魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第六十四話 知り合いにお土産を手渡します
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 修学旅行から帰って来た翌日。今日は土曜日。

 

 「これ、修学旅行のお土産」

 

 「わざわざ済まないね。勇紀君」

 

 最近、あまり顔を出していなかったスカリエッティのアジトへお邪魔している俺。

 

 「僕からもお土産です」

 

 「私からもお土産よ。どうぞ」

 

 「…君達とは初対面だよね?見知らぬ相手に土産なんて普通渡さないと思うんだが…」

 

 …ついでに亮太と椿姫も一緒に来ている。てか勝手に着いてきた。

 亮太の事に関してはトーレ、クアットロ、チンクから聞いているだろうけどスカリエッティ本人が会うのは今日が初めてだからな。

 

 「お前等、まずは自己紹介しろよ」

 

 コイツ等、着いて来たのはいいけど何でこんなに寛いでんの?

 

 「あっ、そうだったね。僕は大槻亮太です。かなり前の事ですが、お宅の娘さん達と一戦交えました」

 

 「ほう、君が噂の亮太君かね?娘達を一瞬で倒したという…」

 

 「ええ、あの時はゼストさんを助けるために止むを得ず…」

 

 「いや、いいよ。あの時は評議会の言いなりになっていたとはいえ、私達に非がある事は事実だからね」

 

 頭を下げる亮太だがスカリエッティは自分の娘が傷付けられた事を責めたりはしなかった。

 まあ、当事者のトーレ、クアットロ、チンクも気にはしていない様なのでよかった。

 ここにきて顔を合わせた時は即戦闘に発展しないか不安だったからな。

 

 「次は私ね。私は滝島椿姫。亮太と同じで首都防衛隊に所属しているの。よろしく」(ニコッ)

 

 「(ドキッ)う、うむ。よろしく椿姫君////」

 

 …おい、無限の欲望よ。アンタまでニコポで即堕ちかい。

 これでクロノ、ユーノ、ザフィーラに続いて原作男キャラ4人目だな。

 

 「…で、スカリエッティ。少しいいか?」

 

 「ん?何だい?」

 

 「あそこの柱の影から隠れる様にしてコッチ見てるのは?」

 

 さっきからコッチをガン見してる存在が気になってしょうがない。

 まあ恥ずかしがってるというよりスカリエッティに呼ばれるのを待ってるみたいだけど。

 髪の色が水色で長さは肩にかかるくらいの元気そうな少女。

 

 「ああ、初対面の亮太君と椿姫君は当然として勇紀君にも会わせるのは初めてだね。少し前に完成した新しい娘でセインと言うんだ。セイン、君もこっちに来て挨拶しなさい」

 

 「了解ドクター♪」

 

 スカリエッティに呼ばれて俺達の側に来るセイン。

 

 「私はセインって言うんだ。これからよろしくね3人共」

 

 「「「よろしく」」」

 

 明るい口調で自己紹介してくれるセインに俺達も挨拶を返し、自己紹介する。

 そうか…セインが完成したって事はこれで半分。残ってるのは((NO.7|セッテ))((NO.8|オットー))((NO.9|ノーヴェ))((NO.10|ディエチ))((NO.11|ウェンディ))((NO.12|ディード))の6人。

 この6人の製作に積極的に取り組んでるのはクアットロらしい。

 

 「…しかし以前とは違い勇紀君、それに亮太君も椿姫君も今は管理局員だろう?立場上は犯罪者である私を捕まえないといけないのではないかね?」

 

 「…スカリエッティ。俺は確かに局員だけど『今日は有休使います』と言って申請してきたから問題無い。有休中に仕事する気なんておきないし」

 

 「そんな事でいいのかね?」

 

 「((無問題|モーマンタイ))だ、俺はな。そっちの2人はどうか知らんが」

 

 チラリと視線を向けると2人は

 

 「「バレなきゃ問題無いよ(問題無いわよ)」」

 

 全く言う気は無いらしい。

 

 「…お人好しだねぇ君達は」

 

 スカリエッティが笑みを浮かべる。

 

 「ま、将来的にはアンタに懸けられてる広域指名手配も外してやるさ」

 

 その為には実績上げて偉くならんといかんけど。

 

 「君なら本当に実行しそうで怖いねぇ」

 

 「うんうん。勇紀ならやれるんじゃないかな」

 

 「そして権力に物を言わせて管理局ハーレムを…」

 

 「んな事するか!!」

 

 椿姫がいらん事言うが、大声で即否定する。そんなの考えてる奴なんて銀髪トリオぐらいだ。

 …そういや聖王教会でハーレム考えてる奴もいたなぁ。

 名前は…何だっけ?確か……ヒャダイン?

 ドラクエの魔法の名前っぽかった様な気がしたけど。

 …まあいいか。

 

 「ところでセインだったっけ?」

 

 「ん?なーにー?」

 

 「さっきから俺の事やたら触るけど俺は珍獣でもなんでもないぞ」

 

 セインは俺の顔や背中なんかをペタペタ触ってくる。

 

 「あははー、ゴメンゴメン。ドクター以外の普通の人間に会うの初めてだから珍しくってつい…」

 

 謝ってるけど触るのを止めるつもりはないのね。

 

 「何で俺?亮太や椿姫もいるのに…」

 

 「ドクター助けたのは勇紀でしょ?だから勇紀に興味が沸いただけ。あ、名前で呼んだけどいいよね?」

 

 「呼び方に関しては苗字でも名前でもソッチに任せる。俺は今後、セインって呼ばせて貰うし。後、興味ねぇ…」

 

 俺じゃなくて((破戒すべき全ての符|ルールブレイカー))に興味があるんじゃないのか?

 

 「ふむ。仲が良いのは良い事だ。娘と仲良くしてくれて私は嬉しいよ」

 

 「「いや全く」」

 

 スカリエッティは微笑ましい笑みなんだが亮太と椿姫はややニヤついてる。

 ……燃やすか?

 俺が不機嫌そうな表情を上げている間もセインは俺をペタペタ触ったり頬を合わせて頬擦りしてきたり、されるがままになっている。

 

 「「「セーイーンー(セーイーンーちゃーんー)」」」

 

 そこでトーレ、クアットロ、チンクが声を上げてセインを呼ぶ。

 

 「なー……に………」

 

 セインは3人を見て固まった。

 それもその筈。

 何故か物凄く怒気を放ち、背後に阿修羅が見える様な錯覚を感じさせる程のトーレ、クアットロ、チンクが声を揃え、呼んでいるからだ。

 

 「少し訓練を行うぞセイン。勿論私とチンクの2人を相手にな」

 

 「せっかくだ。今日は姉も本気で相手をしてやろう」

 

 「いやいやいや!!トーレ姉とチンク姉の2人を同時に相手なんてしたら私の身体がもたないから!!」

 

 「大丈夫よセインちゃん。私がちゃんと修理してあげるから」

 

 「それ、私が壊れる事確定してるよねクア姉!!?」

 

 和やかな雰囲気が一転して殺伐としたモノになっている。

 俺は当然口を挟まない。というよりも挟めない。

 

 「グダグダ言ってないでさっさと来い!」

 

 ライドインパルスを使い、一瞬で移動してきたトーレがセインの襟首を掴んで引っ張っていく。

 

 「う、ウーノ姉!!ウーノ姉助けて!!」

 

 セインはウーノさんに懇願するが

 

 「……………………」

 

 無言で手をヒラヒラと軽く振って見送るだけである。ウーノさんもそれとなく怒気放ってる。

 続いてコチラに視線を向けてくるが

 

 「さて、家に帰って部屋の掃除をしなくちゃ」

 

 「あ、僕も」

 

 「私も」

 

 俺達は一斉に立ち上がってスカリエッティに挨拶した後アジトを発つ。

 セイン、頑張れ………。

 

 

 

 「お土産です」

 

 翌日、『陸士108部隊の皆さんで食べて下さい』と大量の赤福を手渡す俺。

 その瞬間、我先にと赤福へ群がる隊員の皆さん。

 

 「地球の料理やお菓子は何故こうもミッドで人気が出るのか?」

 

 「そりゃあ美味いからだろ、モグモグ…」

 

 「あ、ワッキーさん」

 

 早速赤福を手に取って頬張りながら俺の疑問に答えてくれる。

 

 「お前さんが作る賄いも好評だし、こんな物がいつでも食べられるお前の出身世界が羨ましいよ」

 

 「そうですか」

 

 まあ自分の世界の事が褒められるのは悪い事じゃないな。

 

 「で、この土産物はまだあるのか?」

 

 「ありますよ。後は聖王教会とナカジマ三佐の娘さん達に渡す予定ですから」

 

 俺としてはゲンさん本人に渡してもらうつもりだったのだが、ゲンさんが『自分で手渡せ』というので今日お邪魔する事になっている。

 レジアス中将の分は既に渡してきたから今頃は食べてくれてる筈。

 

 「という訳で今から聖王教会に行って来ますんで何かあったら連絡下さい」

 

 「おう、気を付けてな」

 

 ワッキーさんの言葉に頷いて俺は隊舎を後にし、聖王教会へ向かうのだった………。

 

 

 

 「はいコレ、赤福っていう俺の世界のお菓子。お土産に買ってきたんだ」

 

 「「ありがとうございます」」

 

 前回は車で来たが、今回は電車とバスを使ってベルカ自治領まで、そこから徒歩で聖王教会までやってきた。

 カリムは勉強、シャッハは訓練をしていたらしいのだが、わざわざ空いてる客室を用意し、ココに呼んでくれたので今2人と対面している。

 ここまでして貰わなくても良かったんだけどな。渡す物渡したらすぐ出るつもりだったし。

 

 「ところで勇紀さん」

 

 「ん?」

 

 「勇紀さんははやてと知り合いだったんですね」

 

 「そうだけど言ってなかったっけ?」

 

 「ええ、先日はやてが聖王教会に来た時偶々知りまして」

 

 …カリムの奴、何か少し不機嫌になってね?

 

 「随分騎士はやてとは仲が良い様ですけど一体どういうご関係なのでしょうか?」

 

 …訂正。シャッハも不機嫌だ。

 

 「どういうって言われても…同じ世界出身で同じ街に住んでる友達だけど?」

 

 「「それだけですか?」」

 

 「むしろそれ以外何かあるか?」

 

 カリムとシャッハに聞き返す。

 

 「「…いえ、すみません。少し気になったもので(つまり恋人とかそういう関係じゃないんですね)」」

 

 何かホッと息を吐いて胸を撫で下ろしてるけど。

 

 「…それにしてもこの紅茶美味しいな」

 

 「気に入って頂けましたか?」

 

 「ああ、結構良い茶の葉使ってるなコレ」

 

 「お客様に出す際には、いつもその紅茶を用意するんですよ」

 

 「へえ〜」

 

 「お代わりはいかがですか?」

 

 「頂こうかな」

 

 空になったカップに注いでくれた紅茶を堪能しながら談笑する。

 結局長居する事になってしまい、聖王教会を後にしたのは空がオレンジ色に染まり始めた頃だった………。

 

 

 

 「結構、遅かったな」

 

 「すいませんでした」

 

 「良いって事よ。お前さん、今日は仕事で来た訳じゃねえんだし」

 

 隊舎に戻ってくる際は転移魔法を使った。使わなかったら完全に日が暮れてただろうし。

 それからミッドのスーパーで食材を買ってゲンさんと共にナカジマ家に向かう。

 実は偶にお邪魔するのだがその時は俺が料理を作ってあげたりしている。

 

 「しかしわざわざ作らなくても惣菜か出前で良かったんじゃねえのか?」

 

 「ああ、その事でクイントさんから伝言が。『育ち盛りの娘達に偏った食事ばかり摂らせない様に!!』との事です。クイントさん、怒ってましたよ?」

 

 俺の言葉を聞き、ゲンさんの顔が青ざめる。

 

 「は、はは…こりゃ、アイツの折檻は覚悟しないといけねえな」

 

 若干震えてもいるが、そんなに怖いのだろうか?

 確かに電話越しで聞いた声からは怒ってるという事がハッキリと分かるぐらいだったけど震える程怖いとも思えなかった。

 …帰ったらメガーヌさんに聞いてみるか。

 そんな事を思いながらも歩く事は止めず、程無くしてナカジマ家に到着。

 

 「帰ったぞー」

 

 「お邪魔します」

 

 玄関の扉を開けて俺とゲンさんは声を出すと、やってきたのはギンガだけだった。

 

 「お父さんおかえりなさい。長谷川さんもいらっしゃい」

 

 「ギンガだけか。スバルはどうした?」

 

 「スバルならリビングで寝てるよ」

 

 ゲンさんの問いにギンガが答える。

 

 「そうか」

 

 「じゃあ俺は早速作りますんで」

 

 「すまねえな」

 

 「いえいえ。じゃあキッチン借りますんで」

 

 俺は手に持っているスーパーの袋を持ってキッチンに向かう。

 

 「長谷川さん、私も料理を手伝いますよ」

 

 「そう?じゃあお願いしようかな」

 

 俺の後をギンガはついて来る。

 キッチンで食材を袋から取り出し、夕食の準備をする。

 

 「それで、今日は何を作るんですか?」

 

 「今日は豚の挽肉と豆腐が安かったから麻婆豆腐にする予定だよ」

 

 「麻婆豆腐?」

 

 首を傾げているギンガ。

 そういや、ミッドには麻婆豆腐無いんだっけ。

 

 「俺の世界の料理だよ」

 

 「へえ〜。美味しいんですか?」

 

 「俺は結構好きかな」

 

 まな板の上に置いた木綿豆腐をまずは切って一旦皿の上に乗せる。

 

 「ギンガちゃん、俺調味料の準備するからここにあるネギ、ニンニク、生姜をみじん切りにしておいてくれる?」

 

 「任せて下さい」

 

 調味料を用意し、中華鍋をコンロの上にセットする。

 ギンガはリズムの良い音を立てて材料を切っていく。

 随分上手くなってきたなぁ。

 包丁を扱うギンガの姿を見て思う。

 偶に来た時は俺が調理をしながらギンガに手伝って貰いつつも教えてたし。

 このまま上手くなればもう一人で料理が出来る様になるだろう。今度簡単な料理のレシピでも渡してあげようかな。

 …つか俺結構料理する時、誰かに教える事が多い様な気がする。

 

 「出来ました」

 

 「了解。じゃあ早速作っていきますか」

 

 中華鍋にサラダ油を入れ、なじませる。

 そのまま俺はギンガが時折聞いてくる質問に答えながらも料理を作るのだった………。

 

 

 

 「で、お味の方は如何ですか?」

 

 「美味しいです」

 

 「確かにな。こりゃいける」

 

 「モグモグ…」(コクコク)

 

 良かった。気に入って貰って何よりだ。

 丁度、麻婆豆腐が出来た頃にスバルも目を覚まし、そのまま夕食に突入。

 家には『夕食要りません』と連絡済みなので俺もナカジマ家の3人と一緒に食べている。

 

 「ちなみにご飯にかけて麻婆丼にするのも有りです」

 

 出来立てのご飯の時は大抵麻婆丼にして食べる。

 家で麻婆丼にするのはレヴィとルーテシアぐらいか。シュテル、ディアーチェ、ユーリ、メガーヌさんは普通に麻婆豆腐とご飯は分けて食べるし。

 まあ、ルーテシアはまだ箸を使うのがちょっと苦手だからな。丼にしたらスプーン使えるし。

 

 「何つーか、地球っていう星の食文化は進んでるんだな」

 

 「ミッドの料理よりも美味しいものが多いですからね」

 

 「……おかわり」

 

 「ん?はいはい。ご飯の量は普通で良い?」

 

 「ん」(コクコク)

 

 スバルが差し出す空のお椀を受け取り、ご飯をよそう。

 思えばスバルも少しずつだが俺と会話する様になってきた。当初はギンガの後ろに隠れながらこっちを見ていたんだが、今では隠れる様な事は無くなってきたし。

 

 「(実際には俺の作る料理が気に入ってくれてるらしいんだけど)」

 

 以前ゲンさんにそう言われた事を思い出す。

 …餌付けしてるみたいだな。

 

 「はい、どうぞ」

 

 「…ありがとうございます」

 

 お椀を受け取り、口にご飯を運んでいく。

 

 「もう完璧にお前さんは主夫だな」

 

 「主夫ですね」

 

 「…もう否定しないです。よく知り合いにも言われるんですから」

 

 「まあ、貶してる訳じゃねえんだし良い事じゃねえか」

 

 「私もこれぐらい料理が上手ければなぁ…」

 

 「モグモグ…」

 

 一家団欒といった感じの会話をしながらも箸は進む。

 夕食後は食器を洗った後、お土産の赤福を渡し、あまり遅くならない内にお暇する。

 

 「じゃあこれで」

 

 「おう、気を付けて帰れよ」

 

 「はい。二人共、またね」

 

 「今日も美味しいご飯ありがとうございました」

 

 「……………………」

 

 「ほら、スバルも挨拶」

 

 ギンガに促され一歩前に出たスバルだが

 

 「さようなら…お、おにいちゃん…//」

 

 「え?」

 

 「お?」

 

 「あら?」

 

 スバルを除く全員は『お兄ちゃん』発言を聞いて目が点になった。

 言った本人は恥ずかしいのか若干頬染めて俯きがちだし。

 

 「えっと…何でお兄ちゃん?」

 

 「…優しいから//」

 

 優しいですか…。

 

 「あと、美味しいご飯作ってくれるから」

 

 むしろそっちが本命とかじゃないよな?

 スバルの構図では『お兄ちゃん=コックさん』みたいな感じになってそうだ。

 まあ、そう呼ばれて悪い気はしないけど。

 

 「あと…」

 

 「???」

 

 まだ何かある様だ。

 

 「私の事は『スバル』でいいです//」

 

 「ちゃん付けしなくて良いって事?」

 

 「……………………」(コクコク)

 

 「じゃあ、私の事も呼び捨てで良いです。その代わり私も『勇紀さん』って呼んでも良いですか?」

 

 ギンガもスバルに続き便乗してきた。

 

 「…二人が良いなら今後は呼び捨てにするよ。俺に対する呼び方も2人に任せるから」

 

 ギンガはともかくスバルがこんな事を言うのは予想外だったけど、まあいいかな。

 

 「随分懐かれちまったなあ勇坊」

 

 「自分でもビックリしてますけどね」

 

 ゲンさんの言葉に苦笑して返す。

 それからすぐにナカジマ家を後にしてすぐに転移し、家に着いた時は夜の9時前になっていた………。

 

 

 

 週明けの月曜日。

 学校から帰って来た俺は早速さざなみ寮へやって来た。

 

 「これどうぞ。お土産の赤福です」

 

 「ありがとう」

 

 耕介さんに手渡し、さざなみ寮に人気が無い理由を聞いてみる。

 

 「今日はやけに静かですね」

 

 「ああ、皆仕事やバイトなんかで出ているからね」

 

 「へえ…珍しい」

 

 「ゆうひは今度イギリスに戻るみたいだしね」

 

 「なら見送りぐらいはした方がいいですかねぇ?」

 

 「してやったら良いんじゃないかな?ただ、ゆうひの奴は君を無理やりにでもイギリスに連れて行きそうだけどね」

 

 「ははは…」

 

 否定出来ない。

 あのブラコンお姉様ならやりそうだ。

 縄でグルグル巻かれ、ガムテープを口に張られ、必死にもがく俺…。

 

 「…行くの止めとこうかな」

 

 何か身の危険を感じてきた。

 実際にそんな事されても転移魔法使えば簡単に逃げられるんだけどね。

 

 「そう言えば那美さんと久遠は神社にいなかったんですけど、何処にいるんです?」

 

 実はさざなみ寮に来る前に神社に寄ってきたけど那美さんも久遠もいなかった。

 

 「ああ、今日は朝から少し遠出してるよ。退魔師の仕事が入ったらしくてね。今日は帰って来ないんじゃないかな?」

 

 何てこったい。

 久遠をモフモフして癒しを堪能しようと思っていたのに。

 

 「那美さんと久遠、何処まで行ったんですか?」

 

 「北陸の方だったかな?そこの同業者と共闘する様な事言ってたから」

 

 北陸………。

 あっちの方で那美さんと同業者って言われ、真っ先に思い浮かぶのは鬼斬り役の各務森家なんだけど。

 

 「何でも妖の類を封印する事に特化している退魔師らしいけどね」

 

 え!?マジで各務森家のトコに行ってるの!?

 

 「(久遠、大丈夫かなぁ…)」

 

 那美さんと一緒だから間違って封印されたりとかは無いと思うけど。

 俺はただただ、那美さんと久遠が無事に帰って来る事を願う事しか出来なかった………。

 

 

 

 〜〜???視点〜〜

 

 「久遠!!」

 

 「くーー!!」

 

 バチバチバチ!!

 

 神咲の退魔師が従える人型の妖狐が指先から雷撃を放ち、妖に命中する。

 

 「ギャオオオオオォォォォォッッッッッ!!!!」

 

 直撃を受けた妖はのた打ち回り、苦悶の表情を浮かべて消滅していく。

 

 「…これで残りは4体ですか」

 

 私はその様を見た後、一斉に襲い掛かってくる妖に

 

 「滅します」

 

 ブンッ……ザシュッ!

 

 霊刀を一太刀振り下ろし、まず1体の妖を斬り伏せる。

 その隙に残りの3体が迫り来る。

 霊刀を振り下ろした直後で若干身体が硬直しており、そのまま私を殺す事が出来ると思っているのでしょう。

 ですが…

 

 「はあああっっっっ!!!!」

 

 ドゴッ!……グシャッ!

 

 横から割り込んできた影が1体の妖怪を蹴り飛ばし、続いて別の妖の頭部に拳を叩きこむ。

 その強烈な一撃を受けた2体の妖は悲鳴を上げる事無く絶命していた。

 

 「ご無事ですか飛白姉様!!?」

 

 「助かりました飛鈴」

 

 私の妹、飛鈴が割り込んでこなかったら致命傷を負っていたかもしれませんね。

 私はすぐさま体勢を整え

 

 「これで残りは1体…」

 

 最後の妖に視線を向けます。

 

 「ギ…ギギ…」

 

 最早、勝ち目は無いと悟ったのでしょう。背を向け逃げ出しますが

 

 「逃しはしません」

 

 退魔の依頼が出ている以上、ここで滅しておかなくては。

 私の手に持つ御鏡には妖の姿が映っており

 

 「…滅」

 

 ((妖の姿を映している御鏡|・・・・・・・・・・・))に霊刀を突き刺します。直後…

 

 「ギギャッ!!?」

 

 突き刺した霊刀の先端が妖の胸元からその姿を見せ、私の霊力に耐え切れなかった妖はそのまま消滅していきます。

 

 「ふう…」

 

 全ての妖を片付け、一息ついた私に神咲の退魔師が近寄ってきます。

 彼女が手に抱き抱えているのは一匹の子狐。おそらく先程まで人型でいた妖狐でしょう。

 

 「あれが各務森の虚像封魔術なのかな?」

 

 「ええ、鏡を使い対象に封印を施すのが虚像封魔術本来の用途ですが、ああいった使い方で封印するのではなく滅する事も可能なのです」

 

 「凄いね。その歳であれ程の霊力を自在に操れるのは」

 

 「神咲の退魔師である貴女でもあれぐらいの霊力は扱えるのでしょう?」

 

 「あはは…私が飛白ちゃんぐらいの年齢ではそこまで上手く操れなかったよ。それに私、飛白ちゃんみたいに自分で闘う術はそこまで得意じゃないから」

 

 そう言えば彼女は妖や霊を滅するのではなく対話、説得による鎮魂術の類が得意と聞きましたね。

 なら彼女の言葉に耳を傾けず、襲い掛かってくる存在にはあの妖狐が対処するという事ですか。

 

 「その妖狐がいなければ襲い掛かってくる妖から貴女自身の身を守る術が無いのでは?」

 

 「そうなんだよねぇ」

 

 …そんな呑気に返事してもいいのですか?自分自身の事でしょうに。

 

 「だから私と久遠はもう切っても切れない関係なんだよ。ね、久遠?」

 

 「くーん」

 

 撫でられている妖狐は気持ち良さそうにしながら返事をします。

 

 「てか、その妖狐が暴れたらアンタどうやって止めるの?」

 

 飛鈴…彼女は私達より年上なのですからその言葉遣いは失礼ですよ。

 

 「前に一回、久遠の封印が解けて暴走した事もあったけど今はもうその心配も無いから大丈夫なんだよ飛鈴ちゃん」

 

 私は彼女が抱えている妖狐を『眼』で見つめますが

 

 「…確かにその妖狐からは一切の邪気、邪念を感じられませんね」

 

 ここまで純粋な力だけを有している妖というのも珍しいです。

 

 「姉様がそう言うなら大丈夫なんですね」

 

 「…飛白ちゃんのその眼が当主の証なんだよね?」

 

 「ええ、この『眼』の所有者が各務森家の当主を背負う義務が課せられていますので」

 

 そう…私の左目は『獣の目』と呼ばれるヒトのものではない目を持っている。

 『天眼』『重なってしまった第3の目』とも言われる禁眼であり、この世の災厄を見つめるこの眼を持つ者が各務森家の当主の座に着かなければならない。

 

 「物騒な言い方する割には綺麗な眼だよね」

 

 「綺麗な眼…ですか」

 

 「うん。私はそう思うけど…」

 

 「…そうですか」

 

 まさか綺麗だと言われるとは思いませんでした。

 そう言えば…

 

 「『彼』も同じ事を言ってくれましたね」

 

 「『彼』?」

 

 「…姉様、まさかアイツの事ですか?」

 

 首を傾げる神咲の巫女に、少し表情を変える飛鈴。

 

 「もう8年程前になりますか……。この地に私達の母の知り合いが自分達の子を連れて訪れた事がありました」

 

 私より二つ年下で飛鈴と同い年の男の子。

 しかしとても見た目通りの子供とは思えない雰囲気を纏っていた不思議な子でしたね。

 

 「当時はこの眼のせいで同年代の子供には気味悪がられましたが『彼』だけは違ったんです」

 

 あの時、ごく普通に接してくる『彼』に私は聞いてみました。

 

 『貴方はこの『眼』を不気味に思ったりしないのですか?』

 

 と。一瞬彼はキョトンとしましたが

 

 『何で不気味に思うのさ?むしろ凄く綺麗な『眼』だと思うよ』

 

 曇りない笑顔で、嘘偽りを感じさせない言葉でそう言ってくれましたね。

 あの言葉が当時の私にはどれだけ救いになった事か…。

 

 「…当時はこの眼を持つせいでロクに友達が出来ませんでしたし。随分この眼を持って生まれてきた自分や私を産んだ親を恨んだものです」

 

 …そう言えば彼もこの神咲の巫女と同じ『海鳴市』に住んでいる筈。今はどうしているのでしょうか?

 少なくとも『裏』の世界では特に彼の情報を聞いたりしませんが案外、平穏に暮らしているのかもしれませんね。

 

 「飛白ちゃん、何だか嬉しそうだね?」

 

 「そうですか?」

 

 「うん。その子の事を話す飛白ちゃん、凄く良い笑顔だよ」

 

 「でも姉様、アイツは男ですよ?どうせ学校の男子連中と一緒で卑しい視線を送ってきたりしますよ。挙句の果てには姉様のわがままボディに欲情して襲い掛かってきますよ」

 

 「…飛鈴、彼は貴女と同い年なんですよ?」

 

 「年齢なんて関係ありません!男は皆ケダモノです姉様!!」

 

 「貴女も彼の事は気に入ってるでしょうに…」

 

 「な!?なななななな、何を言うんですか姉様!!?////」

 

 物凄い動揺ぶりですね。顔を真っ赤にしてまで。

 

 「クスクス…2人共、その子の事が好きなんだねえ」

 

 「ば、ばばば馬鹿言うな神咲!!私がアイツの事なんて…アイツの事なんてえええぇぇぇっっっ!!!////」

 

 叫ぶ様な大声で必死に否定する飛鈴。

 しかし彼の事が好き…ですか。

 

 「まあ、あんな事を言ってくれたのは正直嬉しかったですし//」

 

 出来ればいつかまた会いたいものです。

 それか私の方から会いに行くというのも良いかもしれませんね………。

 

 

 

 〜〜???視点終了〜〜

 

-2ページ-

 〜〜あとがき〜〜

 

 飛白姉様の戦い方は『おまもりひまり』バージョンよりも『緋牙刻』バージョンの方を参考にしています。

 あと飛鈴の正確な年齢って何歳なんだろうか?

 この小説内では勇紀と同い年にしてますが…

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
巫女さん’s来たのはいいけど、もしかしなくとも彼女らの言っておられる”アイツ”って・・・(海平?)
巫女キター(夜刀)
誤字 >あのシスコンお姉様ならやりそうだ 対象が勇紀=♂だからブラコンでは (本文の儘では妹魂、正解が弟魂)(道産子国士)
↓↓↓ハーレムにアインハルトは不可欠だよ!!(匿名希望)
カルピスウォーターさん, 飛白さん&飛鈴さんは 双子であると思いますか? [子供の頃の絵をベース,しかし、私は確信していない](deltago)
Ziona Chanaさんよう,将来勇紀さんは300室の大邸宅に住んでいるかも...彼の'wives'[not 'wife']&彼の子どもたちど /Extra/ Ziona Chanaさん, 39人の妻、94子どもと33人の孫. そして、これは'現実'にあります(deltago)
まぁあったらあったでひじょうに素晴らしいんだけど(シュヴァイツァ)
凄まじい数のハーレムだな。まさかvividの子ども組もなんてことはない…よね?(シュヴァイツァ)
数もさることながら固有戦力ありのヒロインが多すぎる。これが勇紀を軸に協力体制組んだらオリジナルさん、多少のテコ入れじゃ対抗できないぞ…ハッ!?空白期を作りこんで、Stsは実質勇紀ハーレムと化した魔改造バージョン機動六課無双で一気に駆け抜ける…新しい!(プロフェッサー.Y)
ハーレム作品といっても7人くらいが多いからこの作品はまさに真ハーレムとでもいうべきか…… 今のヒロインは40くらい?(匿名希望)
ん〜そっちの原作知らないから少し想像しずらい(涙)(アサシン)
私は'トータル勇紀争奪戦' 見るのを待つことができない. (彼に申し訳ありませんが...maybe)(deltago)
ここにも勇紀のハーレム要因が! え?今何人いるの?(にゃん死神)
那美さん,リラックスするには余裕がありません. 'その子'はあなたの愛の関心, 勇紀さんですよ /&/ 多くの人が予想通り, 飛白さん&飛鈴さんもですか~ (deltago)
スカリエッティが惚れるなんて・・・・・・・・・椿姫は恐ろしい女だ・・・・・・・・・・・・(ohatiyo)
「おまもりひまり」キャラまで・・・これは凄いことになりそうだwwww ↓だらりと解決でしょう。 ↓↓運命なのですよ、きっとね。 chocolate様>>リアルに赤福無双がありましたよ・・・自分。(黒咲白亜)
勇紀は修羅場になったらどうやって収拾つけるのだろうか.....(匿名希望)
どれだけ彼はフラグという名の縁をむすんでいるの?(匿名希望)
ヒロインが増えましたね。各務森姉妹もですが、どうやらナカジマ姉妹やスカさんの娘たちにもしっかりフラグが立っている様子。(chocolate)
なんという赤福無双(というほどでもないが)。でも確かに赤福は美味しい。(chocolate)
・・・神の思いつきで「アンジェリカル ペンデュラル」のチームスピアが登場したりしないだろうか?アイドルグループとして。(俊)
やっぱり出て来た各務森姉妹、しかも確実に堕としてるっぽいし。飛白の戦い方は『緋牙刻』が参考らしいですし、その流れでソフィアも登場して欲しいですね(俊)
今の彼にはハーレムという言葉じゃあ、生易しすぎるぜ。(FDP)
また増えちゃったYO!!そのうちに三桁いきそうで心配です。勇紀君のO☆HA☆NA☆SHIされる的な意味で。(Fols)
ふぅ、増えたか(kaito)
またハーレム要員増えたww(カルピスソーダ)
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魔法少女リリカルなのは 多重クロス ハーレム 原作ブレイク オリ主 転生者 恋愛 

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