霊夢が鈴奈庵へ行く話し。
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「小鈴ちゃん、居るかしら?」

人間の里の一角にある貸本屋、鈴奈庵。

取り扱う本は特殊なものを除いて殆どが外の世界から流れ込んだ外来本である。里の人々には新しい刺激となり、外の世界の本は非常に人気なのである。

「はーい。いらっしゃいませ〜。」

カウンターの奥手の一角に無造作に本が積まれた一角があった。その山の中からぴょこんと顔を出したのが、鈴奈庵受付の本居小鈴である。

「あ、霊夢さんですか!!どうなさいましたか?」

「随分散らかってるじゃないの。」

「すみません。最近大量に借りていく方も増えたので偶然いっぱい返却する人たちが一気に来るとこの有様で・・・・。」

返事をしつつ小鈴は慣れた手つきで返却本の中身を確認していくとその隣にあるジャンル別のかごに入れていった。柿色のショートヘアーは白の三角巾に覆われトレードマークの鈴の髪飾りは動くたびに音だけが存在を主張していた。クリーム色のエプロンは少々大きいようで肩ひもがずれ落ちるたびにかけ直していた。胸元に記されている彼女の名前は店員の名札と言う意味合いよりはいかに自分のお気に入りのエプロンかを表しているみたいだった。

「ところで、本日は・・・・?」

私はせかせかと仕事をしている小鈴に声をかけるタイミングを失っていた。そんな様子に声をかけたのは小鈴だった。

「え?いや、たいした用ではないのよ。ただ、最近の異変の後で特に変わり無いかなと思って里に買い出しに来たついでに寄ったのよ。」

「そうでしたか!!特に何もありませんよ。あのお客さんに頂いた『分福茶釜』も早速読み聞かせしましたけど結構好評だったんですよ!!」

元気いっぱいに答えた小鈴は立ち上がり三角巾を頭から外すとエプロンを払い、カウンターに置いてあった『分福茶釜』という本を差し出してきた。

「ちょっとお茶を持ってきますね!!」

そう言ってカウンターを駆け出した小鈴に私は断りを入れようと思ったのだが差し出された本を受け取る動作に気をとられ、小鈴の気迫に押されで言えなかった。

 

 

 

「そういえば、数刻前に魔理沙さんがいらっしゃいましたよ。」

「え、魔理沙が?だ、大丈夫だったの??」

とっさと言うか、反射的に小鈴に心配の言葉をかけた。小鈴は多少驚いたようではあったが理解も出来たようですぐに落ち着いた表情に戻った。

「魔理沙さんはいい人です。」

小鈴は人差し指を立てて霊夢を諭すように言った。私が反射的に発したのは魔理沙が単独でこのような一部に貴重な一般人向けでない本もある、本の溢れた場所へ来たと言うことが経験上よろしくない事の方が多いからである。とはいえ、迷惑するのは自分ではなく専らその場所の主であるが。

「魔理沙さんは普通に本を借りていきましたよ。外の世界の料理本でした。」

「料理本?魔理沙が?」

「はい、外の世界の料理本は里のお客さんたちにも非常に人気なんですよ。今まで食べたことのないような料理の作り方がいっぱい載っているので。でも、良く分からない食材とか器具とか出てくるので実際に作っている方はあまりいないそうですけど。」

小鈴は返却本の山の中腹にあった料理本を取り出した。

「ふ〜ん。でも魔理沙に貸したら二度と帰ってこないわよ。」

「大丈夫です。誓約書を書かせました!!貸出期間を守りますって。」

小鈴は持っていた料理本とカウンターに置いてあった紙切れとを持ち替えて差し出した。

「い、いや。こんなもの魔理沙に効力無いと思うのだけれど・・・。」

「私は異変解決に乗り出してくれた魔理沙さんを信じていますから!!」

小鈴の目は輝いていた。彼女は以前にもたまに客として訪れているらしい、人に化けたマミゾウに憧れの視線を向けているようなことを言っていた。彼女はあれが化け狸だとは知らない。私も彼女のためにそのお客の正体は教えていないのだが。小鈴はよく人に憧れる性格らしい。

 

 

 

 

「もし、魔理沙さんが本を返してくれなかったら霊夢さんに取り返してもらいますね!!」

店の去り際にそう飛びついてきた彼女には何も言えずにお茶のお礼を言って出た。そんなことを言ってくるあたり、彼女も多少の疑いを抱いているらしい。聞く限り魔理沙は借り際にしっかりとお代を払ったらしく、そうした以上店としては貸さないわけにもいかなかったと考えるのが妥当である。一応、今度魔理沙に小鈴の言った、魔理沙を信じてるという真剣な言葉を伝えておいてあげようと思う。それ以上はしないつもりだが。

「そういえば、魔理沙は料理本を借りたって言ってたっけ?なんで料理本なんて・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

付喪神の行進異変以降、特に何か起きることなく境内の桜は十分に膨らんだ蕾をたらふく抱えていた。あと数週の内にはここは人妖入り乱れた宴会の会場となるのだろう。そんなことを思っていると、鳥居をくぐるものが一人現れた。

「霊夢さん、助けてください!!」

現れたのは小鈴だった。急いで来たのか息が上がっているがかまい無しに私に訴えてきた。

「よ・・・妖魔本が一冊、見当たらないんです!!」

 

説明
*単行本東方鈴奈庵の内容、単語を多少含みますので、ネタバレの要素0とは言えない気がします・・・。後、二次創作、自己解釈そのあたりご理解願います。
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鈴奈庵 小鈴 霊夢 東方 東方Project 

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