涙の神殿
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主人公【蒼基聖(あおき/さとし)】の不思議な出会い・・・

 

蒼基聖は自分の田舎に友達と一緒に遊びに来ていた。

聖の田舎には山の麓の方まで続く静かな森がある。

聖達はその森へ行くことにした。

童心に帰るという事でかくれんぼや缶蹴を満喫していた。

 

かくれんぼの途中、聖はより見つからないように森の奥深くへと進んで行った。

 

『深く来すぎた・・・。』

と今更思う聖。

 

東西南北どこへ行けばいいか全くわからない。

進むがままに歩んでゆく・・・

 

『どこまで続くんだ・・・』

と途方に暮れる聖。

 

その時、遠くの方に光が・・・!

その光に導かれるがまま進んでいった・・・

 

『・・・何だよここ・・・!』

と、聖はびっくりした。

 

そこには、光輝く大きな建物が・・・

 

『す、すげぇ・・・。』

と、絶句する聖。

 

近づいていくと石碑が建てられていてそこに≪涙の神殿≫と、刻まれていた。

『涙の神殿・・・何だよここ・・・。』

辺りをこの時代と思えない幻想的な草花が生い茂っていた。

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その時・・・

神殿の方から・・・

全身に白を纏い魔女のような帽子をかぶった少年。

木の枝を手に持ち、肩にリスを乗せた不思議な少年だった。

彼の周りには 小動物達が集まって付いていた。

その少年は聖とすれ違って行こうとした。

 

とっさに聖は

『待って…!』

と、 言った。

 

すると少年は立ち止まり

『何だい?迷い人よ。』

と、言った。

 

『君は何者なんだ?』

と、 聖は聞いた。

 

『僕はこの森を守っているんだ。君は?』

と、言ってきた。

 

『俺は蒼木聖。なぁ、この森の出方教えてくれ…!』

と、聖は言った。

 

『ここの森は涙の神殿だ…。』

と、少年は言った。

 

『そんな事わかってる!』

と、キレる聖。

 

『君が涙をくれるまで君はここに居てもらう…。』

と、意味不明な事を言ってくる少年。

 

『待て…!涙ならすぐ出る!』

と言って欠伸をし 聖は涙を流し、

 

『ほら出た!だから…』

と言っていると

 

『ふざけるな…君は涙を解ってない…。』

と、呆れる少年。

 

『えっ…!』

と びっくりする聖。

 

『解らしてあげよう。自然に…。』

と、言って歩み続ける少年。

 

『ま、待て…!』

と聖が 止めたが少年は立ち止まらなかった。

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少年が他の場所へ行ってから聖は涙の神殿の階段に腰を下ろしていた。

あれから何時間経ったのだろう・・・もう日が暮れていた・・・

 

『アイツ、遅っせぇな・・・。さっさと来いし。』

と愚痴っていた聖。

 

すると、あの少年らしき人影が暗闇の中に浮かんだ。

目を凝らして見ているとその影はどんどんと近づいて来ていた。

しかも少し急いだ感じで・・・

 

その影はやはり少年だった。

小さな鳥を抱えて必死に聖がいる神殿の方へと運んでくる。

 

『しっかりしろ!あと少しだからな!』

と、 必死に鳥に呼び掛ける少年。

 

聖が

『どうしたんだ?』

と、聞くと

 

 

『黙れ!涙を知らない奴が無駄口をたたくな!』

と、怒鳴る少年。

 

それを聞いた聖は

『なんだ?!その言い方!』

と、怒鳴り返した。

 

少年は 顔を苦痛で歪まし

『くそっ・・・傷が深すぎる・・・。』

 

痛みで鳥は鳴き叫ぶ・・・

『頑張れ・・・我の力を・・・。』

と小鳥に手をかざ した。

 

 

かざした少年の手から和らげな光が出てきていた。

『頼む・・・我の力で助かってくれ・・・!』

と、念じながら言う少年。その少年の瞳からは涙が・・・

 

『おぃ・・・大丈夫かよ・・・?』

と、気にし始める聖。

 

『静かに…。』

と、集中する少年。

 

しか しその時、

『ダメだ…死んだ…。』

と、自然に少年の頬を伝う涙。

 

聖は絶句していた。

しかし、少年は続けて光を送り続ける。

 

聖が

『何してんだ…?』

と、聞く。

 

すると少年は

『葬る光だよ・・・苦痛で涙を流した分、温かな光を送っているんだ。冷たい気持ちの

まま天界に行くのはな・・・。』

と真剣に言った。

 

それを聞いて聖はジーンと来てしまった…。

 

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聖が絶句していると、少年は死んだ小鳥を抱えて神殿の中へと入っていった。

それに付いていく聖。中は墓になっていた。

そして、神殿の中心部に貯水槽のような物がある。

 

『ここは…?』

と、聖が聞く。

 

『ここは、死者の身体と涙を保管する神殿なんだよ。』

と、少年は微笑みながら言う。

 

『それで、涙の神殿か・・・。』

と、聖は納得した。

 

『だから我はこの神殿で死者を温かく葬る責任があるんだ。』

 

『責任か…。』

と、聖が深く考える。

 

『涙は自力で出す物では無いんだ。涙は自然に出てくるんだ。』

と、聖に言う少年。

 

『そうだな…。』

と、言った瞬間・・・!

 

聖の頬を伝う自然な涙・・・

 

『君も本当の涙を手に入れたようだな。もう元の場所へ戻 れるだろう…。』

と、少年は言った。

 

『俺はどれくらいの時間ここに居たんだ?』

と、少年に聞く聖。

 

『涙の神殿、聖域には時間など存在しない。この神殿から北へ真っ直ぐ進め。

曲がるなよ?真っ直ぐだ。そうすれば、必ず元の場所へ戻れる。』

と、少年は言った。

 

『時間はわからないが、長い時間と沢山の事を学んだ気がした・・・。』

と、また涙を流す聖。

 

『頭を出せ・・・。』

と、少年は聖に言った。

 

(?)

不思議に思いながら頭を出す聖。

 

すると少年は、手を聖の頭にかざしあの光とはまた違った光を出してきた。

 

『この光は…?』

と、聖が聞く。

 

『聖涙(せいるい)のまじないだ。少しの事で簡単に涙を流すものではない。

正統な時に流せるようにな。』

と、光を送りながら言う少年。

 

 

『ありがとう。』

と、涙を拭って言う聖。

 

『よし…。行け!』

と、少年は聖の背中を押しながら言った。

 

聖は黙って頷き走り出した。

北へ全速力で走った。目を瞑って走り続けた。

感覚内で数分走ったところで空気が変わった。

 

目を開けるとそこは元の場所だった。

 

『あの場所にはもういけないかな・・・。』

と、笑って家に帰る聖。

 

聖はあの時流した涙を忘れないと誓った・・・

 

 

説明
厨二気味。
高校の修学旅行中に書いた作品です。
タイトル通り【涙】がテーマです。
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