IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode140 すれ違う想い
「それにしても、ホント束さんって凄いわよね」
「まぁな」
目的地のドイツに向かっている途中は基本自由なので、隼人、鈴は上部左格納庫に居り、そこでISの調整をしていた。
「空を飛ぶ戦艦も驚きものだが、設備も完備って言うのも驚きものだ」
「後者はあんたしか驚かないわよ」
「かもな」
隼人は鈴の甲龍を調整していた。
「って、言っても、何か信じられないわね」
と、鈴は近くの台の上に座った。
「クラス対抗戦の時に現れたやつが、まさかここまで世界を脅かす存在だったなんて思うと、あの時がどれだけ手緩かったかが分かるね」
「そうだな」
「で、最初に戦ったあたし達が、そのバインドと全面的に戦っているんだもん。何が起こるか分からないものよね」
「何が起こるか分からない、か」
「そういや、隼人は連れ去られていた間どうしていたの?」
「捕まって居たんだぞ。他に何があるって言いたいんだ?」
「まぁ、そりゃそうよね」
「・・・強いて言えば・・・向こうの戦闘機人達と話していた」
「普通に話したの?」
「俺も戸惑ったよ。興味本位で話してくるやつが多くてな」
「ふーん。どんなやつが居たの?」
「似たようなの二人に双子、もの大人しいやつがいた」
「へぇ」
「その中で・・・ラウラの姉と話した」
「キャノンボール・ファストに確か居たわよね?ラウラのそっくりさん」
「双子の姉らしい」
「姉、か。何か色々とあるわね。姉妹兄弟って」
「そりゃ言えてる」
隼人は苦笑いする。
「で、あの・・・シノンだっけ?あいつは何で一緒に来るようになったの?」
「まぁ、色々とあってな。あいつから付いて来たんだ」
「ふーん。何気に颯の件もあって、どうしてあんたのクローンが多く作られるんだろうね」
「さぁな」
「まぁ、これなら少し動きやすくなったはずだ」
「そう。ありがとう、隼人」
鈴は調整を終えて待機状態になった甲龍のリストバンドを手にする。
「・・・ねぇ、隼人」
「何だ?」
鈴は少し聞きづらそうに隼人に聞いてきた。
「残りのメンバーももちろん連れ戻すわよね」
「当たり前だろ。そんな事をわざわざ聞くのか?」
「そりゃ・・・あんたの事だから当たり前のはずよね」
「なら――――」
「・・・簪も、必ずってぐらい・・・考えているの?」
「・・・・?」
どこか曇った様子で鈴は言うので隼人は眉を顰める。
「どういうことだ?」
「そりゃ、そうよね。大切な仲間何だし、何より生徒会長の妹だから・・・」
「・・・・」
「別に気にしなくて良いのよ。ただの独り言だから」
少し表情が暗い鈴は台から降りて近くに置いていたペットボトルを手にすると、どこかに行こうとする。
「最近何かと、そればかりだな、鈴」
「・・・・」
隼人が口を開いて言うと、鈴は立ち止まる。
「気のせいかもしれんな。全学年トーナメントじゃ簪と当たった時どこか荒々しい感じがあった」
「・・・・」
「その後も簪の事となるとお前は様子が変わる」
「・・・・」
「今までお前がそうなる時はあったが・・・」
「・・・・」
「・・・少し深読みしすぎたか」
「・・・そうよ」
と、鈴はポツリと言う。
「えぇそうよ!!あんたの深読み過ぎよ!!本当にあんたって女の心を読めないんだから!!」
次の瞬間には鈴は怒鳴った。
「な、何だよ。そんなに怒る事無いだろ」
いきなり逆切れされて隼人は少しイラッと来る。
「あんたも一夏の事ばっか言えないわよ!!鈍い鈍い言って、あんたの方がよっぽど質の悪い鈍感よ!!唐変木よ!!」
「・・・何が言いたいんだよ」
隼人は怒りが込み上げて感情が高ぶりそうになるが、何とか抑え込む。
「俺がいつお前に鈍感って言われるような事をしたか」
「あぁもういいわよ!!こんだけ言ってもあんたは気付かないんだから!!眼中に無い女の事何かどうでもいいんでしょ!!」
鈴は思い切って手にしていたペットボトルを投げてそれが隼人の額に当たり、鈴は後ろを向いて格納庫を出た。
「・・・・」
隼人はペットボトルがぶつかった箇所を押さえる。赤く腫れて若干血が出ていた。
瞳の色が金色に変化するも、すぐに戻した。
「・・・・」
鈴があそこまで怒る理由が思い当たらない隼人は少し唸る。
(何だよ、鈴のやつ。何であそこまで怒るんだよ。俺が何をしたって言うんだ・・・)
「さすがにあれは隼人が悪いよ」
「・・・・?」
と、別方向よりバンシィがやってくる。
「女の子の心って繊細でデリケートなんだよ。ガラスのハートなんか目じゃないぐらい」
「お前まで言うのかよ?」
「まぁでも、ちゃんと謝った方が良いよ」
「謝るたって、ペットボトルを投げつけられたんだぞ。それに理由が分からないのに謝るのは・・・」
「当の本人から理由を聞けば良いんじゃない?」
バンシィは隼人に近付くと、手を退けて傷を見る。
「・・・・」
「それに、言った方がいいと思うよ。今の状況なら、尚更の事だし」
「・・・・」
バンシィはポケットからハンカチを取り出して血を拭き取る。それによって痛みがして、隼人は少し表情を引きつらせる。
「後悔する前にね」
「・・・・」
「その前に原因ぐらいは突き止めた方が良いよ」
「原因、ねぇ」
隼人は頭を掻く。
(ユニコーン)
バンシィは念話でユニコーンに話す。
(分かってる。鈴ちゃんのことは任せて)
(お願い)
「・・・ひっく・・・ひっく」
鈴は人気の無い場所で泣きじゃくっていた。
(何よ、隼人の馬鹿!大馬鹿!何がそれほどあたしの事が気に入らないのよ!)
涙を流して両手を握り締める。
(そんなに・・・そんなに・・・)
爪が食い込んで血が滲み出てくる。
「そんなに!!」
そして勢いよく右拳で壁を殴りつけた。
「・・・・」
殴りつけた場所から血が出て激痛が走るも、鈴は気にもせず、そのまま俯いてその場に膝を着いて座り込む。
「そんなに・・・あいつの事が・・・」
「たぶん隼人君に悪気は無かったんだと思うよ」
「・・・・?」
鈴は頭を上げて見上げると、そこにユニコーンが居た。
「あんたは・・・」
「あんまり話してなかったから知らないかな?」
「・・・確か・・・ISの意思が実体化したって言う・・・」
「そうそれ。私の名前はユニコーン」
ユニコーンは片膝を着いて屈むと、救急箱をコールし、床に置いて開けるとピンセットを持ち綿を摘まんで取り出す。
「怒る気持ちは・・・まぁ分からないでも無いよ」
「・・・・」
「そりゃ隼人君があんなんじゃ怒ってしまっても仕方が無いよ」
ユニコーンは鈴の右手を持つと、綿で血を拭き取ると、鈴は痛みで顔を引きつらせる。
「・・・あいつ・・・一夏より鈍感よ。あたしの気持ち何か全然分かろうとしないで・・・」
「・・・・」
「昔っからそうよ。妙な所で頑固で、鈍い」
「そう思うんなら、遠回し的な言い方じゃ分からないんじゃないかな」
「そんな事――――」
と、鈴が言おうとするが、ユニコーンは消毒液を染み込ませた綿を傷口に当てて、それによって激痛が走って鈴は顔を引きつらせて涙目になる。
「人って誰しも自分で答えを見つけ切れない事もある。遠回しで言ってヒントを与えても、その人は見つける事はできない。仮に見つけても本当の意味で理解はしない。いや、出来ない」
「・・・・」
「今のままじゃ隼人君は答えを見つけても君の真意には気が付かないよ」
「・・・・」
「どちらかと言えば、隼人君は気付いているんだと思うよ」
「だったら・・・」
「でも、鈴ちゃんがそれを拒んでいるんだよ」
「・・・・」
「だから隼人君は余計に混乱して、気付かない」
「・・・・」
今思えば確かに隼人は気付いているのかもしれないのに、自分がそれを拒んでいたように思った。
「ただ苛立って、隼人君に八つ当たりをしただけ」
ユニコーンは鈴の右手に包帯を巻いてしっかりと結ぶ。
「そうしか彼には伝わってないよ」
「・・・・」
「隼人君に気持ちを伝えたいのなら、自分の口で、ちゃんと言うべきだよ」
「・・・そんな事言ったって、そう簡単に言えるわけ――――」
「そこは・・・自分の努力次第だよ」
次に左手の爪が食い込んだ箇所に消毒液が染み込んだ別の綿で消毒する。
「勇気を出して、言うんだよ」
「・・・簡単に言わないでよ。あんたみたいな機械なんかじゃ――――」
「鈴ちゃん」
と、ユニコーンは鈴に指差す。
「少し・・・頭冷やす?」
笑顔でユニコーンは言うが、どこか威圧感があって殺気染みた声に背筋が凍って鈴は顔を青ざめる。
「何て、冗談だよ」
そうして道具を救急箱に戻して閉じると、収納する。
「君次第かな。どうするかは」
「・・・・」
「でも、後悔する前に・・・言った方がいいよ」
「・・・・?」
「二度と伝える事が出来なくなる前にね」
そうしてユニコーンは鈴から離れた。
「後悔する前に・・・か」
鈴は包帯が巻かれた右手を見る。
「・・・・」
『二度と伝えられなくなる前にね』
(二度と・・・か。どういう事だろう・・・)
確かに今は死と隣り合わせの戦闘だ。そうなる事もありうる…
「・・・・」
『アーロンより各員へ。これより作戦会議をする。全員ブリッジに集まれ』
と、呼び掛けが入った。
「・・・そりゃ、後悔はしたくは無いけどさ」
鈴は息を吐いてブリッジに向かう。
「全員集まったな」
アーロンは全員が居るのを確認する。
隼人の額が赤くなって少し血が固まっている事に少し疑問に思ったが、すぐに流す。
「後一時間程度でドイツに入る。俺達は最初に首都ベルリンを奪還する」
ブリッジの窓の上にあるモニターにデータが表示される。
ドイツの現在の状況が表示されており、赤い部分と青い部分と白い部分があった。
「赤い部分はやつらが留まっている箇所だ。青は占領された箇所で、白は占領されてない平地だ」
「・・・でも、何であいつらベルリンを拠点にしてないんだ?」
地図から見てベルリンは赤く表示されてない。
「恐らく赤い部分は・・・ドイツ軍でも一番大きな基地司令部がある場所・・・だからですね、大尉」
「その通りだ」
と、クラリッサが全員の前に出る。
「やつらはドイツ軍総司令部を占拠し、そこを拠点にしていると思われる」
「恐らく基地の防衛設備を有効的に使う為か、もしくは別の目的があってそこを占拠したか」
「前者が最もだろうな」
千冬が隼人の意見を聴いて言う。
「他に目的があるとすれば・・・何がある?」
「恐らく大尉にも知られてない、重要な何かがある、と俺は見ますね」
「可能性が無いとは言い切れないな。現にドイツは様々な秘密を抱えている」
「だとしても、何があって・・・」
「さぁな。だが、占拠している事実は変わらん」
「そういう事だ。恐らく軍総司令部の次にベルリンに部隊が集中しているはずだ。そこで戦力を削り、ベルリンを取り戻す」
「まさに一石二鳥。首都を取り戻し、戦力を削られるってわけだ」
「決まったな。では、作戦開始まで各員は準備をしろ」
「「「「「「「はい!!」」」」」」」
こうしてベルリン奪還作戦が開始された。
後書き
一見すれば隼人が鈍いように見えるが、鈴がその考えを拒んでいる為隼人は困惑している。
まぁどっちもどっちである。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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