IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者?
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episode144 危ういバランス

 

 

 

 

隼人達が帰還した後、ネェル・アーガマはバインドに占領されている総司令部がある基地より離れた山に停泊して身を潜め、無人機であるガンキャノン・ディテクターが艦の装甲の損傷部を修復していた。

 

 

 

 

 

「首都奪還は成功した・・・が、あまり喜ばしい状況ではないな」

 

ブリッジに全員が集まっていた。

 

「占領下とあって、民間人の避難がされてなかった。反撃していたドイツ軍の者を含めればかなりの数の死傷者を出してしまった」

 

「・・・・」

 

「犠牲無くして勝利無し・・・と、言うのか・・・」

 

「・・・・」

 

「もう少し早く撃破していれば・・・こんな事には・・・」

 

「一夏。今更悔やんだってどうしようもない」

 

「だけど・・・」

 

「・・・これが戦場だ。守り切れると言う保障などない」

 

「・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「専用機持ちは・・・ボーデヴィッヒしか救出出来なかったか」

 

「はい・・・」

 

「デュノアは途中で撤退しました」

 

「・・・・」

 

「一人でも救出できたのは・・・今としては大きいか」

 

「・・・・」

 

「ボーデヴィッヒは気を失って寝ている。現在束がボーデヴィッヒのISよりコントロール装置を除去している」

 

「そうか」

 

「しかし、少佐が無事で何よりだ」

 

と、クラリッサは安堵の息を吐く。

 

 

 

「連中は恐らく総司令部で待ち構えて迎え撃つのだろうな」

 

「まぁ、当然だな」

 

「・・・・」

 

 

 

「明日1200にやつらの占領地に向かい、本格的にドイツ奪還作戦を開始する」

 

「いよいよ大詰めになって来たわね」

 

「だが、首都奪還戦よりも大量の敵が現れるだろうな」

 

「それに加えて上位クラスのバインドも居る可能性が高い。あのデストロイとかやらに匹敵しなくても巨大なバインドや、洗脳されている専用機持ち達も居る可能性は高い」

 

「・・・・」

 

「これまでよりも激しい戦闘が予想される」

 

「そうだな。今日はゆっくり身体を休めろ。明日に備えてな」

 

そうしてそれぞれブリッジを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ・・・」

 

隼人は自室に入るとベッドに倒れ込み、息をゆっくりと長く吐いた。

 

(体中が痛いな。あの攻撃が意外と響いたな)

 

体中の痛みを感じ、そのまま首を左右にちょっと動かして鳴らす。

 

(いよいよ明日か。・・・君はそこに居るのか・・・・・・簪・・・)

 

脳裏に簪の笑顔が思い浮かび、右目を細める。

 

 

 

(それに・・・あの時の声は一体・・・)

 

それは突然頭の中に響いた声だ。

 

(なぜか知らないが・・・初めて聞いた気がしない・・・)

 

 

「・・・・」

 

 

 

 

 

 

コンコン・・・

 

 

 

 

 

 

と、扉の方からノックの音がする。

 

「・・・・?」

 

隼人は起き上がるとベッドから降り、扉の横にあるモニターで外を見る。

 

『隼人・・・』

 

そこには鈴が扉の前に立っていた。

 

「鈴か。どうした?」

 

『ちょっと・・・話せる?』

 

「あぁ。いいぞ」

 

隼人は扉のボタンを押すと、扉は横のほうにスライドして開いた。

 

「俺に怒鳴った件か」

 

「ま、まぁ・・・そんな所」

 

鈴は少しおどおどして言う。

 

「・・・まぁ少し歩こう。ちょっと格納庫に用事がある」

 

隼人は部屋を出て鈴と一緒に歩いていく。

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

通路を一緒に歩いていくも、沈黙が続く。

 

「で、何も言わないつもりか?」

 

「そ、そうじゃないけど・・・さ」

 

「・・・・」

 

「だ、だって、言いづらいじゃないの。本当の事を言うなんて」

 

「・・・・」

 

「どれほど言いづらいものなのか・・・」

 

「・・・・」

 

「隼人に分からないでしょ・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 

 

 

「・・・分かるさ」

 

「はぁ?」

 

鈴は隼人の方を見る。

 

「まぁ、言いづらい事は確かに言えないだろうな」

 

「・・・・」

 

「俺にだって一つや二つはある」

 

「・・・・」

 

「誰にも言えない秘密ぐらい」

 

「だったら――――」

 

 

 

「それを言えば・・・どうなるか」

 

「・・・・?」

 

隼人の言葉に鈴は怪訝そうな表情になる

 

「それを知ったら・・・お前は俺をどう見るか」

 

隼人は鈴を見る。

 

「・・・っ」

 

鈴は驚く。

 

隼人の瞳の色が金色に変化していた。

 

「そう・・・人として・・・どうかと言うやつをな」

 

「・・・・」

 

「お前は・・・それでも俺を人として見るか?」

 

「・・・・」

 

「それとも、化け物と見るか」

 

「そ、それは・・・」

 

鈴は少し声を震わせる。

 

「・・・どうとでも思え」

 

「あ、あたしは・・・」

 

鈴は立ち止まってしまう。

 

「・・・・」

 

そうして隼人は立ち止まった鈴を置いて格納庫に向かう。

 

「・・・・」

 

鈴は俯いた。

 

「隼人・・・」

 

鈴は両手を握り締めると、その場から走り出して、隼人の背中から抱き締めた。

 

「っ?」

 

いきなり背後から抱き付かれて隼人は少し驚く。

 

「・・・それでも・・・あたしはいい」

 

「・・・・」

 

「例え・・・隼人が人じゃなくても、それでもいい」

 

「・・・・」

 

「だって・・・隼人は隼人だから・・・それは変わらない」

 

「鈴・・・」

 

「・・・・」

 

 

 

「――――」

 

最後は擦れた声で言って、鈴は元来た道を戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼人は格納庫に入ると、そこでは束がリゼルディフェンサーを調整をしていた。

 

「おや、はっくん?どうしたの?」

 

「ちょっと気晴らしにですよ。どうももやもやした気持ちが晴れなくて」

 

「そっか。まぁ、この状況じゃ仕方ないかもね」

 

隼人は束の近くまで来る。

 

「今回の戦闘でどのくらいがやられましたか?」

 

「五体だね。最低限の撃墜数でよかったよ」

 

「五体ですか・・・」

 

「次の戦闘だと、これ以上破壊されてしまうかもしれないからね」

 

「でしょうね」

 

「だから、今回が少なくてよかったの。だって補充が利かないからね」

 

「さすがに格納庫内では作れないのですか」

 

「資材がないし、何より調整する時間が無い」

 

「・・・・」

 

 

 

 

 

 

「あのでか物・・・重要な箇所だけが爆破処理されていたからバインドに関わる事は分からなかった」

 

「そうですか。まぁ、当然といえば当然の行動か」

 

「・・・でも、ある意味重大な発見はしたけどね」

 

「重大な発見?」

 

「分かる範囲じゃ、あのでか物にISの技術が応用されているね」

 

「ISの技術が・・・」

 

「だから少しでもいっくんの零落白夜が通じたんだと思うよ」

 

「なるほど・・・」

 

「それと・・・あいつの中から・・・何が出てきたと思う?」

 

すると急に束の表情が険しくなる。

 

「・・・そう言うと決まっていい物じゃ無いですね」

 

「まぁね。見つかったのは二つ。その内一つはある意味今必要でもあるもの」

 

「・・・・?」

 

「ISのコアだよ」

 

「ISのコアが・・・あいつの中に?」

 

「そう。まぁISの技術が応用されているのなら、コアも含まれてもおかしくは無い」

 

「そういうもんでしょうか」

 

「・・・もう一つがあんまりいい物じゃ無い。というより、誰が嬉しがるかって言うやつ」

 

「・・・・」

 

「何だと思う?ヒント生物」

 

「せいぶつ?」

 

「ナマモノ」

 

「なまもの?」

 

妙に嫌な予感しかしなかった。

 

 

 

「・・・・・・人間の脳ミソだよ」

 

「っ!?」

 

隼人は衝撃を受ける。

 

「それとISのコアを併合させた自立稼動型生体コンピュータって感じだね。それによって高度かつ精密な思考と行動を行える。まぁ破壊活動にしかやってないとなればただの宝の持ち腐れだね」

 

「・・・・」

 

「一応脳ミソの持ち主を調べてみれば、ドイツ軍の者だって言うのが分かった」

 

「・・・・」

 

「まぁ、外道連中ならやりかねない事だね」

 

「・・・なんてやつらだ」

 

隼人は拳を握り締める。

 

「恐らくあれだけじゃ無いか、もしくはただ単に失敗作を送り込んだか。どっちかだね」

 

「・・・・」

 

「まぁ、ISのコアが一つ手に入ったのは嬉しい誤算だね」

 

「どういう事ですか?」

 

「実はね、このネェル・アーガマに一体だけコアが入ってない開発途中のISを乗せているの」

 

「開発途中の?」

 

「はっくんでも、企業秘密の代物」

 

「・・・・」

 

「まぁ殆ど完成しているけど、それが何なのかは出来てからのお楽しみってとこ♪」

 

「お楽しみ・・・ねぇ」

 

 

 

 

 

 

「ところでさぁ、はっくん」

 

「何ですか?」

 

束はいつもより真面目な喋り方で聞いて来た。

 

「・・・最近ちょっと疲れ気味かな」

 

「そう見えますか?」

 

「うん。酷く見ると病んでる」

 

「そ、そこまで?」

 

「さすがに言い過ぎだったかな。でも、かなり疲れているって感じだよ」

 

「・・・・」

 

「・・・あんまり思い詰めない方がいいと思うよ」

 

「どうでしょうね」

 

そうして隼人は格納庫を出る。

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

束はそんな様子だった隼人を見て少し表情を険しくする。

 

「さすがのはっくんも・・・まいってるね」

 

「そうだな」

 

と、リゼルディフェンサーの陰よりアーロンが出てくる。

 

「あれでは・・・危うい状態だ」

 

「そうだね。ちょうど水が溢れそうなぐらい水が張ったカップみたいな感じかな」

 

「・・・・」

 

「もしそれが限界を超えてしまったら・・・はっくんはどうなるかな」

 

「・・・考えづらいな」

 

「・・・・」

 

「あいつでも・・・心が折れるか、もしくは壊れてしまうか・・・」

 

「だよね・・・」

 

「・・・もしくは・・・想像も付かない事態に発展するか」

 

「・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間にしては・・・読みはいい線行ってるね」

 

「そうだね」

 

と、格納庫の上部フロアにユニコーンとバンシィがその会話を聞いていた。

 

「確かに今の隼人君の精神状態は危うい状態だね」

 

「それも、いつ崩壊するか分からないぐらい・・・ぎりぎりな状態」

 

二人も隼人の精神状態を危惧していた。

 

「いつもより仲間の事や、連れ去られた仲間の事を気にしているから、相当気疲れしているね」

 

「うん・・・」

 

「何らかの拍子でそれが弾けなければいいけど・・・」

 

「この状況じゃ何が起こるか分からないからね」

 

そうして二人はそのまま格納庫を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!
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ユニコーン バンシィ ガンダム インフィニット・ストラトス IS 

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