魔法少女リリカルなのは 四天王始めました
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クロノの砲撃をバックステップで回避すると俺の左右から挟み撃ちを狙った武装局員の砲撃が放たれた。

 

回避することも出来るが……試してみるか。

 

俺は回避行動に移らずに砲撃を放ってきた武装局員の魔力に俺の魔力を同調させる。

 

すると、砲撃は俺の前を通りすぎた。どうやら成功したらしい。妖力同調ならぬ魔力同調。覚醒者にも通用する技である妖力同調を魔力で使用したのだ武装局員では全力でもこの技を破れまい。

「何が起こった……」

 

唖然とした様子で動きを止める武装局員。当たる筈の攻撃が外れたのだからその反応もしょうがないだろう。

 

だが、この場では命取りだ。

 

俺はその武装局員を狙う。大剣を突くように構え、腕の筋肉を捻り、その状態で突撃を開始する。

 

「ヒッ!」

 

「危ない! グレイヴシールド」

 

小さく悲鳴を上げる局員を守るように一人の少年が十字架の刻まれた盾を展開して俺と局員の間に入り込んだ。だが……。

「……無駄だ」

 

低い声で小さく呟き、捻っていた腕の筋肉を元に戻す。すると、大剣がドリルのように螺旋回転し、十字架の刻まれた盾にぶつかった。

 

「ガッ……ヒュ……」

 

一瞬の拮抗の後に盾を貫き、術者の胴体の腹の部分を吹き飛ばした。内臓を撒き散らして下半身と上半身が鉄骨にぶつかり、グジュリ、と柔らかい物を潰したような音を立た。

 

「……まず、一人」

 

俺が着地した瞬間を狙って砲撃が上から放たれた。それを幻影で残像を残し回避するとそれに気をとられている間に砲撃の主を狙う。

 

「うわっ!く、来るな!?」

 

怯えた表情で出鱈目にバカスカと砲撃を放つ赤髪の少年との距離を詰める。

 

「氷火双閃」

「おっと」

 

赤髪の少年の背後から氷と炎を纏った剣を両手に一本ずつ持った黒髪の青年が斬りかかってきた。

 

それを魔力で作った足場で方向転換して回避すると、翡翠色の鎖で両手足を縛られた。

「よし!今だ!」

 

これはユーノか……だか、この程度では俺の動きは止められない。

 

俺が少し力を入れただけで鎖が砕け散った。俺がバインドに掛かった瞬間に突っ込んできた銀髪の少年が表情を引き吊らせる。

 

その少年の頭を素手ではたき落とす。グシャッ、と頭が地面ぶつかり砕け散ると、残った体も重力に従い落ちた。

 

「……化物め」

 

誰かがそう呟いたのが聞こえた。

ああ、そうさ……俺は化物さ。たった一人の同族も存在しないただ一人の化物だ。

 

「ディバインバスター」

 

「チェーンストライク」

 

桃色の光線と鉛色の鎖の塊が飛んできた。それを跳躍して避ける。すると、頭上から声がした。

 

「果てより吹きし風よ全てをその力を持って凍てつかせよ ローレライ」

 

ビキビキ、と俺を囲むように鉄骨から氷が発生する。その氷は意思を持つかのように俺を包み込んだ。

 

「やったか!?」

歓喜の声が聞こえた。この程度では俺を止めることなど出来ないのに……哀れな奴だ。それに俺を氷に閉じ込めた張本人なんか油断なく構えていると言うのに……。

 

ガシャァァァァァンッッ!と硝子を割ったような音と共に俺は氷を砕き、一瞬だけ魔力を完全に解放する。

 

「え?」

 

俺は包囲から抜けると数人が固まっている場所に降り立つ。

 

「君達はここで退場だ」

一瞬で数人を縦に切り裂く。切り裂かれた場所から血が噴水のように吹き出して俺を赤く染める。ドチャ、ドチャ、と数人の体が崩れ落ちて、俺の足元に血溜まりを作り出す。

 

「な、何が起こったんだ!?あの一瞬で……」

驚きの声を上げるクロノを一別して俺はまだ戦う気がある奴はいるか確認する。…………いないようだ。全員腰が引けている。

 

俺は大剣を背に背負うと彼らに背を向ける。そして……初めて人型の状態で最大速度を出す。ビルの支柱全てを切り裂く。

 

俺はそのままビルから飛び出して空中で大剣を背負い、持ち手を持った状態で彼らが外に出てくるのを待つ。

 

土煙の中から次々と脱出する人影を確認すると俺はたまたま近くに出てきた魔女の格好をした少女を捕まえると、たった今出てきたばかりの銃型のデバイスを持った少年に投げ飛ばす。

 

「アグゥ」

 

「グアッ」

 

ぶつかり悲鳴を上げた二人に大剣を投擲する。

 

「避けろぉぉ!」

 

誰かがそう言うが遅すぎた。

 

俺が投擲した大剣は二人を貫き地面にクレーターを作り出した。

 

「今だ!かかれぇ!」

 

大剣を持ってない今がチャンスだと思ったのだろう一斉にシューターや砲撃が放たれた。

 

俺はそれらを魔力同調で大半を逸らすがなのはや転生者達の砲撃は完全には逸らせられなかったがそれでも俺が近くには十分事足りた。

 

「ふっ……」

 

「ガァァァァ……俺の……腕が……」

 

武装局員のリーダーらしき人物の腕を手刀でへし折り、俺は次の標的を目指して駆ける。

 

次の標的は大剣型のデバイスを持った青年だ。

 

「おおぉぉぉぉぉぉ! ヴァリアントブレイザーァァァァァ!」

 

自分が狙われていると理解した青年が斬りかかってくる。俺はそれを右に避けて回し蹴りを叩き込む。

 

「っ……がはっ!ゴホ、ゴホ……」

 

壁にぶつかり、吐血しながら倒れ込む青年から視線を外し、まだ無事な面子に視線を向ける。

 

「くっ……奴は何なんだ……本当に人間なのか?」

 

「何処にあんな人間がいんだよ!?」

 

確かに人間ではないのだがな。それに転生者達はレアスキルを使っているのだろうか?あまりにも手応えが無さすぎる。

 

そう思っているとガラガラと音を立てながら瓦礫が集まり三メートル程の大きさのゴーレムになった。

 

しかも、それが5体いるのだ。少しだけ期待が持てそうな相手が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ……こんなものか。俺の足元にはゴーレムの破片が散らばっている。少しは期待できると思っていたのだが……全く持って期待外れだった。

 

僅か数分で5体のゴーレムは瓦礫に戻ったのだ。

 

「……所詮この程度か」

 

俺は大剣を広い、背負うと転生者達に背を向ける。

「なっ!逃げるのか!?」

 

「あまりにも期待外れだったから帰るだけだ」

俺はそう言うと駆け出し、彼らの視界から姿を眩ます。

 

今の転生者達では相手にならないか……。本当に俺が存在する必要がないな。次は闇の書の防衛プログラムに期待するか。せめて俺が覚醒体で相手をするぐらいに強いことを……。

 

A's編が待ち遠しい。俺が全力を出せる相手かも知れないのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

家に戻るとリゼットに何故あんなことをしたのか問いただされた。

俺はそれに対して転生者達の実力を確かめるためと言って誤魔化した。

 

「それで……どうだった?」

 

「弱い……弱すぎる……」

 

「そう……貴方からしたら人間はいくら魔法が使えても弱いわよね」

 

その通りだよ。

 

「一応伝えておくわね。テスタロッサ一家は海鳴市に義務教育が終わるまでは残るみたいよ。ユーノはクロノ達に付いていって一旦部族の皆に会いに行くそうよ」

 

とりあえずアースラメンバー+ユーノがしばらく海鳴市からいなくなるのか……。多分、これで俺達の存在が管理局全体に知られるだろう。特に俺は危険人物として。

 

「後、アースラが地球から去るのは一週間後だって」

 

「ふーん……A'sが始まったらまた来ることは確定してるし、夏はどっかの管理不能世界で戦闘訓練でもする」

 

「戦闘訓練ね……確かに数的に言えば私達は圧倒的に不利だし、カートリッジシステムが搭載されるとレイン以外は私を含めて危ないわね」

 

「まだ、夏まで時間はあるからじっくり考えよう。管理不能世界だからかなり危険だろうからね」

 

「そうね……考えとくわ」

 

カートリッジシステムが搭載されると今よりは確実に強くなるだろう……。それに対する準備もしなくてはな。

 

「リゼット達はカートリッジシステムを搭載するのか?」

 

これは確認しておかなければならない。

 

「出来たらしたいけど……多分無理ね。私達はデバイスを改造する技術を持っていないから」

 

「そうか……」

 

となると別の方法で強化する必要が出てくるな。

 

「とりあえず、俺は少し外に出てくる」

リゼットにそう言って俺はベランダから外に飛び出す。

 

 

 

 

 

 

 

夕陽が沈んでいく様を公園のジャングルジムに腰掛けて眺める。

 

「あれ?何やってるの」

 

「ん?」

後ろ側から声が聞こえたので首だけを動かして振り返ると片手に買い物袋を持ったアリシアがいた。

買い物袋を持ってあるからお使いの帰りか。

 

「ただ……夕陽を眺めてるだけだよ」

 

視線を夕陽に戻しそう言う。

 

「ふーん……レインはアルフォンスって人知ってる?」

 

「知ってるよ」

 

なんたって本人だからね。

 

「ママがねフェイトを止めてたから……戦ってはいけないって」

 

だから……いなかったのか。

「ママがサーチャーを飛ばしてアルフォンスの所に向かっていった人達の戦闘の様子を見てたの。ねえ……何で彼は人を殺すのかな?」

 

「それは分からないよ」

 

分かっているからこそ俺が答えることではない。

 

「ごめん……そうだよね」

 

「アリシアは何故そんなことを知りたいの?会ったら殺されるかも知れない相手にさ」

 

「……寂しそうだったからかな」

 

寂しそう?俺が…………。

 

「何て言えばいいのかな……自分と同じ存在を求めているような……そんな気がしたんだよ」

 

ハハハハ……確かに同族を求めてるけどそこまで分かるんだ。

「そっか……」

 

「うん」

 

少しの間沈黙が続く。

「そろそろ行くね。あまり時間をかけるとママ達が心配しちゃうから。じゃあね、レイン」

 

「じゃあね、アリシア」

 

アリシアが公園から出ていったのを確認すると俺は空を見上げる。雲1つ無い晴れ渡った空を夕焼けが赤く染める。

 

「…………帰るか」

 

そう小さく呟くとジャングルジムから飛び降りて、公園の外に向かって歩き出す。

闇の書事件開始まで大人しく待つか。きっと俺はヴォルケンズ側にも管理局側にも付かないんだろうな。

 

そんな事を考えながら俺は帰路に着くのだった。

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無印編 最終話 未来に期待を
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