彼の決意 |
「マ、マルタァ!?な、何でここに居るの!?」
「何よぉエミル。わたしがここに居ちゃダメなの?」
「い、いやそういうことじゃなくて・・・。」
驚くのも当然だろう、とエミルは思った。
少し前にも説明した通り、今マルタは超多忙なはずだ。それこそ自分に会う暇のないくらい。
だが、現にこうしてマルタは自分の家に居る。
「そ、それにしてもマルタ。色々忙しかったんじゃなかったの?」
「うん。でもパパがね・・・、「もともとお前の罪じゃないからそんなに気負わなくてもいいんだ。だからエミル君にあって来なさい」だって・・・。」
マルタの父であるブルートは元ヴァンガードの総帥で、現在は投獄中の身である。
しかしエミル、マルタをはじめ世界再生の英雄達が彼の無実を訴えかけた。
その結果、彼は懲役四ヶ月程度の判決を言い渡された。
マルタは無罪ではなかった事に対し不満だったが、ブルート自身がその判決に対し泣いてエミル達に感謝していた。
「自分にも非はある、その期間でしっかりと悔い改めたい」とエミル達に告げ、投獄した。
「そうなんだ・・・。でもマルタ。やけに楽しそうに話してたみたいだけど、叔父さんたちと何を話してたの?」
「それはね・・・。」
と、言いかけた瞬間。
「エミル!お前はこんなに可愛い娘の彼氏なんてうらやましいねぇ!」
「え?え?」
「エミル。この娘を泣かせたら承知しないぞ・・・。男ならしっかり責任をだな・・・」
「え?は、はい・・・?」
と、やたらテンションが高い二人がそれぞれで話し始めていた。
叔父にいたっては男としての責任云々がどうのこうのと語り始めた。
「マ、マルタ・・・。叔父さんたちに何言ったの・・・?」
「うん!エミルの婚約者のマルタでーす!って!」
「え・・・、えええぇぇぇ!?なななななんて事言ってんのマルタァ!?」
そんなことを言えば、叔父達がテンション高めで話すのも当然である。
年頃の息子の彼女の話題となればテンションが上がってしまうのが親である。
「え・・・ちがうの・・・?」
「ま、まあそうなりたいけど・・・って今は恋人でしょ!」
「どうせ婚約者に発展するからいいじゃん・・・。」
「マ、マルタ・・・。」
「エミル・・・。」
と、どんなバカップルだこいつら、と言いたくなるような甘〜い空気を醸し出している。
それまで責任がどうのこうの話していた叔父もその空気にやられて今では失神している。
これも愛の成せる業なのだろうがもう少し自重して欲しいものだった。
「ああ〜・・・。もう熱いわね〜お二人さん?」
「「!!」」
そんな声がした事に気付いた二人はガバッ!と一気に離れた。
「あらあらも〜照れちゃって♪」
「(フロル叔母さん、こんな人だっけ・・・?)」
と、目の前にいる女性は本当に叔母なのかと疑い始めたエミルであった。
「と、ところでマルタ。ここに来た用事って、僕に会いに来ただけなの?」
「あ!そうそう、他にもあるんだ。」
その事が話題になった瞬間、急にマルタのテンションが上がった。
「あのね、実はリーガルさんがわたしたちをアルタミラに招待してくれるんだって!」
「えぇ!?そ、そうなの!?」
「うん!だからエミルと一緒に行こうと思って!ね、エミルは行くでしょ?」
「うん!・・・あ、でも叔父さんたちの許可を・・・。」
「いいよ。いってらっしゃいエミル。」
「そうだエミル。アルタミラへ行く機会なんてめったにないんだ。行ってこい。」
と、いつの間に復活していた叔父と叔母は笑顔で了承してくれた。
「・・・はい!ありがとう、叔父さん、叔母さん!」
「んじゃあ早速準備してね、エミル!」
「え・・・。マルタ、アルタミラっていつ行くの?」
「え?明日だけど?」
「・・・え?」
そのことばを聞いた瞬間、エミルは顔面蒼白になった。
「え?え?何かわたしマズイこと言った?」
「・・・後で話すよ。それよりマルタ、今日は止まっていきなよ。もう暗いしさ。」
「っっっ!!!」
ボンっ!と、急にマルタが顔を赤くして俯いてしまった。
「エミルって・・・しばらく見なかった間に・・・大胆になったね・・・。」
「え・・・えぇぇぇぇぇええ!?いやいやいやそうじゃなくて・・・。」
もちろんお互いの脳裏に浮かんだ映像は彼氏や彼女の家に泊まった一組のカップルがその晩ナニをシてしまった図である。
というかお互いにこんな事を考えて恥ずかしがってる姿はまさにバカップルである。
「か、構いませんか?叔父さん、叔母さん?」
「ああ、私たちは構わないが・・・寝るところがリビングしかなくなってしまうからエミルの部屋で「一緒に」寝る事になっても構わないか?」
と、さりげなく「一緒に」を強調していた。この辺がもう策士である。
「はい!!ぜんぜん、むしろオールオッケーです!!」
その言葉を聞いた瞬間、マルタが狂喜乱舞のごとくテンションが上がった。
「ちょっ・・・マルタ!また何言ってるの!」
「え〜・・・わたしはエミルと一緒に寝たいなぁ〜・・・」
「うっ・・・」
マルタの上目遣いにノックアウトしたエミルであった。
「じゃ、じゃあ上に行こうか、マルタ・・・。」
「う、うん・・・。」
そう言って上へ行こうとすると、またもや失神している叔父とにやにやしながらこちらを見ている叔母の姿が目に映った。
「えぇ!?じゃあ明日はその魔物退治の仕事で行けないの!?」
「い、いや明日の朝一番で終わらせれば大丈夫なんだけど・・・」
「な〜んだ。それなら、わたしも手伝うよ。」
「ほんと!?ありがとうマルタ!」
「でもさ、どうしてエミルは魔物退治屋になったの?」
今の彼女にとって、普段消極的な彼が自分から進んで危険な仕事に就くとはとても考えれなかった。
「・・・守りたいから。」
「え?」
「初めはね、ぼくが叔父さんたちに何か手伝わせてくれって頼んだんだけど、昔から親らしい事ができなかったからお前は何もしなくていい、って言われちゃって・・・。それでも、ぼくは何かをしたかったんだ。」
マルタは少し、驚いていた。
驚くと同時に、普段あまり見せないエミルの表情に魅入っていた。
「昔の自分にはできなかったこと。ぼくは皆からもらってきた「強さ」がある。そして・・・そのことを生かすためにもこの仕事を始めたんだ。」
エミルも少し話に熱が出てきたのか、マルタが自分に魅入ってる事には気付かなかった。
「もう一人のぼくが守ってくれたこの世界を・・・、違う形で、ぼくなりの形で守りたいって思ったんだ。」
「エミル・・・。」
彼には、彼なりの考えがあった。
この世界を守るために自分を受け入れてくれたラタトスクのため。
自分もせめて命ある限り、この世界と人々を守っていこうとした。
「・・・やっぱり、エミルはわたしの王子様だよ!」
「は、恥ずかしいよ・・・」
「エ〜ミルッ!だ〜いすきっ!」
「・・・もう。」
わたしも、彼のそばにいよう。
彼が繋いでくれた命を、彼と共に守っていこう。
それが、私の望みでもあるのだから―――――
後書き
とりあえずできましたが・・・。如何ですか?
こんな駄文でも拍手をいただけたら幸いです。
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どもどもこんばんは。 もう止まりません。というか止まれません・・・。 我が妄想は海よりも深く山よりも高しです。 この前書きもめんどくさいのでさっさと行きます |
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