アナトリアの没落
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アナトリアの没落

「まさか、これほどとは」

アレックスは自分で作ったリストを見ながらそう言う。

4ヶ月前、クルトからスパイの調査を頼まれ、その時にスパイの疑いがある者たちが載ったリストを貰い、リストに載っている研究員たちを調査したところ、全員が黒。

また、アレックスはリストに載っていない研究員も調査。

その結果もほぼ全員が黒。

この結果にはさすがにアレックスも驚いた。

スパイではないのはエミールみたいにアナトリアの出身の研究員だけである。

「とりあえず、クルトに報告だな。この時間ならまだ研究室にいるな」

アレックスは自分で作った資料を持ち、自分の部屋から出ていき、クルトの研究室に向かい廊下を歩き始めた。

「やぁ、アレックス!」

後ろから声を掛けられ、後ろを見ると資料を持ったエミールがいた。

「今から何処へ?」

「クルトの研究室だ」

「奇遇だね、僕も今からクルトの研究室に行くんだ」

エミールはアレックスと一緒に廊下を歩き始める。

「ところでアレックス。例の件の調査は終わったのか?」

エミールが言う、例の件とはスパイのことである。

なぜ、エミールがスパイの事を知っているのか。

それは、クルトがアレックスにスパイの調査を頼まれた会話がエミールに盗み聞きされていたからである。

あの時、エミールはシミュレーター室の片づけを済ませ、クルトがフィオナにエミールに渡すように頼んだ資料を取りにクルトの部屋に向かい、フィオナと入れ違いになりクルトの部屋に来たらアレックスとクルトの会話が聞こえ、そのまま盗み聞きをしていたのだ。

その後、エミールはアレックスに盗み聞きをしていたことを言い、協力させてくれと頼んで来た。

無論、アレックスは断った。

だが、その三日後にエミールが独自に調査資料を待ってきて再びアレックスに協力させてくれと頼んできた。

さすがに断る気がなくなり、エミールと協力しながら調査した。

「ああ、その報告を今からクルトにする。ここまで早く出来たのはお前のおかげだ。エミール」

アレックスがエミールとスパイの調査を協力している時、アレックスはエミールの情報収集力驚いた。

エミールの情報収集力は凄まじいものであった。

たった1ヶ月たらずで10人以上の情報をアレックスに渡している。

この時アレックスはエミールに「お前は、どこの国の諜報部だ」思わず言ってしまうほどである。

そのお蔭で、アレックスが思ってた以上に調査が早く終わった。

「それほどでもないさ。そうだ、その調査結果見せてくれないか?」

アレックスはエミールに調査結果の資料を見せるか、見せないか、迷った。

だが、どのみち、後で知ることになるので、エミールに資料を渡す。

エミールは資料を1ページごとに見ていくにつれ、表情が黒くなる。

「アレックス…この結果は本当なのか?」

エミールはショックを受けた。

実はエミールも調査していたが、全体を調査したわけではない。

エミールが調査したのは信用できない研究員のみ、信用している研究員は調査していなかった。

だが、その研究員もアレックスの調査で8割以上がスパイだと判明した。

信用していた研究員が実はスパイだった。

このことを知れば、誰でもショックを受けるに決まっている。

「信じられん…あいつらがスパイなんて…」

「信じようと信じまいと自由だがこれは事実だ。どのみち、クルトに知らせて、対策を取らなければアナトリアが危ない。それに時間もあまりない」

アレックスはここ最近、誰かに見られている気配を感じていた。

おそらく、スパイだろ。

そして、スパイがアレックスを見張っていることはアレックスを警戒している証拠だ。

つまり、アレックスの行動はスパイに気付かれたことになる。

早く対策を立てなければスパイが何をするかわからない状況だ。

「そ、そうだな。ともかく、急いでクルト教授に伝え…!」

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その時だった、クルトの研究室の方から銃声音が聞こえた。

そして、アレックスの頭の中で最悪の事態が浮かぶ。

「まさか!」

「アレックス!?待ってくれ!」

アレックスはクルトの研究室に向かい全力で走り出し、それに続いてクルトも走り出す。

アレックスは走りながら常に持っている銃を取り出し、いつでも撃てるようにする。

そして、クルトの研究室の扉の前に着き、扉を蹴り破る。

そして、アレックスに目に入ったのは

「なっ!」

銃を持った研究員と血を流しながら倒れているイフェネルト夫妻だった。

「ちっ!」

銃を持った研究員はアレックスを見て舌打ちし、アレックスに銃を向けるが、アレックスはそれより早く銃を研究員に向け発砲。

弾は研究員の額に当たり、研究員は何も言わずに倒れる。

「アレック!なっ…クルト教授!奥さん!」

アレックスに追いついたエミールもこの現状を見て顔の血の気がなくなった。

「エミール!奥さんを見てくれ!俺はクルトを見る!」

「わ、わかった!」

アレックスはクルト。エミールは奥さんを脈があるか確認する。

アレックスはクルトの脈がまだあることを確認。

しかし、弾は急所に当たっており、出血も酷いものである。

急いで、手当てしないとまずい状況である。

「エミール。奥さんは?」

アレックスの問いかけに、エミールは暗い表情で首を左右に振る。

「脈がない。手遅れだった…」

「そうか…クルトの方はまだ脈はある。だが、弾は急所に当たっている。出血も酷い。急いで手当しないとマズイ…」

「わかった!すぐに救急車を呼ぶ!」

エミールはポケットから携帯を取り出し救急車を呼ぼうとする。

「その…必要は…ない」

しかし、それをクルトが止める。

「しかし、クルト教授!」

「もう…手遅れだ…自分の体だ…自分が…よくわかる」

「クルト!諦めるな!お前が死んだらフィオナをどうするんだ!」

「そうですよ!フィオナさんは一人にするんですか!」

アレックスとエミールは言うがクルトは首を振る。

「娘は…フィオナは…一人じゃ…ない…お前らがいるだ…ろ」

「ですが…」

「エミール…私の…あとは…お前に…託す…お前が…アナトリアの教授に…なれ」

「えっ…私が…」

クルトは唖然とした。

アナトリアの教授になることは、同時にアナトリアの指導者になることを意味をする。

「教授!諦めないでください!それに私には貴方の後を引き継ぎことは出来ません!」

「大丈夫だ…お前はなら…大丈夫だ」

「ですが…」

「それと…アレックス」

クルトは最後に残っている力を使い右腕を上げる。

アレックスはそれを両手で掴む。

「なんだ」

「最後の…依頼…だ。依頼内容は…アナトリアを…守る…ことだ…これ…が…最後の…依頼だ…受けてく…れるか?」

「わかった。その依頼受ける。報酬はいらない」

「ふっ、やはり…お前…は…変わった…レイブン…だな。アレックス…エミール…アナト…リア…フィオナを…頼ん…だ…ぞ…」

そして、クルトは目を閉じ、アレックスが握っていた手も力なく落ちる。

「クルト教授?」

アレックスは急いでクルトの脈を確認する。

そして。

「脈がない…くそ!」

「そんな!教授…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

その日イフェネルト夫妻は亡くなった。

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そして、アナトリアの没落が始まった。

イフェネルト夫妻の死を受け、スパイたちは一斉にAMS技術を奪い、アナトリアを出て行った。

その結果、雄一のアナトリアの価値であったAMS技術がなくなり、企業の支援が無くなると思われた。

だが、アナトリアの新たな指導者エミール・グスタフ。そして、伝説のレイヴン、アレックス・オルフェウスの交渉により、GAグループだけがアナトリアの支援を継続させることが出来た。

しかし、いずれかはGAグループも支援を断ち切る。

そうなる前に、エミール・グスタフとアレックス・オルフェウスは次なる手を打つ。

 

 

 

鴉が再び飛び立つ日は近い

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フィオナの母の出すタイミング逃した(涙
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