武装神姫「tw×in」 第二十七話 |
Pluto杯の翌日。オレはミルートからのメールで四人と一緒に研究所を訪れていた。
「ミルートの奴、何の用事だろうな」
「さぁ?、また何かの実験なんじゃない?」
同じように呼ばれた東太と真南、その神姫達と共に。エレベーターを上がり、目的の階に到着。扉が開くと、
「いらっしゃ?い」
「いらっしゃいませ?」
ルーフェとミルルが出迎えていた。
「わぁ?、エストリル型の神姫だ!」
「ひょっとして、ミルートの二人目か?」
「初めまして、あたしミルルっていいます。ハカセの神姫で、ルーフェさんの後輩です」
丁寧に頭を下げて挨拶するミルル。
「かわいい?」
真南はミルルを拾い上げて目線の位置に持ち上げるが、ミルルは特に気にせず、何故かオレを見た。
「あの……スレイニさんは、いますか?」
「うん、ちゃんと連れてきたよ」
鞄を開けると、呼ばれたスレイニは自分から外へ顔を出した。
「こんにちはミルル」
「スレイニさーーーん!」
「わっ!?」
スレイニが挨拶した途端に真南の手からミルルは飛び立った。
長い滑空の後、鞄の中へとダイブ。驚くスレイニの横へとすりよった。
「お久しぶりですー!」
「いや2日前に会ったばかりじゃない」
ツッコミは冷静だ。
「ずいぶん気に入られたね、スレイニ」
「ちょっと行き過ぎな気もしますけどね」
その時、
「ちょっとそこのアナタ!」
今まで静かだったカレンが東太の肩の上から二人を見て声をあらげた。
「アナタなんなんですの! スレイニさんに対して馴れ馴れしいですわ!」
指をビシッ! と突きつける。
「スレイニさんはあたしの憧れなんですよー」
「だからといってそんなにベタベタしていいことには成りませんわ! とぅ!」
東太の肩から跳躍し、鞄の中へ収まるとスレイニの逆隣に移った。
「スレイニさんは、私のライバルですわ!」
「あぁ、やっぱそう思ってたんだ」
「っ!?」
スレイニの言葉でカレンは冷静に戻ったらしく、急激に顔を真っ赤に染めた。
「なら良いじゃないですか、アナタはライバル、あたしは憧れなんですから」
「そ、それはそうですけど……け、けれどそんなにベタベタするのは…」
「ならアナタもすれば良いじゃないですかー」
「な!? そそ、そんなの出来るわけないじゃありませんか!」
「えー、でも…」
ミルルとカレンの言い合いをオレ達はぼーぜんとして見守っていたが、
「そろそろ行こっか?」
真南の提案でようやく動き出した。
あ、でもその前に、
「三人共、大丈夫?」
鞄の横から中にいるエンル達へ声をかける。
『な、なんとかぁー……』
『怖いですマスタぁー』
『ガクガクぶるぶるなのですぅ……』
案の定、三人共怯えきっていた。
それにしても、何でカレンは急に怒り出したんだろう?
「ようこそ我が研究室へ」
毎度の出迎え方をしたミルートが向き合っていた机から椅子を回し、こちらを見た。
「あれ? ミルルは? それにカレンと、スレイニも見当たらないけど」
「三人なら、あそこに」
机の上に置いた鞄の中、
『まずアナタ、新米ならば目上の者を敬うのが礼儀というものでしょう!』
『そんなの知りませんよ。あたしは憧れのスレイニさんがこんなに近くに居るというだけで感激っしょ!』
『はぁ……いつまで続くのかしら』
スレイニを挟んだ口論を終わりが見えなかったので、三人を中に入れ、エンル、ルミア、コナユキの三人を外へ出して運んできた。
「そっか、ならいいや。それにしても驚いたよ、東太と要、唯まで二人目を持っていたなんてさ」
ミルートがキーボードを操作するとディスプレイに映像が映った。
それは昨日の大会もので、ちょうどコナユキとヒリンが戦っていた時のものだ。
「なんてナイスタイミングなんだろう」
ナイスタイミング?
「時に3人共、何であの大会に出ようと? やっぱり新米の練習目当て?」
「それもあったけどね」
本当の目的は、
「わたしも二人目が欲しかったからだよ!」
真南が手をぴしっと挙げながら伝えた。
「へぇ、真南も二人目」
「だってかなちゃんが新しい神姫持つって話になって、そしたら宗哉がコナユキちゃん連れてきて、更には東太とゆいちゃんまで?」
「果てにはミルートまで二人持ちだからな」
「ボクの場合持てなくはなかったんだけどね」
「何か仲間外れだよ!」
「そこまで言うなら……あぁ、何となく分かったよ」
ミルートは理解したらしく、顎に手を当てて回答を始めた。
「二人目が欲しかった、けどひょいひょいと買えない値段の神姫、でも神姫ポイントにより数で見た限り安く見える、けど普段から使う真南にはそんな額は無く高額賞金を狙って、数揃えてガチで大会に挑んだ。という感じかな?」
「うん、ほぼ当たり」
「うー……こうなったらバトルしまくるしかないよね……」
「ふむ……」
顎に手を当てたままミルートは数秒考え、
「真南、今の総額は?」
「え? えっとー、これ」
真南の神姫ポイント額を見て、一言。
「真南、バイトする気は無い?」
「へ?」
「ボクの研究を手伝ってくれれば、残り分くらい払ってあげるけど、どう?」
「ぜひ!」
即答だった。
「交渉成立だね。なら……ざっと七時間。1日一時間として一週間、コレで良いかな?」
「それだけで良いならどんと来?いだよ」
「良かったね、真南」
「うん! ありがとうみるちゃん! やったよミズナ! 一週間後には後輩が出来るよ!」
「まだ何やるか聞いてませんけどね」
ミズナの言葉に「対したことじゃないよ」とミルートが答える。
「昨日ようやく出来上がった機能の実験だけだよ。宗哉、前にボクが言ったこと覚えてる?」
前にミルートが言ったこと……
「いずれ過去の産物になるね」
「その通り」
ツインワンを初めて見た時、一回に一人ずつしかライド出来ないと言ったら、ミルートが返した言葉だ。
「シングル、タッグ、ハンディ、そしてバトルロイヤル……それに続く、新たなライドバトル方法、その名も……ツインライド!」
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