リリカルなのはSFIA |
第十三話 抱きしめて!
ジェイル視点。
人里離れたとある施設でガジェットの改良をしていることだった。
「さて、次の試作品は…」
ドゴォオオオオンッッ!
施設全体を揺るがすほどの衝撃が鳴り響く。
「ドクター。彼等がまた…」
「またかい。ウーノ」
「ええ。またです」
今度は何体のガジェットが壊されたのかな?
そんなことを考えていると部屋の奥から紫色の髪をした少女が現れた。
「ドクター。またゼストがアサキムと喧嘩している」
「君の方から止めるように言ってくれないかい、ルーテシア」
「…無理」
「そうかい」
ゼストはアサキムに自分の部隊の人間を半数近くを殺されて、残りの半分も半殺しにされて魔導師生命を奪われた。そして…。
「それよりドクター。次のレリックは何処?」
「…次は。ホテル・アグスタ。管理局関係で掘り出したイブツの紹介をするみたいだけどそれを囮にロストロギアの密輸をするんだ。その中に君の探しているレリックがある」
「…そう」
ルーテシアは興味なさげにそのことをきくとこの部屋から出て行った。
彼女は母親をアサキムに奪われたようなものだ。
だが、その事実はゼストも隠している。すぐ傍に自分の母親を傷つけた人間がいたら協力はしてくれないだろうし…。
「ウーノ。ルーテシアにお菓子を渡しておいてくれ。この間のお菓子は私も気にいっているんだ」
「あれならウェンディが全部食べちゃいましたよ」
「・・・。代わりの物はないのかね?」
「T印の豆腐なら」
「トーフ?」
初めて聴くな。その食べ物。
「ビーン。豆できたプリンです。舌触りが優しく、同じく豆で出来た醤油なるソースをかけて食べるのがこれまたおいしいのですが…。そのまま食べるにはそっけなさ過ぎる味なんですよ」
ふむ。興味深いな。
「煮ても焼いてもそのままでも食べれるのです。とても美味しかったです」
あのいつも冷静なウーノがやや興奮気味に語る食物。トーフ。
興味がそそられるね。
「では、このガジェット達の調整が住んだら私も頂こうかな」
「ええ、是非そうしてください。今日は湯豆腐にしようと思います」
さて、次の舞台はホテル・アグスタか…。
アサキムの言う『白歴史』では機動六課の亀裂が入る事件が起こったらしいが、その原因となったティアナ・ランスター。
彼女は『傷だらけの獅子』の影響を受けた所為か、無理はしないようにしている。しかも、魔法世界の常識にとらわれないで魔法以外での攻撃をしてくる。応用のきくような人間になった。
魔力サンプルとしての価値は無いが、その戦闘方法は見ていて楽しいものがある。
さて、今度はどのような動きを見せてくれるのかな。機動六課。そして、『傷だらけの獅子』は。
ゼスト視点。
ドゴォオオオオンッッ!
「…やれやれ。またか」
この施設についてからしばらくして、ルーテシアが気をきかせて俺の傍から離れてから俺は槍を振るった。
俺の部隊の奴等を殺した奴の心臓を潰すために。
「…貴様。よく、ルーの所に顔を出せるものだなっ」
その細長い赤黒い剣で俺の槍を受け止めるアサキム。
その剣。腕に似合わず豪胆な力量を見せるその技量に舌を巻く。
「その短い命。更に縮める気かい?」
「貴様を討てるならそれで!」
「君の背中にすがっている少女達を残してかい?」
その言葉に俺はやっと自分の後ろにある気配に気がついた。
「…ゼスト」
「…旦那」
ルーテシアと赤紫の髪を紐で二つに縛った手のひらに載るほどの小人の少女がいた。
「…ルー。…アギト」
ルーテシアは普段から無表情なため分かりにくいが俺を心配してかその顔を不安そうにして俺に声をかける。
「…ゼスト。あんまり無茶しないで。その槍はゼストにきっとよくない」
「そうだぜ旦那。あの変態から貰ったその槍は危険すぎる」
ジェイルから受け取ったこの銀色の槍。
元々俺が持っていたベルカ式のカートリッジを搭載した槍にジェイルが可追加装備を加えた槍。円錐状の銀槍『ゲイボルグ』。
感情と意識を込めれば威力が上がるというが、俺は使わないでいる。信用が無いからだ。
「…ゼスト。次のレリックが見つかった。ホテル・アグスタだって」
その言葉を聞いて俺はアサキムから槍を外す。
「…わかった。出立は何時だ?」
「旦那は休んだ方がいい!最近無茶しすぎだ!次は私とルーだけでやる!」
アギトは俺に今度の襲撃に俺が参加することに反対らしいが、俺はそこまで弱ってはいない。それに…。
「子どもが大人の心配なんかするな」
「…旦那ぁ」
アギトは泣きそうな顔をしているが俺はそれを見てみないふりをする。
「子どもにばれるほど弱っているのに、無茶をする。…助かりたいかい?」
アサキムの言葉にアギトとルーテシアが反応した。
「どういうことだ!?」
「…ゼスト。元気になるの?」
「アサキム!貴様何を考えている!」
俺は再び槍を構えようとしたがルーテシアが槍に抱きついて俺の行動を抑えた。
「教えろ!アサキム!どうすれば旦那を助けられる!」
「アギト!やめろ!こいつの言う事など聞く必要はない!」
「でもよ!」
「アギトッ!」
俺はアギトを制止しようと思ったがアギトは止まろうとしなかった。そして、ルーテシアも。
「教えて」
「…ルーテシア」
「…ルー」
ルーテシアの必死な表情を見て俺とアギトはその行動に魅入られた。
そして、肩をすくめながらアサキムは言う。
「今度のホテル・アグスタの襲撃。きっと『傷だらけの獅子』が来る。彼に頼めば治してもえるだろうさ。なにせ、死地に向かうだけの人間を立ち治らせるだけの力を持っているのだからね」
「…わかった」
「…礼はいわねーぞ」
…アサキム。貴様は本当に何を考えている!
高志視点。
六課の食堂で食事をとった俺はため息交じりに食器を片づける。
ああ、この間は酷い目に会った。
俺に触らないように体に傷がつかないように酷い目に会わされた。
これがトラウマになって俺、女性不審にならないかな。第二次スパロボZのクロウさんぐらいに・・・。
・・・やだなぁ。
そうだ癒されに行こう。ティーダさんに連絡を取って湯豆腐を作ってもらおう。
用意された個室から出ると待機状態のブラスタを使ってティーダさんにコールする。
プルルルルッ。プルルルルッ。プルルルルッ。
「はいっ。ランスターです」
「すいません。高志です。あの、今度またそちらに遊びに行くと思うんですけど…」
「ええ、構わないですよ。あ、でも…。俺、就職先が変わったんで」
「あ、決まったんですね。就職。…羨ましいです」
「あはは。今度御馳走しますよ。俺が作ったので良ければ」
「是非に。で、どこに就職を?」
「機動六課という新しい部署の食堂長を任されました。明日から豆腐料理を出しますから…。来てください」
「…機動六課?」
「それにしても声が近くに聞こえますね。…あっ」
食堂を少し出た廊下で白い料理服を着たティーダさんがいた。
お早い再会で・・・。
「…えーと、お久しぶりです」
「…こちらこそ。何か用意しましょうか?豆乳プリンとか?」
「お願いします!」
甘いヘルシーなんだよ!あれ!
厨房に入ってしばらくすると白いプリンを持ったティーダさんが御馳走してくれた。
「いつもながら美味いですね。…いや、前に食べた時よりも美味しい」
「それは良かった。美味しく食べてもらえて。…あれ?高志さんどうしたんですか?また、泣いたりなんかして」
にっこりと笑うティーダさんにいつの間にか涙していた。
だって…。だって!
だってティーダさんはこんなにも優しいじゃないか!
「うっく。うっく…」
「何があったんですか!?」
いい大人が涙を流していたらそれは驚くだろう。だけど…。
「何か辛い事があったら聴きますよ」
「てぃ、ティーダさぁああああんっ!」
抱きしめて!銀河のはちぇまれぇええええ!
この間までの辛い事や辛い事や辛い事を思いだして、涙が止まらなかった。
俺はティーダさんに泣きついた。
この時ほどティーダさんが『放浪者』候補じゃなくてよかったと思ったことはない!
「俺さ!俺だってさぁああああああ!」
「…今日はもうオフです。最後までお付き合いしますよ」
その現場を見た食堂のお姉さんやおばちゃん達が俺とティーダさんをネタにした薄い本を発行したとかどうとか…。
現『傷だらけの獅子』。沢高志。確実に、そして様々な方向で傷ついていた。
だけど、その晩。
少しだけ癒された高志がいた。
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第十三話 抱きしめて! | ||
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コメント | ||
神薙さんへ。誤字訂正しました。申請ありがとうございます(たかB) ティーダさんどこまで豆腐究めたんだ!は、まさかウーノが言っていたT印の豆腐のTはTIDAのTなのか!(クロノ) ・・・・・・遂にリインフォースまでもが堕ちた(攻撃する側)か。最後の砦はティーダだけ。そしてまた婦女子御用達な薄い本が出来上がる。まさかオバチャン共まで婦女子だったとは・・・六課恐るべしw(孝(たか)) もう・・・ほんとに不憫、ここの主人公・・・;作者のそういう芸風なのかもしれんがガチで同情するレベル(GDGD3) ウーノェ・・・(453145) ティーダさんwwwってかどんだけ豆腐を極めているんっすかwww六課が終わったら日本食の定食屋でも開く積りっすか!? そしてアサキムのゼスト達に対する誘い……もしかしてスフィアを強化させるつもりか?(神薙) 誤字発見です。 今度はガジェットが何体のガジェットが壊されたのかな→最初のガジェットはいりません(神薙) リインフォースも攻撃する側になったことで、ティーダさんが高志にとって唯一の清涼剤なんですね。しかもその豆腐は敵側にも人気……。ウーノがそれを知ったら、六課を攻撃するのに反対しそう。(青い人) |
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