【童話】『なまえ』 |
僕はダダをこねた。
「お母さん、僕、チヒロと同じのなんてヤダヨ!」
「違うものなんてどこにもないけれど
同じものなんてどこにもないわ。」
「だから、名前を付けてごらんなさい。」
僕は色んな名前を付けた。
傘のカンキチ
クツのシュー太郎
ランドセルのクロ
空が泣くと、僕は傘のカンキチと手をつないで歩いた。
カンキチは空の声を聞きながら一緒になって泣いていた。
僕も何故だか悲しくなった。
クツのシュー太郎とはいつも一緒に出かけた。
いつもどろんこまみれになって一緒に遊んだ。
体を洗ってやろうとすると、風呂嫌いなのか、シュー太郎はするすると手から逃げた。
ランドセルのクロは学校のお供。
クロが重たいといけないって
教科書を置いて帰ったら
課題が提出出来なかったよ。
本当に困ったヤツだ。
みんなみんな大好き。
けれど、
傘のカンキチは折れてしまった。
クツのシュー太郎は小さくなってしまった。
ランドセルのクロはもう卒業。
いつまでも手を離さない僕に
お母さんが頭をなでてくれた。
僕はわんわん泣いて
言ったんだ。