魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第六十話 聖王教会 |
「これより騎士フェダインと長谷川二等陸士の模擬戦を始めます。両者とも準備は良いですか?」
「こちらはいつでも」
「…俺はただワッキーさんに着いて来ただけなのに」
「長谷川二等陸士?どうかしましたか?」
「…いえ、準備はOKです」
「それでは…」
審判役の人が手を上にあげ
「始め!!」
手を勢いよく振り下ろし、模擬戦が始まった。
何故こんな事になったのか…。
それには少し時間を遡らなければいけない。
〜〜回想シーン〜〜
「おい勇紀!今日は聖王教会に行くぞ!!」
「…いきなり過ぎて訳が分からないんですが?」
108隊舎で書類作業を手伝っていた俺。
最近は俺の力が必要な程の大きな事件ではないものの、頻繁に出動要請が出ていたらしい。
その後の報告書作成や事後処理に人手が足りないという事で事件の詳細を詳しく聞きながらデスクワークをサポートしていた。
それらの処理が昨日終わり、今日はとりあえず顔を出して隊舎で待機がてら他の局員さんの仕事でも手伝おうと思っていた矢先にワッキーさんが上の台詞を言い放った。
「実は俺の幼馴染みが聖王教会にいてな。ソイツ、結婚して3年目なんだがついに子供が生まれたらしいんだよ。俺としては祝ってやりたくてな」
「へえ…それはおめでたいですね。でも何で俺も一緒なんですか?」
「荷物持ち」
「……………………」
俺は無言でアルテミスを展開し始める。
「ちょちょちょ、ちょっと待て!!落ち着こう!な!?」
「俺はパシリじゃないんですが?」
「いや、折角だし何かプレゼント持っていってやりたいじゃねえか」
「それはそうですけど…」
「オメーの空間に収納する能力が荷物運びにはうってつけじゃん」
荷物運び……。
英雄王様が聞いたら宝具の雨で即串刺しにされるだろうな。
まあ、((王の財宝|ゲート・オブ・バビロン))をそんな使い方にしか使ってない俺にも問題有るんだけど。
「それに聖王教会について勉強、見学できる良い機会じゃねえか」
別にそこまで知りたいとは思ってないけど。
「そもそも聖王教会に行く許可出てるんですか?」
「おう!!ナカジマ三佐にはちゃんと言っておいたぜ。お前が着いて来る事も含めてな」
「本人の許可無しに勝手に決めないでくれません!?」
ゲンさんもゲンさんで許可出しちゃ駄目でしょう。
「良いじゃねーか。ホラ、行くぞ!!」
強引に俺を連れ出すワッキーさん。
周りの皆さんに視線で助けを求めるも
「「「「「「「「「「いってらしゃい」」」」」」」」」」
ただ、笑顔で俺達を見送るだけだった………。
「ここが聖王教会だ」
「はー、壮観ですねぇ」
初めて足を踏み入れたベルカ自治領。
その中でも一際目立つ建物、『聖王教会』。
その外観に俺は思わず視線が釘付けになっていた。
「勇紀。いつまでも見てないでさっさと中に行くぞ」
「あっ、はい」
先を歩くワッキーさんを小走りで追い掛け教会の門を開ける。
入った先の受付らしき場所に向かう。
「すみません。騎士ゴートに取り次いで貰えませんか?」
「あら?貴方は騎士ゴートのお知り合いの方でしたね?」
「ええ、アイツの幼馴染みです」
受付の人に顔を覚えられてるって事は結構な頻度で来てるなワッキーさん。
「騎士ゴートですね。少々お待ち下さい」
ディスプレイで何やら確認している。おそらくそのゴートって言う人の今日の予定でも調べてくれてるんだろう。
「……お待たせしました。騎士ゴートなら現在訓練場の方にいらっしゃいますね」
「そうですか」
「訓練場の場所はお分かりになりますか?」
「大丈夫です。ほれ勇紀、行くぞ」
「はいはい」
『勝手知ったる我が家』とでも言わんばかりにスタスタと歩くワッキーさんの後を歩きながら教会の壁や柱、天井などを見渡す。
スゲー豪勢だね。掃除とかもかなり大変そうだし。
「おいおい、そんなキョロキョロしてたら不審者に見えるぞ?」
「すみません。外観だけじゃなくて内装も凄いモンだなぁと」
「ああ、そりゃ分かる気がするわ」
『俺も初めて来た時はそんな感想抱いたもんだ』とワッキーさんは言う。
一旦建物から出て中庭を通り、少し歩くと別の建物が視界に入ってくる。
そこからは沢山の人の声が聞こえてくる。
騎士の人達が訓練しているのだろう。
案の定、建物の中では騎士と思われる人達が組手をしたり、剣で打ち合ったりしてる。
…で、肝心のゴートっていう人は何処にいるんだろうか?
すると一人の男性が素振りを止め、こちらにやってくる。
「よお、ワッキー」
「元気そうで何よりだなゴート」
ワッキーさんに挨拶するガタイのいい男性。
この人がゴートさんか。
……なるほど。魔力量はA〜A+ぐらいか。それに肉体はかなり鍛えられているっぽい。
魔導師ランクで推定するとAAはあると見た。
「念話で呼ばずとも普通に声掛けろよ」
「他の騎士達の訓練の邪魔になるだろ?俺なりの気遣いだよ」
「ぬかせ」
軽口をたたいた後、笑い合う二人。ホント仲が良さそうだ。
「それで?今日は何しに来たんだ?」
「お前んトコに子供が出来たって聞いて祝いの品持ってきたんだよ」
「???そう言う割には手ぶらじゃねえか?」
「問題無えよ。勇紀」
「わかってますよ」
宝物庫から取り出すのはベビーカーや哺乳瓶、大量のオムツ等。
突然空間から出てきたのを見てゴートさんはギョッとしている。
いや、ゴートさんだけでなく訓練を中断してコッチを見ていた他の騎士の人達も同様の反応だ。
「なな、何だ!?」
「((勇紀|コイツ))のレアスキルだよ。空間に物を出し入れできる能力だとさ」
「レ、レアスキル!?コレがか!?」
そう言ってる間に出産祝いの品を全て出し終えた。
「ほら!受け取れゴート」
「お…おう。サンキューな」
「…あの〜」
そんな二人に宝物庫から祝いの品を出し終えた俺は声を掛ける。
「ワッキーさんに言われたから出したんですけど…ここで出したら他の人の訓練の邪魔になるんじゃあ…」
「「………あ」」
気付かなかったんですね二人共。出し終えてから気付いた俺も俺だけどさ。
「そ、そうだな!訓練の邪魔になっちゃいけねえ。勇紀、悪いがもう一度収納してくれるか」
「了解です」
宝物庫を解錠し、祝いの品物が空間にズブズブと吸い込まれていく。
瞬く間に片付けが終わる。
「まあ、オメーには後で渡す事にするわ」
「そうしてくれ。で、そっちの彼はお前の隊の同僚か?」
おっと、自己紹介がまだだったな。
「自己紹介が遅れました。自分は陸士108部隊の長谷川勇紀、階級は二等陸士です」
敬礼して挨拶をする。
「自己紹介どうも。俺は聖王教会騎士団所属の『ゴート・ドースティン』だ。((ワッキー|コイツ))の幼馴染みでもある。よろしくな」
お互いに自己紹介を終え、ゴートさんが周りに『俺達の事は気にせず訓練を続けてくれ』というと他の人達も再び訓練に戻る。
「しかし随分と若いな」
「まあな。だけど隊員としての実力は本物だぜ」
「それは分かる。見た目からは信じられないぐらいの魔力を感じるし、その才能に驕らない様、鍛えているのも窺える」
「そう褒めるなよ」
何でワッキーさんが答えるんですか。
「ウチにも若くて実力がある奴は結構いるが今の長谷川陸士程じゃねえな。その中で将来的に期待できる奴も数えるぐらいだし」
「ほう?有望な奴はいるのか?」
「まだヒヨっ子だがな。鍛えれば確実に伸びる」
二人して雑談タイムに入る。
俺はどうしたら良いんだ?
「いえ、私達はもう…」
「そうですね。これから私用が…」
「そう言わずに見てくれよ。僕、かなり強くなってきてるんだ。君達を護るためにね」
ん?
何だか訓練場の入り口の方から声が聞こえるぞ。
そちらに視線をやると一人の男の人…俺よりも年上の人が二人の女の子の背中を押して強引に入ってくる。
二人の女の子はいかにも嫌がっている様な雰囲気なんだが。そして二人の女の子だが…
「恥ずかしいのかい?カリムもシャッハも照れ屋だねえ」
「「別に恥ずかしがってませんし、照れてません!!」」
初任務で助けた時以来、一度も会う事の無かったカリムとシャッハだった。
「シャッハ。折角だから僕と模擬戦でもしないかい?」
「結構です(というより正直、この人弱いから模擬戦しても稽古にならないんですよね)」
うーん…。
あの男の人、銀髪オッドアイではないものの銀髪トリオに近いものを感じるな。
「そんなつれない事言わずに……ん?何か用かな?」
あ、男の人がコッチに気付いた。
それにつられてカリムとシャッハもコッチを向くが
「「っ!!!?」」
何か驚いてるなぁ。
そんな二人の側から離れて男の人が近付いてくる。
「君は見ない顔だな。その制服は…管理局の人間かい?」
「あっ、はい。そうです」
「何で管理局の人間がこんな所にいるのかな?」
「先輩の付き添いで来ました。あそこで騎士の方と話してるのがその先輩です」
未だに談笑してる二人を指差して答える。
「……ああ、騎士ゴートと話している彼か。確かに時々見かけるな」
どうやらこの人も見た事がある様だ。
「「あ、あの!!」」
突然声を掛けられたので振り向くとカリムとシャッハの二人が俺の側に来ていた。
「「お久しぶりです。長谷川二等陸士!!(こ、こんな所で彼と再会出来るなんて…)//」」
「お久しぶり。カリムさんとシャッハさんだったよね?」
「はい!(お、覚えててくれた。私の事…)//」
「あの時はありがとうございました(か、感激です)//」
「ここにいるという事は二人は聖王教会の関係者?」
「そうです。私は教会騎士団の騎士です」
「私は修道女で、魔導師としても登録しています」
「そうだったんだ。あの時は自己紹介で名前しか聞かなかったからね」
「そうでしたね。申し訳ありませんでした」
「謝る必要は無いよ。しかしよく俺が二等陸士だって分かったね?」
あの時は三等陸士だったし、この二人に会うのは今日が二度目だというのに。
「は、はい。長谷川二士の活躍は聖王教会にまで聞き及んでいますし…//」
「私にとっては長谷川二士の様な魔導師が目標ですから//」
聖王教会にまで?地上本部とは仲良くないけど、そういう情報は本局、地上関係無く入るって事かな?
それにシャッハは俺を目標って言ってくれるけど、そこまで立派な人物じゃないぞ俺は。
「…あー、君達は知り合いか?」
ここで男の人が会話に割り込んでくる。
「そうですよ騎士フェダイン」
「私と騎士カリムの恩人ですから」
「…成る程、そういやさっきも『長谷川』とか言ってたな。君が…(コイツが普段カリムとシャッハの会話に出て来る奴か)」
「???」
何か俺の事睨んでるよこの人。
「長谷川二等陸士だったね?僕と模擬戦をしてもらおうか(せっかくだ。二人の前で恥を掻かせてやる)」
「はい?」
いきなり何言ってんのこの人?
「シャッハが目標にする程なんだ。腕に覚えはあるんだろ?」
「どうなんでしょう?」
首を傾げて聞き返してみる。
「ふん!僕としてはその実力とやらを見せて貰いたいんだ。それとも逃げるのかい?」
別に逃げてもいいんだけどね。模擬戦するために来た訳じゃないし。
「良いじゃねえか勇紀。相手してやっても」
「俺も見てみたいな。ワッキーの後輩の実力を」
いつの間にやらゴートさんとの雑談を止めていたワッキーさん。
二人揃ってコッチの会話に入ってくる。
「決まりだ!さあ、模擬戦を行うぞ(ふふふ…これで僕の実力を見せつけたらカリムとシャッハはもう僕の虜になるだろうな)」
男の人はズンズンと訓練場の真ん中に歩いて行く。
「ハア〜…。面倒臭い事になったなぁ」
「ご愁傷様だな」
「誰のせいですか、誰の」
ジト目で言いだしっぺのワッキーさんを見る。でもワッキーさんは『わはははは』と笑うだけ。
「…にしてもそっちの嬢ちゃん達二人が聖王教会の人間だったとはなあ。普段俺が来る時は一度も会った事無かったから全然知らなかったぜ」
カリムとシャッハの方を見てワッキーさんは口にする。
「「………誰ですか?」」
その言葉に聞き返すカリムとシャッハの容赦ない一言。
覚えられてないんだ。あの時は事情聴取を受け持ってた筈なのに。
「……………………」(ズーン)
あーあ、落ち込んじゃった。
「何してるんだ!!早く来たまえ(鈍くさい奴だな)」
向こうはちょっと怒鳴り気味だし。
…はいはい行くよ。今行きますよ。
俺は訓練場の真ん中で待っている男の人の方へ歩いて行くのだった………。
〜〜回想シーン終了〜〜
試合開始の合図とともに
「はああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」
いきなり掛け声と共に正面から突っ込んできた。
走りながら剣を鞘から抜き出し、振るう男の人。
「……………………」
スッ
俺は身体を軽くずらして避ける。
男の人の勢いよく振られた剣はむなしく空を切るだけ。
「ふんっ!!」
立ち止まった後、俺の方を向いて再び剣を振るうが
ヒョイッ
今度は軽くバックステップで避けて距離を取る。
その後も向こうは攻撃、俺は回避に徹していたのだが
「(俺、ナメられてんのかな?それともこれがこの人の実力か?)」
おそらく後者だろうが。
ハッキリ言ってこの人弱すぎるわ。
ただガムシャラに剣を振るだけで型も何もあったもんじゃない。
無駄に大振り過ぎて簡単に避けれるし、これで本当に騎士なのか?
「ふん!どうやら僕の攻撃の前に避けるだけで精一杯みたいだね《さっさとやられたまえよ。君みたいな凡人が頑張っても彼女達が振り向く訳無いだろう?》」
何か物凄く俺を追い込んでる様な台詞を吐くと共に、念話が飛んできた。
「そうでもないですよ《何の事です?》」
「強がりを…《カリムとシャッハの事だ。君みたいな凡人があの二人に好かれてる訳ないだろう?なのに先程彼女達と会話が出来たからって調子に乗って…彼女達が迷惑がっているのに気付かなかったのかい》」
いや、好かれるも何もあの時の事件のお礼とか言われただけだし。
それをどうやったらカリムとシャッハが迷惑がっている様に見えたのだろうか?
「《彼女達は僕に惚れている…いや、彼女達だけじゃない。新米の騎士である八神はやてを始め、教会の女性は皆僕に惚れてるんだ。軽々しく近付かないでくれ》」
はやてぇ…。
お前もカウントされてるぞ。不憫だなぁ…。
「《君みたいな害虫の様な存在は((聖王教会|ここ))に相応しくない。さっさと僕にやられて帰りたまえ》」
…駄目だ。完全に銀髪トリオと同じ人種だコイツ。
コイツが念話を飛ばしながらも攻撃は続くが相変わらずガムシャラな振り回し。
よくこんなんで自分の実力に自信持てるよな。不思議で仕方ない。
「(………もういいや、とっとと終わらせよう)」
大きく飛んで距離を取る。
そして指先に((天火布武|テンマオウ))で生み出した炎から小さな火の玉を作る。
「蛍火」
指先から放たれる一つの小さな炎。
本来なら無数に飛ばすのだがこんな奴には一つで充分。
「ははははは。何だい?それが君の魔法かい?」
蛍火を見て嘲笑する奴。
あまりにも小さく威力も無さそうに見えるのか避ける素振りも見せない。
ピトッ
俺の放った蛍火がアイツの鎧に触れた瞬間、
「火柱」
ゴウッッ!!!!
巨大な火柱が立ち、アイツを飲み込む。
「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」
ワッキーさんやゴートさん、カリムにシャッハ。それと模擬戦を行うため、訓練場の端に移動し、ギャラリーとして見ていた他の騎士の人達も唖然として火柱を見ている。
エースが黒ひげとの戦いで見せた、蛍火から火達磨の発生コンボ。
俺は火達磨以外の技を発生させる事が出来る様になった。これも努力の賜物だ。
ゴオオオオォォォォォッッッッッッ!!!!!!!!!
しばらくは炎の柱がアイツを包んだまま勢いよく燃え上がる。
やがて火柱が消えた時、相手の意識は無くそのまま前に身体が傾いていき、『ドサッ』っと音を立てて倒れてしまった。起き上がる気配は無い。
そんな相手を見て
「今のはメラゾーマではない……………メラだ」
バーン様の台詞を借りて口にする。
このセリフを言いたいがために努力したと言ってもいいかも。
うむ、実に気持ちが良い。テンションもちょい上がってドヤ顔をする俺。
もっとも相手は気絶中で俺の言葉なんて届いてはいないし、俺のドヤ顔なんて見れないんだけど。
「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」
そんな俺を『どういう意味だ?』みたいな目で見る皆さん。
ワッキーさんに関しては『コイツ、こんな一面があったのか』とでも言いたそうな顔をしている。
「……………………////」
うん。バーン様風メラを試す事が出来てすっかり舞い上がり、ギャラリーの事忘れてたね。
沢山の視線を受けて恥ずかしくなってきた。
「あ、あの!!模擬戦の結果は俺の勝ちで良いんですよね!?」
誤魔化す様に早口で審判役の人に尋ねる。
「…ハッ!しょ、勝者!長谷川二等陸士!!」
その宣言をしっかりと聞き終え、聖王教会での模擬戦は終了した………。
「さっきの炎、凄かったですね!!」
「プロセスを踏んでませんでしたけど、長谷川二士は炎熱変換の資質を持っているのですか?」
「いや、さっきのは魔力を使わない炎で俺のレアスキルなんだ」
訓練場を後にして、中庭でカリム、シャッハ、俺の三人は談笑している。
あれ以上あの場に居ても仕方ないし、模擬戦申し込まれると面倒だし。
特に目の前のシャッハには申し込まれるかと思ったんだけど、そんな事は無かった。
「レアスキル…そう言えば長谷川二士はレアスキルを複数所持しているのでしたね」
シャッハの言葉に首を縦に振る。
「わ、私も持ってるんですよ。レアスキル」
「へぇ…カリムさんも?」
まあ知ってるけどね。
「ええ。もっともよく当たる占い程度の予知能力ですが」
「未来予知か…」
俺もあるなぁ。((理論回路|ロジカルダッシュ))と((時空航行|ラグナロク))の二つが。
もっとも((理論回路|ロジカルダッシュ))は使った事無いし((時空航行|ラグナロク))も予知としては使わず、過去に遡る際に一度使ったぐらいか。
「ところでさっき模擬戦で戦ったあの人、一体何なの?二人にも結構絡んでたみたいだけど」
俺が尋ねると二人の表情が一変し、不機嫌そうなものに変わる。
「あの人は騎士フェダインと言って、聖王教会に所属している名家の中でもかなり古参の家系の者なんです。代々が聖王教会の騎士として仕えてますし」
「彼の祖父は教会理事、父親も騎士団の騎士でそれなりの実力者なのですが…」
『彼自身は大した事無いんです』と溜め息を吐き、嫌々ながらも説明してくれる。
「…つまり家系とお爺さん、お父さんが凄い人であって、あの人自体は大した事無いと?」
「「はい」」
『自分の』ではなく『家族』の地位や家柄を我が物顔で振り回すか。
「何だか面倒臭いのと模擬戦しちゃったなぁ。今度から聖王教会来れなさそう」
というか地上本部や108部隊にまで文句とか言ってきそうだ。
「大丈夫です!!騎士フェダインの祖父である理事や父親の騎士は彼と違って真面目で立派な方ですから!!」
「私の家系であるグラシア家も古参の家系の一つです!!彼が家系の権威を行使しようものなら私が全力で止めてみせます!!」
「「ですから長谷川二士は心配しないで下さい!!(長谷川二士が今後((聖王教会|ここ))に来ない様な事態なんて認める訳にはいきません!!)」」
「そ、そうですか…」
二人の物凄い剣幕に押され、俺は一歩後ずさってしまった。
「全く…どうしてあのような輩が騎士の家系に産まれたのでしょうか?」
「しかも私達や女性の騎士、シスターを見る目が明らかに不快なものですから」
あ、やっぱり?苦労してるんだな。でもはやてと比べるとまだマシか。この二人はまだ銀髪トリオに絡まれてないみたいだし。
それから俺は対戦相手だった騎士についての文句や愚痴を二人からしばらく聞かされる羽目になるのだった………。
「ここが一般の方も観覧可能な聖王様の遺品を見る事が出来る展示室です」
二人に頼み聖王教会の中を案内して貰っていた俺は、現在展示室の前にいる。
「聖王か…少しだけ自分で調べたんだけど戦乱真っ只中の古代ベルカ時代に存在していた王の一人で合ってるよね?」
「そうです。ベルカの戦乱を終わらせた人物…それが『最後のゆりかごの聖王』と呼ばれている『オリヴィエ聖王女殿下』なんです」
「私達聖王教会は聖王様を主神として崇め、奉る一団という事ですね」
聖王主神の宗教組織か。
「まあ聖王様についてはまた後程聞くとして、とりあえずは展示物を見る方を優先したいかな」
「そうですね。ではどうぞ」
シャッハがドアノブを回し、扉を開けてくれたので俺は室内に足を踏み入れる。
部屋の中は美術館の様にガラスケースに収められた展示物が沢山並んでいる。
勿論、盗難防止のためなのだろう。ガラスケースには魔法による強化・保護がかけられている。
「どうでしょうか?聖王様の聖遺物は?」
「よくこれだけの遺品を集める事が出来たなぁと素直に感心してるよ。破損してるのもほとんど無いみたいだし」
皿や壺みたいな物が遺品の大半を占めている。
極少数の遺品にはオリヴィエが自己鍛錬の際に用いたと言われている剣とか甲冑がある。
「(…本物か?)」
真っ先に思い浮かんだのがその一言だ。教会の人間が側に二人いるから決して口には出さんけどね。
「実際にはまだこれ以上の数の聖遺物があるんですよ。もっともそれらはかなりの貴重品でして…教会の保管庫で厳重に管理されていますが」
「へぇ…興味はあるな」
「すみません。保管庫に入る事は私達教会の人間でも数人の限られた者しか許されておりませんので」
「あはは、いいよ、言ってみただけだから」
一般開放の聖遺物を見ながらカリムと会話する。
「で、ですが長谷川二士が望まれるなら見せてもいいですよ?//」
「え?今無理って…」
「も、勿論今すぐじゃありません!!将来、私が教会の重役にでもなればそういう事も可能になりますから、それまで我慢して頂ければ…」
「そこまでして貰わなくてもいいよ」
「いえ!!絶対に長谷川二士に見せて差し上げます!!」
気合を入れ直すカリム。もう完全に私情入ってるよね?これ…
「上を目指すのは結構ですが動機が不純ですよ騎士カリム!」
ほら、シャッハもややお怒り気味だ。
「《おーい勇紀。今何処にいるんだ?》」
む?ワッキーさんからの広域念話だ。
ワッキーさんはあれからもゴートさんと雑談し始めたので放っておいた訳なんだが、念話を飛ばしてきたって事はもう雑談を終えたって事かな?
「《今は教会内部の展示室ですね。そっちは雑談終わったんですか?》」
「《おう。あまり長居するのもアレだし、さっき戻した出産祝い渡して隊舎に戻ろうと思うんだが?》」
「《了解です。今から教会の入り口に向かいますんでそこで合流しましょう》」
「《おう》」
ワッキーさんと念話を終えて二人にその旨を伝える。
教会の入り口に戻ってくるとワッキーさんとゴートさんの姿があった。念話で会話してからそれ程時間は経ってない。まあちょっと急いできたからな。待たせるのも悪いし。
「おう来たか」
「お待たせしました」
「全然。念話で喋ってから5分ちょいだ。待ったっていう程じゃねえよ。それよりも…」
「分かってますよ」
宝物庫から再び出産祝いの品を取り出し、ゴートさんに手渡す。
「これで全部です」
「…って事だ。ゴート、たまにはお前も家に遊びに来いや」
「そうだな。近い内に行くとしよう。またなワッキー、それに長谷川二士」
二人は軽く挨拶して別れを済ませる。
「「長谷川二士。是非また遊びに来て下さい」」
「そうだね…時間があればまた来るよ。それと俺の事は名前で呼んでくれていいから」
「では私もカリムでいいですよ」
「私もシャッハで。『さん』付けはしなくて結構です」
「了解。それではカリム、シャッハ、また今度」
「「はい!いつでもお待ちしてます勇紀さん!!(な、名前で呼べるようになっちゃった)//」」
二人に軽く手を振って俺とワッキーさんは歩きだし、近くの駐車場に停めてあったワッキーさんの車に乗って隊舎に戻る。ワッキーさんが運転する中、視線はちゃんと前を向けたまま俺に尋ねてきた。
「で、オメーさんはあの嬢ちゃん二人とどうなんだ?」
「どうって…何がです?」
「何か進展したのか?」
「ああ、ワッキーさんも聞いてたでしょ?名前で呼んで貰う様に言ったし、『さん』付けしなくなりましたよ」
「……いや、俺が聞きたいのは別の事だったんだが……やっぱいいわ。お前がそういうヤツだってのは分かり切ってた事だし今更か」
「???」
何やら一人で納得した様子のワッキーさんを見て俺はただ首を傾げる事しか出来なかった………。
説明 | ||
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。 | ||
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コメント | ||
まさか聖王教会にまでクズが紛れ込んでいようとはwww・・・ダメだ自分も同じ立場になったら同じことしそうで怖い(ーー;)(海平?) 今回は カリムさん&シャッハさんの メインですね! おもしろかったです! /&/ 素早く話を更新していただきありがとう, カルピスウォーターさん!(deltago) ↓年齢不明ですか…… リリカルの女性は大人になると年取らなくなるからな…… (妖精の尻尾) カリムやシャッハには年齢不明だった気がする。作者さんの設定次第だろうか。(匿名希望) そういえばカリムとシャッハの年齢はいくつ何だろう? クロノと同じくらいなのかな?(妖精の尻尾) 別に転生者でなくてもファンタジー作品とかにいるよね、こういう噛ませキャラ。もっともこの実力では噛ませどころか新技の喰らい役程度かも。(chocolate) この手の輩は地球にしかいないのかと思ってたらミッドにもいたか。にしてももう少し本人に能力がないと潰し合いすら期待できんな。銀髪トリオも魔力「だけ」はいっちょまえなんだし。(プロフェッサー.Y) 銀髪+α(海鳴でバニングスに取り入ろうとしてたのと今回の)はスカさんのところに持っていけばいいと思う(頭翅(トーマ)) マジで、銀髪が噛ませということが笑えるw(蒼崎夜深) ↓↓↓↓↓↓もちろんフラグ(ohatiyo) 噛ませ犬臭がヤバイなこいつw(黒咲白亜) もしかして銀髪思考の奴騎士の他にもでてくんの?(匿名希望) 仮にも騎士が人に害虫とか言っては駄目だろw(妖精の尻尾) どんどん強くなってあのトリオの処分は炎帝で消し炭ですね。(Fols) はは、勘違い乙 そして勇紀、火葬でよかったと思うよ(はらっぱ) ↓どっちの意味でだ?『魔王降臨』or『フラグ建築』(kaito) 早くティアナやスバルが堕ちる所がみたいな(ohatiyo) そちらに視線をやると一人の男の人…俺よりも年上の人が二人の女の子の背中を押して強引に入ってくる。←体触られたと言えば追放できるんじゃね?w(匿名希望) 銀髪トリオ+αwwww、火葬乙♪wwwww(アサシン) よかった・・・・・・・エイプリルネタの所為でこの作品は放置されるのかと思ってしまった(匿名希望) 聖王教会にもおんなじのがいたのかwww(カケェ) イレギュラー・・・? まあ、銀髪たちより転生者より弱そうなのは確か・・(FDP) こいつ転生者じゃないよな?(カルピスソーダ) 全部読むました!!とても面白いですこれからも頑張ってください(ライト) 出来れば大魔王バーンの台詞は銀髪トリオに使って欲しいですね。そして今回の火拳コンボは亮太が見たら大興奮でしょう。カリムとシャッハがはやても同じ人が好きと気付いた時が楽しみです。(俊) そのセリフは通じない(頭翅(トーマ)) |
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