魔法少女リリカルなのは 四天王始めました |
「おら!とっとと車を用意しろ!出ないと分かってるよな」
サングラスとマスクを着けた男が俺の首にナイフを突きつける。……てか、微妙に刺さって血が出たんですけど。
野次馬からは俺の首から血が出ているのを見て、キャーー!と叫ぶ。正直に言うと五月蝿い。少しは静かに出来ないのだろうか?
「ウッセェ!静かにしろ!!」
俺の首にナイフを突きつけている男が叫んだ。
叫ぶのは良いけど……ナイフが少し刺さったんですけど……。
「お、落ち着け。今、車を用意している。だから、その子からナイフを遠ざけてくれ」
警官らしき人物がそう言うが強盗はナイフを俺の首に突きつけたまま怒鳴った。
「誰が遠ざけるかよ!あんまりもたもたしてると……どうなるか分かってんだろうな」
俺の首にナイフがブスリと刺さるんですね分かります。……そこ!テレビカメラに映すんじゃない!時の人になっちゃうじゃないか!
てか、そこのレポーター!誰が怯えてるって……間違えた情報をお茶の間に流すんじゃない!そもそも勝手に映すな!!
「レイン!?レイン、大丈夫?」
この声は…………アリシア……。と言うことは……もしかして……。
「アリシア……勝手に動いたら危ないわよ」
やっぱりいたよ……プレシア。しかも片手に野菜の入ったエコバッグを持ってるし。夕飯の買い物かな?
あっ……俺に気が付いた様だ。目を丸くして驚いている。
(ちょっと!あなた……何で人質になんてなってるのよ!?)
(気がついたらこうなってたよ)
(ああ……どうにか出来ないの?あなたなら楽に脱出出来るでしょ)
(そうなんだけどさ……カメラと野次馬が邪魔で出来ないんだよね。いや〜参ったよ)
(なんか凄く余裕あるわね)
(今日だけで二回ほど誘拐されてますから)
(そうなの…………って!あなた……別の意味で運良すぎじゃないの……)
そんな会話を念話でしていると強盗がなかなかこない車に業を煮やしたのか怒鳴った。
「いい加減にしろ!いつまで待たせるつもりだ!早くしろ!さもないと……」
「ヒッ……」
とてつもない不快感に悲鳴が漏れた。
強盗犯に尻を撫でられた……しかも、パンツの上から。
ブチ……。
殺っても良いよね……。問題ないよね?
(ちょっとこれから惨劇が起こるけど良いよね?)
(ちょっと!急にどうしたのよ!?)
(尻を撫でられた……現在進行形で)
(……………………アリシアから伝言よ。やっちゃえ!ですって)
OKでは遠慮なく。俺が行動に移ろうとした時「ガッ」と強盗が声を上げて俺の首に突きつけていたナイフを落として頭を抱えて地面に崩れ落ちた。
側にはハンマーが落ちていた。誰が投げたんだろうか気になり投げた人物を探すとちょうどガッツポーズをとる赤毛の少女が見えた。
その少女の傍にいるピンクの髪をポニーテールにしている女性が早く離れろと合図をするが俺は落ちているハンマーを手に取る。
そして……。
「グアッ」
地面に崩れ落ちた強盗を蹴飛ばして仰向けにするとハンマーを思いっきり振り上げる。
俺が何をするのか察したのだろう野次馬の男性陣が顔を青ざめさせる。
「ひ・か・り・になれぇぇぇぇぇぇ!!!」
俺は強盗の男の象徴《シンボル》にハンマーを思いっきり降り下ろした。
その時に「ア……アイゼーーーン!!」と少女の叫ぶような悲鳴が周囲に響き渡った。
これだけでは溜飲が下がらなかったのでもう一回と振り上げたら、慌てた様子でプレシアとポニーテールの女性が近づいてきた。
「お、落ち着きなさい……」
「さすがにもう……罰は受けているこれ以上する必要はない」
チッ、仕方がない。これで勘弁してやる。
「おい……それ返せ」
いつの間にか赤毛の少女が近くにいた。
それ……ああ、ハンマーのことね。
赤毛の少女にハンマーを渡す。
「ありがとう。お陰で助かったよ」
「おう!って、そうじゃねぇ。あんなのを潰すのにアイゼンを使うんじゃねぇー」
俺が礼を言うと赤毛の少女は笑顔になるがすぐに不機嫌な表情に変わった。
面白い子だな〜。
「レイン!首、首」
おお!アリシアもいつの間にか近くに。……首?…………あ!
そう言えば少しだけナイフが刺さったんだった。
「首?……って!血出てるじゃねえか」
「しまった!忘れていた」
慌て出す赤毛の少女とポニーテールの女性。
「とりあえず、コレでも巻いておきましょ」
プレシアがタオルを俺の首に巻いた。
「どうも」
「別にいいわ」
「すいませんがご同行を」
警察官が俺達に近づきながらそう言った。
俺達はそれに頷くと警察官の後をついて警察署に向かった。
警察署で俺達は一人一人事情聴取された。待っている間にお互いに軽く自己紹介をして時間を潰していた。
全員の事情聴取が終ると強盗犯がどうなったか聞かされた。
「奴の象徴《シンボル》はお釈迦になったそうだ」
ザマァ。この一言につきる。
その後は帰っても良いと言われたので途中まで一緒に帰ることになった。
「なぁ、レインは何で人質になってたんだ?」
赤毛の少女ーーヴィーターー が不思議そうに言った。
「そうそう、普段のレインなら人質にならないのに?」
アリシアがヴィータの発言に便乗した。
「今日だけで二回ほど誘拐されてるからもう無いだろうと思ってたらこうなった」
俺がそう言うとポニーテールの女性ーーシグナムーーが何故と言った風に問いかけてきた。
「何故、二回も誘拐されているのだ?」
「一回目は話しかけてきたおっさんを無視したら問答無用で腕を捕まれて連れていかれて、二回目は知り合いが誘拐される現場を目撃したら俺も次いでに誘拐されたんだよ」
「大変だったわね……」
プレシアが気の毒そうな目で俺を見る。
「そうか……。私としてはレイン、お前が誘拐されるというのが信じられないのだが?」
「まあ、アタシも信じられねぇけど……嘘はついて無さそうだからなあ」
「うんうん」
シグナムとヴィータの発言に頷くアリシア。
俺だって色々あるんだよ。
「正直に言うと、一回目のは人目のない場所に着いたら犯人をボコそうとしてたし、二回目は俺の貞操の危機から相手を鎮圧しただけだしな」
「貞操の危機…………って何があったの?」
「アリシア……俺はホモじゃない……」
「あ……うん……ごめん」
「うん?……ホモじゃない?……レインは男なのか……」
疑問の声を上げるヴィータ。
ああ、やっぱりか。格好からしてコレで男だと気づける方が凄いからしょうがないか。
「俺は男だよ」
「嘘だ!」
ひぐらしネタ!?まさかな……。偶然だよね……きっと。
「まあ、それは置いといてだ」
それは俺にとって置いといてはいけない問題なのだがシグナム。
「……お前は何者だ?少なくとも一般人ではあるまい」
確かに一般人ではないな。どちらかと言うと凶悪な殺人犯だし。強盗よりも質が悪いな。
ヴィータ、プレシア、アリシアが俺のシグナムへの返事を聞き逃さないよう黙っている。
「……そうだね、一般人ではなく、かなり質の悪い存在かな。敵はすぐさま手段を問わず始末するからね」
俺はニンマリと邪悪に笑いう。
「……ッ!そうか。……じゃあ、何故、あの強盗犯を始末しなかったのだ?」
「それは、敵になり得ないからだよ」
「じゃあ、一つ聞かせてくれないかしら」
「どうぞ」
「あなたにとって敵って何?」
俺にとっての敵ね……。そんなのは決まっている!
「俺にとっての敵は家族に危害を加えた者、俺に対して明確な敵意を持つ者、家族が敵と判断した者だけ……だから気をつけてね、その時は容赦と言うものが無いから」
「……そうか……気をつけておこう」
さて、釘も指したし……そろそろ別れ道だ。
「では、俺は此処で……ヴィータ、シグナム。縁があればまたね」
俺は今度こそ家に向かって全速力で移動した。
そして、俺は夏休みの残りを家に引きこもって過ごした。だってねえ……近所のおばさん、おじさんに強盗犯に人質にされたときのことをいちいち聞かれるのがめんどくさくて……。
因みに強盗犯の男の象徴《シンボル》をアイゼンで叩き潰したシーンがゴールデンタイムで放映されました。テレビのアナウンサー(男)が痛そうな顔をしながらコメントしていたのが一番印象的だった。
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A's開始前3話 夏休みの出来事後編 | ||
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