宿世 ─すくせ─ |
それは、突如、自分を襲った現象。
喉が異様に渇く。体中の血液が、逆流しているかのような、筆舌に尽くし難い苦痛。
全身が熱くて。喉がヒリヒリと痛んで。
いくら水を飲んでも、その渇きは治まらず。常に、飢餓にも似た苦しみが襲い掛かって来て。
だけど、誰も救いの手を差し伸べてくる事はなく。周りの人間達は、じっと彼の苦しむ様を傍観するだけ。
……この恐ろしい飢えを癒す術を求めて、彼…虎徹は、毎夜苦しみ悶えていた。
熱い。喉が渇いて、仕方が無い。苦しい。こんなにも水を飲んでいるのに。
どうして、ひりつくような感覚が、消えて無くならないんだ!?
ちくしょう…苦しい…誰か助けてくれッ…!!
髪を掻きむしり。のたうち回って。畳に爪を立てて…歯を食いしばって。
それでも、飢えは消える事は無かった。
──そうして、日々は無情に流れ……
虎徹は、ある夜。突如、意識を失って。深い眠りに就いた。
ぴくりとも動かず。青白い顔を晒して、昏々と眠り続ける彼。
けれど、周囲の人間は。『守護者』と呼ばれる者達は、その事にさして驚く様子も見せず。ただ、彼の眠りを妨げぬよう…彼の命を狙う、“敵”を近付けぬよう。
静かな。そして、命を掛けた熾烈な戦いを繰り広げ続けた。
……それは、虎徹を護るべき守護者が、最後の一人になるまで続けられたのであった。
数多くの同胞の犠牲を糧として。
虎徹はうつつの世界を彷徨い続ける。
やがて、時が訪れ。
天空に、赤い満月が昇る頃。西洋から訪れた、魔物…『神魔』と呼ばれる存在に呼応したかのように。
闇を統べる、“監視者”が、新たに誕生する……
暗い暗い、闇色に染まった海。
寄せては返す波。白い泡を立て、砂浜を舐め。静かに戻って行く。
聞こえるのは、波音ばかり。他には、何の物音も無い。人の影もない。
……だが。
静寂を破るかのように、それは予告もなく、突然姿を現した。
──海の中に佇んでいる、優美な長身のシルエット。
赤い月の光を浴びて輝くのは、太陽の光を集めたような金糸の髪。
冴え光る翡翠の瞳。高い鼻梁に、冷酷そうな、血の色の薄い唇。
顔立ちは、寒気がする程に美しい。
細い肢体を纏っているのは、紫黒のマント。
常人には持ちえない、気品と。そして、濃い血の香をまとっている。
年の頃は、20代くらいだろうか?もっともそれは、人間であれば、だが。
青年が立っている場所は、人が居られる所ではない。
大きな岩でもあれば、可能かもしれないが…ここら辺の海には、生憎とそのようなモノは見当たらない。
だが、青年はそこに幻のように在る。
「……」
青年は、感情の無い目で辺りを一瞥すると、波の上を滑るように、優雅な足取りで浜辺へと近付いた。
さく、と音を立てて、濡れた砂を踏む。
青年は、冷たい目で辺りを見回した。
「……貧しい国だな。やれやれ、こんな辺鄙な所に足を延ばすなんて…僕もどうかしている」
静まり返った、暗い浜辺を一瞥して、肩を竦める。
この国。日の本の国、と称される小さな島国は、青年が暮らす異国の広大な土地とは、あまりにもかけ離れている。
青年の有る場所は、美しい紫の花が咲き乱れる小高い丘があり。
空は抜けるように蒼く。世界は、果てしなく広々としており。
古代人が刻んだ、壮大で神秘的な遺跡の群れ。
人々は、青年たち…神魔の奴隷であり。神魔は、数多の土地をその支配下に置いていた。
肥沃な大地。たわわに実る果実。咲き誇る、優美な花々。
……だが。この辺境の島国の貧しさはどうだ。
浜辺には、何もない。ただ小さな小舟が、あちこちに転がっていて。
遠くに見える灯りも、哀しい程に弱々しい。
美しい建物も無く。偉大な古代文化の影も全く無い。
ただ、打ち寄せる波の音が響くだけの、貧しい砂地。
青年は、早々とこの国を訪れた事を後悔していた。
──旅の途中、とある“香り”を嗅いで、ふと足を向けてみたのだが……
「気の所為だったかな…」
くん、と高い鼻を鳴らして、つまらなそうに呟く。
青年は、もう一度浜辺をぐるりと眺めると、関心を喪ったかのように、踵を返そうとした。
ゆるり、と浪間に近寄る。
──が。
「!!」
次の瞬間、青年は素早く後ろを振り返った。
闇に包まれている、小さな雑木林。
その、一本の松の木から…細い影が分離したのだ。
「……」
青年は、冴え光る翡翠の瞳を、微かに瞠目させた。
松の木の横に佇んでいるモノ。それは、一人の人間だった。
艶やかな黒髪、すらりとした体躯。
白く丈の短い、不思議な形の着物が、月光に淡く輝いている。
衿元には、緋色の付け衿。細い腰を締めているのは、同色の帯。
しなやかな二本の足が、裾から艶めかしく覗いている。
年の頃は…この国の人間の年齢は、よく判らない。
若いと言えばかなり若く見えるが。20〜30代といったところだろうか。
青年は、暫し無言でいきなり出現した男、を観察していたが。
ふっ、と覚えのある匂いを嗅いで。
翡翠の瞳を、剣呑に細めた。
「……へぇ。これは驚きましたね。あの香りを、貴方が纏っているとは」
「……」
「貴方…貴方からは、とても瑞々しい…血の香りがしている」
にっこりと微笑んで言う。
青年は、波打ち際から男の方へと、静かに歩を進めた。
一メートル程の距離で止まり、じっと相手を見つめる。
男は、震えが来る程の美貌の青年を前にしても、その表情に何の色も浮かべなかった。
ただ、大きな黒い瞳を見開いて。ぼんやりと、青年を眺めている。
まるで、夢遊病者のような…生気の乏しい顔付き。
しかし、青年は相手のそんな様子を気に掛ける事なく、更に傍へとやって来た。
……手を伸ばせば触れられる程の、至近距離。
金糸の髪の青年は、形の良い白い指を、ゆうるりと男の黒髪に触れさせた。
「いい香りですね。甘くて、濃厚な血の匂い…」
「……」
「貴方だったんですね。僕の足を止めたのは…」
あやかしである自分の意識を捉える程の、強い血の香り。
それは、海を渡る青年の歩みを止める程に、濃厚で。そして食欲をそそるモノだったのだ。
青年は、じっと佇んでいる男の頬に、指を這わせた。
「こんな貧しい国に、貴方のような美味しそうな獲物がいたとは驚きです。けれど」
予想外の驚きでもあります。
僕は、長い間旅を続けてきていて…いささか空腹なんです。
「ちょうどいい。貴方は、今宵の…僕の餌だ」
頬から口元に指を滑らせ。
柔らかく、ぽってりとした唇を、優しく愛撫する。
青年は、左腕を伸ばし。男を抱き寄せようとした。
と、その時。
「……お前、『神魔』だな。あぁ…この国の者じゃなくて…西洋神魔、か……」
という、低い声が男の唇を割ったのである。
刹那。
青年は、素早く身を離した。
波の音が、空気を震わせる。
青年は、微動だにしない男を睥睨した。
相手の男は、相変わらず茫洋とした目を開いているのみだ。
その姿は、ただ無防備という他はなく。まるで夢遊病者のような、頼りなさしか漂っていないのだが。
「…驚きましたね。貴方、神魔を知っているんですか」
油断なく身構えつつ、青年が呟く。
『神魔』。それは神でもあり、魔物でもあるモノ。
遠い太古の昔から、それらは人々の裡にあった。
だが、人間は彼等の強大な力を怖れ。忌み嫌い。
闇の世界へと、封じ込めてしまった。
神魔は、永い永い時を、暗い奈落の底のような場所で生きる事を強要された。
だが、人外の力を持つ神魔達は、やがて…人の掛けた『封印』を破り。
一人、また一人と…光溢れる人間の世に、ひっそりと姿を現し始めたのである。
彼等は、封じられていた過去の恨みを晴らすかのように、闇夜の中で無差別に人々に復讐の牙を剥く。甘い夢と、美しい擬態で弱い心に付けこみ、享楽を増幅させ。
そして、静かに…人間を内側から喰らい尽くしていくのである。
──金糸の髪を持つこの青年も、『神魔』だ。ただし、この小さな島国のモノではない。
彼は、西洋の国で生まれ。その美貌と才覚を持って、下賤な人間を支配下に置き。彼等を家畜同然に飼い慣らし…ヒエラルキーの頂点に君臨している、選ばれた魔物である。
勿論、青年が人によって、神魔であるという事を見破られた事など無い。
しかし。
この、気まぐれで訪れた…辺境のちっぽけな国の生き物に。本性を悟られてしまうとは……
青年は、ぼぉっとした様子のまま立ち尽くしている男を、じっと見つめた。
己の正体を一瞬で見極め、尚且つ驚きもせず。そして、何より濃厚な血の匂いを漂わせている人間……
「貴方は、『監視者』ですね?」
「……」
青年の問いかけに、男は何も答えない。が、青年は我が意を得たり、とばかりに頷いた。
「同族でありながら、神魔を狩り、闇の世界に封じ込めてしまう裏切者。それが貴方か。この貧しい島国で、よもや仇敵に遭えるとは…お目に掛かれて光栄ですよ」
皮肉たっぷりに言って、これ見よがしに恭しく一礼する。
『監視者』。闇に封じ込められた神魔が、その結界を破り。人間界に姿を現した時。
ひっそりと…魔の力を使い。神魔を、静かなる眠りに就かせる事を宿命とする、妖の生き物。当然、神魔とは犬猿の仲である。互いを見付けた時、彼等は死闘を繰り広げるのが常だ。もっとも、この金色の髪を持つ美青年は、口元に淡い笑みを滲ませたまま、冷然と男を見つめている。
けれども、青年の翡翠の瞳は少しも微笑んではいなかった。
形の良い唇の端が、微かに吊り上る。
「──監視者をこのまま見逃す事は出来ません。貴方の存在は、偉大なる神魔にとっては、居てはならぬ者。穢れた背徳者。……ちょうどいい、ここでこの僕が直々に始末してさしあげましょう」
にたり、と笑い。マントの裾口から、白い手を出す。
胸元に構えた五指。その爪先が、鋭い光を伴って、シュッ、と伸びる。
剃刀のような、禍々しい凶器。
が、男は何のリアクションも見せず。自分の胸元にゆっくりと迫ってくる爪を眺めていた。
「心配しなくていいですよ。一思いに殺してあげますから」
甘い囁き。それと同時に、青年の手が光の筋になる。
「──!!」
棒立ちしている男の両目が、大きく見開かれる。
男の腹は、青年の繰り出した長い爪によって、深々と抉られていたのだ。
真っ赤な鮮血が、びしゃぁっ!という音を立てて、腹部から飛び出し。青年の腕も濡らしていく。
青年は、肉を抉りつつ、舌舐めずりをした。
「永久の眠りに就きなさい、東洋の監視者」
男の腰を抱き。自分の胸元に引き寄せる。
その動きに重なって、爪が更に深く男の腹を穿つ。
「……ぁ…」
口元から鮮血を溢れさせ。男が、断末魔にも似た痙攣を起こす。
青年は、青白くなっていく男の顔を見つめつつ、喉奥で小さく笑い声を立てた。
──だが。
「!?」
端正な面に浮かんでいた余裕の微笑が、一瞬にして驚愕の色に縁どられる。
……ぐったりとうなだれていた筈の男が。静かに顔を上げていたのだ。
真っ直ぐに貫いてくる視線。漆黒だった筈の瞳が……蜂蜜色に輝いているではないか。
爛々と輝く両の目。それは……
「じ…邪眼?!」
宝石のように冴え光る瞳を見て、青年が上擦った声を上げる。
と。その呟きが終わらぬ内に…彼は、自分の首筋から伝わってくる鋭い痛みを感じた。
男が腕を回し。抱き付いている。
そして…男の顔は、青年のうなじに埋められている……!
「く…!?」
皮膚を破る牙の感触。肌を貫く、二本の牙。
流れ出す血液……
「あ…」
咄嗟に青年が腕を上げて、男を押し退けようとする。しかし、男は万力の強さで青年を抱き締めると。音を立てて、血を啜り始めた。
白い肌を伝って、血液が大量に溢れていく。男の腹から溢れている血と交じり合い…足元に赤い泉を作り出す。
男は、目を金色に光らせたまま、青年の命の源を貪欲に啜った。
飢えた野獣のような激しい吸血行為に、最強の神魔と謳われている青年が、成す術なく人形のように貪られて行く。
翡翠の瞳が、霞み始める。世界が白く歪んで行く。
逃れようとしても、男はびくともしない。こんな細身を…引き剥がす事すら出来ない。
──これが…『監視者』の力なのか…!?この男は、ヴァンパイアだったのか…!!
濁り出す脳裏で、ぼんやりと呻く。
いくら神魔と言えど、大量に血液を奪われれば、その先に待つのは“死”のみだ。
こんな辺境の島国で。名も知らぬ東洋の吸血鬼に、命を奪われるなど……
それは、誇り高き西洋の神魔である青年にとっては、最大の屈辱。
……けれども。血を吸われる妖しい感覚が、青年の燃えるような反抗心をゆっくりと組み伏せて行く。
「……ぅ…」
男と抱き合ったまま、青年が力を失い。やがて、膝を折ってしまう。
ずるっ、という鈍い音が響き、男の腹に刺さったままの爪が引き抜かれる。
青年は、砂浜に倒れ伏しながら。口元を赤く染めている男を静かに眺め。
暫しの後…意識を手放したのだった。
──波音が、鼓膜を打つ。
何かが…触れている。髪を優しく梳いている。
暖かな温もり。柔らかくて、いい匂いがする。
「……」
青年は、ゆっくりと瞼を開けた。
ぼやけた視界に写るのは……蜂蜜色の双眸。
「……貴方は…」
掠れた声を上げる。青年は、監視者である男の膝に頭を乗せていた。
男は柔らかな笑みを口元に湛えて、青年に膝枕をしている。
指先が、金糸を慈しむように撫でている。
青年は、反射的に身を起こそうとした。だけど、身体は重く痺れている。
……あぁ、そうか。僕は血を吸われて……
とろとろと、思い出す。自分は、この東洋の吸血鬼に血を奪われたのだ。
しかし、それならばとっくに死んでいる筈。なのに、何故己は……?
すると、男が小首を傾げた。
「無理すんな。お前、大量に血を無くしたんだからよ。まぁ、俺が飲んだんだけどな」
へらりと笑う。その姿は、さっきまでのふ抜けた様子とは、全く異なっている。
生気に溢れた金の瞳。表情豊かな顔立ち。
こうして見上げてみると、男は酷く愛らしい。
青年はらしくもなく面食らっていたが。ようように身体を持ち上げた。
まだ頭がふら付くが、どうにか男と向かい合う。
男は、にっこりと微笑んだ。
「……お前の血、すげぇ美味かった。御馳走さん」
「……」
「なに、怒ってる?けどさ、おあいこだろ。お前だって、俺の腹を抉ってくれたし?」
ひでぇなぁ、いきなりぶっ刺すんだもんな。そりゃあ、俺はお前の敵だけど。
「でも、もう俺達はいがみ合う必要はねぇもんな?」
「……え?」
「だって、俺お前の血ぃ飲んだもん。だからお前は、俺のしもべになったんだ」
くすくすと笑って言う。
青年は顔を強張らせた。
……しもべ?この自分が?美しく、最強の神魔と湛えられている己が、こんな…東洋の魔物の支配下に置かれるだと?
──が。青年は、長い睫毛を静かに伏せた。
自分は一度…この男に血を吸われて死んだのだ。でも、互いの血が交じり合い。自分は男の血を浴びて。男は、自分の血を…吸った。
それぞれの血が、身体に入り込み。命が混ざり合った。
そして、自分は監視者のモノになってしまったのだ。
身体が熱く疼いている。それが何よりの証だ。
これは抗おうとしても、どうする事もできない。自分達は、血の契りを交わしてしまったのだ……
「俺、まだ目覚めたばかりなんだよなぁ。俺が監視者として、眠りの儀式に入って…同胞達は、俺を狙うはぐれ神魔達から護る為、戦って死んだ。守護神魔と呼ばれてたみんなは、俺を監視者として覚醒させる為だけに、命を散らしたんだ。そんな事、してくれなくっていいのになぁ…」
こり、と顎を掻く。
そして男は、肩を竦めた。
「目が覚めて、すんげぇいい匂いがして。浜辺に出たら、お前に逢った。お前の芳しい血が、俺を引き寄せた。俺達は、相棒になる宿命だったのかな?」
「……僕は、血の香りに魅せられて、海を渡ったんです…」
「それ、俺の血?ははっ、やっぱ俺達はそーいう関係なんだ」
監視者と神魔。すげぇコンビだよな。
へらへらと笑う。そうしながら、男は青年にすぃっと顔を寄せた。
「なぁ、お前…名前、なんてーの?あ、俺は虎徹。鏑木虎徹って言うんだ」
子供のような無邪気な顔。
青年は、眩しそうに目を眇めて、口を小さく開いた。
「……バーナビー。バーナビー・ブルックスJr……」
「ふーん…バーナビーか。お前、白くて綺麗だよな。髪もふわふわで…西洋神魔って、美人なんだなぁ」
「……」
「じゃ、改めてよろしく、バニー!」
「は…?」
「いーじゃん。お前、白兎みたいだもん。キレイなキレイな、俺だけの…相棒」
指先が、青年…バーナビーの白い頬を、愛撫するかのように撫でる。
虎徹は、彼に身を摺り寄せた。
「……これから俺は、はぐれ神魔達を狩りに行く。それが俺の定めだから。お前は、俺にずぅっと…付き従え。俺を裏切る事は赦さない…」
俺達の血は、一つなんだ。お前は、俺だけの大切な…仲間だ。
バーナビーのうなじに顔を埋め。二つの牙の痕に、ぺろりと舌を這わせる。
途端、青年の全身に甘い痺れが走る。
抗いがたい快感。疼く欲望。そして…肉欲。
目の前の男を、心が激しく欲してしまう。
組み伏せて…その柔肌を暴いて。めちゃくちゃにしたいと。
同時に、庇護欲も溢れてくる。今まで感じた事の無い気持ち。
これが…血の契りを交わした相手に対する、思慕なのだろうか?
今まで、どんな者も、この自分の高貴なる精神を揺るがした事など無いというのに。
「バニー…」
好きだよ。俺のたった一人の…下僕。
愉悦を含んだ笑みが、耳朶を打つ。
バーナビーは、その囁きに操られるかのように、腕を上げると。
男のしなやかな背と、ほっそりとした腰を、強く抱き締めたのだった。
赤い満月が、夜空を妖しく彩る。
血の光を浴びて、魔物達が刹那の逢瀬に溺れて行く。
FIN
説明 | ||
兎虎、パラレルです。「人形の恋」の続編です。元ネタは、『吸血姫美夕』ですv | ||
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