ゆ き の よ る |
雪の夜は嫌いだと、あの人は言っていた
ゆ き の よ る
「いい 夜 ね ―」
その時に限って、あの雪の夜を見つめて呟いた
名前を呼ばれる
両の頬に触れるあの人の手の感触は降り積もる雪のように儚く
「お母さんと仲良くね」
あなたはとても良い子なのだから
耳に触れるあの人の言葉さえ、雪に埋められて行きそうで
不安になる
ここから先の展開を私は知っている。
だってこれは
いきなり辺りを照らすたくさんのヘッドライト
車の中から闇と刃の匂いをさせた人たちが あの人を攫って行く
「総代、お迎えに上がりました」
「お待たせを、では始めましょう」
私の傍を離れて、暗い昏い闇の世界に足を進めるあの人を
どうして私の手はあの人を引き止めるために動いてはくれないのだろうか
どうしてこの足はあの人を庇う為に進んではくれないのだろう
私はただ泣いているだけ
涙を流し、ただ見上げることしか出来なかった
だというのに、先輩は 相変らずの陽だまりの様な笑みを浮かべて
「健やかで いてね」
その言葉だけを残して闇の中へ消えていった
「_____ッ!!」
目が醒める
あの日から雪が降る度に繰り返す夢で声にならない叫びと共に目が醒める
目尻は、相変わらす涙で濡れていた
外を見れば、白い雪が闇を浸食している
こんな夜は、否が応でもあの人の言葉を思い出す
「本当に、雪の夜はロマンチックなんかじゃないんですね。 雪緒先輩」
欺瞞とは判っていても、せめて願う
どうかあの人が、ひとひらの雪のように溶け去る事の無いようにと
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サルベージ3弾 | ||
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