手をつなぎながら |
「全員集合!」
トレーナーの一声で、レッスンスタジオ中に散らばり、
レッスン前のストレッチに余念がない少女達が一斉に注目する。
「来る4月に、全国数ヶ所で一万人規模のホールでのコンサートツアーを行うことになった」
沸き上がる嬌声。静まるのを待って、プロデューサーは言葉を続ける。
「今から参加メンバーを発表するから、呼ばれた者は前へ。天海春香」
「はい!」
次々と十数人の名前が呼び上げられる。
「島村卯月」
「えっ……は、はいっ!」
今回も名前を呼ばれる事は無いだろうと思っていた卯月は、嬉しさより先に驚きが隠せなかった。
「そして、今回のポジションは、天海春香と島村卯月のWセンター、
他の者はのポジションは、これから配るポジション表で確認してくれ。
以上、呼ばれた選抜メンバーはこれから特別メニューでのレッスンに入る」
今まで選抜メンバーに入っていなかった卯月がセンターに抜擢という発表にざわめき立ったが、
トレーニングウェア姿の少女達の前に立つプロデューサーのスーツ姿には、
異議を受け付けない威圧感があった。
かくして、コンサート選抜メンバーの初レッスンは終った。
既に何度も場数を踏んでいるメンバーに混じってレッスンを受けた卯月にとっては、
今までのレッスンよりも数レベル高度かつハードであり、
ついていくのがやっと……否、何度も振り落とされそうになった。
これではいけない。
このままシンデレラガールズにいても選抜メンバーになれない……と嘆いていた私を、
元気づけてくれた春香に恩返しがしたい。
ううん、恩返しとまではいかなくても、せめて足を引っ張って迷惑を掛けたくない!
よし!
卯月は、誰もいなくなったスタジオに残り、自主レッスンを始める。
「あ、卯月ちゃん」
「春香さん……」
汗を拭っただけのトレーニングウェア姿の春香が、卯月しかいないスタジオは入る。
二人きりの状況で、きっと今日のレッスンについて叱られるのか……と、卯月は身構えた。
「自主練するなら声掛けてよ。一緒に練習した方がいいでしょ?
私たちは2人で1つのセンターなんだから」
「2人で、1つ……!」
「うん。それがきっとプロデューサーさんの狙いというか、私への課題だと思うんだ。
年も経験もバラバラなメンバーを、誰一人置いていくことなく引っ張って行かなきゃならないんだって」
「春香さん、すごいです。私なんか自分のことだけで精一杯で……」
「そんな事気にしなくていいよ。そんなに急に周りが見えるわけじゃないし、私だって全然出来てないし。
だからこそ、それがプロデューサーさんから私への課題なんだと思う。
卯月ちゃんを、ちゃんとセンターとして育てなさいっていう……」
「春香、卯月、まだいるのか? そろそろ閉めるぞ!」
「すいません、あと少し!」
「レッスンに熱を上げるのはありがたいことだが、使える時間は限られているんだぞ。
電気代だって値上げでバカにならないんだ」
「すいません、でも、あと30分だけ……!」
「否、15分で切り上げて15分で完全消灯だ。じゃないと、コレが使えなくなる」
「『春の新作スイーツお試しクーポン・夜9時まで』……って!
プロデューサーさん、ご馳走してくれるんですか!」
「やった−! ありがとうございます、プロデューサーさん!」
【終】
説明 | ||
2013年4月5日分アイマス1時間SS。昨年10月以来のご無沙汰です。使用テーマは、「お願い」「ありがとう」「トレーニングウェア」「省エネ」、テーマキャラは「天海春香」「島村卯月」、4月生まれの2人で、前作「One」の後日談として書いて見ました。どうでもいいことだが、タイトルはSKE48の公演名及び公演曲から。ホントはいつかラブライブ!でSSを書く時まで取っておきたかったのだが…… | ||
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