。後はヴァルドに見てもらって」
俺はそう言うと自分の部屋に戻る。本棚に置いてある本を一冊手に取ると、椅子に座りその本を開く。
しばらくすると、コンコン、と部屋の扉がノックされた。俺は本から視線を扉に移すとノックをした誰かに声をかける。
「はい、誰?」
「余だ。彼方宛に電話が掛かってきたので呼びに来たのだ」
電話……誰からだ?
「シア、電話は誰から?」
「高町なのはと言っていたぞ」
魔王か……出ないと撃たれそうだな砲撃を。リビングに移動すると受話器を持つ。
「もしもし、代わりました。それで用件は?」
「あ、レインくん。今日のでジュエルシードが全部集まったからその打ち上げを私のお父さんとお母さんがやっている喫茶店でやるんだけどリゼットちゃんと一緒に来ない?」
「…………ハッ!まさか、その場で俺を亡き者にする気か!流石……魔王だな」
「にゃぁぁぁ、違うよ!私はそんなことしないよ!それに魔王じゃないよ!?」
「はいはい、笑える冗談は良いから。……それで誰が来るの?」
「冗談なんかいってないの!?……来るのは、すずかちゃんにフェイトちゃん、アリシアちゃん、プレシアさんにユーノくん。あと他にも何人かいるよ」
どうするかねえ………。少し考えていると電話の向こう側でガサゴソと音がする。
「……あっ、はーい!じゃあねレインくん。リゼットちゃんと一緒に来てね待ってるから。場所は翠屋だから」
ガチャン、と電話を切られた。
流石は魔王。俺とリゼットが行くことはもう決まっていると……てか、すずかに自分の事を説明したのか?まさか……すずかが、魔法を知っている理由も知ってるんじゃ……だから俺とリゼットが呼ばれたのか……。
内心ドキドキとしながら俺はリゼットと共に翠屋に行くのだった。
「死ねぇぇぇ!」
翠屋に着いた矢先の事だ。いきなり木刀で斬りかかられた。
「やはり、罠だったか!流石は魔王!汚い手段を平然と使う。リゼットは下がってて!!」
俺はそう言いながら一歩後ろに下がって回し蹴りを放つ。だが、彼は木刀を盾にして防ぐと後ろに下がった。
「ぐぅ……中々やるじゃないか」
襲撃者ーー魔王の兄ーーは不敵に笑い、木刀を構えなおした。
「お兄ちゃん何や……って、る……の……」
奥から魔王が表れた。
「表れたか魔王。まさか……兄を使ってまで俺を亡き者にするつもりだったとはな……」
「違うよ!私はそんなことしないよ!お兄ちゃん!なにしてるの!!これじゃ誤解が解けないよ」
「誤解だと……。済まない!また、アイツがやってきたものだと。本当に済まない!」
「勘違いであったのなら仕方がないですよ。誰にでも間違えることはありますから」
「そう言ってもらえると助かる。後、なのはの言っていた誤解とは?」
「なのはが魔王だと言うことです」
「な、なんだって!?」
驚愕の表情を浮かべる恭也さん。
「何を馬鹿なことを……それは本当なのか?」
「本当ですよ。これが証拠です」
俺は複数の写真を取り出すとそれを恭也さんに渡す。
「…………否定は出来んな」
ですよね〜。
「とりあえず、店の中に入ってくれ。もう、準備も終わっているだろうし」
「はい。リゼット、行くよ」
「ええ」
そして、俺とリゼットは恭也さんの後に続いて翠屋に入った。
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無印編 12話 魔王の生まれた日 | ||
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