第十八話

　　「袁家の乱　官渡の戦い　決着」

「な！？　敵が来たぞー！」

　一刀達の強襲で鳥巣内に動揺が走る。

「反応が遅い！」

　その隙に一刀は敵兵を次々に切り捨てていく。

「うわー！」

「こ、こいつ強ーよ！」

　一刀達の迅速な行動に袁家の軍はなす術もなく追い詰められていく。彼に注目している隙をついて杜預と闇那

はすでに動いていた。

「司馬昭だけじゃ無いわよ！　こちらからも行くわ！」

「な、後ろ！？　何時の間に此処まで接近していたんだ！」

　さらに彼女に気を取られた事で、彼らにとって良い訳できない事態が起こる。

「何処を見ているんです？　貴方達の役目は兵糧を守ることでしょう？」

「ああ！？　そんな！」

　ついに鳥巣の兵糧庫は燃やされた。

「雪蓮！」

「分かっているわ！　皆！、最早袁家に従う道理は無い！　これより我らは袁家を討つ！」

　ついに孫家は袁家討伐に参加し、孫家の軍はまっすぐ袁術の所に向かう。

　――しばらく戦が続くがついに袁家は衰弱により追い詰められる。

「何としても袁術を捕らえるか、討て！　これを投降の証にするために！」

　黄蓋が先鋒となり袁術軍を蹂躙する。

「な、七乃！」

「と、とりあえず逃げましょうお嬢様！」

　袁術はなりふり構わず逃げる。だが逃げた先には周泰が居た。

「ここは通しません！」

「な！　何時の間にいたのじゃ！？」

　どうすれば良いか分からず立ち止まってしまう。

「居たわ！　捕らえるわよ！」

　ついに孫策が追いつき囲まれてしまう。

「な、七乃ー！」

「お嬢様ー！」

　二人は恐怖でお互いの身体を抱きよせる。そして抵抗らしい事は出来ず捕まってしまった。

　一方、袁紹達の前には美華が立っていた。

「久しぶりね、雌豚……」

「お、王元姫さん」

　美華の鋭い眼光に雌豚と罵られても怒る事も出来ず、思わず怯む袁紹。どうやらかつての悪夢のような日々を思

い出しているようだ。

「ねぇ、雌豚」

「な、なんでしょう？」

「なんで皇帝になろうとしたの？」

「ほしい物全てを手に入れるためですわ！」

　袁紹は怯えているためか、思わず正直に答えてしまう。

「まさかとは思うけど……」

　今度は美華の目に光が無くなり、虚ろに見え出した。

「ソノ内ノ一ツニ、一君ヲ、手ニイレル事モ入ッテイル訳？」

「そ、その通りですわ……はっ！」

「フーン、ナメタコトスルワネ……」

　ゆらりっと美華の身体が動く。彼女の背後には形容しがたい黒い何かが見える。

　そして何処から取り出したのか解体用の短剣を取り出す。

「ソレガデキナイヨウニスルカラ……ジットシナサイ……エンショウォォォォォォォ！」

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ！」

　袁紹は絶叫しながら逃げる。

「ちょ！　姫様待ってー！」

「麗羽様！　置いてかないでくださーい！」

　文醜と顔良は涙目になりながら袁紹を呼び止めようとする。二人は腰が砕けて動けず彼女について来れなかった。

　――そして袁紹が逃げた先には、曹操軍と董卓軍が居た。

「さぁ、此処までよ！　麗羽！　大人しく縄を頂戴し」

「か、華琳さーん！」

　ここで誰もが予想だにしない出来事が起こる。

　袁紹が泣きながら曹操に抱きついた。

「え？　ちょ！？　麗羽！？」

「何でもしますから、私を助けてくださいまし！」

「どういう事！？　説明な……！？」

　曹操は悪寒を感じて言葉が途切れた。

「ミーツーケーター」

「お、王元姫」

　黒い何かを背後に現れた美華に曹操は動揺する。

　曹操軍の夏候姉妹も、親衛隊の二人も、張遼も、楽進、宇禁、李典も、軍師達も、そして董卓、華雄も、皆彼女

を見て、思考を停止させ固まっていた。

「れ、麗羽！　あなた何したの！？」

「こ、皇帝になった理由に司馬昭さ」

「！？」

　曹操は全て言わずとも全てを察した。

「思っても口にするな！　この馬鹿ー！？」

「ご、ごめんなさーい！」

　曹操は絶叫し、袁紹は素直に謝る。その間にも美華は二人に近づいている。

「ドウセダカラ、ソウソウモココデヤッチャオウカシラ」

「え！？　ちょ！？　待って！？」

「シャァァァァァァァァ！」

　美華は曹操の言葉に耳を貸さず彼女もろとも袁紹に襲いかかる。

　だがその凶気は彼女達に届くことは無かった。

「そこまで」

「まったく、手間が掛かります」

　瑠理と理奈が現れ、彼女を捕らえ抑えた。

「理奈、一刀の所に運ぶ」

「ええ、分かっています」

「ハ！・ナ！・セェ！」

　こうして美華は二人の手により一刀のところに連行される。

　残された曹操軍と董卓軍はしばらく呆然とする。少ししてようやく曹操が動く。

「……詠、袁紹を連れて行きなさい」

「わ、分かったわ」

　こうして官渡の戦いは幕を閉じた。