とある魔術の禁書目録 二次創作 第二章 part.2 |
第二章 2
ファミレスを出てしばらく歩くと目的地であるイベント会場に到着した。道中で、朱美からアリサについての情報を散々聞かされたのであまり時間の経過を感じなかったが辺りは既に暗くなりはじめていた。
「さすがに誰もいないわね」
「まぁ、時間が時間だし当たり前だろ」
少し残念そうな朱美に隼人が応える。
日は沈んで星が輝きだしているのだから人が少ないのは仕方ないことだった。目的地に着き一息入れるために適当なところに腰掛けて、朱美がまたアリサについて語り始める。
が、隼人と空は話半分程度にしか聞いていなかった。大体わかったのは、アリサが数年前に起きたシャトルの事故の生存者であること(なんでも乗員、乗客全員が無事で当時は奇跡の生還とか話題になったらしい)それがきっかけで奇跡の歌姫として取り上げられていること、後は学園都市中で大人気だということぐらいだった。
そんな話をしているうちに、時間は過ぎていき一息入れるだけのつもりが長居してしまっていた。
「でね、アリサは…」
「盛り上がってるところ悪いけどそろそろ帰ろうか」
興奮しているアリサの言葉を遮って隼人が提案する。空は余程つまらなかったのか朱美の隣で寝てしまっている。
「そうね、もう遅いし」
時計を見てから朱美が言う。時刻は午後11時を過ぎていた。
「じゃあ、空を起こして帰ろう…」
口にしてから急に険しい顔つきになる隼人、その目線の先には1人の青年の姿があった。
別に通行人がいて聞かれたらまずい話をしていたわけではないし、相手がなにかしてきたわけでもない。
それでもなお、隼人はその人物を警戒していた。
「朱美、空を起こしてくれ。そしたらいつでも動けるように準備を」
「うん、わかった」
朱美は隼人がなぜ焦っているのかわからず、とりあえず空を起こしにかかる。
そう、隼人は焦っていた。普段ならいきなり人が現れても驚きこそしても焦ったりはしない。テレポーターなら何人も見てきた。しかし、あの男は瞬間移動をしてきたわけではなくただ歩いて来ただけである。此方に一度も視線を向けず、この人気のない中3人で集まり、こんな時間まで移動していない自分たちに。
それだけではない、男は他の物にもまったく目もくれず、ただ歩いている。まるでロボットが役目を終えて帰還するかのように。
「すいません。ちょっといいですか?」
隼人は、唐突に男に声をかけた。
男は、隼人の方に顔を向ける。大きなサングラスをしていて顔はほとんど見えないが恐らく20代であると思われる。しかし、肌に生気はなく不気味な印象を受ける。さらに、振り向きはしたが隼人のことを見ているというより物音がした方を見ただけのような反応の乏しさである。
(やっぱり、こいつは)
隼人は頭の中で呟く。
(俺達を無視したとかじゃなくて、すべての物に対して興味を持ってない感じだ。ロボットとか人形に近いな、心が無いような不気味な感じがする。それに、)
隼人がこの人物を警戒した理由、この男には気配が無かった。まるで最初からそこにいたかのように現れて、あたかも最初からそこにいなかったかのように姿を消そうとした。視界に写らなければ隼人も気が付かなかっただろう。
だからこそ不気味だった。人間相手なら急に現れても気配がわかる。隼人にはその自信があった。それでも気付けなかった。さらにはこの対応、本当にロボットか人形を相手にしてるような感覚があった。
「ここで何してたんですか?」
無言のままだと不味いと思い、質問をしてみる。しかし、相手は答えない。まるで最初から話す機能が欠落しているかのように…
隼人は、さらに質問をする。
「もしかして明日のイベントの関係者さんですか?それともアリサのファンとか?」
相手は沈黙のままだ、
「あんた、何者だ?」
今度は少し語気を強めてみるが、無反応だ。
「わかった。質問を変えよう。あんたは何だ?人なのか?ここで何してた?」
男は無言のままである。朱美と空は少し離れたところで様子を見守っている。あまりにも男の反応が乏しいので隼人は少しカマをかけてみた。
「さっきあんたその辺で何かしてたよな、あれは何だ?」
と、そこまで言い終わって初めて男が反応した。
身を屈め、左足を一歩踏み込み隼人の顔面目掛けて拳を放つ。
「!!」
間一髪で拳を避け距離を開く隼人。
「危ねぇ〜」
「隼人!」
「大丈夫か?」
2人が慌てて駆け寄る。
「なんとか無事だよ。でも、油断するなよ」
2人に声をかけ男に向かって構える。深夜のバトルが静かに始まった。
戦いを始めてすぐ隼人はまた違和感を感じていた。
(なんなんだよこいつは!)
敵の拳をかわしながら思考を巡らせる。
(なんでこいつからは殺気も何も感じないんだ!?)
本来、人間が何か行動を起こすときには何らかの力の流れが生まれたりするものだ。しかし、この男にはそれが無い。あらかじめプログラミングされているかのような機械的な動きで的確に急所を狙って攻撃をしてくるのだ。
(マジでロボットか何かなのか?それに、)
相手の攻撃を避けつつ懐に入りボディブローを叩き込む。常人ならその場に倒れこんで悶えるほどの一撃だ。しかし、顔をしかめて距離を取ったのは隼人の方だった。
(どんだけ硬いんだよ!まるで岩を殴ってるみたいだ)
明らかに人間としての強度を逸脱している。さらには、朱美と空の攻撃を受けても眉一つ動かさない。
「こんのぉー!」
朱美が相手に炎を直撃させる。が、黒煙の中平然と立っている。
「じゃあ、これならどうだ!」
空が風で作り出した弾丸を放つ。しかし、これもノーダメージのようだ。
「マジかよ…」
「落胆してる暇があるなら攻撃なさい!」
会場を壊さないように力をセーブしてるとはいえやはりおかしい。人間である以上熱さや痛みには少なからず反応するはずなのだ。しかし、男はまったく反応しない。そして、隼人はさらに異常な点に気付いた。
「おいおい、なんだよそれ」
見ると男の顔や破けた服の間から見える肌は黒く汚れてはいるが火傷の傷が無かったのである。炎をその身に浴びながらにもかかわらずだ。
「本当に何者なんだよあんたは…」
不気味な相手である。恐らく勝ち目は薄いと感じた隼人は逃走の方法を考え始める。
(仕方ないよな…)
考えをまとめて朱美に作戦を伝える。
「…わかった」
不満そうだが文句は言わなかった。
「じゃあ、作戦開始だ」
言うと同時に隼人が敵の眼前に飛び出す。
朱美は空と共に準備に入る。2人の準備が整うまで隼人1人でこの男を相手しなくてはならない。
「それじゃあ、行くぜ」
呟き、能力を発動する。
『限界突破』(オーバーギア)自身の感覚器官と身体能力を極限まで引き出す能力。現在レベル3ながらクロスレンジの距離まで近付いてからは今まで負けたことがない。
男の拳が迫り、隼人の顔面を捉えたと思った刹那、
「遅ぇな。止まって見えるぞ」
紙一重でかわし、同時に下顎、喉元、鳩尾に一発ずつ拳を打ち込んだ。
能力を発動している時の隼人には冗談や比喩表現ではなく、実際に人の動きが止まっているかのように見える。まるで写真のコマ送りを見ているかのように静止画を一枚ずつ目の前に出されたかのように写るのだ。そして、隼人はそのコマ送りの世界の中で唯一普段と同じように動けるのだ。しかし、この能力にもデメリットやリスクが存在する。
「朱美!空!まだか!?」
2人に呼び掛ける隼人。
「もう少しだけ待って!」
「早めに頼むぞ…」
デメリットの一つ目、体にかなりの負担が掛かるため消耗が激しいのである。
そして、
「いってぇな〜」
別に相手の攻撃を受けたわけでもないのに血を流す隼人。
これがデメリットの二つ目であり、リスクにもなっていること、身体能力が上がったとはいえ強度自体は変わらない。だから硬いものを攻撃すれば痛みもあるし、攻撃を受ければダメージを負うのだ。
「これ以上はヤバいかもな」
弱音を吐きながらも動きは止めない、2人の準備が整うまで倒れるわけにはいかないのだ。
「俺が考えた作戦だし、言い出しっぺが一番最初にリタイアとかカッコ悪いもんな!」
言葉と共に蹴りを放つ。しかし、腕でしっかりガードされてしまいまた距離を開ける。と、後ろから声が掛かる。
「隼人、お待たせ!準備出来たよ!」
「了解!」
準備は整った。後は、
「朱美!しっかり合わせろよ!」
「任せなさい!」
お互いに確認して、隼人が踏み込む、
「全力だ…喰らいやがれ!」
振りかぶった拳に全体重を乗せて鳩尾目掛けて打ち込む。体重を乗せ、体のバネを最大限に活かしたボディへのストレート。これには流石の相手も踏ん張りきれず10mほど吹き飛び背中から倒れる。
そして、間髪入れずにその身体を炎が包み込む。
「燃えろぉぉぉ!」
朱美が最大火力で男の倒れこんだ位置に炎を発現させたのである。
「2人とも、行くぞ!早く来い!」
空が叫ぶ。よく見ると彼の足元で砂が渦も巻いている。
2人は警戒しながら空へと駆け寄る。そして、
「じゃあ、行くぞ!」
反らしの能力によって巻き上がった風が3人を運んで行く。
3人の姿が見えなくなる頃、男は静かに立ち上がりその場を去った…
説明 | ||
頑張ってpart.2まで投稿しました。 正直もっと映画に出てきたシーンを出したかったな〜とか思いました(-_-;) まだまだ未熟者だと実感してます(;_;) もっと頑張ろう(^^; さらに今回は初めてのバトルシーンがあります。 …全然臨場感がないような気もしますが(--;) とりあえずお楽しみ頂ければ幸いですm(__)m |
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