トゥングスワ=ルフツビ その6 |
11
再び、物語の世界へ
イタンがイラツを助け山の頂上に立つ。
イタン「これは!」
山の爆発、その途中で時が止まっている。あらゆるものが破裂して空に浮いている。その中央に三日月状の光る船が破裂したり元に戻ったり消えたりしながら、浮かんでいる。
イラツ「これが『夢のる舟』…」
2人は舟に近づいて行き、立ち止まり、足を小刻みに鳴らしながら会話を続ける。
イタン「この世界の秩序が崩れた真相は、魔法使いが思想実現鼎を使って無意識の願望が漏れたのが原因だったね」
イラツ「彼は『過去に戻って赤子である自分を殺せ』と言った。本当にそんなことで世界の秩序が取り戻せるのかしら?」
イタン「わからない。赤子を殺すなんて僕には無理だとしても、他に何か方法が有るのではないか?僕はそれを探るためにこの舟に乗ってみよう」
イラツ「危険だわ」
イタン「この世界以上に危険な場所があると思うかい?」
イタンはそう語りながら、おぼろげな舟の縁に手をかけサッと飛び乗る。
しかし次の瞬間、ボロボロになって落ちてくる。
イラツ素早く駆けつけイタンを抱きかかえる。
イラツ「大丈夫?!あ、髪の毛が真っ白に!」
イタン「ああ、戻って来た。ようやく戻れた!!」
イラツ「何が起こったの?」
イタン「聞いてくれ、赤子の魔法使いを殺せば、秩序が戻るどころか世界自体が消えてしまうんだ。舟に乗ってそれを理解した僕は、とりあえず予定通り魔法使いが生まれた時に戻った」
イラツ「何を言ってるの?あなたはどこにも行ってないわ」
イタン「いや、舟に乗ったんだ。この舟は時を渡るんだよ。僕はこれに乗って旅をして、苦労してようやく同じこの時に戻ってきたんだ」
イラツ、イタンの目を見て本当の事だと理解する。
イタン「僕は時を遡り、魔法使いの宮殿で開かれていた宴に紛れ込み赤子を奪った。その時の赤子は、他の子と同じ只の赤子だった。この赤子がやがて多くの人々を苦しみに多くのとは考えられず、結局、手をかけるをやめ、信頼出来る女性に預けたのだ。住む処が変われば本性も変わるだろうと。赤子は女性の元で剣士に育った。なんの特徴も無い剣士となったんだ
つまり、赤子の人生を変えてしまうと『物語』になりうる事件も無くなり『物語』は描かれる事も無かった。
よく聞いてくれ。
『この物語』は魔法使いの悪事あっての世界だ。これが世界の中心だったんだよ」
イラツ「待って?『物語』とは何の事?あなたはこの世界が『物語』だというの?」
イタン「…僕はこの舟に乗ってしまったことであらゆる時を串刺しにしたままの存在となった。
存在する世界、存在していた世界、存在しない世界、全てを見渡し、感じたんだ。
そして『時』というものの構造(つくり)を知り、『時』という概念を理解した。
物事の始まりと終わりを同時に把握したんだよ。
そしてその次は、この世界の構造(つくり)いや『全て』の構造(つくり)さえも見てしまったんだ」
イラツ「イタン、怖いわ」
イタン「よくお聞き、僕達は『漫画』という種類の絵物語の登場人物なんだ。つまりは紙に描かれた只の絵らしい。しかもその『漫画』とは元から存在しないんだよ、分かるかい?
実は『漫画だと記述された只の文章』にしかすぎないんだよ。ある人物が描いた絵物語という記述だけで存在しているんだ。
僕は恐ろしかったけど、さらにその向こうが見えた。
見たくなかったんだけど見えてしまったんだ。
その人物も更に別の物語、今度は『文字で綴られただけの物語』の中に存在する人だった。
この『文字で綴られただけの物語』を書いたのが、またひとりいる。
この人物だけが生身の身体を持った存在だ。
彼は、小さな光る箱の中に『文字で綴られただけの物語』を綴っていた…」
イラツ「『文字で綴られただけの物語』の中の人が描いた漫画という『物語』の中にあるのが私達の『世界』…」
(続く)
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もう、書いている本人もこんがらかって来た部分ですので 短めに出しておきます。 |
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