歪風、ゲイムギョウ界に吹き荒ぶ2
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私は人間である。名前はアイエフ。

プラネテューヌ生まれプラネテューヌ育ちの生粋のプラネテューヌ人だ。

別に国毎で人種が違うなんてこともなく(よくわからない生物なら多少いるが)、言語も全国で共通だ。バベルの塔?知らないわそんなの

 

現在の私の任務はコンパと共にこの【墓場】にとらわれているであろう女神を一人助け出すこと。恐らく一人でも助けられれば国のひとつは復興可能でそれを足がかりにする、とかいうつもりなんだろう。そういう意味では【誰を助けるか】はかなり重要な選択であるといわざるを得ない。

誰でもいいじゃんとも言いたくなるだろうがそんなことはない。女神は人外+国の指導者+偶像とかいうよくわかんない存在だが何故か精神的には見た目相応だ。つまり私情で動く可能性が頗る高い。【なんで私があいつらを助けないといけないの】とかほざいた日には不敬なんぞ知ったことかと殴り飛ばす自信がある。そういう意味では直接国に関与できないネプギアが妥当か。……見つけてから考えよう。

 

「大分歩いたわね……コンパ、あんた大丈夫?」

「はいです!看護士の仕事はあいちゃんが思っているより大変ですから!」

「ああそう…。ならいいけど」

 

コンパは意外と逞しく育っているようだ、発育込みで。ああ、多分数年後は垂れるなとか思いながら私達は歩き続ける。かわりばえしない景色に若干飽き始めてくる。そういえば近隣に溶岩のような液体がよく流れているが不思議と暑いとは感じない。恐らく別のものなのだろう。触りたくはない。確かめるならネプテューヌでも蹴り落として確かめる。誰だってそーする、私だってそーする

 

「………」

「…コンパ?」

「静かに、です……。聞こえる…声……?」

 

立ち止まり、目を閉じて耳を澄ますコンパ。

看護士って耳がよくなるのだろうか。聴診器っつったっけ、あれで鍛えられたりするのかな?私も鍛えたいわ…。

 

「あっちです!女の子の声、ねぷねぷかも!」

「オーライ、帰ったらハグしてあげるわコンパ!」

 

コンパの指し示した方向に走り出す。後ろから「おいてかないでほしいですー!」と声が聞こえたが割りと急いでいるのだ、コンパには後で追いついてもらおう。

それにさらっと言ってみたけどハグする口実も出来た。コンパの包容力(物理)は魅惑的だ。こればっかりはネプテューヌにも渡したくはない。

 

 

コンパの示した方向に少し走ると、開けた地形に出た。

地面、周りの巨大な廃材に斬ったような後が存在している。近く戦闘があったのだろうか。打撃痕も残っている。女神の武器は刀、細剣、両手斧、槍、片手剣。槍の使い方、または敵戦力によってはどんな理由もつけられるだろう。

少し高いところに見渡すと、広場の隅に見覚えのある紫色が見えた。

 

「コンパ!四女神発見よ!ネプギアは……見当たらないけど」

「……ねぷねぷ!」

 

駆け寄ると、女神化して姿を変えたネプテューヌ…それどころか女神化した四女神全員がパイプに縛られ、拘束されていた。水着みたいな装甲も大分削られ見事なほどに肌が露出されている。なんだかいやらしい光景だな。

 

「あ…いちゃ……こんぱ……?」

「ハローネプ子。と他の女神様方。これはまた随分こっぴどくやられたわね。なんで傷がその水着だけですんでるのかは気になるけどまぁいいや。ネプギア知らない?一緒に捕まってないの?」

「あいちゃん!今すぐ助けないと…!」

「どうどう待ちなさいコンパ。無駄遣いは厳禁よ」

 

私の言葉にネプ子ほか女神全員何も反応しない。虚ろな目で私…というより虚空を見ているだけだ。何時から捕まってるのかは知らないけど三年もこんな状態なら精神がぶっ壊れてもおかしくない。最悪な状況といえる。

愛用のカタールで軽くパイプを斬ってみるもガキンと金属音がするだけ。女神本人を回復させないと意味無いようだ。

 

『アイエフさん、コンパさん。聞こえますか?』

 

突然頭の中からイストワールの声が聞こえた。

テレパシー?こんなことできたんだ、あの本教祖。

 

「こちらアイエフ。四女神は発見しましたが拘束され全員意識がありません。パープルシスターは今だ発見できていません」

「あいちゃん!シェアクリスタルで助けないと…!」

「だからそいつらに無駄遣いしてる場合じゃないんだってば!」

『……』

 

しまった、口が滑った…!イストワールが聞いていたのに……私のミスだ、どうする、これじゃあネプギアだけ助けた後に不敬罪で殺されかねない……いやまて落ち着けアイエフ。広い視野でモノを見るんだ。……よし。大丈夫だ。

 

「イストワール様。現在四女神は非常に衰弱しています。恐らくワールドシェアの低下が原因でしょう。ですが今だ女神化を維持できています。救出後を考慮し守護女神ほどシェアの影響が大きくないパープルシスターを救出します」

『わかりました。パープルシスターの居場所の目処は?』

「恐らくはこの近く、もしくは浅いところかと。四女神より深部に捕らわれているとは思えません」

「あいちゃん!ぎあちゃんがいたです!」

「ナイスコンパ!イストワール様、事態は一刻を争います。通信終了」

 

意外とそう思えばこの通信も切断できるものだった。イストワールも有情な教祖だ。

それはともかく、ネプギアだ。四女神からは少し離されたところに縛られている。どちらが優先されていたのか…は考えるまでもないな。

 

「コンパ、シェアク『ハァァーハハハハハハハハアァアァァァァア!!!』」

「な、なんですかぁ!?」

 

突然、空気を切り裂くほどの笑い声が響いた。

それと同時に体中に危険信号が鳴り響く。やばい、ヤバイヤバイヤバイ!!

 

「コンパ!!!」

 

ほぼ無意識だった。咄嗟に私はコンパを突き飛ばしていた。

次の瞬間、巨大な黒い影が落下し、周囲に大量の砂塵が舞った。

 

 

 

「あうう……な、何が起こったです…?」

 

コンパの声が遠く聞こえる。どうやら無事なようだ。

今の笑い声はなんだったのだろう。敵襲か。まさか、ずっと監視されていたのではないだろうか。

だとしたら、急いで対応しないと…あれ、腕に力が入らない。それどころか、見あたらな……

 

「え……」

「あ、あいちゃん!あいちゃん!!!」

 

コンパが必死の表情で私に声をかけている。だが、私にとってそれは遠くからしか聞こえず。私の視線はたった一つのことにだけ釘付けだった。

 

何故

私の腕が

遠くにあるんだ?

 

 

何故、わたしの腕が、繋がっていないんだ?

 

 

「ぐッ、あぁあぁぁあぁぁああああぁあぁあああ!!!???」

 

 

理解した瞬間、私を強制的に目覚めさせる痛みが、私をこの世に呼び戻した。

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「あいちゃん!しっかりしてくださいです!」

「つ、あっは、ぐ……!意識ならあるわよ…それより、何が………」

 

 

熱い、左腕から急速に力が抜けている。まずった、これじゃあ本当に二階級特進になってしまうじゃないか……!

コンパは戸惑いながらも鞄から包帯を出し器用に止血している。手馴れてるわこの子。看護士なだけある。

 

『なにぃ……俺はちゃんと斬ったぞ、肉を、女の肉を!なのに何故だ、なんで生きているんだ!おかしいよなぁ!!!!真っ二つにしたのに生きてるのはおかしいよなァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!???』

 

怒号。突然の男の声に私達の体は硬直した。

砂塵が晴れ、声の主の姿が露になる。私の腕を切り落とした主犯の姿。

 

黒い、ロボット。ところどころに髑髏が装飾された鎧、そして大斧。見て一瞬で理解した。

こいつが、目の前のこの存在は。私達の手に負えるものじゃないと。

 

「コンパ……私はもう大丈夫よ。ネプギアを助けて、逃げなさい……私は、腕を回収してから追いつくわ…」

「で、でも……」

「急いで!女神ならともかく、人間の私達をあいつらが生かす理由なんてないわ!!」

 

既に左腕は包帯でぐるぐる巻き。肘から下は、あいつの足元に落ちている。落ち着け、落ち着けば大丈夫。闘う必要なんてものはない。回収して、逃げればいいだけ。足には自信がある。速さなら、女神にだって負けない自信がある。

 

『いぃやぁ、おかしくなんかねぇなぁ……もう一回真っ二つにすれば死ぬからおかしくねぇなアァァァァァァァァ!!!』

 

三度、黒い巨体が咆哮する。

あれだけで体が竦む。一瞬動けなくなりそうになったが右腕の残ったカタールを出して走り出す。ネプギアのことはコンパに任せよう。

 

『真っ二つダァ!!』

 

巨体が大きく動き、私に向けて大斧を振り下ろす。あの奇襲のときと比べれば何のことはない。軽く横に飛べばよけられる程度のもの。

大きい音を立て斧が地面に刺さる。さっきの奇襲が左腕一本で済んだのはよかったほうなのかもしれない。最悪胴体が真っ二つだったのだから。

 

大きく振った分だけ大きく隙が出来、その結果私がより近づける。

足元をスライディングで通り抜け、落ちてる私の腕をキャッチ。断面から血や肉が漏れでている、見ていて気持ち悪い…。

 

『どこだ、どこにいったァァァァ!大人しく俺に斬られてしまえェェェェェェェェェェ!!!!!!』

 

浮いてるしデカイしで、どうやら死角のようだ。今のうちに逃げ帰るとしよう。

大きければ強いというのは正解でもあり間違いでもある。小さくても強いものは強いということだ。

広場から跳び立つ直前、黒いのに向けて呟いてやった。ざまぁみろだ。

 

 

腕が動かなくとも、足は動く。足が動けば、私は生き延びられる。そうやって生きてきたんだから、当然だ。

だが、実際に腕がなくても大丈夫かといえば勿論NO。走るのには意外と腕も重要だ。今まさにそう思う。

 

ここは、最初の場所か。全力で走った所為か自分の息が荒い。頭がくらくらする。出血多量だろうか。

腕もなんか変な感じになっている、正直直視したくない。

コンパとネプギアは無事だろうか。基本的にぽわぽわしたコンパでも急いで助けて脱出、ということができるのか。覚えておこう。

 

目の前の空間が歪んでいる。ここがゲイムギョウ界に繋がっているのだろう。

全く、なっさけないなっさけない。これじゃ敗走みたいなものじゃないか。事実敗走に似たようなものだが、ネプギア(女神の内一人)を救出できたのなら私達の勝利だ。一時的な、小さな勝利。だが、大きな勝利だろう。世界に、女神にとっては。

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歪んだ空間に入ると、一瞬で景色が変わる。

見慣れた光景だ。教会の中。何故だかすごく安心した。

 

「おかえりなさい、アイエフさん」

「あいちゃん、しっかりするです!!」

 

イストワールとコンパの声がする。よかった、無事だったんだ。

安心して力が抜け、倒れそうになったのをコンパに抱えられる。やっぱり、安心する。

 

「ごめんコンパ、血足りないわ……搬送お願いねー……」

「はぁ……。コンパさん、お願いします」

「はいです!」

 

コンパによってあっさり担がれる私。そんなに軽かったかなぁ……コンパが怪力っていう可能性も否定できないけど。看護士って色々鍛えられるんだなぁ、と思う私。ちょっと見直した。見縊ってた。

 

「アイエフさん、よくやってくれましたね。ですが……まだ始まったばかり。暫くはこき使わせてもらいますよ、【アイエフ三佐】」

 

安心を返せ。私の安心を返せ糞上司…………

こんな目に合ったのにまだ扱使うつもりだこの教祖…何故私はこんなブラック集団に身をおくことにしてしまったんだ……

宗教って、やっぱ怖い。不穏な考えを持ったまま、貧血か視界が霞み私は意識を失った。

説明
原作より大分ドライなアイエフさんが散々な目に遭いながらも頑張るお話。
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コメント
更新、お疲れ様です&初めまして。チータ(R)「ほーほーほー……教会はブラック&ドライな職場だねぇ…こりゃ地道の賞金稼ぎしてた方が良いかな?」デバッカ(R)「貴様のは地道と言えるのか…?」チR「(一々うるさいなぁ…)」(ヒノ)
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