IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode154 僅かでも残された可能性
「・・・な、何とか・・・間に合った」
「・・・・」
ユニコーンとバンシィは全員の前でフィールドを張って攻撃から守っていた。
「な、何だよ・・・これ」
「・・・まさか・・・こんな」
「・・・・」
「あ、ありえませんわ・・・」
「・・・・」
全員の視線の先には、さっきと大きく変わった景色が広がっていた。
さっきの攻撃によって地形は大きく円形に抉れてそこに海水が流れ込み、更に海底と海水が消滅したのかナハトヴァールの周囲半径数キロが凹み、そこに周りの海水が流れ込む。
同時に放電現象が凹んだ海面で起き、その中央にナハトヴァールが静止して浮かんでいる。
「嘘だろ?何だよこの力は・・・」
一夏はその光景を見て唖然としていた。しかしそれは他のメンバーも同じだ。
「地形どころか・・・海水や海底をも消滅している?」
「それだけじゃない。あれだけいた無人機が全て・・・消滅している」
『そんな馬鹿な!?全てを含むと数万は居たぞ。それを・・・一瞬で・・・』
「あれが・・・破壊の王・・・・・・ナハトヴァール」
「・・・私達の想像を遥かに超えた存在」
ユニコーンとバンシィに緊張味が帯びていた。
「想像以上だね」
「うん・・・」
「一体・・・あれって何だよ」
「二人は知っているように見えるぞ。隼人の身に何があったのかを」
箒はユニコーンとバンシィに聞く。
「説明している暇は無いよ。最も説明しても君達が到底理解出来るものじゃない」
「そうだね。あれは人間の常識なんかが通じない程の存在」
「常識が通じないって・・・」
「隼人は・・・無事なのか!?」
「・・・そうかもね」
「かもねって・・・」
「正直何が起きているか分からないよ」
「・・・・」
「・・・こうなってしまった以上・・・手段はもう残されて無い」
「え・・・?」
「手段が残されて無いって・・・」
「私達が最後にやれる事・・・・・・それは隼人君を・・・破壊する」
「な、何だって!?」
「隼人を・・・破壊するだと!?」
一夏と箒は目を見開いて驚く。
「それはつまり師匠を殺すと言うのか!?」
全身装甲で表情は見えないが、ラウラは驚きの表情を浮かべてユニコーンに問い返す。
「それ以外にもう方法は残されて無い。最も、破壊の王を破壊することが出来るのかは分からないけど」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!それしかもう方法が無いのか!?」
一夏は驚きを隠せず、ユニコーンに問う。
「破壊の王は正規的な方法じゃ止められない。もう最後の手段しか残ってない」
「それが・・・隼人を破壊する・・・」
「・・・・」
「そ、そんな・・・」
「そんなの認めろって言うのかよ!?」
「・・・・」
「まだ隼人を助けられる可能性はあるんだろ!」
「そりゃ残ってるかもしれないけど・・・」
「だったら、それを出来る限りでやって隼人を助けないと!」
ユニコーンは少し反応する。
「それを聞いて・・・一夏君はどうする気なの」
「助けるに決まっている!あいつを死なせるわけには――――」
「調子に乗らないでよ、青二才が」
と、ユニコーンは殺気染みた声を発してエクサランスカノンを一夏の眼前に向ける。
「っ!?」
一夏はいきなりの事に目を見開いて驚く。
「ゆ、ユニコーン!?」
「何をするんだ!」
箒はとっさにエクサランスカノンを払ってユニコーンを睨む。
「本気で・・・そんな事を言っているの」
「・・・だったら、何だよ」
殺気染みた声に一夏は若干押される。
「反吐が出る。一夏君の理想主義を聞いているとね」
「り、理想主義って・・・」
「一夏君は隼人君を救おうって言うけど、そんなのここに居る全員が・・・当然の様に思ってる事だよ」
「だったら尚更の事だろ!」
「でも、一夏君は自分が言っている事がどれほどの残酷な選択かって言うのを分かって言ってるの?」
「な、なに?」
「残酷な・・・選択だと?」
「なぜですの!?隼人さんを救う事が残酷な選択と言うのは!?」
「・・・やっぱり・・・何にも分かって無いんだ。大切な仲間の事なんか・・・これっぽっちも分かってない」
「ど、どういう意味だ」
「今の隼人君がどんな状態か・・・今の君達には分からないだろうね」
「・・・・」
「ユニコーン・・・」
必死になっているユニコーンをバンシィはただ見ているしかなかった。
「大切な仲間を救えた事で安堵し、そんな矢先に大切な仲間が彼の前で死んだ。それがどれほど隼人君を傷つけたか、どれほどの絶望が襲ったか、君達に分かるって言うの」
「そ、それは・・・」
「・・・・」
「仮に隼人君を救っても、精神は崩壊して心が壊れた状態。それは生きながら死んでいる屍同然の状態なんだよ」
「・・・・」
「心の傷は一生、永遠に消える事なんか無い。隼人君は生きながら永遠の苦しみを味わうことになり、自ら命を絶ってしまうかもしれない」
「・・・・」
「君達はただ隼人君にそんな苦しみを与える為にただ救おうって言うの?」
「・・・・」
「それは・・・」
「・・・見損なったよ、君達には。隼人君も随分こんな仲間の事なんか考えない最低な連中を大切にしようと思ったね」
「っ!!ちょっと待てよ!!いくらなんでもそれは言い過ぎだろ!!」
一夏は飛び出そうとするも、周囲にブラスタービットが現れてエネルギーチェーンで四肢を拘束される。
「っ!?」
更にエクサランスカノンの先端を眼前に突き立てる。
「いい加減鬱陶しいよ。次一言でも戯言を吐けば、吹っ飛ばすよ?」
その行為に我慢できず箒もユニコーンに向かおうとするが、ユニコーンは右腕のビームキャノンを向ける。
周囲のメンバーはユニコーンから発せられる殺気で金縛りにあって動けない。
「・・・これだから、人間は愚かで、いつまでも変わらないんだ」
「・・・・」
「言っている事の重大さなどこれっぽっちも考えない。だから綺麗事ばかりを簡単に言える。自分ではどうする事も出来ないくせして」
「・・・・」
「そして自分だけが満足すればいい。それは人間のエゴだよ」
「・・・・」
「やっぱり・・・期待外れだったね」
ユニコーンは一夏からエネルギーチェーンを外し、バンシィの隣まで進む。
「そこでジッとして見ていなさい。手を出そうとしても無駄だよ。最もそれは死にに行くような物だから」
「・・・・」
「死にに行きたいって言うなら、どうぞご自由に。私は止めないよ」
「・・・・」
「リインフォース。付いて来て」
『あ、あぁ・・・・・・分かった』
リインフォースは少し戸惑いながらもユニコーンとバンシィと共にナハトヴァールへと向かっていく。
(いいの?あんなにたくさん言ったりして)
バンシィは少し不安げにユニコーンに念話で話す。
(反応は見るよ。まぁ声はあまり上げてなくても、全部本当に怒っていたけどね)
(・・・・)
(彼らは行動を起こすよ。その後は彼ら次第だよ)
(・・・・)
(今は・・・やれるだけの事をやる。それだけだよ)
(そうだね)
そうして三人はナハトヴァールの少し離れた所で止まる。
『お前達・・・我が破壊の運命から抗うと言うのか』
「そうだね。まだ私達にはやる事がある」
「ここであなたに破壊される気は無い」
『・・・・』
ナハトヴァールは目を細めるようにツインアイを狭める。
『お前も・・・我に抗うか』
『・・・抗うさ。私にはやる事があるのだからな』
『・・・・』
『お前を倒し・・・隼人を救う為に』
『・・・・』
するとナハトヴァールの周囲に黄色い槍状のエネルギー刃が複数形成される。
『ならば・・・抗って見せろ。我が破壊からな』
ナハトヴァールは右手を前に向けて開くと、槍状のエネルギー刃をユニコーン達に向けて放った。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
一夏たちは気を落としていた。
「私達は・・・何も分かってなかったのか」
「・・・・」
「・・・隼人の事も・・・何も分かって居なかったのか」
箒は拳を握り締める。
「箒さん・・・」
「・・・弟子である私ですら・・・師匠の事を・・・何も分かってなかった」
気を落としたラウラは言葉を漏らす。
「ラウラさん」
「・・・・」
「ユニコーンの言う通りですわ。わたくし達は・・・隼人さんの事を何も考えていませんでしたわ」
『セシリアさん・・・』
「あいつがこれほど私達の事を考えていた。誘拐され、その間も、救出するまで・・・ずっと」
「・・・・」
「なのに、私達は・・・何でこんな・・・」
「師匠は強かった。だから・・・考えてなかったのかもしれない」
「・・・・」
「・・・兄さんの事を・・・何も分かってなかった」
颯は拳を握り締める。
「・・・・」
「兄さんは私を命を掛けて救ってくれたのに・・・私は何も・・・」
そのまま俯く。
「もう・・・ユニコーンの言う通りにしなければならないのか」
「・・・・」
「隼人を救う方法は・・・もう無いのか」
箒は少し諦めた様に言う。
「・・・・」
「・・・ユニコーンの言う隼人を破壊する。もうそれしか残されてないのだろうな」
シノンはボソッと呟く。
「姉さん・・・!」
颯は少し驚き味のある声でシノンに向かって言う。
「方法があるのなら私も善処する。だが、方法が無いのなら、やも得ないのだろう」
「・・・・」
「恨むなら恨むがいい。だけど、これが私なのだ。戦闘機人というものの・・・」
「・・・・」
「・・・本当に――――」
と、さっきまで黙っていた一夏が口を開く。
「本当に・・・それしか無いのか」
「・・・隼人を救っても、苦しみを味わう事になるのなら・・・ユニコーンの方法しかないのだろうな」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・それでも・・・それでもだ」
「・・・・?」
一夏は少しして言う。
「・・・俺は・・・それが正しい選択とは・・・思えない」
「一夏・・・」
「それは・・・わたくし達も同じですわ!何を善人ぶってそんな事を!」
「分かってる!分かってるさ!俺の言っている事は自己満足かもしれない。ユニコーンが言うように人間のエゴだって言うのは・・・!」
「・・・・」
「でも、だからって言って、このままでいいのかよ」
「・・・一夏さん」
「あいつがこのまま死ぬのが・・・本当に正しい事なのか」
「・・・それは」
「・・・俺は、正しいとは思わない。こんなの間違ってる!」
「一夏。お前と言うやつは・・・!」
ラウラは一夏に言い返そうとする。
「私も!一夏さんと同じ考えです!」
と、颯が言う。
「颯!?」
ラウラは驚く。
「お前まで・・・」
「・・・確かに・・・兄さんを救う事が現状で悪い展開になると言うのは・・・分かっています」
颯は拳を握り締める。
「でも、私は信じたい。まだ、兄さんの心がまだ健在である事を!」
「颯・・・」
「兄さんは私を命を掛けて助けてくれた!なら、私だって兄さんを助けたい!」
「・・・・」
「なら、私もお前達に賭けてみよう」
と、シノンが一夏と颯の組に入る。
「シノン・・・お前・・・」
「私も隼人がそう簡単にくたばるとは思ってない。何せ、私や颯のオリジナルだ」
全身装甲なので彼女の表情は分からないが、恐らく不敵な笑みを浮かべているのだろう。
「・・・・」
「こういう賭けもたまには悪くない」
『リインも賛成です!』
と、セシリアとユニゾンアウトしてツヴァイが出てくる。
「リインさん・・・あなた・・・」
『・・・リインは隼人さんの事をお姉ちゃんほど知りません。でも、それでもリインは知っています。心の強い隼人さんの事を。どんな状況でも諦めずに誘拐された仲間の事を考えて救おうとした・・・隼人さんの事を!』
「・・・・」
「・・・私も・・・そう願いたい」
「箒・・・」
さっきまで黙っていた箒が口を開く。
「あいつが・・・これで心が折れるやつとは・・・思えない」
「・・・・」
「そう信じたい・・・」
「箒さん・・・」
「ならば、私も・・・そう信じよう」
「ラウラ・・・」
「師匠は私に新しく生きる道を教えてくれた。それに命を掛けて私を救ってくれた。その恩に背く訳にはいかない」
「・・・・」
「可能性が残っているのなら、それに賭けてみたい。リスクなど考えずに・・・」
「私もその案に賛成だ」
と、マドカのプロヴィデンスがメンバーと合流する。
「お前・・・」
「隼人は私に生きるチャンスを与え、生きる意味を教えてくれた」
「・・・・」
「そんなやつがそう簡単に心が折れるなど・・・私には思えん」
「・・・マドカ」
「言っておくが、助けると言う目的が一致しただけだ。お前達に漬け込む気は無い」
「・・・・」
「みんな・・・・・・いいな」
「もちろんだ」
「みなさんがそこまで仰るのなら・・・わたくしも賭けてみますわ」
「あぁ」
「はい」
「いいだろう」
「うむ」
『はいです!』
「それに、こういう時隼人なら言いそうだからな」
「何をだ?」
「隼人さんらしい事と言うと・・・?」
「『最後まで諦めない・・・僅かでも可能性があるのなら・・・』ってな」
「なるほどな。確かに師匠が言いそうだな」
「そうですね」
「僅かでも可能性が残っているのなら、か」
『隼人さんらしいです』
(ゼロが言いそうな事だ。まぁ、悪くは無い)
「命がけの戦いになるな」
「あぁ。だが、望む所だ」
「えぇ」
「覚悟は出来ている」
「兄さんも私を救う為に命を賭けてくれた。なら、今度は私が命を賭けて兄さんを助ける!」
「命を懸ける、か。私にとっては初めての試みだな」
「全くだ。だが、それも私の使命だ」
『リインも頑張るです!』
そうして一夏達はそれぞれの想いを心に秘めて、ナハトヴァールへと向かう。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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