魔法先生ネギま 〜疾風物語〜 第二十話
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「ハヤテぇ〜。紅茶が飲みたい〜」

「あ、はい。分かりました」

 

テオドラさまの要望に応えて、お茶の準備をする

ヘラス帝国第三皇女付き執事見習いになってから半年

執事の仕事も大方こなせる様になってきて、ヴィルヘルミナさんからも

 

『そろそろ見習いは卒業でいいでありますかな』

 

と言われる位には慣れてきた

最初の頃は紅茶を満足に淹れられず、試しにと飲んだヴィルヘルミナさんから小一時間説教をされた

それからはもうみっちりと仕事を叩き込まれた

美味しい紅茶の淹れ方、執事の作法、果てにはヘラス帝国の公務を手伝わされたりもした

魔法の勉強も暇を貰ったときや、寝る前の少しの時間に国立図書館で借りた古書などでやっている

 

「入りましたよ。今日はオスティアの茶葉です」

「む?オスティアとな?しかし、確かわが国とオスティアは…」

「ええ。ですから無理を言って、アリアドネー経由で取り寄せて貰ったんです」

 

その代わりセラスさんに借りを作っちゃいましたけどね、と言いつつカップに注がれたお茶を差し出す

 

「まったく将軍達は何を考えておるのじゃ。父上はオスティアの奪還など、ましてや戦争なぞ望んではおらぬと言うのに…」

「皇帝陛下も頭を痛めていらっしゃいます。今回の戦争は軍上層部の独走。しかし始めてしまったからには、今更白紙に戻すわけにもいかない…」

「時計の針を戻すことは出来ぬ、という事か」

 

オスティアは魔法文明発祥の地と言われていて、当然ヘラス帝国に多く住む亜人たちの発祥もまた然りだ

軍上層部はそれを理由に『聖地奪還』と言う名の皮を被った『侵略戦争』を始めてしまった

ヘラス帝国の国民は大部分がオスティア奪還を『悲願』としている

自分達の先祖の出身地を他の民族が治めているのは、やはり心中としては複雑らしい

 

「ええ、しかし針を自ら進めることは出来ます。今出来ることはこの戦争の決着を出来るだけ早期に着けることです」

「可能であれば和平に持って行きたい所じゃな」

 

カップを口に運びながらテオドラさまも応える

 

「アリアドネーと言えば稽古の様子はどうじゃ?ハヤテのアーティファクトの有効利用のために、魔法騎士団に稽古をつけてもらっておるのじゃろ?」

「そうですね。成果は出てきてると思いますよ。純粋な剣術勝負ならセラスさんにある程度食い下がれる様になりましたから」

「セラスにか?それは凄いの。魔法騎士団随一の使い手と互角とな」

 

先ほどから話に出ている『セラス』さんとは、アリアドネーの魔法騎士団のリーダーの女性である

またアリアドネーの魔法騎士団の騎士さんたちは全員が女性で、僕が稽古に行くと物珍しい目で見られる

 

「では魔法の方はどうなのじゃ?魔法も習っておるじゃろ」

「最近は雷系と炎系の魔法を教えてもらってます。あとは補助系も。ただまだ魔力のコントロールが不安定だと言われてしまいました」

「それもハヤテの膨大な魔力では仕方なかろうな」

 

暴発した魔法が『武装解除』の魔法でなかったのは不幸中の幸いだった…

十数人の魔法騎士さんたちとセラスさんを素っ裸にしたら、僕の命が比喩ではなく終わってしまう

身体強化の魔法で過剰に魔力が滾り気絶しただけですんで良かった

でもあの時は魔力に何か別の力が紛れ込んだような感覚がしたんだけどなぁ?

 

「ハヤテ、お主一度剣闘大会に出てみんか?」

「…テオドラさま、脈絡が無い上に、提案の意図を図りかねるのですが」

「お主は一応妾の執事となっておる。妾に危機が迫ったときには守ってもらわねばならぬのじゃ」

 

初耳ですテオドラさま。それは護衛の衛士さんの仕事ではないのですか?

その抗議は黙殺され、なおもテオドラさまは話を続ける

 

「しかしお主の実戦経験、戦闘能力は未知数。父上も不安になったのか『テオドラよ。お前の執事見習いになった『ハヤテ』とやらの力量を計りたい。なので剣闘大会に出場させてみよ。無論、無様な戦いを見せたら即刻お払い箱だ』と言われてしもうてな…」

 

テオドラさまは申し訳なさげに、しかしどこか笑みを浮かべてそう告げる

 

「幸い大会まではあと四ヶ月ある。その間は暇を取らすから、アリアドネーで修行をするのじゃ。代わりの執事などの心配は要らぬ。もともと妾の付き人はヴィルヘルミナ一人だったからの」

 

まさか皇帝陛下が一枚噛んでいたとは思わなかった

しかも無様な戦いを見せてしまったらお払い箱…

これは本腰を入れて剣闘大会に臨むしかない…んだけど

 

「あのテオドラさま。その剣闘大会って『ジャック・ラカン』がエントリーしている物ではないですか?」

「そうじゃな。まだ参加者募集などはしていないが、本人は出場するつもりらしいぞ」

 

ジャック・ラカン。彼はヘラス帝国では知らぬ者がいないほどの超有名人だ

少年奴隷から成り上がり、今では剣闘界の頂点を極めた男

その強さは『死なない男』『不死身バカ』『つかあのおっさん剣が刺さんねーんだけどマジで』などの異名にも表れている

 

「まあ心配はいるまいよ。お主じゃったら、かの伝説の拳闘士を倒せると信じておる」

 

ハヤテと離れるのは妾とて嫌じゃしな、と顔を紅くしそっぽを向きながら呟く

 

「…はあ、分かりました。もともと皇帝陛下が言われたのでしたら自分には拒否権はありませんし…。剣闘大会に参加いたします」

「本当か!ではハヤテ、少しかがんでくれぬか?」

 

言われたとおりにかがむと、テオドラさまが椅子から降りて近づいてくる

 

「光栄に思うが良い!妾の初めてじゃ!」

 

テオドラさまの顔がドアップで目の前に移ったかと思うと、唇に柔らかいものが触れる

いつの間にか足元に描かれていた魔法陣が光り、ふんわりとした風が僕とテオドラさまを包む

 

「…負けたら許さぬからな」

 

ふいっと紅い顔を背けたテオドラさまの胸には、僕が描かれた((仮契約|パクティオー))カードがしっかりと抱かれていた

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さてこれで疾風の仮契約者は三人ですね。爆発しろ

テオドラは個人的にフラグが弱い上に描写が薄いと思ってるので剣闘大会が終わった後辺りに補強を入れようと思っています

あと記憶喪失になった関係上、しばらくの間忍術は出てこないと思われます。すいません

 

次回の投稿をお待ちください

説明
第二十話です。お楽しみいただければ幸いです。
今回軽いキンクリがあります。ご注意ください
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コメント
>FALKENさん そうです。ヴィルヘルミナさんはシャナから取りました。テオドラのメイドキャラが欲しかったので(ディアーリーズ)
今更だが気づいた。ヴィルヘルミナ。そんな名前のキャラがたしかシャナにいた気がする。(ガルム)
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