ALO〜閃姫After story〜 EP4 結城家との対面 |
EP4 結城家との対面
和人Side
丁度俺が目覚めてから10日が経った日、完全に歩けるようになった次の日のことだった。
今日からリハビリに筋トレが追加されたことで、かなりバテていた俺。
午前中に1セットを終わらせ、昼食を取ってから午後に備えて病室のベッドで休んでいた。
今日は明日奈がまだ来ていない、いつもなら朝からここに来ていたんだけどな…。
しかし今は彼女の家も大変な時期だ、それも仕方が無いのだろう。
須郷の逮捕、奴が研究していたことや起こした事件、レクト・プログレスの解散など、様々なことがあったのだ。
俺はテレビをつけてニュースを見る、いま考えていたことが放送されている。
レクト・プログレスは解散し、レクト本社も多大な被害を被った。
だがその危機を救ったのが俺の友人である朝霧雫さんの祖父である、
【稀代の傑物】と呼ばれる朝霧海童氏と父親の朝霧陽大氏だ。
朝霧財閥からの提携によってレクト社の社員達への被害は少なくなった。
さらに師匠こと時井八雲さんの計らいで、俺のナーヴギアのメモリから抽出した須郷の会話記録を提出し、
須郷と奴の部下による独断行動ということで、レクト社への批判は少なくなった。
だが明日奈の父親である結城彰三氏はレクトのCEOをやめることとなったそうだ、本人曰く「ケジメ」らしい。
そうしてテレビを見ていると誰かが病室に入ってきた、母さんだ。
「和人、元気〜?」
「いつも通りだよ……筋トレさえなければ」
「あははは。まぁ、頑張りなさいよ」
「あぁ」
最初こそ俺の状態を非常に心配してくれていた母さんだったけれど、日に日に歩けるようになる俺を見て安心したようだ。
目覚めた日から2日も経てば既に笑って俺と話しをしてくれた。
しかし、今日の母さんはいつもとらしからぬ様子で、病室に入ってきた時の会話から何も話していない。
どうしたのだろうかと考えていたら…。
「ねぇ、和人…」
「ん?」
「明日奈ちゃん、良い娘ね……私とは違って」
「なんだよ、いきなり。母さんだって「私は良い人なんかじゃないわ…」……」
自分は明日奈とは違う、そんなことをいきなり話し始めた。だが俺はそうは思わない。
母さんと父さんは両親を亡くしたばかりであった赤子の俺を引き取って実の子供のように愛情を持って育ててくれたのだ。
それほどの人が明日奈と自分は違うなどと言っても、大差はないもののはず。
「私はね、和人…貴方なら1人でなんでも出来ると思っていたのよ。
力があって、勉強も出来て、大体のことなら卒なく熟すことが出来る…。
私や峰嵩さんが居なくても大丈夫だって、そう思い込んでいたわ」
そうか、母さんはそう思っていたのか。だけど俺はそんな強い人間じゃない…。
「そう思い込んでいたら、貴方はいつの間にか『孤高』って感じになっていたわ。
ま、『孤独』じゃなかったからまだ良かったけどね…」
そんな話をどこかで聞いたことがある、確か前に師匠に言われたんだ。
「和人は『孤独』ではないですが、どこか『孤高』という感じがしますね」と。
母さん達にもそれが分かるような状態だったのかもしれない。
「だけどそれは、俺自身が招いたことだよ」
「親ならもっと良く見るべきだったのよ……どこかで、貴方を1人にしていたわ…」
俺はそうは思わない、むしろ距離を開けていたのは俺だと思うし、両親はそれに気を遣ってくれたのだと思うから。
けれど母さんはどこかでそう思っていたのか。
「でも明日奈ちゃんは志郎君や公輝君のように……違うわね、彼らよりもずっと貴方の近くに立ったのよね。
貴方が一番大切な人として側に置いた。親の私よりも近くに…」
母さんの言うとおり俺は明日奈に惹かれたことで、彼女と共に在ることを決めた。
途中で事件にも巻き込まれたけれど、だからこそ彼女の大切さをこの身に刻んだ。
明日奈がいたからこそ、俺は孤高から抜け出せたのかもしれないな。
「明日奈ちゃんは貴方の側に居てくれる。それを聞いた時、本当に嬉しかったわ。
この和人が女の子を側に置いたってことにね」
「ったく、どうせ俺には勿体無い人だよ…」
生暖かいその視線と笑みから俺は視線を外した。
「はぁ、これだから美少年は…」
誰が美少年だ、誰が。美がつく程の顔ではない……はず、なのだが…。
「まぁ、それはどうでもいいとして…」
「どうでもいいのかよ…」
脈絡も無く言ったくせに話題を変えやがった。
「もう少ししたらお客さんが来るから、筋トレは後でね」
「客?」
「そ、大事なお客様よ」
一体誰なのだろうか?大事な客ということはSAOの生還メンバーではないだろうし、
師匠ならば知らせずに突如やってきそうだし、ならば噂の『SAO対策室』の人間だろうか?
するとそこで…、
―――コンコンコン
「どうぞ」
ドアがノックされて母さんが入室を促した。入ってきたのは…、
「こんにちは、和人くん」
「明日奈? それに…」
やってきたのは最愛の女性である明日奈。
そして彼女の後に続くように入室してきた40代とみれる男性と女性、そして若い男性である。
特に40代とみれる男性は先程のニュースでも見た顔だった。
あれは録画された記者会見での映像、ならばここに彼女の父親であるこの人が居てもおかしくはない。
「結城彰三さん、ですね…」
俺の一言に彼は頷き、背後にいる女性と男性も俺に頭を下げてきた。
女性の凛とした様は明日奈に似ており、若い男性の方も彼女に似た優しげな空気がある。
そうか、この2人は…。
「一応名乗った方が良いね。初めまして、でいいかな? 桐ヶ谷和人君。結城彰三です」
「妻の京子です」
「明日奈の兄の浩一郎です」
「初めまして、桐ヶ谷和人です」
彰三氏、そして母の京子さんと兄の浩一郎さん。
明日奈から一通りの話しは聞いている。
両親、特に母親とは深い溝があったと……しかしSAOから生還したあとに、
俺への想いから錯乱した彼女と両親は正面から向き合い、その溝を埋めることが出来たらしい。
だがまさか、彼女の両親と兄がここに直接くるとは…。
退院したら俺の方から窺おうと考えていたんだけどな。
「いきなり訪ねて申し訳ない、出来るだけ早く目覚めたキミに会いたかったものでね」
「いえ、お忙しい中、態々御足労を…」
彰三氏がそう言ったことに俺が返答し、俺のその返答の仕方に母さん以外が驚いている。
さすがに相手が相手である、師匠からある程度の礼儀は仕込まれているからそれで対応しただけだ。
驚きから居住まいを正した彰三氏はベッドの側に来ると…、
「私の部下が起こした一件にキミを巻き込んでしまい、誠に申し訳ない!」
「と、父さん!?」
土下座して額を床に着けた。明日奈はどうしたものかとオロオロしているが、俺達はその様子を静かに見据える。
おそらく明日奈は両親が俺に挨拶をするものだと思っていたのだろうけれど、彰三氏はこれを考えていたのだと思う。
「その行為は自分に対して行うものではありませんよ。自分以外の被験者に行うべきかと」
「それでも、キミが最も渦中にいた人間だ。それに……映像の方も、見せてもらったよ」
あぁ、あの映像か…俺の言葉に彰三氏は後半を歯切れを悪くしながら言った。
思い出したのだろう浩一郎さんはバツが悪そうにし、京子さんは少しばかり顔が青く、明日奈も暗くなっている。
確かにあの時の俺の様は見るに堪えない光景だとも思える。
「……分かりました。結城さんのケジメであるのなら、自分はその謝罪を受け取りましょう。
それと、立っていただけると…」
「そうだね、すまなかった。謝罪を受け入れてくれたこと、ありがとう」
改めて頭を下げてきた彰三氏と2人。
さすがの俺も苦笑するしかなかった。
そして頭を上げた彰三氏は俺の手を取った。
「もう1つ、娘を…明日奈を助けてくれて、本当にありがとう…」
「自分はただ彼女を守りたかっただけです。礼を言われるようなことはなにも…」
「命を懸けて守るというのは、大人でも簡単な事ではない。
桐ヶ谷君、キミはそれを守り続けてきたんだ。十分に立派なことだよ」
その言葉を聞き、俺は複雑な胸中だった。命を守る戦いは、命を奪うことも時にはある。
俺は幾つもの命を奪った……相手が((犯罪者|オレンジ))とはいえ、その罪は深い。
故に俺は誇ることを良しとしないわけだ。
だが彰三氏の言うように簡単なことではない、その事実を受け入れることが重要なのかもしれないな。
「桐ヶ谷君、私にもお礼を言わせて……明日奈の隣に立ってくれて、ありがとう」
「母さん…」
今度は京子さんが礼を述べ、明日奈は嬉しそうに呟いた。
「貴方が明日奈の隣に居てくれたから、私達はこの娘と正面から向き合うことが出来たわ。
親として大切な事を思い出させてくれたわ、ありがとう…」
「僕からも言わせてほしい、ありがとう。キミが明日奈を守ってくれた。
兄として妹を守ると決めておきながら、肝心な時に守れなかったからね」
「いえ、自分は自身の思う通りにやっただけです…」
正直、ここまでお礼を言われるとは思ってもいなかった。
ゲームの中とはいえ明日奈とは夫婦関係にあったので少々居た堪れなさもある。
ただ、俺の事は結城家の皆さんには信頼されているようだし、母さんが何も言わない様子を見ると、
俺以外とは対面を済ませていたのかもしれない。
「それに、朝霧財閥が提携を提案してくれたのも、
須郷君とその部下の犯行であることを中心に示してくれたのも、キミが居てくれたからだ」
「提携は友人が提案したことですよ。証拠の方を提出したのも自分の師匠です。
俺は良い((縁|えにし))を大切にしたいと思っただけですので、本当に自分は何もしていませんよ」
彰三氏が言ったこと。
朝霧財閥との提携は俺が公輝にレクトをどうにかできるかを相談した際に、
公輝と雫さんが提案してくれたことだ。
証拠は確かに俺が録音しておいたものだが、それを警察などに渡してくれたのは師匠である。
まぁ、繋がりを辿れば俺がいることに間違いはないけど。
俺としては明日奈との今後のことで少しでも話しをしておきたいところなのだが……、
「父さん、時間がそろそろ…」
「そうか…。すまないね、桐ヶ谷君。また社の方に戻らなければならないんだ」
「お忙しい身なのですから、お気になさらずに…」
どうやらここまでらしい。浩一郎さんの呼びかけに彰三氏は気が付くと俺に声を掛けてくれた。
明日奈とのことは、また今度にするか…。
「桐ヶ谷君、今後とも明日奈のことを頼むよ」
「っ…はい!」
去り際にそう言われ、一瞬驚いてしまったが俺はすぐに答えた。
彰三氏と浩一郎さんは笑みを浮かべて病室から去り、京子さんが俺の傍に来た。
「桐ヶ谷君。また今度、お話しをさせてもらえないかしら? 今はまだ忙しいけれど、時間が空いた時にでも…」
「はい、必ず」
そうして京子さんも嬉しそうにしながら病室から出ていった。
あまりにも突然な出来事が重なったので、俺は力が抜けてベッドに横たわった。
「立派だったわよ、和人…」
「ん、ありがと」
「それじゃあ私も仕事に戻るわね」
「ああ、いってらっしゃい」
母さんは俺に短く言葉を掛けてからバッグを持って仕事へと向かった。
そして妙に静かな様子の明日奈を見てみると…、
「あ、あわわ…//////」
なんと真っ赤になっていた。
「ど、どうした、明日奈?」
「か、かか、和人くん//////! ぁ、あの、あれって、親公認って、ことだよね//////!?」
なるほど、先程の彰三氏の言葉の意味を理解したか。まぁそういうことだな。
「明日奈、おいで…」
「ぅ、うん…//////」
俺は彼女を手招きしてベッドに座らせるとそのまま背中から抱き締めた。
「これで、こっちでもずっと一緒だ…」
「ぁ……うん、そうだね///♪」
俺の言葉に満面の笑顔で応えてくれた明日奈。
お互いの親が認めてくれた……明日奈の家はまだ本家が残っているけれど、それで俺達にとっては大きな一歩である。
今はこのことを喜ぼう。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
今回は和人と翠さんの微シリアスな会話から始まりました。
本作での和人に対する翠さんの心情を語る部分でしたね。
そして結城家との対面、これで親公認の仲が決定しましたよ〜・・・めでたいです♪
和人と明日奈の大きな一歩に、かんぱ〜いw!
ではまた次回で〜・・・。
説明 | ||
EP4です。 タイトル通り、和人が結城家と対面します! どうぞ・・・。 |
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コメント | ||
からかん様へ 親公認、なんて良い響きでしょうww(本郷 刃) からかん「親公認だ!」シラマル「良かったです」クロマル「ケケケケ」(からかん) 雨音 奏様へ 乾杯ですお!(本郷 刃) おめでとー!かんぱ?い!(雨音 奏) lightcloss様へ 誤字報告ありがとうございます!(本郷 刃) ぐすん。「頷いぎ」なんてよめばいいのか分からない…。(lightcloss) サイト様へ 宗家とのお話しがありますからね・・・ケーキと料理はお任せしましょう、またその時にでもwww(本郷 刃) ふむ、神父として新たな生誕を祝わねばなるまいて宗家と話をつけたらまた連絡してくれ・・・ケーキは定番のウェディングでいいとして料理は何を作ろうかな?リクエストがあれば聞いておこう、今回ばかしは嫁に作ってもらうわけにもいかないだろうしなwww(サイト) ディーン様へ はい、仕方が無いと思いますw(本郷 刃) 何でかな?この二人のイチャイチャを見ていると段々酸味の強い物を取りたくなってきたな。まぁこの二人なら普通か。(ディーン) 影図書様へ そりゃもうイチャイチャイチャイチャとしますよ・・・さて、そろそろブラックコーヒーを買いにいきますかな(本郷 刃) 親公認と言う事はリアルでもイチャイチャと……(影図書) アサシン様へ ヒースさんは先に行っていてください、残りは自分がやっておきますので(本郷 刃) ヒースクリフ「葬式の準備をしないといけない。アスナくんの結婚式に間に合うかな?」(アサシン) アサシン様へ 和人&八雲「「かかってこい(きなさい)!」」 神霆流一同「「「「「迎え撃つ!」」」」」(本郷 刃) モテない連合軍総帥「我らが好敵手と閃光の姫が結婚なされる!?、皆の者すぐ婚儀の準備じゃ!!・・・・・ついでに好敵手と鬼へ突撃〜!!」モテない連合軍総員「「「「うっしゃあああああああああ!!!!!###」」」」(アサシン) 仁吉様へ 確かにいつでも結婚できる・・・のはまだ、本家がありますからねw 気が早いですよ〜w(本郷 刃) よかったね、これでいつでも結婚できるね。( ´∀`)bグッ!!さてご祝儀袋はどこかなー(仁吉) SSシャーク様へ 2人に大いなる祝福をb(本郷 刃) 遼東半島様へ ウチのキリトの強さを書くのは結構難しいですよ・・・じつにめでたいです! 赤飯ですか、是非お願いします!(本郷 刃) ディーン様へ 勿論、そのCPメンバーの話しも考えていますよ♪(本郷 刃) キリトとアスナに祝福を(SSシャーク) 遼東「キリトさん…あんたは本当の意味での“強さ”を持ってるんだな…あいつらがアスナさんだけでなく、あんたに恋い焦がれるほどに……」親衛隊長「やったぞッ諸君!ついに親公認だァァーーー!!」親衛隊「「「「「イヤっほぉぉォォーー!!」」」」」軍曹「お赤飯なら僕に任せてください!!」(遼東半島) まぁ、結婚式は後々の楽しみにしといてヴァル×シリカやハクヤ×リズやルナリオ×リーファのイチャイチャ話は?(ディーン) Kirito様へ 千里氏との初対面も勿論書きますので、その時にw(本郷 刃) Kyogo2012様へ 式の時期ですか、それはですね・・・っと、ネタバレになっちゃうなw 年齢はまだ16ですから最低でも後2年は必要ですw(本郷 刃) 魅沙祈様へ ホントにめでたい! そして気が早いですよw ドレスはいずれ来る時にでも・・・w(本郷 刃) 観珪様へ めでたいですね〜・・・はい、年齢上問題があるので式はまだですよ〜w いずれ来る時のスピーチはお願いしますね♪(本郷 刃) ディーン様へ それもアリかと思いますが、さすがにまだ早いですよw そう、ユイちゃんが問題なんですよ・・・どのタイミングで引き合わせるか・・・(本郷 刃) 親公認おめでと!この流れだと千里氏の公認OKということですね(^_?)?☆(Kirito) ぶはっ。親公認か。おめです。しかし、結婚式はいつなのだろうか・・・。というか、キリトは、結婚できる年なのだろうか?(Kyogo2012) おおっ!ついに親公認か!おめでとー!退院後は結婚式ですかね!よし、わたしは明日奈のドレスを作ろー!(魅沙祈) ふたりともおめでとー! 親公認になったから式の準備は退院後すぐかな? ぜひとも呼んでくれ! スピーチくらいはまかされよう!(神余 雛) これでキリトが退院したら仮の結婚式で上げってもいいんじゃないのかな?後はユイちゃんが両家の親にあうことですね。(ディーン) |
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